罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.79
  • (760)
  • (665)
  • (1059)
  • (86)
  • (29)
本棚登録 : 10625
感想 : 582
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (585ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102010211

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「少年少女世界名作全集」で読んだっきりとか、粗筋は知ってるけどでちゃんと読んだことないとか、自分の「死ぬまでに読まないとリスト」に載っている本が沢山あるのですが…そのなかの一つにやっと着手。

    ロシア文学を読む場合は、愛称と立場をある程度予測しておくと混乱しない。
    自己流ロシア名を覚える三原則。
     ①個人名+父称+苗字
     ②愛称や名前の縮小がある。ロジオン→ロージャ
     ③名前も苗字も、男性名と女性名がある。

    主人公一家。
     兄「ロジオン・ロマーヌイチ(ロマーンの息子)・ラスコーリニコフ(男性姓)」愛称ロージャ、
     妹「アヴドーチヤ・ロマーノヴナ(ロマーンの娘)・ラスコーリニコワ(女性姓)」、愛称ドゥーニャ
     母「プリーヘヤ・アレクサンドロブナ(アレクサンダーの娘)・ラスコーリニコワ(女性姓)」

    お互いの立場や年齢、関係性や親しさにより呼びかけが変わります。
     ロジオン・ロマーヌイチ→きちんとした呼びかけ
     ロージャ→愛称。親しい呼びかけ。
     ラスコーリニコフ→客観的な呼び方?作者は本文でこの名で書くことが多い。

    では登場人物も多いので、主人公一家以外の主要人物を書き出してみよう。

    マラメードフ一家
     セミョーン・ザハールイチ・マルメラードフ⇒飲んだくれ
     カテリーナ・イワーノヴナ・マルメラードワ⇒マルメラードフの妻。
     ソフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードワ (ソーニャ、ソーネチカ)⇒マルメラードフの娘。

    被害者姉妹
     アリョーナ・イワーノヴナ⇒高利貸しの老婆。
     リザヴェータ・イワーノヴナ⇒アリョーナの異母妹。

    警察関係
     ポルフィーリー・ペトローヴィチ⇒予審判事。

    友人知人など
     ドミートリィ・プロコーフィチ・ウラズミーヒン(通称ラズミーヒン)⇒ラスコーリニコフの大学時代の友人。

     アルカージイ・イワーノヴィチ・スヴィドリガイロフ⇒ドゥーニャが家庭教師として務めていた家の主人。私は彼の名前が憶えづらく、「ビーフストロガノフさん」と密かに呼んでいる(笑)

     ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン⇒ドゥーニャの婚約者。

    よしこれでばっちり、さあ始めよう(笑)。


    貧しい元大学生ラスコーリニコフは高利貸しの老婆、アリョーナ・イワーノヴナへの殺人計画を胸に秘めています。

    ラスコーリニコフは「世の中には”凡人”と”非凡人”がいて、非凡人は自らの良心が法律を超えるのではないか」「殺人が発覚するのは犯人自らの行動のため。信念があれば発覚などしない」とかなんとかいう理論を持っています。
    貧乏のどん底でありながら変に誇り高く、不穏な心境いあるラスコーリニコフは、たまたま耳にした「一つの微細な罪悪は百の善行に償われる」「選ばれた非凡人は、新たな世の中の成長のためなら、社会道徳を踏み外す権利を持つ」という討論を聴いたり、翌日の晩高利貸しのアリョーナは1人っきりになると知り、
    やはり高利貸しアリョーナを殺し溜め込んだ金品を善い行いに使うならその方が良いだろう、との考えが頭から離れません。

    そして翌日の晩。
    ラスコーリニコフは、アリョーナ・イワーノヴナを訪ね、彼女に向かい斧を振るいます。
    しかしたまたま早く帰ってきた義妹のリザヴェータも殺さざるを得なくなり、ラスコーリニコフの心は乱れます。

    独自の理論と良心を唱えた殺人を実行しながらも、ラスコーリニコフはこの殺人をもって「善行は犯罪に勝るんだから、高利貸しを殺して遺産を善行に使うことは善」という理論を進めようとはしません。奪った金を使うことも施すこともせず石の下にひっそり埋めます。
    そしてただ熱に浮かされ町をうろつき、知人と揉めて、さらには自分が犯人だと仄めかすかのような態度をとります。
    …読む前のイメージでは、毅然として殺人に向い、貧しいながらも自分ながらのプライドと論理は揺らがないかと思っていたのですが、実際読んでみたらかなり揺らぎまくりでした。

