赤と黒(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102008034

感想・レビュー・書評

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  • Red - the blood of angry men!
    Black - the dark of ages past!
     ミュージカル「レ・ミゼラブル」の「Red and Black」という歌を聴いて、「そういえば『赤と黒』という小説があったなあ」と。地元の図書館の文庫本コーナーに昔からずっとある(いつも誰も借りていない)古典の一つだ。
    作者はフランスのスタンダール。
    1783年生まれ。若い時、ナポレオンの遠征軍に参加し、その後のナポレオン帝政、ナポレオン失脚後の王政復古の時代を生き、この小説が出版されたのは、1830年の7月革命の直後だった。ちなみにヴィクトル・ユゴーが「レ・ミゼラブル」を出版したのは1862年で、これより約30年後だ。
    主人公、ジュリアンはフランスのジュラという田舎町の材木屋の19才の末息子である。少年期に大革命を経験し、革命政府の持つ共和主義の理想に共鳴し、人権と自由を旗印とする革命軍に参加し、ボナパルトと共に欧州の野を東奔西走してきた世代である。その後、ナポレオン帝政が敷かれたが、帝政と言っても有能な人物には出世の道が開かれ、「36歳で将軍になる」ことが出来た。
    しかし、1814年にナポレオン帝政が崩れると、ルイ18世がブルボン王朝正統の君主として、フランス国王となった。王政復古である。これによって、再び台頭したのが、貴族階級と聖職者階級であり、彼らと共和派及びボナパルト派は憎しみあった。
    ジュリアンは「36歳で将軍になる」ような夢を絶たれ、彼のような階級が目標と出来るのは聖職者になって出世するか、パリなどの都会へ出て、美しい女性と色恋沙汰に耽るかぐらいになった。
    そしてジュリアンは信心など全く無かったが出世のために聖職者になろうとし、地元の司祭からラテン語を教わると見る見るうちに上達した。
    彼のラテン語の能力を見込んで、地元の町長の家の子供達の家庭教師として雇われた。ジュリアンにとっては町長のような貴族階級も聖職者も本心では軽蔑していたが、その家のレナール夫人が彼のことを好いているのを知って、「義務だと思って」誘惑したところ、お互い本気の恋に落ちてしまった。
     やがて彼らの恋愛を密告され、ジュリアンは、ブザンソンという街の神学校に入れられてしまった。
     神学校に入ったジュリアンは自分は優秀だと思っていたのだが、そこでは成績が一番であってはならないのだった。聖職者の世界は王政の元にあり、王はローマ法王から現世の治世を預かっている人だからというので、いかに「キリスト教」の知識が深いかということよりも、王政の中で逆らわずにいるかということが聖職者として出世する道だったのだ。
     そして、たまに食事の時に出るソーセージのようなささやかに贅沢な食べ物にもジュリアンは喜ばなかったが、仲間の神学生は「神学校にいるだけでパンが食べられる」貧しい百姓の息子が多く、「教会や国王の権力」に何の疑問も持たない育ちの人ばかりであるということに気づかされた。
     この後、ジュリアンは神学校を出て、パリに行くことななったのだが、その前にレナール夫人の所に会いに行った。大胆にも夫人の部屋に梯子をかけて。どうなることやら。
     初めのころは、フランスの王政復古時代に限定された歴史小説だと思って読んでいた。がだんだん読み進むにつれ、いつの時代でも何処の国でも変わらない、若者の野心、それを実現するために社会環境によっては「本心を隠して上手く立ち回る」若者の姿、恋に陥ってしまう環境とタイミングなど、その頃の読者を意識しつつ、今の時代にも通用する重厚でありながら大衆的な19世紀の“社会派”“恋愛小説”なのだと分かってきた。
    でもそれにしても長いな。
    やっとのことで読み始めたのだから、下巻も頑張ろう。

  • 大分時間がかかりましたが、やっと読み終わりました。自尊心が異常に膨れ上がった天才肌の美青年ジュリアンが、色恋とその自尊の狭間で命をすり減らし、最終的には自尊心が恋に優り、それゆえに犯した罪の元斬首される話。こんな書き方は全くあらすじではないですが、巻末にある当代の評論家がかいたその批評が、著者スタンダールの執筆意図をしっかりと言い当てています。
     フランス革命の前後において、全く変わってしまったフランスの時代的情緒を描いた作品だということです。私個人としてはフランス革命を手放しで称賛することはできない立場ですから、大革命を前後したフランスの時代を描写した本作は、とても大きな印象を私に残しました。
     もう一度じっくり読み返してみたいです。人間描写の巧みといいましょうか、それも含めて時代描写の傑作であると思います。

