黒猫・アッシャー家の崩壊 ポー短編集I ゴシック編 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102028049

作品紹介・あらすじ

詩人であり、批評家であり、推理小説の祖であり、SF、ホラー、ゴシック等々と広いジャンルに不滅の作品の数々を残したポー。だがその人生といえば、愛妻を病で失い、酒と麻薬に浸り、文学的評価も受けられず、極貧のまま、40歳で路上で生を終えた-。孤高の作家の昏い魂を写したかのようなゴシック色の強い作品を中心に、代表作中の代表作6編を新訳で収録。

感想・レビュー・書評

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  • 新訳読みやすかった。どの話もいつの間にか引き込まれる磁力がある。『引きこもり図書館』で『赤き死の仮面』の解説を、『だれもがポオを愛していた』で『アッシャー家の崩壊』の新解釈を読んだところだったので、面白さが倍増した。解説も良い。

  • あまりにも有名すぎて、読んだつもりになっている小説がいくつもある。ポーの『黒猫』もその一つ。新潮文庫で素敵な装丁の短編集が出ているので改めて読んでみた。

    本書は、ポーの短編の中からゴシック小説と分類される『黒猫』『赤き死の仮面』『ライジーア』『落とし穴と振り子』『ウィリアム・ウィルソン』『アッシャー家の崩壊』の6篇を収める。

    『黒猫』は言わずと知れたポーの代表作。常軌を逸した自分の悪行を淡々と述べる主人公の語り口、主人公をじっと見ている黒猫の存在がとにかく恐ろしい。

    『赤き死の仮面』は、疫病が蔓延する国の王が城の中に閉じこもり、贅の限りを尽くす話。
    国の外では人がどんどん死んでいくのに、見て見ぬふりをする国王とその周辺、じわじわと忍び寄る「赤き死の仮面」が不気味だが、風刺が効いていることもあり、他の短編と比べて物語として楽しむことができた。

    『ライジーア』は、「美女再生譚」と分類される短編。若くして妻を亡くした主人公が新たな妻を迎えるが、彼女もまた不意の病に倒れる。ポー自身も愛妻を早くに亡くしており、彼の妻に対する執念があふれ出ているように感じる。
    6篇の中で私にはこの話が一番恐ろしい。ちょうどこれを読んでいるとき自分の気持ちに余裕がなかったこともあり、この後半年近く続きを読むのをやめてしまった。

    『落とし穴と振り子』は、異端審問の精神的な拷問を微に入り細に入り描き出した話。どこまでが歴史上実際に行われた拷問なのかはわからないが、閉所恐怖症の私は、何も見えない密室に独りで閉じ込められる、と想像しただけで冷や汗が出る。ただ、他の短編と違い、主人公が正気なので読みやすかった。

    『ウィリアム・ウィルソン』は、自分そっくりな人間が目の前に現れ、自分の悪行のじゃまをする。
    ポーは酒と麻薬で乱れた生活を送っていたそうだが、「天の神様はこんな私を見ている。きっと罰を受けるに違いない」という気持ちをずっと持ち続けていたのかもしれない。

    『アッシャー家の崩壊』は、旧家の一族と代々住み続ける屋敷のアイデンティティが一体化し、建物の風化とともに一族の精神も破綻していく話。ラストシーンは大迫力で、映像が目に浮かぶようである。

    本書に掲載されている短編は、ポーの心の闇が描かせた傑作ぞろいだが、心身とも健康な時に読まないと、その闇に引きずり込まれる恐れがある。これから手に取る人は覚悟して読んでほしい。

  • 有名な作家さんですが、購入に至ったのは、ドラマ相棒で「黒猫」が取り上げられていたことがきっかけでした。
    きちんと読み込めたのは「黒猫」と「ウィリアム・ウィルソン」の2作品。
    けれど、後者のオチは落とし込めていなくて。わたしには難しい作品集だったかな…

  • コナン好きの友人からのオススメで読んでみた。
    さすが名作、面白かった。
    どれも一人称で話が進むのだが、ポー自身が体験したかのようなリアル感と緊張感が良かった。文章は幻想性があって、そこが怖いような美しいような不思議さを感じさせてくれた。
    細かく言えば★3.5くらい

