二都物語 (上巻) (新潮文庫)

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感想 : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102030035

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻まとめての感想です。
    ※この新潮社文庫版では、特に下巻の裏表紙にある内容紹介は読まないことをお勧めします。思いっきりネタバレしておりますよ(笑)
    まあ上巻から「きっとこうなるんだろうなあ」とは想像していた通りではあるんですけどね。

    ***
    18年の牢獄生活から「よみがえった」ドクトル・マネット。
    半分狂人のようになっていたマネット老人に対して、マネットの家に仕えていたドファルジェ、マネットの妻子をイギリスに逃した銀行員のロリー、そしてマネットが囚われた後に生まれた娘のルーシーが献身を尽くす。
    マネット親子は、再度ロリーに連れられてイギリスに渡る。

    5年後、正気と元の生活を取り戻しつつあったドクトル・マネットとルーシーは、ある裁判の証人になっていた。
    国家反逆の罪に問われていたのはチャールズ・ダーニー。ダーニーを無罪放免にさせたのは、その場にいた酔いどれ弁護士シドニー・カートンだった。不思議な偶然でダーニーとカートンは瓜二つの容貌だったことを利用したのだ。

    そのころフランスのドファルジェとその妻は、身分社会への不満をもつ百姓たちの中心人物となっていた。
    ドファルジェが営む宿屋にはスパイやジャックたちが集まり(※百年戦争時「ジャックリーの反乱」から、「ジャックたち」は、「反乱農民たち」ということでよいでしょうか)、
    マダム・ドファルジェは縫物の網目に記憶する。狙う相手、スパイの特徴、彼女が編み込んだ記憶からは何も逃げられない。

    ドファルジェ夫妻は、百姓たちを率いて武器を渡しバスティーユ牢を襲撃し(※いわゆるフランス革命の元になった「バスティーユ襲撃」ですね)、かつてドクトル・マネットが18年閉じ込められていた塔へ押し入る。

    ダーニーは、実はフランス侯爵の血筋なのだが、貴族社会の傲慢さを嫌い、貴族の権利をすべて捨てて一市民としてイギリスに渡っていたのだ。
    ダーニーの叔父のテヴレモンド侯爵は、昂然として冷酷で、貴族の権利を当然のように行使していたが、ある夜侵入者により暗殺される。

    イギリスに戻ったダーニーは、マネット父娘と親しく交流し、ルーシーに求婚する。
    ドクトル・マネットの条件は「ダーニーのフランスでの本名「シャルル・ド・テヴレモンド」を明かさないこと」だった。

    カートンもルーシーへ深い愛情を抱いていたが、ダニーとルーシーの結婚を歓迎し、ダニーには友情を、ルーシーには誠意を誓う。
    カートンは本来は有能で高い精神力を持っていたが、彼を傷つける出来事により自堕落で“山犬”としての生活を送っていたのだ。
    「ねえミス・マネット。あなたの愛する生命をあなたから奪わせないためには、いつでも喜んで一身を犠牲にしても良いという人間がちゃんと一人はいることを思い出してください」
    ルーシーは、カートンの心の痛手を感じ取り、彼へ尊敬の念を持つ。

    その頃フランスでは革命への運動が高まり、貴族や一般市民への襲撃や投獄が盛んになり、ほぼ裁判なしにギロチンに送られていた。

    そんな中ダーニーにかつての公爵家の召使から助けを求める手紙を受け取り、単身フランスに渡る。
    しかしダーニーは、亡命貴族として捕えられ、牢に幽閉される。
    ダーニーを救うために妻のルーシー、義父のドクトル・マネット、銀行家のロリーは手を尽くす。
    裁判で一度は無罪となるダーニーだが、新たな告発により再度逮捕されてしまう。
    告発者はドファルジェ夫妻とドクトル・マネットの連名で、証拠として提出されたのはバスティーユ襲撃の際に見つけられた、捕囚生活のドクトル・マネットが書いたテヴレモンド公爵家の罪状だった。

    明かされるドクトル・マネットの捕囚の理由。
    自分でも忘れていた手記が、愛する義理の息子を死に追いやることになり絶望するドクトル・マネット。

    銀行家ロリーは、すでに78歳の独身者だが、人生最後の仕事として友人であるドクトル・マネットとダーニー夫妻を助けるために絶望的な尽力を付くしていた。「人間一生の終わりに近づくにつれて、なんだか段々人生の環の円周が出発点に向って近づいていていくような気がするんだね」(P275)

