朗読者 (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 4097
感想 : 565
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102007112

作品紹介・あらすじ

15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」-ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。
    15歳の少年が、母親ほど年上の女性に恋をする。
    彼女が、隠していたのは、文盲だということ。
    どうしても言えない…その気持ちがなんとも切ない。
    朗読してもらうという、そのことに喜びを感じていたのか。
    別れ、出会いは、裁判所。
    やはり、何度読んでも救われない。
    残酷な愛…と感じてしまう。

  • こちらも、いわた書店さんの一万円選書の棚から。
    舞台は戦後のドイツ。三部構成となっている。

    16歳のぼくは、母親ほどに歳の離れたハンナと恋に落ちる。「なにか朗読してよ、ぼうや!」
    ハンナはぼくに本の朗読をせがみ、ぼくはハンナに様々な本を読んで聞かせる。二人は逢瀬を重ねるが、ハンナは突然行方をくらませてしまう。

    それから数年後、大学生になったぼくは、思いがけない場所でハンナと再会する。ゼミで傍聴したナチスの戦争犯罪の裁判で、ハンナは被告人席に座っていた。正直に事実を認めるハンナは、ほかの被告人からも煙たがられる。
    裁判中、ハンナは文盲なのではないかとぼくは思い至る。しかしハンナは、報告書を書いた主犯に仕立てられることを抗うよりも、文盲を隠すことを選び、重い刑が下る。

    ぼくは、刑務所にいるハンナに、朗読したカセットテープを送る。手紙も何もない、ただカセットテープだけを。4年目、ハンナから届いた初めての手紙。それは字が書けるようになった喜びに溢れていた。ハンナと面会することなく、手紙とカセットのやり取りを続ける中、刑務所長からぼくに手紙が届く。「ハンナの恩赦が認められることになるだろう」と。

    読後、くっきりとした爪痕が残される。しかし、色々な思いが去来してまとまらない。

    敗戦後のドイツを背負った人々。二人にも戦争が影を落とす。
    過去は消え去らない。敗戦国の我々は、過去と、そして戦争犯罪に関わった者とどう向き合うべきなのだろう。

    私の亡祖父は、十代で召集され、特攻隊員となった。戦争が終わるのがもう少し遅かったら、私はここにはいない。祖父と戦争のことを話したことはほとんどなかったが、「なんで戦争に行ったの?」ということを聞いたことはある。「そういう時代だったんだよ」…言葉少なに祖父は言っていた。

    収容所の"選別"に関わっていたハンナ。
    被収容者にとって、選別されることは、死を意味する。
    裁判で裁判長がハンナに問う。

    "「選別をしないで済ませようとした人は誰もいないんですか?みんなが一緒に行動したんですね?」
    「はい」
    「囚人たちを死なせることになるとはわからなかったのですか?」
    「いいえ。わかっていましたが、新しい囚人が送られてきましたし、古い囚人は新しい人たちのために場所を空けなければいけなかったんです」
    「ではあなたは、『あんたとあんたとあんたは送り返されて死ぬのよ』と言ったわけですか?」

    「わたしは…わたしが言いたいのは…あなただったら何をしましたか?」"

    この問いに正面から答えられる人がいるのだろうか。あなたならどう答えるのだろうか。

    二人の関係は特殊だ。ハンナは収容所で直接戦争に関わった当事者であり、ぼくは両親世代への葛藤を抱きながら、戦後の教育を受ける青年である。
    ぼくはハンナに、「理解と裁き」、背反する感情を抱く。
    ひとり重い罪を着せられることになったハンナは、刑務所の中で初めて文字を知り、ぼくの朗読をカセットテープで聴く。ぼくはハンナと面会せず、朗読したカセットテープを送り続ける。
    二人はそうすることでそれぞれの"戦後"を生きた。

    • 土瓶さん
      好レビュー、ありがとうございます。
      アマゾンの「あとで買う」にポチっとしてしまいました。
      好レビュー、ありがとうございます。
      アマゾンの「あとで買う」にポチっとしてしまいました。
      2022/06/26
  • 1960年代のドイツを舞台に、少年と大人の女性の恋愛から、彼女の失踪、そして明らかになる過去。といっても陳腐な恋愛小説ではない。
    15歳の少年に36歳の女性が手を出すことについて思うところもあるけれど、彼女の過去と、それを知った彼の考え続ける姿勢は、二人が同世代ではないからこそと思うから、倫理的なことは意識の外に追いやってしまった。

