- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102007112
作品紹介・あらすじ
15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」-ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
感想・レビュー・書評
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「あなただったら何をしましたか?」
「あなただったらどうしましたか?」
ハンナのこの問いかけに正々堂々と答えられる人間はいるのでしょうか。わたしには無理です。わからない。わからないのです。けれど、そんなわたしには考える時間というものが残されています。時間を有するものの使命として、わたしは過去からのこの問いかけの答えを、意味を考えていかなければならないのです。
15歳の少年と母親ほど年の離れたハンナとの恋愛から始まった物語。最初わたしには、ハンナが一生逃れることの出来ない影に捕まってしまうまでの、ほんのひとときの幸せのために、少年との恋愛にのめり込んでいったような気がしてたまりませんでした。それはまるで、人生の終焉が近づいているのを分かっていて、生き急いでいるかのように見えたのです。彼女にとって纏わりつく恐ろしいものを忘れられたのは、少年と愛し合っているときだけだったのかもしれません。そして『朗読』という形で、彼女は彼に愛以上の何かを求めていたように思えました。
少年はハンナとの愛を心の奥底から信じていたのだろうけど、彼女は決して秘密を明かすことはありませんでした。その秘密が明かされないことによって、ハンナの運命は悲劇的な方向へ転がっていってしまうのだけれども。
他人からすれば、そんなことくらいと思うようなことでも本人にとっては許し難いモノ、守り通したいモノ、譲れないモノというものがありますよね。いいじゃないか、その秘密を明かせば未来は少しは良い方向へ向かうのだからと説得されたとしても、決して首を縦に振らなかっただろうハンナのプライドと、とある施設の中でその秘密からやっと解放されたであろうハンナの行動。他人から見れば彼女は、ちっぽけなプライドの為に人生を棒に振ったのではないかなんて思ってしまうのだけれど、どちらが幸せだったのかは他人が決めるものではないのでしょう。
結局のところ、わたしは彼女が歩んだ人生の傍観者でしかないということを思い知らされました。けれどもハンナとミヒャエルとの時の流れを追いながら戦争とは、教育とは、道徳とは、愛とは、いろんなことを考えることがわたしには出来るのです。そのことをわたしは忘れてはいけないのです。 -
辻村深月の「凍りのくじら」の別所あきらをはじめとして、最近読んだ本の中で登場人物たちがこれ見よがしに(笑)読んでいたのでどんなものかと思い読んでみました。
翻訳物は苦手なのですが、多少つっかえながらも驚きの読みやすさ。時代も国も言語も違う話なのに、それを感じさせませんでした。訳が上手いんだろうなぁ。
「朗読者」というタイトル。
年の離れた恋人のために枕元で本を読んであげる男の子。
ロマンチックな設定だなと思ったのですが、年上の彼女ハンナは何故彼に朗読を頼んだのか。その理由が明らかになった途端、ロマンチックなムードなど消し飛びました。
最初のころ、主人公のミヒャエルは、自分の方が彼女にぞっこんで、捨てられたくないからしがみついていて、喧嘩しても譲るし、どちらかというと自分の方が弱い立場なのかもしれないみたいなことを考えていたように思います。
P91
「ぼくたちは共通の世界に生きているのではなくて、彼女が自分の世界の中で与えたいと思う場所をぼくに分けてくれているだけだった。ぼくはそれで満足しなければいけなかった。」
ここなんかにその思いが書かれているような気がします。
でも実際、文盲であるハンナはミヒャエルに頼ることでしか物語を楽しむことはできなかったし、自転車旅行に行って宿に泊まることもできなかったし、レストランでメニューを見ることもできなかった。
ハンナにとって、ミヒャエルは自分の世界を広げてくれる、無くてはならない人だったに違いありません。
ミヒャエルはハンナの存在を友達に隠していた。
そのことを知ったハンナはミヒャエルの前から姿を消しますが、それは「昇級試験を受けることで文盲が暴露されるのが嫌だったから」という理由だけではもちろんないはず。
