ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102027011

感想・レビュー・書評

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  • ソクラテスの冤罪をめぐるプラトンの書ですね。
    田中美知太郎先生の名訳です。池田美恵さんも哲学書の訳者として定評のある方です。
    言わずと知れた名著、哲学の基本の書ですから、じっくりと少しずつ読み進めました。

  • 生活経験の中から、次第に哲学が形成されていく。そのドラマを見よ。昭和43年刊行の新潮文庫版は66刷53万部。読み継がれる超ロングセラー。その否定的対話によって、既存の社会体制、道徳、宗教を盲信する保守的な人々から糾弾され、不当な死刑に処せられたソークラテースが、法廷で自己の所信を力強く表明する『ソークラテースの弁明』、脱獄のすすめを退け、国法を守り平常心のまま死を迎える彼が、法と正義について弟子と対話する『クリトーン』、毒薬をあおり刑死する彼の最期を語る『パイドーン』を収録。

  • 原題:Apologia Sokratous
    原題:Kriton
    原題:Phaidon

  • 哲学の祖であるソクラテス関連三話。法廷でソクラテスが弁明するところから判決までの話である「ソクラテスの弁明」、親友クリトンがソクラテスに亡命を訴える「クリトン」、死刑執行日に行われた議論の様子からソクラテスの最期までをパイドンが語る「パイドン」の構成でできている。
    議論と言っても白熱した議論というものではなく、ソクラテスの俺つえー的論理展開。特に「パイドン」で語られる論理の組み立て方は、流石哲学の祖と言われるだけあるなーと感心する。いくつかの前提条件(魂は神に近づくほどよい、とか神が存在することなど)についてはこの時代の人々にとっての揺らぎない「定義」なので証明はしていないが、それ以外の、例えば魂が不滅である等の抽象的事柄についてはこと細かに論理立てて説明している。なるほどなー、と思う。
    そしてそれ以上に、ソクラテスが議論を進めるうえで気を付けることが、自分の正しさを証明することが目的にならないようにすべき、と言っていたのも、あー人間って昔も今も変わらないんだなー、なんて感心した。今でもそういう人いっぱいいるからな。とにかく、小難しい哲学者の言うことなんて、と敬遠せずに読んでみる価値はあると思う一冊。

    でもこの時代ってまだ天動説真っただ中だし、もし地動説を知ったならどういう反応するのかなーとか、「定義」を揺るがしかねない事件に対する対応も見たくなったな。

  • 読みやすい訳。パイドンは入っていきにくかったが、なんとか読めた。クリトンは良いですね。

  • 再読した。ほんとうに興味深い本である。

    ソークラテースはパブリック・イメージで「いじられキャラ」であり、すでに告発されていたようなものであり、「不敬神」と「若者を堕落させる」罪というのは、まあ、付け足しにすぎない。かれは「神がかり」で、デルポイの神託によって「不知を自覚」して、アテナイ市民の「知ったかぶり」をあばいていくのであるが、こういう「生活の吟味」をうけるのを市民はいやがって、けっきょく死刑に決するのである。(三十人政権で、若者の「文革」があって、権威にたてつく危険思想に警戒感がつよい時代だったのである)

    「クリトーン」は常識人のクリトーンがソクラテースに脱走をすすめる話なのだが、ソークラテースは「国法」の声を代弁して、脱走をことわる。

    いちばん難解なのが「パイドーン」である。「想起説」、「反対の性質をもつ事物はたがいから生じる」が「反対の性質そのものは反対のものにならない」とか、「1が2になるのは2そのもの(真実在)により、接近や分割によって2になるのではない」とか、そういうアイデアで「魂の不死」が証明されていく。シミアースの「魂は調和である」とする反論については、魂は琴の調和のようなものではなく、魂は身体を制御するものであるという。ケベースの「魂が転生するからといって不死不滅の証明にはならない」という反論については、ソークラテースはアナクサゴラースなどの自然哲学を学んだことを話し、その「原因」の説明になやみ、真実在(イデア )の考えに至ったという。そして、地球説や地球中心説などにもとづいて、タルタロス(奈落)と死者の国のミュートスを述べ、魂は不滅であるから、この生だけでなく全時間にわたって「魂の世話」が大事であるという。最後にクリトーンが葬式のことを聞くのであるが、のこった者には「自分を大事にするように」といい、ソクラテスではなく、ソクラテスの身体を葬ると「正確にいわねばならない」と言い残す。ソクラテスの死に方は、決然というより、簡潔である。