    戦争の当事者と、戦後教育を受けた世代。
    断罪するばかりで、本当に知ろうとしただろうか。彼はそう考えて、知ろうとする。
    彼女のある秘密についても、考えるしかない。
    隠したい気持ちは理解できる。でも人生がかかる局面でも隠さなければならないのか。
    彼女の選択が、その秘密の重さが、私には分からない。

    過去、秘密、その後の交流から結末まで、答えの出ない問いを投げかけられて、いくつもの「どうしたらよかった?」を考え続けている。

  • 15才の少年と36才の女性の激しくそして儚い恋を描いた小説。先がまったく読めず、中盤からガラッと雰囲気が変わる。単なる恋愛小説にとどまらず、戦時下で行われたある歴史的な出来事にまで足を踏み入れることになる。そしてラストは衝撃的な展開でさらに心を揺さぶられる。世界的に有名なベストセラーだけあって読者を唸らせる場面はたくさんあった。タイトルにもある「朗読」は、二人を繋ぐ大きな意味をもつところが読みどころでもある。衝撃的な展開に目が奪われがちだが、何度も読むことで深い味わいが出る作品ではないだろうか。

  • 「あなただったら何をしましたか?」
    「あなただったらどうしましたか?」
    ハンナのこの問いかけに正々堂々と答えられる人間はいるのでしょうか。わたしには無理です。わからない。わからないのです。けれど、そんなわたしには考える時間というものが残されています。時間を有するものの使命として、わたしは過去からのこの問いかけの答えを、意味を考えていかなければならないのです。

    15歳の少年と母親ほど年の離れたハンナとの恋愛から始まった物語。最初わたしには、ハンナが一生逃れることの出来ない影に捕まってしまうまでの、ほんのひとときの幸せのために、少年との恋愛にのめり込んでいったような気がしてたまりませんでした。それはまるで、人生の終焉が近づいているのを分かっていて、生き急いでいるかのように見えたのです。彼女にとって纏わりつく恐ろしいものを忘れられたのは、少年と愛し合っているときだけだったのかもしれません。そして『朗読』という形で、彼女は彼に愛以上の何かを求めていたように思えました。
    少年はハンナとの愛を心の奥底から信じていたのだろうけど、彼女は決して秘密を明かすことはありませんでした。その秘密が明かされないことによって、ハンナの運命は悲劇的な方向へ転がっていってしまうのだけれども。
    他人からすれば、そんなことくらいと思うようなことでも本人にとっては許し難いモノ、守り通したいモノ、譲れないモノというものがありますよね。いいじゃないか、その秘密を明かせば未来は少しは良い方向へ向かうのだからと説得されたとしても、決して首を縦に振らなかっただろうハンナのプライドと、とある施設の中でその秘密からやっと解放されたであろうハンナの行動。他人から見れば彼女は、ちっぽけなプライドの為に人生を棒に振ったのではないかなんて思ってしまうのだけれど、どちらが幸せだったのかは他人が決めるものではないのでしょう。

    結局のところ、わたしは彼女が歩んだ人生の傍観者でしかないということを思い知らされました。けれどもハンナとミヒャエルとの時の流れを追いながら戦争とは、教育とは、道徳とは、愛とは、いろんなことを考えることがわたしには出来るのです。そのことをわたしは忘れてはいけないのです。

  • 本書は、長らく私のアマゾンのほしい物リストに置かれていた。この本をほしい物リストに加えた経緯は忘れてしまった。表題に引かれたからなのか?今となってはわからない。

    3部構成の本書は、各部で大きな展開があり、今まで読んできた世界がガラリとその景色を変えるほどのインパクトがある。第二次世界大戦を経験したドイツの文学作品。
    静かな語り口であり、テーマも重厚だが、読み手にはあまり堅苦しさを感じさせない。若かりし頃に本書に出会っていたら、また違った印象を持ったかもしれない。何度も読み返すであろう好きな作品に出会えた。

  •  ホロコーストに関連した小説ですが、ホロコーストに加担した者を一方的に断罪するような単純な作品ではありません。また、戦時の行為を特殊な状況下であったことを理由に安易に正当化しようとするものでもありません。いろんな理解の仕方があると思いますが、大きな不幸に不可抗力的に巻き込まれた人の悲劇、加害者の側に立ってしまった人が背負う罪の意識、人が人を裁くことなどできるのか、そもそも何のために人は人を裁かねばならないのかといったことをテーマとした作品といえば当たらずとも遠からずだと思います。

     第一部がかなりショッキングな内容なので嫌悪感を持つ人がいるかもしれません。しかし、主人公のミハエル・ベルクがハンナ・シュミッツの人生(あるいは心の問題)に深く関わっていく必然性を導き出すには、このような物語の設定が必要だったのでしょう。

     作者のベルンハルト・シュリンクは法学者だそうで、いかにもドイツ人の学者らしい明晰な言葉で、主人公の複雑な心の内面を細かく描いていきます。結末は悲劇的であり、決して心地よいお話でもありませんが、読み終えてから暫くするともう一度読み返して意味を確かめたくなるような本だと思います。

  • 何年ぶりかに再読。
    なぜか何度も読み返したくなる好きな本です。

    ハンナの
    「……あなただったら何をしましたか?」
    この真剣な問いに自信を持って答えれる人はなんて答えるのだろう?
    裁判長
    「この世には、関わり合いになってはいけない事柄があり、命の危険がない限り、遠ざけておくべき事柄もあるのです」



  • 圧巻のドイツ文学。素晴らしいの一言。
    やるせない気持ちになる。

    何の予備知識もなく読みはじめ、前半の倒錯的な恋愛模様に困惑しつつも読み進めていくと……中盤以降、やられた。
    今まで第二次世界大戦のドイツやドイツ国民の心情について、知識としてはそれとなく知っていてまあナチス関連はけっこう敏感になっているらしいなあ程度に思っていた。でもナチス時代はともかく「その後」のドイツに焦点を当てられることってほとんどないので、全然、わかってなかった。彼ら特有の苦しみや罪責感や憤りを。

    ユダヤ人迫害、ホロコーストについても日本でもがっつり勉強させられるし、テレビでもけっこう特集組まれるし、映像や写真で何度も見たことあるし、私は『ライフイズビューティフル』とかを観て泣いたり憤ったりしたし……でも、特に戦争世代じゃない日本人にとっては「教科書に載っている歴史」という感覚で、実感をもってそういった歴史的事実に触れることは全然できない。それどころか小説中でも、主人公は親が戦争世代のドイツ人で私たちよりずっと距離が近いところにいるはずなのに、「書割的な空想」しかできない場面が描写されている。今は資料が充実してきたとはいえ、あの時代が遠ざかっていくほどに現実感のない空想しかできなくなっていくと思う。

    ドイツの戦争世代、その子ども世代は相当に特殊だと思う。歴史上彼らのように集団として一人の例外もなく罪を負わされることとなった国民はいただろうか? 直接酷い行いに手を染めていなくたって、「ナチスを支持したじゃないか」「止められなかったじゃないか」と。
    (日本も敗戦国で戦争責任云々についてはいろいろ議論が交わされているけれど、ドイツとは雰囲気が違うように感じられる)
    でも私はただ戦争世代を責めたり過去の残虐な行為を糾弾するだけじゃ思考停止だと思う。
    小説中のハンナの言葉、
    「あなただったらどうしましたか?」
    これを考えなくてはならない。正直、あの当時あの状況において「正しい」行動をとれる人は全人類の1%もいないんじゃないかと思う。
    そして難しいのは、だからといって罪が罪じゃなくなるわけではないということ。

    主人公がハンナを「理解したい」という気持ちだけではなく彼女を「裁きたい」という気持ちを持っていたこと、これは今まで読んだどのような物語にもなく新鮮だった。このあたりがドイツの戦争子ども世代(しかもインテリ)が抱く精神の特殊性なのだと思った。
    激しく葛藤し、何かをしようとして何もしないことを選んで、その末に辿り着いた彼女との心地良い距離が「朗読者」であったこと……涙を禁じ得ない。

  • 何度も読み返したくなる、とても好きな本。すごくきれいな小説だなと思う。ミヒャエルやハンナの思い、自尊心、こだわりが、鮮明にかつ赤裸々に描かれている。

    15歳のミヒャエルと30代半ばのハンナとの恋から物語は始まる。毎日のようにミヒャエルはハンナの家に行き、朗読をしてセックスをする。しかしある日突然、ハンナはいなくなる。
    2人の再会は、ミヒャエルが大学の授業で傍聴した裁判所だった。それはナチス時代にユダヤ人の強制収容所で看守を務めていた女性たちを裁く裁判であり、その被告としてハンナはいた。
    裁判ではハンナは非常に正直にふるまった。しかし1度だけはっきりと嘘をつく。ある報告書を誰が執筆したのか、ということが問題になった時だ。裁判官が筆跡鑑定をしようとしたところ、ハンナが自分が書いたと嘘をつくのだ。ハンナは文盲だった。書けるわけがなかった。しかし文盲だからこそ、それがバレてしまうことを最も恐れたからこそ、ハンナは嘘をついた。
    ミヒャエルはハンナが文盲だということに気づいていた。だから苦悩する。文盲だということを裁判官に伝えるべきか、伝えないべきか。ハンナを説得して文盲だと告白させるべきか、そうしないべきか。。。