  • まさにゴシックホラー。
    壮麗で神秘的な表現の中に、不気味でグロテスクな描写がたっぷりで、幻想の世界に浸れます。
    むかしに、子供向けの作品集で読んだことがあるはずだけど、このこねくり回したような独白調の語り口が何とも気持ち悪い。
    子どもが読む話じゃねーなと思う。
    非常に読みにくいです。
    が、独特な雰囲気と名作といわれる風格があります。

    解説まで読んで、なるほどねーとなる。
    最近のラノベでも引用されるのですから。

  • テレビでポーのミステリーについての番組を見てそそられて購入。

    正直言って難解。
    「ライジーア」という話は読めなかった。

    ただ他の作品については得体の知れない不気味な感じとか、なんとも言えない恐怖、
    それが難しくてもなんとなく伝わってくる。

    個人的には「落とし穴と振り子」が一番読みやすく面白かった。

  • 200ページくらいの短編集ながら、じっくりと時間をかけて読了。
    自分なりにそれなりには理解したつもりだが、別途研究書にも触れてみたい。

    どの話も存在感が濃い。
    以前に何かの解説か書評で”読後に記憶に残る短編はそれだけで優れている”(超意訳です)というような事が書かれていたが、つまりはそういう事なのだと思う。



    「黒猫」…怖い。ただただドス黒い’悪‘を感じるサスペンス。隠蔽された死体側からのサインで発覚するというケースの元祖だろうか?

    「赤き死の仮面」…疫病が静かに音もなく、それでいて確実に浸透し蔓延するさまを演劇的に表現した話、と理解。逃げおおせたつもりでも対策を打たず放蕩していればそりゃこうなる。

    「ライジーア」…ひたすらに妻・ライジーア姫がいかに完全無欠の女性だったかを延々と語ったのち、死別。その後に若く美しい後妻・ロウィーナ姫を迎えるが数ヶ月後にまた死亡してしまう。ロウィーナ姫が死後に何回か蘇生を繰り返すのだが、その度にライジーアの幻影が重なっていき最終的には髪の色も変わりライジーアになってしまう!という話。
    ホラーとして捉えればいいのだろうか…。

    「落とし穴と振り子」…フランス革命戦争期のスペイン、正統派に捕らえられた男が地下牢で受けた刑を描いたスリリングな作品。こんな大掛かりな振り子刃の拷問機械はポーの創作だろうか?金属音や軋みが聴こえてくるかのような緊迫感。しかも、刃から逃れたと思いきや深い奈落まで用意されている2段構え!最後の3行まで全く気が抜けない。

    「ウィリアム・ウィルソン」…実に不思議な話。’怪‘としか言いようがない。

    「アッシャー家の崩壊」…「度し難い」(p155)陰鬱さが纏わりついた文章。アッシャー家はさながら「魔の宮殿」(p171)であり、住人は屋敷に感化して精神を蝕まれてゆく。最終的には題通りに「崩壊」して幕を下ろす。


    余談だがヘンリー・フューズリの絵にも興味が湧いてきた。作品集は手に入るかな…。


    10刷
    2021.9.4

  • 本書の中では黒猫が一番良かった。ミステリーとホラーの要素があって面白い。

  • 昔読んだのは、誰の訳だったか。

    これも再読。新訳で読み易い。そして何度読んでも『黒猫』怖い。『ライジーア」『赤き死の仮面』『アッシャー家の崩壊』『ウィリアム・ウィルソン』…あれ?全部いいな。今更だけれど、やっぱり凄いな、エドガー・アラン・ポー。今に続く原型がここにあるな。

  • 海外作家が描く、怪奇幻想小説(ゴシック・ロマンス)は、昔から日本のそれよりもおぞましさが増して感じられる。眠れなくなるほど心を抉られた。
    黒い影に黒い猫。黒い血が流れたら、ねえ見つけてよと黒い瞳がギラギラし紅い舌がチロりと笑った。
    黒猫=魔女の象徴、という仮説がどこまで彫り込まれているか分からないが、起きている現象は魔女狩りそのもの。呪いであるとか怨念であるとか、そういう見えないものに脅かされながらも、結局私は目に見える人間の狂気だとか心理の方が、圧倒的に恐ろしいといつからか知っていた。
    だから言ったでしょう。幽霊なんかより、生きている人間の方がよっぽど恐いのよ。

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