脂肪の塊・テリエ館 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (132ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102014028

感想・レビュー・書評

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  • 二作品とも娼婦が題材。
    脂肪の塊はとても胸糞悪かった。周囲の人間の態度が酷すぎる。しかしこの手のことはよくあることなのだろう。戦後の様子や思想などが勉強になった。最後、ラ・マルセイエーズを聴きながら娼婦が泣くシーンはなんとも。
    聖体拝受という儀式は初めて知った。

  • 何の知識もなく、脂肪の塊を読んで驚愕した。人間のいやらしさが全開。こういうことはこれまで世界各地で様々な年代で起こっている。タイトルもすごい。脂肪の塊という渾名って、ちょっと日本語の感覚ではあんまりだと思うけど、フランス語だとニュアンスはどうなのだろう。タイトルから受ける印象がさらに物語の理不尽さややるせなさを強める。全然感じていることを言葉にできていないが、とにかく読んで良かった。

  • ★4.0
    どちらも主人公が娼婦で、全体的な構成は似ているものの、読後感は全くの正反対。「脂肪の塊」は人間の醜悪な部分をシニカルに描き、誰よりも尊厳を守っていたブール・ド・スイフに対する金持ち軍団の態度があまりに酷い。しかも、人数的に不利なことに加え、彼女に向ける明らかな蔑みが本当に居た堪れない。「テリエ館」は娼館を束ねる敏腕マダムと、そこで働く娼婦たちが陽気で個性的。司祭が彼女たちを秘蹟と謳う展開、ラストのマダムの粋な計らいも面白い。今から140年近く前の小説だけれど、舞台を見ているかのように瑞々しい。

  • 表題作の後味の悪いことといったら! 「イヤ古典」と呼びたい。脂肪の塊の意味も意外だったけれど、これほど簡潔にして嫌な結末の19世紀の小説は初めて読んだかもしれない。「テリエ館」のほうはもっと明るいしにぎやかだけれど、でも女将の弟の最後の振舞はショッキングだった。二話とも名作だと思うけれど、自分には娼婦の話をすいすい読む耐性がないようだ。

    青柳瑞穂の訳文は味わいのある自然な日本語でとてもよい。あまり翻訳文体のくせみたいなことは気にならないほうだけれど、青柳さんの文章はそのまま日本語で書いたような自然さで、読解に手間がかからず物語に集中できた。この人の訳した本をもっと読みたい。

  • 「目的は手段を選ばず」と尼が言う
    脂肪の塊は娼婦の渾名なのが意味深 やるせなきは 人の業

  • 表題の通り、プロシア兵から逃れるさなかの馬車と宿での、金持ちたちと娼婦の様子を描いた「脂肪の塊」と、娼婦たちによるマダムの姪の聖体拝受の見物とその前後のお祭り騒ぎを描いた「テリエ館」を収録。
    「脂肪の塊」では金持ちたちの醜悪さが、「テリエ館」では庶民のおかしさが描かれている。
    「脂肪の塊」では最後まで視点は金持ちたちにあるものの、たくみにブール·ド·スイフに共感させられ、しかし怒りは行きどころなく終わり、表しがたい読後感であった。
    「テリエ館」では多様かつ鮮やかな表現に、引っかかりは皆無でないものの読みながら娼婦たち同様気分が高揚して聖体拝受の儀式の様子をその絶好調で迎え、ひとつの賑やかで楽しいエピソードと読んだ。その裏に皮肉が隠されていたことには後になり気づいた。
    どちらも人間の「どうしようもなさ」を描いた作品であると感じさせられ、しかしそれ故につまらなさや冷たさのようなものを感じさせられることはなく、たくみな作品であるとは思うが、個人的には歯切れの悪い読後感が残る。

  • 1人の娼婦が旅に一緒に出て空腹を感じた一行に弁当を分ける。しかし宿で敵に彼女が目をつけられ敵と寝なければ一行が出発できない状況となった。最初は同情していたが、次第にどうやったら彼女が敵と寝る決心をつけれるか考え始める。彼らが先に進みたいという欲が勝ってしまった。彼女のせいで遅れることを憤りを覚えることもあるが、その人が嫌がって断固拒否しているのなら、対処を共に考えるべきなのではないかと思う。寝たことによって一行は出発できるようになったが彼女を他の人たちは無視し辱めを受けさせ、感謝しないことに疑問を感じた。

  • アウトレットでの待ち時間に読む。

    モーパッサンは学生時代に「女の一生」を読んで以来。内容は全く記憶にないが。

    こちらは中編が二つ。どちらも娼婦が物語の中心を成しているのは、フランスの当時の時代背景か。

    仕事の貴賤や身分(と言ってはいけないのだろうが)と精神の高貴さとの対比が読んでいてとても腹立たしいが、自分はどちらになるだろうと考えるとゾッとする気もする。

  • 特に「脂肪の塊」は面白かった。普仏戦争において劣勢極まるフランスの価値観の歪みを幾重にも絞るように重ねている。
    権威と恥、思想と欲、ナショナリズムとリアリズム、、、
    崇高な心を持つ身分の低いものに対し、権威ある側はひょいひょい飛び石を飛ぶがごとく時代の流れの上を風のように飛ぶ。
    時には流れに溺れるものを踏みつけながら

  • 3.5/415
    『人はそこまで卑劣になれるのか――。ブルジョア批判、女性の悲哀をテーマに描く文豪の地位を確立したデビュー作。

    プロシア軍を避けてルーアンの町を出た馬車に、“脂肪の塊”と渾名(あだな)される可憐な娼婦がいた。空腹な金持たちは彼女の弁当を分けてもらうが、敵の士官が彼女に目をつけて一行の出発を阻むと、彼女を犠牲にする陰謀を巡らす――ブルジョア批判、女性の哀れへの共感、人間の好色さを描いて絶賛を浴びた「脂肪の塊」。同じく、純粋で陽気な娼婦たちと彼らを巡る人間を活写した「テリエ館」。』(「新潮社」サイトより▽)
    https://www.shinchosha.co.jp/book/201402/


    著者:ギ・ド・モーパッサン (Guy de Maupassant)
    訳者:青柳 瑞穂
    出版社 ‏: ‎新潮社
    文庫 ‏: ‎132ページ

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著者プロフィール

フランス人。1850〜93年。母の友人フローベールにすすめられ文筆に転向。最初の成功作『脂肪の塊』(1880)で一躍新聞小説の寵児となる。短編約三○○、長編数作を書く。長編に『女の一生』(1883)『ベラミ』(1885)。短編小説『幻覚』や『恐怖』は戦慄させるほどの正確さで狂気や恐怖を描写し、この狂気の兆候が1892年発病となり、精神病院でなくなる。

「2004年 『モーパッサン残酷短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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