    さて、このころラスコーリニコフの妹のドゥーニャには縁談が持ち上がっています。
    ドゥーニャは、家政婦として勤めていた家の主人、アルカージイ・イワーノヴィチ・スヴィドリガイロフに言い寄られていたことで悪い噂を流されましたが、その誤解も解けて貞淑で賢い娘、として評価を挙げていたのです。

    そこに目を付けたのが、ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン。
    自分が貧しい身分から勤勉により地位向上してきたため、上流社会に参加しようとして、そのために貧しく評判がよく賢く、そして自分より立場が低い、一生自分に頭が当たらず自分を立てる娘と結婚しようとしたのです。
    …えーっといまでいう「モラハラ亭主」というか、封建社会の小説だとこういう人物はかなり多いな。。貧しい家の娘には断ったら一家ともに生きられないので、断るすべも無し。(しかしいまでも「うちの旦那がそのタイプ!」と答える奥さん衆は結構いるような気がするが(苦笑))

    ドゥーニャは、自分たちの母、プリーヘヤ・アレクサンドロブナと、共にラスコーリニコフを訪ねます。
    ラスコーリニコフには、学生仲間で同じく貧しいが面倒見のいいラズミーヒンをはじめとする友人知人がいて、彼らが集っているところに妹の求婚者、ルージンが現れます。
    ラスコーリニコフ達と、ルージンは、会ったとたんに激しく反発しあい、縁談は破断に向かいます。

    さて、街を彷徨うラスコーリニコフは、酔っぱらいのセミョーン・ザハールイチ・マルメラードフが馬車に轢かれて絶命する場所に居合わせます。
    このマルメラードフとは、ラスコーリニコフは殺人の前に出会っていたのです。
    貧困のどん底でも酒に負けて家族を顧みず、まだ若い娘のソーニャが娼婦になってまで家族を養おうとするその金さえも呑んでしまいます。
    マルメラードフの死に立ち合い、ソーニャとの邂逅により、彷徨っていたラスコーリニコフの精神は新たな光を見出したような状態に。

    …子供のころ「小学館世界名作全集」ではソーニャは「貧しい娘さん」だったが、元は「娼婦」…ってそりゃそうだよね。。
    この子供向けの名作全集で読んで覚えているのはソーニャの「あなたが汚した大地にキスを」で、道に跪くラスコーリニコフの挿絵。まあこの場面は後半だろう。

    さて、上巻終盤では、ラズミーヒンの遠縁である予審判事ポルフィーリー・ペトローヴィチと、ラスコーリニコフの心理戦第1弾。
    犯罪論、精神論を繰り広げて互いの手の内を探る二人。

    この殺人の顛末は、ラスコーリニコフの彷徨う精神の行き着く先は…

    ***
    とりあえずのまとめ。
    ロージャくん、そういうの鬱っていうんじゃないかい、とりあえず朝起きて飯食って働いて寝ろ!!とちょっと思った…。

    ペテルブルグの下級貧困者の生活は匂いたつ様相。
    自力ではどうにもならない生活を送るしかない人たちは、神への信心や自分の良心の在り方、お互いの支え合い(借金踏み倒し合い)などで、「御心のまま」に生きようとしています。

    ポルフィーリー・ペトローヴィチとの心理戦や、終盤に登場した思わせぶりな町人の存在は、面白いことが始まった!と続きへの期待が増しました。

    下巻。
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/410201022X

    • yamaitsuさん
      淳水堂さんこんにちは(^^)/

      私もやっと罪と罰に着手しました!登場人物の名前忘れたときは時々ここの淳水堂さんの人物紹介参照させてもら...
      淳水堂さんこんにちは(^^)/

      私もやっと罪と罰に着手しました!登場人物の名前忘れたときは時々ここの淳水堂さんの人物紹介参照させてもらいました。
      ありがとうございます!
      やっぱりある程度予備知識がないと、まず登場人物名で躓いちゃいますよね(-_-;)
      読み始めれば俄然面白いのですが・・・

      ロージャくん本当ウツすぎて、朝起きて顔洗って働きにいけ!と何度も思いました(笑)
      2019/07/31
  • 人名がややこしい。
    主人公の妹アヴドーチャ・ロマーノヴナ・ラスコーリニコフは、愛称の「ドゥーニャ」以外に「ドゥーネチカ」「アヴドーチャ・ロマーノヴナ」と呼ばれる。
    登場人物全員がこんな調子なので「この名前は誰?」と混乱し、名前に気を取られている間にストーリーを忘れてしまいがち……
    おすすめは、ネット検索などで人名対照表を準備して、確認しながら読むことですね。