    15.07.23 - 15.10.18

  • 「これは一体、何ジャンルなんだ…?」と最後までよくわからないまま読み終えた。
    若き家庭教師のジュリヤンとレーナル夫人の不倫を描いた恋愛小説かと思えば、ジュリヤンの神学校での生活を描いてみたり、とにかく今の自分の理解の範疇を超えていた。
    あと、個人的にはジュリヤンの高飛車レベルにちょっとついていけなかった。現実世界にいたらこんなプライド高い人絶対めんどくさいし、関わりたくない。笑
    下巻を読むかどうかすごく迷ってるけど、読んでみたらこのジュリヤンのイメージも何か変わるんだろうか。

    • リョさん
      少しは変わると思いますよ。
      「赤と黒」は「クレーヴの奥方」からの流れを汲む心理小説の傑作とされています。
      俺は出世がしたいのかレーナル夫人の...
      少しは変わると思いますよ。
      「赤と黒」は「クレーヴの奥方」からの流れを汲む心理小説の傑作とされています。
      俺は出世がしたいのかレーナル夫人の愛が欲しいのか、あーでもないこーでもない、昨日女を蔑んで見れば、今日には心の底からすまなかったと悔いてみる。19世紀前半にこれほどまでに心の激しい揺れ動きに焦点を当てた小説があったことが重要なのでしょう。共感できるかはあまり重要ではないのでしょう。
      ひとつだけ。ジュリアンは本当に馬鹿野郎ですが、ホンモノのクズ野郎ではありません。
      今の世の中のどこにでもいそうな、情熱的な若者のひとりです。
      2024/01/06
    • 茉央さん
      ものすごく貴重なアドバイスに感謝です…!
      世界の10大小説に選ばれるくらいの本を、いまいち読みきれなかった…と心のどこかでずっと未練があった...
      ものすごく貴重なアドバイスに感謝です…!
      世界の10大小説に選ばれるくらいの本を、いまいち読みきれなかった…と心のどこかでずっと未練があったので、また改めて読み直してみようと思います(◡̈)
      2024/01/07
  • 60年前に桑原武夫訳(河出書房)で読んで以来の再読。後期高齢者になって読んでみて気づいたこと。①若い時読んだ文章はそのまま記憶に保存されている。当時何度も読み返したせいか、デルヴィール夫人の(この美少年、ほんとうにいけないまねをする!)とか、「まあ!かわいい小さな司祭さま」という料理番の娘のセリフとか。ということは、17,8歳の私はこの小説を恋愛小説として読んでいたのだ。②だから、パリの社交界の描写とか政治的陰謀とか地位や金を求めてのかけひきなんかはぼんやりとしかわからなかった。今、読んで気づいたことは、木挽き商のせがれジュリヤンの悩みや野心は60年前の日本でも田舎の有能な青年が抱えていたものと似ているということだ。みんな東京へ行きたがっていた。そこで成功して東京の才気煥発なお嬢さんと恋愛したがっていた。やがて田舎でも東京でも人間の本質は同じだと思い知らされるのだとしても。この小説が今でも心を打つものがあるとすれば、痛ましい青春の姿がありありと描かれているからではないかと思う。

  • ジュリアンとレナール夫人、ジュリアンとマチルダの恋愛が描かれるが、3人3様の心理が面白さの焦点。レナール夫人は子供が複数いるのに恋愛には初心で3人の中では一番純粋に相手を愛することができる人。マチルダは地位と金、若さと美しさ全てを持っているが退屈で持ってないのは幸せだけ、という人で、恋愛を人生ドラマの道具立てにして自分の中で盛り上がる人。ジュリアンは貧乏な平民の生まれのコンプレックスから自尊心を満たすために高いポジションの女性を征服することが動機となっているが、その時々で相手を愛する気持ちが生じて揺れ動く。200年近く前に書かれた小説としては、ジュリアンとマチルダの心理戦がきめ細かく描かれていて、ジュリアンが最期に冷めていくところなど古さを感じさせない。
    赤と黒のタイトルについて。情熱の赤と人間を欲望で操作する力の黒、と私は思った。

  • 読んでみないと、ちゃんと最後まで読まないと、その凄さがわからない、この一言に尽きる。
    長いし、時代的背景が詳しくないから、読むのに時間がかかったが、後半まで読むと、読みながらすでに再読を検討していた。よくいる面白いか、面白くないかで評価するような人には到底理解出来ないとは思う、そんなすごい作品だった。やはり、さすが、名著ってやつ。