  • 武井壮がおススメ

  • 初期プラトンまとめ読みの3番目。で、一応、文庫本で読めるのはこの程度だと思うので、最後のはず。

    「弁明」と「クリトーン」は相当昔に読んだものの再読。「パイドーン」は初めて。

    この3作で、ソクラテスの裁判から獄中、死刑執行までを一気に読める。

    おそらくは「弁明」は、多くの人が最初に読むプラトンであろう。ここに描かれるのは、自分の魂の声に忠実に生きた勇気の人ソクラテスである。多くの人は、その姿に感動するとともに、なぜ、こんな人を死刑にしてしまうのか、と政治の不条理に憤りを覚えるに違いない。

    が、「プロタゴラス」「ゴルギアス」を先に読んで、この「弁明」に到達した私には、なんとなくソクラテスが死刑になってしまった理由が分かるような気する。

    つまり、これらの対ソフィスト論争の本を読むと、世間の人々がソクラテスを憎んでただろうことが実感できるのだ。

    そういうわけで、ソクラテスにやり込められた側から、この「弁明」を読むとどう聞こえるだろうか、という読み方を図らずもしてしまった。

    そうすると、ソクラテスが何言っても聞く耳を持たないという心理状態が手に取るように分かる。

    ソクラテスは、魂の高貴な人間なのだが、同時代にあっては、その対話によって、理解よりも、多くの憎しみを生んでしまったのだ。

    となると、ソクラテス的対話の有効性が問題になってくる。

    コミュニケーション技術として、対話篇を読むときに、ソクラテスのやり方は、共感している人に対しては、良いのだが、反感を持っている人に対しては、屁理屈というか、詭弁以外の何ものでないことがわかる。これでは、相手をやり込める事はできても、共感は得られない。

    と、「弁明」「クリトーン」をコミュニケーションの悲劇として読んでみた。

    「パイドーン」は、物語としては、「弁明」「クリトーン」と連続しているのだが、作品としては、中期プラトンに属するもので、プラトン独自の思想がかなり入ってきている。

    私は、プラトンのイデア論、魂論は、あまり好きでないので、その辺に議論が行くと、「またかー」みたいな感じがしてしまう。が、ソクラテスの魂の不滅論に対して、弟子が、疑問を投げかけるあたりから、一瞬、「おっと」面白くなる。でも、最後は、やっぱり、いつものあの世での最後の審判の話になってしまう。

    感動的なのは、ソクラテスが、魂の不滅論を「証明」したあとで、「死ぬ前に自分と皆を元気づけるためにこうしたことを言ってみたのだ」といったことをを述べるところ。

    そして、最後に言い残す事としては、「特段ない。いつも言っている事だ。皆、自分を大切にしてくれ」

    毒薬を飲んだ後の本当の最後の言葉は、「クリトーン、アスクレーピオスに鶏を長添えしなければならない。忘れないで供えてくれ」

    この辺の言葉には、すごくリアリティを感じる。きっと、ほんとうにそんな調子だったんだろう。

    誰かの最期を描いた物語としては、ブッダの「最後の旅」に匹敵する。

  • 今となってはソクラテスの論理は詭弁に思われるところも多いし、弟子たちはソクラテスの論理に全く反論しない割にはその言っているところをあまり理解してはおらず、もやもやする部分もあるけれど、純粋に論理だけで世界を理解するという点において、興味深かった。

    そして、ソクラテスはなぜ死ななければならなかったのか、ということについて考えた。
    何がソクラテスを殺したのか。
    それはソクラテス自身が言っているように、中傷や嫉妬である。人は誰しも、安易な方向に流れたいとか、これくらいの悪いことなら許されるだろうとか、やましい部分をつつかれたくないとか、そういうことを思って生きているものだ。そういう気持ちが、正義や真理を説く者を敬遠し、あわよくば、と死に追いやる。自ら手を下すという方法ではなく、大衆の意志として。自分が殺したのではなく、誰かが殺したのだ、と。
    その傲慢さ、不誠実さが人間であり、それはソクラテスの生きた時代から遠く隔たった現代においても変わらない。たくさんの知識を身に付けても、人間の本質は変わることがない。

  • ソクラテスの生と死をめぐる三作を収録したもの。古典ギリシャ哲学の泰斗による充実した翻訳を味わうことができます。

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