  • 今年の新潮100冊②

    いきなり酔っぱらいに絡まれて 長々と身上話を読まされることになったときは どうしようかと思ったが、母からの手紙くらいからスルスル読めた。
    名前迷子にさえ 気をつければ、難解そうにみえてむしろ面白く読める。
    (急に名前が明かされたザミョートフが一体誰なのか確信がもてず、長いことページをいったり来たりした)

    ラスコーリニコフが老婆を殺したのは、彼なりに崇高な理由があったからかもしれないが、リザヴェータまで手にかけたのは ただの保身。
    罪を犯す前から苦しみに苛まれ、人並み以上の慈悲心をもつ彼は、立派な「凡人」。
    上巻のうちに自殺するんじゃないかと危ぶんでいたけれど、途中 いきなり生きる活力がみなぎりだして驚いた。
    純粋無垢なソーニャの力なのか。

    彼は最終的には病死とかしそう。
    リアル悪夢をみすぎだし、気を失いすぎ。
    考えていることや やることがいきなりバカになって、それに対して一人ツッコミしてたりして、かなり面白い人間なんだけど。

    そしてわたしは、知らず知らずナーバスになっているのか、妹ドゥーネチカの結婚話に特別 心惹かれた。
    「あのひとがわたしの人格を認めて、尊敬してくれるという確信がなかったら、わたしは結婚しない。
    あのひとを尊敬できるということが、確実に信じられなかったら、わたしは結婚しない」
    相手を尊敬できるかどうかって、その人との関係性の持続にかかわる かなり重要な感情だと思う。
    尊敬できるかは、信じる信じないではなく、今現在できるかできないかなので、ドゥーネチカは絶対にルージン氏と結婚しないほうがいい(笑)
    ルージン氏の言うことではなく、行動をみれば、彼がドゥーネチカを大事にしていないことは明白。
    妹の結婚をバッサリ反対する兄の愛に、なにやら感動した。
    ラズミーヒンの好感度も、急上昇した。
    彼女のためなら、彼はこれから何でもやるのでは?
    というか、実際にやってるし。
    こーいう人と結婚しなさい。

  • 下巻に纏めて投稿。

  • 【きっかけ】
    先輩から薦められたため、手に取った一冊。

    【感じたこと】
    今まで自分が読んできた本とはまるで性質の違うものだと読み始めてすぐに感じた(読書量が少ないこともあるが…)。一番の理由は、ストーリー展開は遅い代わりに、とんでもないくらいの密度で、登場人物の心理描写が綴られていることにあると思う。
    上巻を読んで、物語の事象自体は整理できるが、登場人物の言葉や思想にはまるで理解が追いつかない。にもかかわらず、なぜか日々この本を手に取った読み進めてしまうという不思議な本だった。
    無知な自分にはこの本を評価することはできないが、一番感じたことは、どこまで深く人間について考察すればこのようなものが作り上げられるのかということだった。

  • ドストエフスキーの後期五大作品のひとつ目の作品で、四十歳台半ばで書かれたらしい。言わずと知れた名作だけどこれまで漫画でしか読んだことがなかった。漫画ではさらっと流されているシーンにも、かける熱量が違う。迫力が違う。さすがドストエフスキーだと思った。

    主人公・元大学生ラスコーリニコフは極貧にあえぎ、強盗目的で質屋の老婆とその妹を殺す。彼は自分で作った理論のもとに自己を正当化する。人々は凡人と非凡人に分けられ、非凡な人はその非凡を為すために障害を取り除く権利を持つ、というものだ。その理論によればたとえ殺害を犯したとしてもそれは非凡な偉人にとって取るに足りない微細なものだということになる。だが冷徹な切れ者の主人公にも良心があり、事件の後に苛まれることになる。善悪のはざまで揺れ動く主人公の複雑な心理を読者はたどる。普段は冷徹だが、善行を施すときは人情家みたいにもなる主人公。他者に救いを与える一方で、自身も救いを求めているところが人間くさい。主人公の周りの人物も魅力的だが、なかでもおせっかいな友人のラズミーヒンが微笑ましい。下巻はさらに面白くなりそうで楽しみだ。