    そこにカートンが訪ねてくる。
    不利な状況を知ったカートンは、ダーニーとルーシーのためにある計画を施す。
    「やけっぱちの賭けでやけっぱちの勝負をやろう、勝ちは先生(※ドクトル・マネット)に取ってもらいましょう。負けはおれが引き受けた」(下巻P249)
    「人間の生命なんてものも、へたに使えばつまらんものですが、この場合はやりがいのある仕事ですよ。そうでもなければ生命なんていくら捨てたってなんでもない」(下巻P329)

    そして死刑を宣告された牢獄のダーニーの元にカートンが訪れる…
    ***

    時代背景などははっきり描かれないので、ルイ15世の時に~とか、バスティーユ襲撃~、といったキーワードから「フランス革命始まったのね」「ドクトルが幽閉されていたのはバスティーユだったのね」などと判断して行きました。
    時代の不穏さは、繰り返される「マダム・ドファルジェの編物」「ドクトル・マネットが幽閉時代の記憶を取り戻すときに見せる狂想」「零れ落ちる赤ワイン(犠牲者の血が連想される)」などで盛り立てられます。
    下巻中ごろのダーニーの裁判からは話も盛り上がり、登場人物の絡み合う過去の因縁、ドクトル・マネットの収監の理由などが明かされ、一気にラストへ進みます。
    そして物語の一番最後ではある人物たちの印象的な心情描写が書かれ、まさに読者が引き込まれてバシッと終わり!です。その望みが叶うように。

    • アテナイエさん
      ★5つですか! 楽しい読書をされたようでなんだか私まで嬉しくなりました。民衆リーダーのマダムが恐ろしく迫力あったことや、壊れたワイン樽から道...
      ★5つですか! 楽しい読書をされたようでなんだか私まで嬉しくなりました。民衆リーダーのマダムが恐ろしく迫力あったことや、壊れたワイン樽から道に流れ出たワインを、痩せた犬のような人々が啜って飲んでいる情景、バスティーユ監獄の血の臭い……まるで映画のようですね。しかもセリフまで映画や戯曲のようでカッコいいし。
      ディケンズって、わりとピンポイント集中で人間観察しながら物語を書くタイプだと思うのですが、この作品は、ロンドンとパリの荒廃した二都市を繋いでダイナミックに描いていて絵になります。わたしはこの作品がわりと好きで過去何回か読んだのですが……あまり覚えていない(笑)。ということで、淳水堂さんのレビューを拝見してうれし~。またまた読みたくなってしまいました(^^♪  
      2019/01/14
    • 淳水堂さん
      アテナイエさん

      コメントありがとうございます!

      ディケンズは「クリスマスキャロル」と(児童向けでは「オリバー・ツイスト」)しか読...
      アテナイエさん

      コメントありがとうございます!

      ディケンズは「クリスマスキャロル」と(児童向けでは「オリバー・ツイスト」)しか読んだことなかったので、久しぶりでした。

      マダム・ドファルジェの編物、零れるワインと血、などの表現はまさに目に浮かぶようですね。

      私が読んだのは新潮社版ですが、他の出版社で他の翻訳者さんのレビューを見ていると、またちょっと違うみたいですね。
      この新潮社版下巻の裏表紙では「身代わり~」と思いっきりネタバレ記載されてます…(^^ゞ

      あと、★の数はかなりざっくりです(^_^;)
       ★3 読んで無駄ではなかった
       ★4 まあ良かった
       ★5 良かった
      くらいの感覚。
      それ以下は載せてないので…(^_^;)
      2019/01/14
  • そのほうが、はるかにはるかにいいことだ

    悲しい、悲しい陽が昇った。だが、それにも増して限りなく悲しかったのは、いまその朝日が照らしだしているある光景--能力も立派なれば、心も美しい一人の男、それがただ正しい使い道を知らず、また自ら助け、自らの幸福をつかむこともできず、我とわが身をむしばむ病根のことはよく知りながら、今はもう寂しいあきらめの中で、みすみす朽ちゆくに任せているとでもいったこの男の姿だった。