  • ナポ1敗北。ルイ18復古王政。シャルル10、王党派貴族を優遇。昔の絶対王政・貴族の息苦しい時代に逆戻り。▼貧しい若い男。身分は低いが、いつか出世したい。頭はいい。町長の家に家庭教師として雇ってもらい、そこの夫人と不倫。次にパリの侯爵の秘書になる。侯爵の娘と結婚。玉の輿成功。しかし町長の夫人が侯爵に「こいつはひどい男」だとチクる。男は夫人に発砲する。▼身分の低い者が身分社会に挑戦して破滅。赤は共和主義/貧しい男、黒は復古王政/貴族。スタンダール『赤と黒』

    スタンダール『パルムの僧院』

    バルザック『人間喜劇』

    うち解けすぎると尊敬を失い、気安くしすぎると馬鹿にされ、むやみに熱意を見せると食い物にされる。バルザック『谷間のゆり』

    偶像に触れてはならない。金箔がはげて手に残る。フロベール『ボヴァリー夫人』

    世界は鏡である。しかめ面をすれば、それはこちらをにらみつける。笑いかければ、こちらに笑いかけてくる。▼成功は滅多になく、ゆっくりと訪れる。破滅はたやすく、あっという間に訪れる。サッカレー『虚栄の市きょえいのいち』

    背表紙や表紙のほうがはるかに優れている。そのような本がある。ディケンズ『オリヴァー=トゥイスト』

    上機嫌は社交界に着ていける一級品のドレスである。サッカレー『洋服仕立てと化粧について』

    難しいのは信仰のために死ぬことではない。信仰に従って生きることだ。サッカレー『ヘンリ・エズモンド』

    笑い方を知らない人は尊大で自負心が強い。▼この世は鏡だ。一人一人に自分の顔を映して見せてくれる。サッカレー

    ディケンズ『二都物語』
    家族愛の中に祖国愛が芽生える。ディケンズ『骨董品』

    青春は過ぎてしまったが、老年はまだ訪れていない、希望に似た哀惜と哀惜に似た希望の時期。人生のうす暗い黄昏。トゥルゲーネフ『父と子』

    トゥルゲーネフ『猟人日記』

    女の愛を恐れよ。この幸福を、この毒を。トゥルゲーネフ『初恋』

    苦しみと悩みは、偉大な自覚と深い心情の持主にとって必然である。ドストエフスキー『罪と罰』1866

    人間は自分の姿や心に似せて悪魔を創り出した。▼良心の自由ほど魅惑的で苦しいものはない。▼民衆の中には忍耐強い無言の悲しみがある。ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』1880

    人間には逆境をあえて熱愛するときも確かにある。ドストエフスキー『地下室生活者の手記』

    人間とは、いかなるものにも馴れる動物である。ドストエフスキー『死の家の記憶』

    自分が不幸なとき、他人の不幸をより強く感じる。ドストエフスキー『白夜』

    他人のために自分を忘れること。そうすれば他人はあなたを思い出してくれる。▼金が何よりも卑しく厭(いと)わしいのは、それが人間に才能まで与えるからである。ドストエフスキー

    戦争は醜悪である。もてあそんではいけない。▼純朴と善良と正義こそ偉大。▼この無限の空以外はみんな偽りだ。▼ナポレオン戦争。ロシア貴族の没落。ロシア農民の力強く生きる姿。トルストイ『戦争と平和』

    幸福な家庭は似通っているが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸である。トルストイ『アンナ・カレーニナ』

    深く愛することのできる人だけが、深い悲しみを体験することができる。トルストイ『幼年時代』

    自己愛は死の初めであり、神と万人への愛は生の初めである。トルストイ『読書の輪』

    すべての人は世界を変えたいと思っているが、自分を変えようとは思っていない。▼恋はロウソクの火。▼逆境が人格をつくる。トルストイ

    *************
    写実主義。現実をありのままに描く。

  • ジュリアンがレーナル夫人の手を掴むシーンを作之助さんが『青春の逆説』で取り入れてたので元ネタ読めて胸アツだった
    レーナル夫人チョロすぎて面白い

  • スタンダールの代表作。フランス革命後から七月革命前までのフランスが舞台。成り上がりたいとの欲望に燃える主人公。

  • 才色兼備なジュリアン・ソレルは製材小屋の息子ながら野心家で、実力で成り上がったナポレオンを敬愛しており、赤(軍人)や黒(聖職者)として立身出世を目指していく。女心を弄び手段を選ばず踏み台にしていく青年の覚悟と若さ溢れる野心が好きです。

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著者プロフィール

スタンダール(本名アンリ―・ヘール)は、フランス革命からはじまるフランスの歴史的な激動時代を生き抜いた、フランスの代表的な作家。著書に「赤と黒」「パルムの僧院」「恋愛論」など。

「2016年 『ディズニープリンセス 「恋愛論」 Disney Princess Theory of Love』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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