はつ恋 (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 2213
レビュー : 249
  • Amazon.co.jp ・本 (137ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102018040

感想・レビュー・書評

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  • 憂いと悲しみに覆われた鬱々となりそうな曇り空。物語にはそんな空気が漂っているようでした。
    16歳のウラジミールが、年上の令嬢ジナイーダへ恋心を募らせていく様相は、時に痛々しく時に苛烈でありました。焦らされ惑わされ、夢中になったはつ恋。
    しかし彼の前には越えられない父の背中が立ちはだかります。それでもウラジミールにとって、父は嫉妬や憎しみの対象ではなく、むしろ逆に一層大きな人物として映るのです。ウラジミールにはどうしても追いつけない背中。だからといって、彼が父を愛しているようにも見えず、その逆も然り。どこか冷めた距離感を感じる父子でした。
    私にとっては、ウラジミールの悲哀に満ちたはつ恋の結末よりも、実はこの父子の間に流れる因果みたいなものの方が気になりました。

  • 『洋子さんの本棚』で紹介されていて興味が沸いたシリーズ第二弾。ロシア文学は登場人物の名前が覚えられないという先入観があり、あまり古典的名作を読まずに来てしまったのだけれど、件の『洋子さんの本棚』では、この小説に「はつ恋」なんて甘酸っぱいタイトルつけたらダメですよね、みたいな(※ニュアンス)トークがされていて、俄然興味が沸き。

    読み終えてなるほど、確かに少年の初恋の話ではあるけれど、およそロマンチックでキレイな思い出とは言い難い、これむしろ「トラウマ」になるやつ。ツルゲーネフの自伝的要素があり、ツルゲーネフ自身は生涯独身を通したとのこと。つまりやっぱりこの初恋がトラウマとなり女性全般・・・というか恋愛することが怖くなったのでしょうか。

    16歳の少年ウラジーミルは別荘の隣に越してきた侯爵夫人(でも貧乏)の娘ジナイーダ21歳に恋をする。奔放で女王様気質のジナイーダには崇拝者が大勢おり(※案の定、名前は覚えられなかったので職業で覚えました。伯爵とか詩人とか医者とか軽騎兵とか)、少年もその仲間に加わって日々女王様の気まぐれ遊びに一喜一憂、完全に弄ばれているが彼女の魅力から離れられない。

    しかしそんな魔性の娘ジナイーダがついに誰かに恋していることを少年ウラジーミルは嗅ぎつける。その相手はなんと・・・彼自身のお父さん!このお父さんはもともと若くて美男子で、財産目当てで結婚したお母さんは10歳も年上という設定なので、まあモテたのでしょうけど。

    恋敵が父親とかそれだけでトラウマだろうに、しかしウラジミールは父を尊敬しているのでどちらかというと相手が父だったことより振られたこと自体のほうがショックのような印象を受けました。自分だったら圧倒的に親が若い子とつきあってることのほうにドン引きしそう。

    このように大変残念な理由で成就しなかった初恋のお話ではありますが、年上のお姉さんに恋した少年のときめきの表現などが非常に詩的で美しく、むしろそういう部分が名作として評価されてきたのかなと思いました。ああ、青春よ!

  • 圧倒的に魅力的な女性・ジナイーダに恋をする少年の甘酸っぱい胸の疼き、そして父の裏切り、父の裏切りを知ってもなお父への攻撃にも憎悪にも転じることのない心、そうしたものが鮮やかに描かれている。訳もとても読みやすい。強い感動があったわけでもわたしの人生にとって重要なものが描かれてると感じたわけでもないけれど、日本近代文学の起源的な位置にこういうものがあったんだなあと思うと色々考えさせられる。

  • オーディオブックで。

    いやー、ジナイーダ、魔性…!
    まあこれは惚れますよ。こんな女性が現れたら惚れます。そしてトラウマになって生涯独身になりますよ。

  • 19世紀に書かれた、ロシアが舞台の作品なのに、共感できる所が多々あった。恋に落ちると古今東西問わず似た感覚を覚えるのかな。訳が良いのもある。
    主人公の主観で物語が進むので、主人公以外の登場人物の行動の真意は語られず、その解釈は読者次第。
    作者ツルゲーネフの半自伝的性質を持つと後に知って、尚面白いと思った。

  • それが恋

    時代が後押しした、決して追い越すことのできない偉大な父

  • タイトル通り少年の初恋の話。少年の狂おしいほどの心情を表現しており、自分の青春時代を思い出させる。

    非常な現実を知ることで人は少しずつ大人になっていく。終盤に立て続けに人の死に直面することで、人間と愛の儚さを語っているように思った。

  • 谷崎潤一郎の作品「少年」との親和性を感じてびっくりしました。

    男性を翻弄する21歳の女性・ジナイーダと、彼女に初恋をする16歳のわたし=ヴォルデマール。

    ジナイーダという女性像が、谷崎の「光子」に通じて感じられました。女王様として男達の上に君臨し、遊びで人の情熱や気持ちをもてあそび、夢中にさせる美少女。光子と違うのは、ジナイーダはでも、初恋をするということ。ジナイーダの心は乱れ、激しく揺れる。ヴォルデマールの苦しい日々。破綻。そして再会。

    初恋を通して、青春が語られる小説なのかなと思います。「ああ、青春よ!青春よ!お前はどんなことにも、かかずらわない。…ひょっとすると、お前の魅力の秘密はつまるところ、一切を成しうることにあるのではなくて、一切を成しうると考えることができるところに、あるのかもしれない。ありあまる力を、ほかにどうにも使いようがないので、ただ風のままに吹き散らしてしまうところに、あるのかもしれない。…」

    世の文学青年?達にとって、女性とはそんなに支配的な、蔑みながらも魅了され、崇拝してしまうものなのか。というところがすごく疑問で、すごく面白いなと思います。

  • 全体的に歪んでいるというか、自分だったらこんな初恋トラウマになりそう。
    ジナイーダには小悪魔的な魅力がありますね。

  • 無垢な若者が海千山千の女性に翻弄される…古今東西問わず繰り返し描かれて来たストーリー。だが他の小説とは明らかに違うのは、その「憂愁」の深さ。若さと老いのコントラストは、読み手の年代によって度合いが変わってくるだろう。

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