オセロー (新潮文庫)

制作 : 福田 恒存 
  • 新潮社
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レビュー : 110
  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102020029

感想・レビュー・書評

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  • シェイクスピア四大悲劇のうちの1つ。
    ヴェニスの勇将、ムーア人のオセローは、類い稀な美貌のデズデモーナの愛を勝ち取る。デズデモーナは父の怒りを買いつつも、愛するオセローの元に走る。深く結ばれたはずの2人だが、オセローは、邪悪な部下、イアーゴーの奸計に墜ちる。イアーゴーは自分を副官に起用しないオセローを憎み、自分よりも高い地位にあるキャシオーを嫉んでいた。キャシオーを追い落とし、オセローを苦しめるために、彼が考え出した策は、デズデモーナが副官のキャシオーと姦通しているとオセローに信じ込ませることだった。イアーゴーの策略にはまったオセローは、破滅への道を転がり落ちてゆく。

    オセローはムーア人とされている。このムーア人というのは、黒人かアラブ人かで昔から議論があるようだが、黒人と解釈する方が優勢であるようである。オセローは非常に高潔かつ勇猛な人物として描かれる。北アフリカのいずれかの地の高貴な生まれであるようだが、奴隷の身に墜ちたり、諸国を流浪したり、艱難辛苦の後、現在の地位に上り詰めている。
    デズデモーナはヴェニスの貴族ブラバンショーの娘。容貌、精神ともに一点非の打ち所のない美しい女性である。父の元を訪れたオセローが語る、若き日の苦労話に胸を打たれ、彼を慕うようになる。父の許諾を得ぬまま、駆け落ち同然にオセローの妻となっている。
    副官キャシオーは、勇猛、高潔で思慮深いが、酒に弱いことが欠点。この弱点をイアーゴーにうまく利用され、知らぬうちに最初の躓きを味わうことになる。
    そして二枚舌のイアーゴー。邪悪な性格だが、オセローやキャシオーをはじめとして、周囲には誠実な人物と思われている。だがその実、ムーア人であるオセローを蔑み、副官となったキャシオーに激しく嫉妬している。

    シェイクスピア作品ではよくあることだが、この物語には原型があり、1566年にヴェニスで刊行されたツィンツィオの『百物語』第三篇第七話がそれとされている。巻末の訳者解題にその概略が記されている。

    高潔な心に注ぎ込まれた邪な疑惑が徐々に徐々に膨らんでいき、ついにはまったく罪のないものの命が奪われる。
    確かに悲劇ではあるのだが、賢い武人が邪悪な部下の本性を見抜けぬものなのか、いささかの疑問は残る。そのほか、イアーゴーがハンカチを手に入れる経緯や、有能な副官であるキャシオーがうかうかと酒を飲まされてしまうなど、ところどころ、この物語はどこかいびつで無理がある。イアーゴーが怖ろしい奸計を企てるのが、任官の恨みとムーア人に対する密かな軽蔑だけというのもいささか弱いようにも思う。
    あらすじを読む限りでは、むしろ原作の『百物語』の方がありそうな話である。旗手(イアーゴーにあたる人物)はデズデモーナに横恋慕しているが歯牙にも掛けられず、それが引き金になるというものである。

    おそらくはこの物語は、読まれるよりも演じられることで説得力を増す物語なのではないか。イアーゴーの華麗な語り、落ち度がまったくないデズデモーナの圧倒的な美、そうしたものを目の当たりにすることにより、観客の中で悲劇性が醸成されていくようにも思われる。語られていない部分、幾分不完全な箇所は、観客が物語に入り込むことで作り上げられていくようにも思われる。

    冒頭、デズデモーナの父ブラバンショーの強い怒りが印象的である。腹黒いイアーゴーはここですでに言葉巧みに父の怒りに火を注いでいる。
    「劫を経た黒羊があなたの白羊の上に乗りかかっている」
    と。
    黒と白が全般に非常に象徴的に現れるのだが、この物語の中では人種差別というほど強いニュアンスよりは、大きな障害を表しているようにも感じられる。もちろん、差別的な色合いは「ある」のだが。
    乗り越えがたい溝を乗り越えたはずの、完璧な理想の愛が崩れる。それもごく卑しいものの手によって。
    そこがこの物語の悲劇の最たるところだろう。

    • 淳水堂さん
      こんにちは!

      ムーア人とはおもにベルベル人を示す、と知った時に「オセローが”ベルベル人”だったらなんか印象違う!」と思った覚えが(笑)...
      こんにちは!

      ムーア人とはおもにベルベル人を示す、と知った時に「オセローが”ベルベル人”だったらなんか印象違う!」と思った覚えが(笑)

      筋にはかなり無理がありますが、
      やっぱりパワーがありますよね。
      ・登場人物にとってのイアーゴーは誠実(オネスト)だけれど、読者(視聴者)には邪な面しか見せないので、なぜあんなにみんな見抜けないのか?という根本がピンと来ず。
      ・話のテーマの一つが「嫉妬とは理由があってするのではなく、したいからする(byイアーゴーの妻)」とはいえ、オセローがあっさり疑惑に嵌りすぎで…。
      映画もみました。
      ローレンス・オリビエ版は、気品と自信があるのはいいけれど、だからこそ「自分の首を抱える蛮族と闘った」とか、妻の浮気を疑い卒倒したりすると笑っていいのか真面目なのかこっちが困るというか、
      あれだけ自信を醸し出す人物なら、換言なんかに惑わされなくても、とも思ってしまう。
      オーソン・ウェルズ版は、人間の駆け引きに疎く名誉を重んじる真の軍人、という人物がよく表れてたなーと思います。オセローの台詞ってかなり大袈裟で歯が浮きそうですがウェルズが言うと実直からくると思える。
      ここでのイアーゴー役者は、若い頃オーソンウェルズに言い寄った舞台俳優で映画撮影はこれ一本のみだそうで、お互いそういうつもりで演じてたのか?!という疑惑も(苦笑)
      2016/08/19
    • ぽんきちさん
      淳水堂さん

      ムーア人というと一般にはイスラム教徒を指すみたいですが、オセローはクリスチャンのようですよね。

      ほんと、何でそんなに...
      淳水堂さん

      ムーア人というと一般にはイスラム教徒を指すみたいですが、オセローはクリスチャンのようですよね。

      ほんと、何でそんなに憎いのか(→イアーゴー)&何でそんなに騙されるのか(→オセロー)が腑に落ちない感が残りました(^^;)。

      意外と当時の演劇は舞台と観客が近かったようなので、みんなお約束として「オセローが嫉妬に狂う劇」ということを知りつつ、例えばハンカチのところでは「ほら、今落としたよ!」と騒いだり、イアーゴーに「二枚舌!」と叫んだりしていたのかもw
      イアーゴーの妻、エミリアが夫を最後に糾弾しますが、そのときの彼女の台詞が観客の思いを代弁しているようにも感じました。

      映画版は見たことないのですが、機会があったら見てみたいと思います~。オーソン・ウェルズ版、お話を伺うとおもしろそうです。
      2016/08/20
  • シェイクスピア四大悲劇のひとつ「オセロー」。
    勇敢な将軍オセローが副官に任命されなかった不満うぃ抱く旗手イアーゴーの策略に堕ちる。イアーゴーのでっちあげたオセローの妻デズデモーナの不義を嫉妬したオセローは、愛する妻を絞め殺してしまう。

    「オセロー」については、四大悲劇のひとつということ以外の予備知識は殆ど無い状態で読んだが、戯曲に対する先入観がなくなったおかげか、特に読みにくさもわかりにくさも感じることなく愉しめた。

    オセローを欺くために、隠れさせたオセローに聞こえるように副官キャシオーとイアーゴーが話す場面などは特に面白かった。

    愛し合っているのに、何故一言相手に訊ねて疑いを晴らさないのか。
    こういうことは今も昔も変わらない。
    当事者でなければ、訊けばいいのに馬鹿だなあ、というところだが、それが出来ないからこそ悩むのだ。
    最も大切なひとだからこそ、最も言わなければいけないことが言えない。
    勇敢な将軍であっても、愛する妻の心が離れてしまっていることを直接妻の口から聞くのは恐ろしい。このまどろっこしいような愚かさが人間らしい。


    万策尽くれば、悲しみも終わる、事態の最悪なるを知れば、もはや悲しみはいかなる夢をも育みえざればなり。
    過ぎ去りし禍いを歎くは、新しき禍いを招く最上の方法なり。
    運命の抗しがたく、吾より奪わんとするとき、忍耐をもって対せば、その害もやがては空に帰せん。
    盗まれて微笑する者は盗賊より盗む者なり、益なき悲しみに身を委ねる者はおのれを盗む者なり。(p35)

    貧にして足る者は富める者(p102)

    深い言葉だ。

  • 嫉妬の恐ろしさは古今東西変わらない。

    新潮文庫のシェイクスピアって、表紙がオシャレで好き。並べて飾りたくなります。

    四代悲劇のひとつとありますが、なんか……オセローしっかりしろよ、と思ってしまう。真面目すぎるんじゃないかなあ。イアーゴーに興味を持った。人間臭い、こういう悪役いいわあ。口先ひとつでうまく世の中を渡って行ってしまうんだろうな。

  • 人間の「嫉妬」というものの力をみた。洋書も読んでみようと思う。

  • 大学の講義で紹介されたのがきっかけで「オセロー」を読みました。

    イアーゴーが恐ろしいです。彼の罠にはまったせいで愛する人の信頼や地位、果ては当人の人間性すらも失っていく周りの人々が哀れでなりませんでした。
    それにしてもイアーゴーの凄まじい詐欺師(といっていいものかわかりませんが)っぷりときたら…思わせぶりな態度を取って相手を自分の意のままに操る手腕がすごいです。特に圧倒させられたのは、イアーゴーがオセローに彼の妻デズデモーナの不義を申告する場面です。実際のところ、デスデモーナは一切の不義を働いていないのですが、イアーゴーは巧みに言葉を使って、(しかしオセローに直接自分の口から「デスデモーナはキャッシオーと姦通している」とは言わずに)オセローに二人が愛人関係であることを確信させるのが本当に見事です。オセローではなくても信じてしまうんじゃないかと思う名場面だと思いました。

  • 陳腐な嫉妬から、とめどない悲しみが生まれる。

  • 四大悲劇の1つ。嫉妬による悲劇。イアーゴという男は上官オセローや出世した友人に嫉妬します。酒癖の悪い友人をハメて失脚させる。彼は奥さん経由でオセローに頼んでもらうようすすめて、オセローにはあいつと奥さん不倫してますよ!と唆す。嫉妬したオセローは奥さんを殺害をした後、イアーゴに嵌められた事に気付き自殺。現代版イアーゴもうじゃうじゃいると思うんですよね…。言うなればフレネミーという奴です。敵のフリした味方。今に至るまで人間の本質は変わりませんね…。

  • イアーゴーのような輩は確実に存在する。
    ・「盗まれて微笑する者は盗賊より盗む者なり、益なき悲しみに身を委ぬる者はおのれを盗むものなり」

  • 初めてシェイクスピアを読んだ。戯曲のリズム感や言葉遣いに最初は戸惑い、なかなか読み進まなかったが、馴れると問題なし。面白かった!
    高い地位に立つと、様々な思惑を持った人が近づいてくるし、敵も多くなろう。どんなに高潔で武勇があるオセローといえども、イアーゴーの罠にあっさりとかかる。リーダーとは、周りの意見を取り入れ組織を動かしていかなければいけないが、その意見が正しいのか、別の見方があるのかを冷静に判断していかなければならないということだろう。

  • オセロー他、登場人物はイアーゴーに踊らされてるだけであまりそれぞれの自立した行動があまり見られない。同じ悲劇ならハムレットのほうがいろいろ盛り上がりがあったような気がする。解説が細かくて自分が読み取ったこと以外の情報がたくさんあり面白い。

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著者プロフィール

1564年イギリス・ストラットフォード生まれ。1592年頃にロンドン演劇界で劇作家として幸運なスタートを切る。およそ20年間劇作に専念し名をなす。1616年没。

「2018年 『新訳 お気に召すまま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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