赤と黒(下) (新潮文庫)

制作 : 小林 正 
  • 新潮社
3.61
  • (70)
  • (90)
  • (160)
  • (18)
  • (2)
本棚登録 : 1018
レビュー : 79
  • Amazon.co.jp ・本 (521ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102008041

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • うーん、当時のフランスの社会や文化を知らないせいなのか、よく分からないところが多かったです。
    主人公の性格も、印象がコロコロ変わってつかみきれなかったし、大していい男に思えなかったなぁ。
    レーナル夫人も、もうちょっとしっかりしてくれないとイライラする。

    パリの社交界へ出て、マチルドとの情熱的な恋からラストにかけてはまぁまぁ読めました。
    けど、全体的に冗長で、心理小説の傑作といわれるほど心理描写が巧いとも思えなかった。
    政治的なことや時代的なことがよく分かってなかったからでしょうかね。

  • 主人公の、野心、純粋さ、情熱的なところ、

    ものすごく愛おしいと思いました。

    自分のもっとも好きな本の一冊です。

  • 短絡的な行為と言うものは愚かな行為と受け取られるものである。
    有名な例であげるのならば、「太陽がまぶしくて殺した」と言うのがあるが、そういった行為というのは小説においては非常に劇的なものになるが、いざそれが現実となると、それは人に反感、と言うか愚かな印象を与えてしまうものである。
    それはなぜか、
    けして小説というのが空想の産物であるから、と言うだけではない。
    それ以外にも理由はあると私は思う。
    それを特に痛感した。
    それが「赤と黒」から私が得たものである。



    古典小説を読むことにおいて重要なのは、「あげあし取りをしない」ということだと思う。
    技法やストーリーという部分で疑問や物足りなさを抱いてしまうのは、中世の人々に携帯電話でメールすら送れないのかよ、とぶーたれるようなものである。
    そこに完成度をけして求めてはいけない。
    あくまでこれは現代に至るまでの道程なのだから、ひとつのモデルケースとして私たちはそれを受け取らねばいけない。
    「赤と黒」についてモデルケースとして特に注目すべきところは心模様だと私は思う。
    ここまでか、ここまでかというほど、しつこく心の内が描かれるのだが、それも作者がして、ではなくて登場人物が己の心境をまるで窓を開け放つように独白してくるのだ。
    そう、心理描写ではなく”独白”の心模様が時に駆け引きに、野心に、身に戻る結果に大きな影響を及ぼし、物語は進行してゆく。
    スタンダールは心模様を浮き彫りにさせるためか、それとは対極にあるといえる情景を描くという行為をほとんど省いてしまっている。
    物語冒頭の舞台情景の詳しい説明から見て取れるように、おそらくスタンダールの時代にはそういう技法が全くなかったというわけではなだろう。
    ましてやこの時代にこそ詩人は珍重された存在であったはずだ。
    仮にスタンダールの時代に情景描写という技法が小説内において大きな役割を得ていなかったとしても、情景描写はあまりにも少なく単純な場面転換すら時に私は見失ってしまった。
    だから、ここまでくるとおそらくこれは故意に行われているのだろうと思わざるを得ない。
    そう考えてみると『思う』という行為の緻密な駆け引きや頭脳戦があるのかと思いきや、物語は主題を絞らずに意外にも主人公の野心的な人生や恋愛、そして背景にある政治など多岐にわたる題材を持ち出してくる。
    はじめこそそれが鼻についたが、終わって考えてみれば一人の人間の生き様を内面を浮き彫りにして描くにはしごくまっとうな選択である。
    ジュリアンの場合、野心が頭をもたげるあまりに心の真実を裏切ってしまうと言うのがいわば当初の彼の持ち味だった。
    その打算と細やかな恋愛心理の描写は、つまらない人間に恋愛相談をするよりもよっぽど的確である。
    徹底しただけはあると、感慨したが、さっきも言ったように心理をもってして小説を描いたことによって情景がないがしろにされたことにより、「余韻」と言うものがこの小説に存在しなかったのが正直、私にはつらかった。
    ありのままなのだ。
    小説特有の誇張や装飾、もしくは展開を匂わす情景描写がないことによって物語は生もののまま私の前に示される。
    いわば、言いわけをしないと言うのは潔がいいが、食べ続けているとつらくなる。
    おまけにスタンダールは当時の世相を絶対にはずしたくなかった。
    そして階級と政治、しかしそれを打ち破るおままごとのような大衆に媚びた物は書きたくないとみてとれる。
    個人の思考と政治はけして遠いものではないが、個人を通してダイナミックに描くにしてはジュリヤンは凡庸な野心家すぎた。
    翻弄されてゆくジュリアンは当初の野心をいつの間にか流し、そうして愛に行き着いた。
    そこでも心模様がついて回るが、ここでの主体は駆け引き。
    それもサイケデリックとも言えるような女性相手のゲーム。
    野心と愛の葛藤を失ったジュリアンの失速具合はおぉっとこっちの気を煽ってくれるような楽しさはあったが、『余韻』なく描かれると淡泊すぎて疲れてしまうものである。
    スタンダールは正直すぎる。
    と、結局あげ足をとっているのだが、純粋に楽しむにしては正直当時のフランスの詳しい政治的背景、いや、それよりもフランス流の風刺という予備知識を持っていなかった私が悪かったのだろうな。