文盲の年上の女と付き合うことで、ミヒャエルの評判に傷がつくとか、思ったのかなぁ……。
そして、文盲とばれることで、憐みの目で見られるのが嫌だったのかも。ハンナにとって、ミヒャエルははじめて出会った、対等に付き合える相手だった。
文盲とばれたくらいでミヒャエルが離れることはない。でも自分を見る目は変わるだろう。なにしろミヒャエルは学者の家に育ち、何不自由なく勉強している身だから。
対等に愛し合っていた相手に憐れまれること、それが嫌だったのかもしれない。
そう考えると、出所してからミヒャエルと一緒に過ごせることが解っていながらハンナが命を絶ったのも「憐れまれたくない」という同じ理由だったのかもしれないと見当がつくような……。
著者のベルンハルト・シュリンクは、ミヒャエルと同じように法律を学んでいるそうで、作中にあった「法律とは~」みたいな部分にはいちいち頷きました。
P107
「法律とは何だろう? 法律書に載っていることが法なのか、それとも社会で実際に行われ、遵守されていることが法なのか? それとも、本に載っていようといまいと、すべて正しいことが行われる場合に実施され遵守されていることが法なのか?」
私は大学の4年間、法学部で法律を学びましたが、高校生の時抱いたこの引用箇所と同じような疑問には、明確な答えが出ないままです。
正しいことが何なのか解らないから、こうやっていくつもの物語が生まれるんでしょうね。 -
大学の教授に紹介してもらって読み始めた。
教授に教えてもらった時から、あらすじをざっと聞いていたが、ナチスとは、ユダヤ人への犯罪とはということを考えさせる作品であった。
過去最大の犯罪とも言われるナチスによるユダヤ人への犯罪は、だれが悪いとか悪くないとかをすべて飲み込んでしまうようなテーマであると思う。しかし、きっと戦後は一つ一つを本書内のように裁いていってたのであろう。
本書内の人間関係のような事実もあったかもしれない。それくらいナチスは近くにあったのだろうし、国民に根付いた話題であるのだと感じた。
ドイツの歴史についてかじった私も、一度めくり始めたら手が止まらなくなるほど興味を持って読み進められた。
作品を紹介してくれた教授に感謝したい。 -
先祖から背負わされた罪を、どう精算していくか。ままなりませんなあ。
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これを恋愛小説というのだろうか。もちろん、恋愛小説であるという側面もある。けれど、猛烈にもやもやする。
それは、二人の「愛」の始まりがあまりに唐突だったからか、(日本的な価値観で言ったら)男女逆なら犯罪じゃないか…などとつい無粋なことを思ってしまったからか、「ぼく」が真っ直ぐなだけではなく弱いからか、家族や戦争や自由と尊厳など愛以外の視点が多すぎるからか、はたまたハンナの最後の「決断」をどう捉えたらいいのかわからなかったからか。
この猛烈なもやもやの決定的な理由は、そのどれでもあって、どれでもないような気もする。
この物語ははたして純愛なのだろうか。「ぼく」は、思春期の少年特有の真っ直ぐさで確かにハンナを愛していたけれど、ハンナのどこに惹かれたのかは、性的なこと以外は具体的に書かれてはいないし、ハンナもこの「坊や」のどこに惹かれたのか、全くわからない。
それでもあえて考えるなら、二人が惹かれあったのは「タイミング」ゆえなのではないかと思う。子どもから大人の男へと成長する過程にあったミヒャエルと、孤独なハンナ。二人の出逢い自体が運命だったのだろうか。
二人の関係は、確かにずっと続いていくものではなかったと思う。
それでもやはり「ぼく」にもハンナにも、他の選択があったのではないかと思ってしまう。最後の一文が、余計にやり切れなさを感じさせる。
この作品は、見る視点によって感じることが変わるだろうと思う。
例えば、恋愛以外の要素では、中盤の自由と尊厳に関する「ぼく」と父との問答が、とても印象に残っている。
幸福と、自由と尊厳は別である―。
もう少したったら、違う視点でまた読み返してみたい。
レビュー全文
http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-499.html
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