  • ロシアの文豪ドストエフスキー氏の代表作である。
    以前から一度読んでみたいと思っていて、この夏ようやく目標が達成できた。
    上巻の読みどころは、ラスコーリニコフが己の犯罪哲学についてポルフィーリイと議論を交わす場面である。
    「人類は《凡人》と《非凡人》に分けられる。選ばれた少数の非凡人は人類の進歩のために現行秩序を踏みこえる権利をもつ。すなわち、殺人が正当化される」
    老婆の部屋からの脱出を試みるシーンなどは、推理小説のような緊迫感があってとてもおもしろかった。
    あと特筆すべきはやはり、登場人物の呼称が次々に変わるところ。主人公ラスコーリニコフは、他にもロジオン・ロマーヌイチ、ロージャなどと呼ばれたりして、誰が誰やら分からなくなる。

    こういう小説を読んで、きちんとした感想文が書けるようになりたいものである。

  • 自分が生きてきた中で、一番、人を殺した時と近い気持ちになれた。
    登場人物の会話が、少し大袈裟で好き。
    下も楽しみです。

  • 【感想】
    カラマーゾフは読めなかったが罪と罰は読みやすかった。サンクトペテルブルクの広場や通りの名前が出てきて懐かしくなった。

    【あらすじ】
    第一部
    ラスコーリニコフは老婆アリョーナを訪れる。酒場でマルメラードフの話を聞く。翌朝母から手紙が届く。手紙には妹ドゥーニャが家庭教師をしていた先の家主スヴィドリガイロフのこと、ドゥーニャの結婚について書かれていた。外に出ると酔っ払った女と紳士の男がいた。妹の結婚には反対のラスコーリニコフ。飲食店でウォッカを飲むと、馬車の馬が叩き殺される嫌な夢を見る。
    センナヤ広場で老婆の妹リザヴェータが明日19時に外出することを知る。飲食店に行くと大学生と士官が話していた。愚かな老婆を殺し、お金を奪って未来ある若者のために使った方が良いと言う。ラスコーリニコフはそれを聞いて斧を持ち出し老婆を殺害。部屋に入ってきた妹も殺害。老婆を訪ねた客コッホと若い男に気づかれそうになるも上手く逃走した。

    第二部
    ラスコーリニコフは夜中2時に起きたが、また10時まで横になる。警察に家賃滞納の件で呼び出される。壁に隠した老婆の財布を外の石の下に隠す。友人ラズミーヒンのもとを訪れる。高熱でうなされて、家に帰ると何日も寝ていた。ラズミーヒンが手形の件で彼の代わりに色々やってくれたらしい。老婆殺害の事件でペンキ屋が疑われる。ラズミーヒンと医者ゾシーモフはラスコーリニコフの看病をする。妹の結婚相手ピョートルが訪ねてきた。ラスコーリニコフが外へ出ると女が橋から身投げしていた。マルメラードフが馬に轢かれて死亡。ラズミーヒンの引っ越し祝いに行く。家に帰ると母と妹がいた。

    第三部
    ラズミーヒンとゾシーモフは母と妹に、ラスコーリニコフは大丈夫だと言う。ドゥーニャとピョートルの結婚に反対するラスコーリニコフ。ピョートルからの手紙には8時に訪れると書いてあった。そこでラスコーリニコフと会わせるつもりのドゥーニャ。マルメラードフの娘ソーニャが訪れ、マルメラードフの葬式に出てほしいと言う。8時の食事にラズミーヒンも行く。ソーニャが家へ帰る途中、見知らぬ男がつけていた。老婆に預けた品の件でラスコーリニコフとラズミーヒンは予審判事ポルフィーリイのもとを訪れる。ポルフィーリイはラスコーリニコフの凡人と非凡人についての論文を読んだことを話す。そこには良心に従って血を許すということが書いてあった。ポルフィーリイはラスコーリニコフにカマをかける。
    ラスコーリニコフは約束の食事には行かず、家に帰ろうとすると町人がいて「おまえが人殺しだ」と言われる。その後スヴィドリガイロフが家に来た。

  • どうして人を殺めてはいけないのか、これを読めばわかる。

著者プロフィール

(Fyodor Mikhaylovich Dostoevskiy)1821年モスクワ生まれ。19世紀ロシアを代表する作家。主な長篇に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『未成年』があり、『白痴』とともに5大小説とされる。ほかに『地下室の手記』『死の家の記録』など。

「2010年 『白痴 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ドストエフスキーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×