トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)

制作 : Thomas Mann  高橋 義孝 
  • 新潮社
3.59
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本棚登録 : 727
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102022016

作品紹介・あらすじ

精神と肉体、芸術と生活の相対立する二つの力の間を彷徨しつつ、そのどちらにも完全に屈服することなく創作活動を続けていた初期のマンの代表作2編。憂鬱で思索型の一面と、優美で感性的な一面をもつ青年を主人公に、孤立ゆえの苦悩とそれに耐えつつ芸術性をたよりに生をささえてゆく姿を描いた『トニオ・クレーゲル』、死に魅惑されて没落する初老の芸術家の悲劇『ヴェニスに死す』。

感想・レビュー・書評

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  • 表題二篇が収録された本作。『ヴェニスに死す』が読みたくて手に取りました。
    初老の芸術家アシェンバハは旅行先のヴェネツィアに滞在していたところ、同じホテルにポーランド人家族が居るのに気付く。その家族のなかに美少年タージオ(タジュ)を見つけ、一目で心を奪われてしまう。アシェンバハは遠目から海辺で姉たちと遊ぶ少年をじっくりと眺める時間が至福となり、次第に少年の後ろを付けたり、視界に入ることに喜びを感じるようになる。

    アシェンバハの行動は傍から見ればストーカーに近く変質的です。自分の子どもほどの年齢の少年に熱を上げ、最後には自らを滅ぼす道を選びます。
    ではアシェンバハにとって少年に出会ったことは破滅の始まりだったのかと聞かれるとそうには思えません。アシェンバハは少年に“完璧な美”を見出すことになりました。それは芸術家にとっては本望であり、不思議と純愛に映ります。
    陶酔、耽美。そんな妖しげな世界観に引き込まれる作品でした。

  • トニオ・クレーゲル
    ヴェニスに死す

  • 一応小説であり分野としては教養小説に属する内容だけれど
    時代に即し
    近代化を迎えて宗教に頼らずいかに文章描かれたお話で芸術を表現するか
    日本でいえば
    明治時代に大衆娯楽読み物から離れて小説を確立したころのようすに
    似通ったころを感じさせる作品
    純文学とか言われると文章実験の高等かはともかく高踏なそれという印象だが
    このころの小説は純をつけずとも濁らず文学の味わいである

  • 表題のとおり2作品を収録。
    どちらの作品も共通しているのは、主人公は文芸家(詩人・作家)で、叶わぬ恋をしており、叶うところまでいかないところに美や陶酔を感じている。と、これだけ書くとなんだか進展がなさそうな感じがするが、実際進展がない。ストーリーとしてはあまりメリハリがないが、その一瞬一瞬の詩的表現が耽美的でどちらかといえばそこを楽しむ話だと思う。
    進展のない話だが、ここで下手に主人公がアクションを起こして失敗して・・・なんて展開になると逆に野暮な気もする。
    『ヴェニスに死す』では美少年をストーキングしたり、かなりアウトに近い行動もあるが、ギリシャ神話すらも持ち出して表現する己の恋心情の圧倒的詩的表現によりなんだかそのあたりぼんやりグレーにまでぼやかしている効果もあると思う。名声を得た作家からラストへの変化は本人にとっては本望なのだろうが、どことなく哀愁誘うのはなぜだろう。

  • 大作「魔の山」の前に、トーマス・マンの雰囲気をつかもうと思って読んだ。「ヴェニスに死す」は別の訳で読んだので割愛。「トニオ・クレーゲル」は魔の山を読む前に読むには丁度いい小説だと思う。多少、観念的で暗中模索気味な読書になるが、読み通せば感じるものはある。傷口が拡がるような感覚じは読み通して良かったと思えるものだし、再読しがいのある作品だと思う。三島的感性というよりも芸術や青春に対する憧れや愛着といったものを見つめている。途中少し集中が切れそうになったが読み終えてよかった。読み通す価値のある小説だと思う。

  • 祖母がこれは面白いからと熱烈に勧めて来たので、読んだ一冊。
    何とか読んだものの、当時の私には難し過ぎて何だか良く理解できなかったというのが正直なところ。
    「トニオ・クレーゲル」の方はほとんど記憶に残っていないです…
    そして、「ヴェニスに死す」は何て暗い話なんだろうと^^;
    ヴェニスは美しき水の都だと思ていたのですが、この本では臭く不吉な雰囲気の街として描かれていてちょっと驚いた記憶があります。
    読後、祖母に良く分からなかったと言ったら、2回3回と読み返せば理解が深まると言われたのですが、気力がなくてまだ再読はしてません。
    でも、いずれもう一度読みたい一冊であることは間違いないです。

  • 岩波文庫の実吉捷郎訳「ヴェニスに死す」はピンですが、
    角川文庫の浅井真男訳『ベニスに死す』は
    佐藤晃一訳「トリスタン」が並録です。

    だからお買い得って論法にならないのは勿論ですが。
    でもきっと、ビョルン・アンドレセンのジャケ買い
    したんだよなあ、きっと…
    今はこの、建石修志の新潮文庫の方が好き。

    とあるサナトリウムで美貌の夫人ガブリエーレに横恋慕した病弱な作家シュピネル氏が実業家の夫に凹ませられる…
    という、「『魔の山』のスピンオフ」、ハンスの知らない所でこんな三文芝居もあったのよ、と言っても通りそうな話です。

  • この小説は、トーマス・マン氏のの小説の中表題の他に「ヴェニスの死す」も収録されていますので、良かったです。

  • 前からうすうす感じてはいたけど、文士ってそうとうめんどくさい生き物だな?この二作品の主人公もそうだし、おそらくトーマス・マン自身もそうとう面倒な人間だったのだろうと想像する。
    理屈っぽいというか、何をするにも理由が必要というか。理屈ではないもの(美)に魅かれたアシェンバハの行く末は死!なんだか腑に落ちない。
    美しい水の都ヴェネツィアのイメージを、臭気がたちこめ不吉な影が忍び寄ってくる感じがぶち壊す。ヴェネツィアに憧れを抱いていて、まだ行ったことないけどこれから行くぞ!ってルンルンしている方は読む前にちょっと考えた方がいいかも。私は行く前に読むより、行った後に読むのをおすすめします。

  • 文体というかリズムが自分とは合わなかった感触。言い回しとかがやたら重厚で回りくどかった。それと主人公のナルシストの憂鬱症っぽい感じも駄目だった。

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著者プロフィール

【著者】トーマス・マン(Thomas Mann)1875年6月6日北ドイツのリューベクに生まれる。1894年ミュンヒェンに移り、1933年まで定住。1929年にはノーベル文学賞を授けられる。1933年国外講演旅行に出たまま帰国せず、スイスのチューリヒに居を構える。1936年亡命を宣言するとともに国籍を剥奪されたマンは38年アメリカに移る。戦後はふたたびヨーロッパ旅行を試みたが、1952年ふたたびチューリヒ近郊に定住、55年8月12日同地の病院で死去する。

「2016年 『トーマス・マン日記 1918-1921』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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