    ロンドンでの彼には、もはや黄金の舗道を歩きたい気持ちもなければ、バラの褥に寝たい気も無かった。もし彼に、そうした高望みがあったならば、おそらく彼は成功しなかったであろう。彼はただ働くことだけを期待した。そしてそれを見つけ、やり、しかもできるだけ誠実に果たしてのけた。
    そこにこそ、成功の鍵はあったのだ。

    ぼくという人間はですね、子供のまま死んでしまったも同然なんです。
    ぼくの一生というのは、全部ことごとく、こと志と違ったことばかりなんです。

    それにしても、なんという人生の浪費だったことか。そしてまたことさらに本性を押さえ、ゆがめた生活だったことか。それを思うと悲しかった。

  • 登場人物の紹介や彼らを取り巻く背景が主であり、フランス革命という激動の時代がすぐそこまで近づいている不穏な雰囲気が今後の展開を期待させる。

  • 第一巻 よみがえった
     第一章 時代
     第二章 駅伝馬車
     第三章 夜の影
     第四章 準備
     第五章 酒店
     第六章 靴職人
    第二巻 黄金の糸
     第一章 五年後
     第二章 見世物
     第三章 失望
     第四章 祝い
     第五章 山犬
     第六章 何百という人々
     第七章 パリでの貴族
     第八章 田舎での貴族
     第九章 ゴルゴンの首
     第十章 二つの約束
     第十一章 双幅の一枚
     第十二章 粋人
     第十三章 不粋者
     第十四章 正直な商人
     第十五章 編物
     第十六章 編物は続く

    P40 くらいから面白くなってきた。
    映画の展開のように章ごとに話が流れ、繋がってゆく。ユーモアも効いている。
    第二巻第十三章「不粋者」の心意気が素敵だ。
    渾身の凝縮した時間を見せてもらえた思いがした。
    第十二章・第十三章の対比が面白かった。
    最後の2章で、マダム・ドファルジュをとても好きになった。
    なんて賢くて強くて堂々としているのだろう。
    「いや、どうもすばらしい女だ。なんという強い女、あっぱれな女、実に驚くべきすばらしい女だ!」
    という感嘆に、心から同意する。

  • 《上巻》登場人物が置かれた状況、社会の状況の描写が象徴的で、ゴヤの絵画を彷彿させる。
    《下巻》バスティーユの描写がまさに土埃と石畳を叩く蹄や靴底の音。レミ原作の淡々とした陳述のような、歴史の記憶とは違い、そこで生々しく人が動いているのを感じる。

  • フランス革命の前後の時期、イギリスはロンドンと、フランスはパリの二都市を舞台に進む物語。ひとりの女性を愛するふたりの男。18世紀のイギリスやフランスの大衆の様相を読み知ると、今よりも「世も末」感を感じます。すさみ方がすごい。イギリスは追剥だとか夜盗だとかが跋扈していて、また、ちょっとした罪でも、死刑になる裁判が大流行り。裁判で死刑判決が出るところを見に来る、地に飢えたような大衆も大勢いる。フランスは王侯貴族の権力が強く、民衆は虫けらのごとく扱われて、また、密告などにより罪のない人たちが厳しい監獄送りにされていたりする。

  • はじめのうちは読みにくくて、なかなか進まなかったが(文体に慣れるまで時間がかかるので)、中ごろからはすいすい読み進められた。ひとつの事件を表すのにも、筆者がしゃしゃり出てきて講釈を始めるのでもどかしかったが、まあ、そういう時代なのだから仕方がない。まだまだ、話は始まったばかり。筋立ての環境が整っただけ。下巻が楽しみ。

  • 表現がくどかった・・・
    よみにくい。下巻に期待。

  • 高校生の私には難しかった

  • 高校生の頃に読んで以来だけど、びっくりするほど忘れてる。まぁそれはそれで新鮮に楽しめるわけで。

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著者プロフィール

1800年代を代表するイギリスの小説家。おもに下層階級を主人公とし、弱者の視点で社会を諷刺した作品を発表した。新聞記者を務めながら小説を発表し、英国の国民作家とも評されている。『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』『大いなる遺産』などは、現在でも度々映画化されており、児童書の発行部数でも、複数の作品が世界的なランキングで上位にランクされている。

「2020年 『クリスマス・キャロル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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