    ”そうだ、彼女はそれを(量刑を軽くし早く自由になる事--引用者)求めて闘っていた。しかし、勝利するために文盲を暴露するという代償を払うことまでは望んでいなかった。彼女は、軽を何年分か短くするために、ぼくが彼女の自己演出を暴いてしまうことも望まないだろう。自分でもそうした取引をすることができたのに、彼女はやらなかった。つまり、やりたくないわけだ。自己演出を守ることに、刑務所何年分もの価値があるわけだ。でも、その演出はほんとうにそれほど重要なのだろうか?こんなふうに彼女を束縛し、麻痺させ、自己発展を妨げている偽りの自己演出から得るものがあるのだろうか?これほどのエネルギーを費やして嘘をつき続けるくらいなら、とっくの昔に読み書きを学ぶこともできたのに”pp159

    ”君は裁判官に、何がどうなっているかを言うかい?考えてごらんよ、彼はホモで、その犯行はホモでは行い得ないのに、ホモであることを恥じている。左利きやホモを恥じるべきかどうかという話じゃないんだ。考えてごらん、被告が恥ずかしがっているということが問題なんだ”pp160

    ミヒャエルは結局、裁判官に何も言わなかった。そしてハンナは無期懲役になる。数年間、ミヒャエルはハンナと何も接触しない。しかし数年後、ミヒャエルは、物語の朗読を吹き込んだテープをハンナに郵送する。何もメッセージは送らず、ただ朗読だけを送り続ける。
    するとある日、ハンナから短い、一言だけの手紙が届いた。ハンナは、ミヒャエルからの朗読テープを使って、字の練習をした。朗読テープと実際の本の文字とを照らし合わせながら練習したのだ。
    そして、ハンナがついに仮釈放になるとの手紙がミヒャエルに届き、ミヒャエルはハンナに会いに行く。そして、釈放後の家の準備をして、釈放の前日もハンナに会いに行く。しかし、釈放の日の朝、ハンナは自殺する。

    なぜ、ハンナは自殺したのだろうか。ミヒャエルにとってハンナはどんな存在だったのか。ハンナにとってミヒャエルとは。読みながら、そして読んだ後、いろんな疑問がわく小説だ。
    何より、ミヒャエルとハンナがそれぞれとても魅力的な人物として描かれている。
    ハンナは文盲であり、その一方で知識欲が非常に旺盛であり、誇り高くかつ非常に誠実で人望のある人物だ。ミヒャエルは、様々な葛藤の中を生きている。ハンナへの思いも複雑で、対立する思いが同居してもいる。著者のシュリンクは、そんなミヒャエルの悩みや葛藤を赤裸々に描き出す。それは、思春期における恋愛の悩みであり、あるいはナチス時代の戦犯を裁かなければならないという時代の風潮とハンナへの愛情との葛藤であり、ハンナの文盲を公開すべきかどうかという苦悩であったりする。
    僕は、これは人間の誇りについての話だと思った。文盲を隠して生きていくこと、これがハンナの人生を貫く一つの大きな原理だった。それは確かに歪んでいる。文字の練習をすればよかったじゃないか。そういうのは簡単だ。しかし、文字の練習をするということは、文字が書けない自分と向き合わざるを得なくなるということでもある。ミヒャエルはそんなハンナの強い自尊心に直面し当惑したのだ。しかしそんな中、ミヒャエルが送った朗読テープを使って、ハンナは文字の練習を始める。これはとてもすごいことだ。本のなかのミヒャエルと一緒に僕は興奮した。ハンナの強さに、勇気に、感動した。
    ハンナは、しかし自殺をする。いや、「だから」自殺をしたのだろうか?なぜ彼女は自殺をしたのだろうか?いまだによくわからない。
    また読みたい。

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著者プロフィール

ベルンハルト・シュリンク(ドイツ:ベルリン・フンボルト大学教授)

「2019年 『現代ドイツ基本権〔第2版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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