    ジュリヤンの最期の様が淡泊で、それも良い意味で意外でよかった。
    そこに無駄な独白がなかったからだろうな。
    余韻は良しとしてもそのスマートさを求めるのも、好み、いや場違いなのだろうけどね。
    誰がジュリアンを殺したのか、彼の虚栄心が、育ちが、環境が、愛が彼を殺したのか、
    そう考えもするが、どれも違うような気がする。
    いや、論じること自体が少しお門違いのような気がしてしまうのだ。
    彼はどうあれ、時代のを映す鏡だったのだろうな。
    しかしながら期待したような、題名の大きな意味がつかめなかったのが心残りか、
    「赤と白」と言う案もあがっていたって、笑ってしまった。
    この物語で結局こんなにぶーたれていたら「クレーブの奥方」なんてずっと読めないきがする、今日この頃。



  • 上巻に続き「どうやってこの話に収拾つけるんだろう」と読んでて気が気じゃなかった。
    最後ジュリヤンが地下牢でレナール夫人と再会し死を運命と受け入れる場面、そこに至る心理描写は圧巻。マチルドがジュリヤンの首を持って弔う場面が好き。マチルドはレディだけど、もののふでもある。

  • ジュリアン・ソレルはその野心と執念で貴族の令嬢を落とし、社会的な地位を手に入れ、成功者の仲間入りをしたかに思えましたが、敬愛するナポレオンの如く長くは続きません。彼はそこから転落し、短い生涯を終えます。彼の野心は強烈なコンプレックスに支えられていました。その強烈なコンプレックスは彼を高みへ押し上げると同時に、彼を死の淵まで追いやりました。変化の多い彼の短い人生は読んでいて面白い物です。

  • 前編のレーナル夫人との関係のあとに、
    後編ではマルチド・ド・ラ・モールとつきあいだすが、
    マルチドとの関係がようやくうまくいきそうな調子になってきたところに、
    別のルートから、レーナル夫人の手紙が二人を危機におとし、
    激昂した主人公ジュリアンはレーナル夫人をピストルで撃ってしまう。

    ジュリアンは捕まったが、レーナル夫人は死なず、
    逆にジュリアンと仲を深めていくー・・

    最後に、綺麗に終わりたかったのか、死ぬ描写がないのはちょっと驚いた。

    ラ・モール嬢を誘惑するために、わざとつれなくするという恋愛論が、当時は新鮮だったとか。

  • 1830年7月革命ごろのパリと地方都市を舞台にした恋愛小説
    よく見聞きするフランス産小説群でも初期のもので
    『ボヴァリー夫人』のような自覚的に時代を超えようとするのに対し
    色濃く作者の生きる景色に寝ているので
    現代世界異境の地では意味の取れないところも多い作品
    それでも当時の恋愛を題材に作者から見えている枠を存分にひろげている様が
    荒粗しく面白い
    普遍な女性像や人間の感情という捉え方でなく
    作者の位置と歪みが登場人物を極端に描いていても
    達すれば通ずることを感じさせる

  • 第二部から面白くなった。

  • 才と野心、自尊心に溢れた百姓出の若者の最後。

    最後の章、ジュリアン青年を、レーナル夫人やマチルドが思うようにいとおしく思ったよ。

  • 上巻までの流れで我が身を滅ぼしそうな雰囲気を存分に出していた主人公のジュリアン。やはりというかなんというか、予想通りに転落人生を送ることになります。こういう悲劇的な展開はフランス文学としてはある種のお家芸という印象です。

    序盤から終盤まで、とにかく一貫して各登場人物が自分の気持ちを語り尽くすというフランス文学王道の展開で、一度に読み進めるのは結構キツいです。それぞれが命を懸けてぶつけてくる想いを受け止めるには、読み手側にもそれなりの心構えが必要です。

    主人公はジュリアンなのですが、この作品はジュリアンを取り巻く二人の女性、ラモール嬢とレーナル夫人の心の揺らぎとジュリアンを巡る確執なくしては成立しません。その意味で、三人の主人公が舞台を転換させながら進む戯曲であるとも言えるでしょう。

    各登場人物がなぜ、このような行動を取るのか?なぜ、このような発言をするのか?なぜ、このような愛憎入り混じる人間関係になってしまうのか?
    このあたりは、21世紀の日本に生きる身としては理解しがたい部分があります。この作品を読んで、即「傑作だ」という感想も持てません。ただ、ナポレオンが生きた時代のフランスでは、こうした人生観を持ち、愛と恨みとの間で揺れながら生きた人たちがいたのだ、ということを知ることができるという意味で、この小説は今の時代に独特の存在感をもって生き残っているのだと思います。

    読みやすいとは言いませんが、当時の愛憎を知るための教養として、読んでみるのもいいかもしれません。

全79件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

スタンダール(本名アンリ―・ヘール)は、フランス革命からはじまるフランスの歴史的な激動時代を生き抜いた、フランスの代表的な作家。著書に「赤と黒」「パルムの僧院」「恋愛論」など。

「2016年 『ディズニープリンセス 「恋愛論」 Disney Princess Theory of Love』 で使われていた紹介文から引用しています。」

赤と黒(下) (新潮文庫)のその他の作品

赤と黒(下)(新潮文庫) Kindle版 赤と黒(下)(新潮文庫) スタンダール

スタンダールの作品

赤と黒(下) (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする