ヴェニスの商人 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102020043

感想・レビュー・書評

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  • 今月の千年読書会の課題本となります。
    子どもの頃に読んだ覚えがありますが、学生時代はどうだったかな。。

    うろ覚えながらもイメージ的には、
    勧善懲悪なカタルシスのある喜劇、との感じでした。

    粗筋としては確かにその通りで、、

    当時は16世紀、大航海時代を謳歌する海洋国家“ヴェネツィア”、
    そこで海運業を営む一人の商人とその周辺の人々の物語となります。

    その義侠心あふれるヴェニスの商人“アントーニオー”が、
    手元不如意な友人“バサーニオー”の結婚資金?を用意するため、

    ユダヤ人の金貸し“シャイロック”から借金をすることに。
    その担保は、航海中の積荷と自分の“1ポンドの肉”。

    あえなく難破し、シャイロックから担保を求められることに、、
    実際に執行すればアントーニオーは死ぬしかない状態と、追い詰められます。

    そんなアントーニオーを、バサーニオーが求婚しているポーシャが、
    裁判官として変装し、法を曲げることなく法の解釈の厳格化で救います。

    のみならず、シャイロックにカウンターの痛撃をくらわせて大団円、
    となるのですが、、シャイロックというか“ユダヤ人”の扱いがなんとも酷い。

    今の時代にこれを発表したら、人種差別として炎上するでしょう、、
    それほどに、ユダヤ人に対する排他的・憎悪的な描写が色濃く。

    喜劇のシナリオとして描かれていることからも、
    これは、当時の時代の空気を投影している内容でもあるのでしょうが。

    一応、当時のヴェネツィアは信教の自由はあったはずなのですが、うーむ。

    シェイクスピアが執筆していたのは、イタリア・ルネサンスがまっただ中、
    寛容と多様性に彩られた、古代ギリシャ・ローマの文化が戻りつつあり、

    排他性に塗り込められた、暗黒と言われた中世から抜け出しつつあったはずですが、
    それはあくまで“キリスト教”の中での復興でしかなかったのでしょうか。

     “キリスト教徒は、非キリスト教徒に何をしても許される”

    そんな価値観が浮かび上がってくるなぁ、、とは穿ちすぎですかね。

    当時のユダヤ人に対する、キリスト教徒の感情を読み取ることもできますが、
    逆の立場であったならば、キリスト教徒はユダヤ人を“無条件”で助けるのだろうか、と。

    最低でもキリスト教徒への改宗を強要するのではないかな、なんて、
    シャイロックの娘の言動を見ながらも感じてしまいました。

    ん、物語の筋としては王道で、一発逆転としてのカタルシスも心地よい、
    そして、当時の空気をどこまで踏まえているのかはわかりませんが、、

    ユダヤ人の蔑まれようを、シャイロックの引き絞るような“言葉”として、
    さらりと描き出しているシェイクスピアはさすがだな、と。

    個人的には、文中では“惻隠の情”なんてフレーズを訳語として使うのなら、
    日本的な“三方一両損”的な結末の方が好みかなぁ、と徒然に。

    • だいさん
      >喜劇のシナリオとして

      私の考えで、よく調べないで書いています。
      これは、物語の構成(話の展開)とか、エンディングで分類されるのでは...
      >喜劇のシナリオとして

      私の考えで、よく調べないで書いています。
      これは、物語の構成(話の展開)とか、エンディングで分類されるのではないのでしょうか?
      2014/08/27
  • 『ユダヤ人は目なしだとでも言うのですかい?手がないとでも?臓腑なし、五体なし、感覚、感情、情熱なし。なんにもないとでも言うのですかい?同じ物を食ってはいないと言うのかね、同じ刃物では傷がつかない、同じ病気にはかからない、同じ薬では癒らない、同じ寒さ暑さを感じない、何もかもクリスト教徒とは違うとでも言うのかな?毒を飲まされても死なない、だから、ひどいめに合わされても、仕かえしはするな、そうおっしゃるんですかい?』

    このシャイロックの台詞は刺さった。ヴェニスの商人が一面では悲劇であると感じるのは、ひとえにこの台詞によるところが大きいだろう。これはあくまで喜劇として書かれたのだといくら言われても、やっぱり心の底では何かが引っかかっている、私。

    なんかさ。
    ユダヤ人を差別してる!酷い!シャイロックがかわいそう!
    っていうわけじゃないんだ。そう単純じゃない。
    そもそも、時代も国も違う物語の中では現在の私自身から見て受け入れ難い価値観がまかり通っているっていうことは、珍しいことではない。ああそう、当時はそういうもんだったのね、と一歩引いて受け止めることはできる。ちょっとばかり不快ではあっても。だから、差別が存在するということ自体は、私が感じた悲劇性の直接の原因ではないのだ。それはいうなれば、そういう「設定」だから。

    でも。
    それでも、その「設定」の中で、シェイクスピアはシャイロックにこの台詞を吐かせたわけでしょ。その時点で、私にとってシャイロックはユダヤ人という単なる記号ではなくて、一人の人間になったの。だから、その人格を持った一個の人間がこんな風に扱われるのが悲しいと感じるようになったのね。この台詞を与えられてしまったら最後、『ヴェニスの商人』は単純な喜劇にはなりえないと思うんだ、やっぱり。

    • lacuoさん
      私も、このユダヤ人差別っていうのは、ひどいなーって思いました。
      シャイクスピアの生きていた時代状況をよく知らない日本人が読んだら、単純に、...
      私も、このユダヤ人差別っていうのは、ひどいなーって思いました。
      シャイクスピアの生きていた時代状況をよく知らない日本人が読んだら、単純に、みんなそう思うんじゃない?

      今でも世界中で、こういうユダヤ人差別はあるし。
      キリスト教とユダヤ教の、根深い対立とか、そういうのって、部外者からは分かりにくいけど、かなりひどいものがあるんだろうな、とは思う。
      2015/01/29
  •  ユダヤ人高利貸しのシャイロックを悪役とした勧善懲悪ものの喜劇。
     大きな筋としてはバサーニオとポーシャの結婚と裁判の二つであるが、他にも細かな話の筋がいくつも挟まれ、それらがテンポ良く展開していく。本筋に絡んでくる人物が、話の長さの割にたくさんいる印象があったが、読んでいて混乱することはなかったことに驚いた。
     随所に皮肉が効いており、アントーニオが命を賭けて借りたお金が貧乏人のバサーニオには大金なのにポーシャには端金であったり、裁判で白熱して目の前に変装した妻がいるにも関わらずアントーニオを助けるためには妻の命を差し出してもいいとバサーニオが言ってしまったり、シャイロックがアントーニオを責めたのと同じ論理で負かされたりと、クスッと笑える場面が多かった。
     箱選びの時に、他の人が選ばないような箱をバサーニオが選んだことに、アントーニオからお金を借りていることが理由付けになっているのかなと思った。また、これは穿ち過ぎかもしれないが、ジェシカが駆け落ちする時の男装が裁判の男装の伏線になっているのかもしれないとも思った。
     ただ脚本だから仕方ない部分もあるが、裁判の時に助けてくれた人が実はポーシャとネリサの男装だったというどんでん返しが、台詞の役者名がそのままで上手く働いていなかった。これは実際の舞台ではどうなっているのか見たくなった。
     ヴェニスの商人と言えばしばしばシャイロックの扱いについて議論されることがあるが、私はこれは差別ではなく時代背景も相まって芝居の中でそういう悪役の役割だったというだけだと思う。アンパンマンのバイキンマンに同情する人が少ないのと同じで様式美ではないが、物語上そういう役回りの人が必要で、その時代では丁度良かったというだけだと思う。シェイクスピアはユダヤ人を見たことがなかったという話もあるし。まぁ私がユダヤ人だったらあまりいい気はしないのは確かだろうが。

  • ユダヤ人というのがどう見られていたのか、キリスト教徒との関係など、いろいろその時代の、そして今につながる宗教や民族の位置づけなどもヒントがあると思う。
    シェイクスピアを読んだのは、オセロー、ハムレットに続いて3作目だが、一番気楽に娯楽として読めた。
    裁判の様子など、頓智合戦で愉快。一方、法律をもって社会秩序を守ろうという市民の意識の高さがうかがい知れる。先人たちが築き上げてきた社会を、今の世界や日本は壊そうとしているのではないか。嘘をホントと言って押し通す。今の権力者の横暴さをシェイクスピアから感じる。これがこの本の読後感である。また再読したい。

  • まっさらな気持ちで読んだ感想が「古典BL?」だった。けどまだ腐ってないはず。


    既にお金を貸しに貸してる友人が、返すどころか「金持ちの女性に恋をして、プロポーズに行きたいから金を貸してくれ。うまくいったら返す」と言ってきた時点で私だったら友情を切ってると思います…。

    どれだけマゾなのか、いやむしろ友情の度合いもおかしい…まさか!?
    (だって別の友人も、あの献身ぶりはヤバい的なことをつぶやいてるし…)
    という発想が浮かんでからは、正直、女主人への求婚時のウィットに富んだやりとりや、後半のどんでん返しも、シャイロックの抗弁もあまり身に入らなかった。。。

    主人公はその後、友情を大事に胸に生きるのか、やさぐれるのか…。



  • 取り急ぎ。
    1ヶ月くらいかけて読了。やはり私は読むペースが遅いけど、これでいいやこれが私だから。

    数々の思惑が同時並行で展開されておもれ〜!になりました。痛快だなあ。

    ただ急に訳にナイチンゲールが出てきてびっくりした。さすがに16世紀にクリミア戦争はやってないよ…それなら百年戦争のジャンヌダルクならまだしも、いやいやそれはさすがに無いんじゃなかろうか。原文どうなってるんだろう、天使とでも書かれてるのかな、調べねば。

    いくらシェイクスピアと言えど彼も参考にしている物語があって、やはりすべての物語は過去のオマージュだなあ浪漫浪漫。

    やはり口語のホメロスから始まるし、物語というものは口語伝承が基盤だし、演劇で観たい。演劇観に行かせてください。
    ポーシャ、博識有能妻過ぎるんだけど最後の夫の尻への引きよう面白過ぎる。いや学も金も華もある彼女の夫は尻に引かれるべきだわ…

    久しぶりに喜劇を読んで楽しい気持ちで読み終えられた、次は何読もうかな〜
    物語に行くかエッセイというか論考に手を出すか…悩みどころ。

  • シェイクスピアの話の中では喜劇といわれているらしいが、そんなに面白いかはギモン。

  • 空いた時間で久々に再読。
    個人的にシェイクスピアが好きなので何を読んでも文句なしになってしまいますね。

    いつか本場のオペラで観たいものです!

  • 日本で言う一休さん的な話。
    そこに当時のユダヤ教とキリスト教の関係性も出てくるから勉強にもなる。

    読んでから映像で観るのも◎

  • 言葉が古いので難しく感じるところもありますが、逆にそういう表現が新鮮に感じたりもします。
    やはり裁判のシーンが絶品です。

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著者プロフィール

1564-1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ36編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている。

「2019年 『ヘンリー五世 シェイクスピア全集30巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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