夢判断 上 (新潮文庫 フ 7-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102038031

感想・レビュー・書評

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  •  汎性愛主義者pansexualistの異名で知られるフロイト。しかしフロイトの重要性は、なにも、すべての人間行動の根源には無意識へと抑圧された歪んだ性的欲求がある、と主張したことにあるのでは、ない。まあそういうふうに茶化して戯画化するのはまだいいとして(やりたくなるのは分かるよ)、小説なんかであたかもちょっと勉強したようなふりをして、それをフロイトの主たる主張のようにしたり顔で使うのはやめてほしいもんだ。フロイト面白いですよ、と言うとだいたい「あー、そういう趣味なの」って反応をされるが、不本意です。不本意。<br>
     たしかにこの著作『夢分析』で展開されたのも、性愛欲求とダイレクトにかかわる論である。それは否めない。夢の具体的な内容の裏には潜在内容なるものがあって、その内容はつまるところ夢を見た人間の願望充足にかかわる問題で、やはりセクシュアルだったり自分の厭ぁな側面を暴露するもので・・・。しかし重要なのは、潜在内容が何か、ではない。そうではなくて、「夢は歪曲される」---- 欲求の表象なるものはつねに歪曲を経るのだという主張であり、その欲求と表象と象徴との興味深く折れ曲がった関係性の指摘なのではないか。そこに着目したときに敷衍しうるのが、表象は欲望の対象を描こうとして描こうとして、追いかけて追いかけてなおいく度となくそれに失敗する----そのつど何かを取りこぼす、という考え方であるわけで。これを直接フロイトから導き出すのは困難だとしても、そうした欲望と表象の関係性を考える土台を、やはりこの奇人は提供していると思う。<br>
     そう、ある芸術家にある芸術作品を作らしめたその根本的性愛欲求を指摘することは、5分程度のスキャンダラスな娯楽を提供するかもしれないが、それ以上の何ものにもなりえない。多くの場合熟考に値するのは、その欲求が作品において、どのような手段をつうじて、創造的に、かつ鮮やかに、さししめされたのかということであろう。加えて言えば、「ある欲求がすべての根源として存在する」という信念は、すでに潰えさってしまったのだ。結局のところ、我々は歪曲された顕在内容そのものから出発するしかないのである。だからもう一度、読み直しましょうよ、フロイト----と自分へ呼びかける夜だったのです。

  • フロイトは雑にコンプレックスおじさんという理解をしていたが、ここまで詳細に過去の夢に関する研究をしていたとは驚き。

    上巻は様々な夢の事例からフロイトの理論の骨子を導き出す感じか。
    無意識の夢の思想から顕在する夢の内容。

  • 難しくて読むのに時間がかかる。特に1章が苦痛。2章以降は、実際の夢分析の事例が多く出てきて、面白かった。主張があり、それを説明するために夢分析の事例を出すような流れ。

    フロイトは「夢は無意味なものではなく、はっきりとした意味を持った心の所産だ」と主張している。そして、夢の意味を解き明かす方法もあるのだと。夢には意味があるということは、自分には感覚的にその通りと普通に受け入れられる。でも、この本が書かれた頃はそういった考えは普通ではなかったのかもしれない。神のお告げとか。

    実際の夢分析の事例が細かく書かれているのが面白い。また、「夢の材料には、前日の体験が用いられやすい」、「夢の検閲・歪曲」、「夢は願望充足」といった考え方。そういったものを考えていると、夢をよく見るようになるから不思議だ。

    下巻も読めば、より自分の夢を考えることができるようになるか?
    そこからより自分を理解できるようになるのかもしれない。少し危ない方向に進んでいるのかもと思いつつ、下巻を読もうと思う。

  • 下巻に譲る

  • リンデンさんを読んでフロイトさんを読むと、フロイトさんの天才さが骨身にしみる。
    脳をスキャンする計器なんてなかった時代にここまで脳の機能すなわち心に肉薄してるんだから。
    少なくとも、あと一回は読もう!

    Mahalo

  • 去年の夏は『精神分析入門(正・続)』を読破できたので、今年はこの本にあたることにした。
    この2書は独文学者高橋義孝訳で新潮文庫に収録されている。ということは専門書ではなく一般教養ということだ。少なくとも30年前くらいはそうだったはずである。
    講義録である前掲書に比べると本書の方がかなり手ごわい。ユングに比べればフロイトの文章はずっと論理的で読みやすくはあるのだが。
    「夢」の扱いが容易ではないのだ。神秘と科学。自然と人間。自己・自我・意識・無意識・・・
    あわてないで下巻に進もう。

  • とにかく読み終わるまでが大変だった。
    ただ、これを読めた。
    っていう達成感は凄いものがあった。
    ツール本のはずだけど、これは現代じゃ
    ぜんぜん通用しないんだろうな。

  • 上下どちらも持っています。
    夢から探る心の深遠。

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著者プロフィール

Sigmund Freud 一八五六―一九三九年。オーストリアの精神科医、精神分析の創始者。モラビア地方の小都市フライベルク(現・チェコのプシーボル)にユダヤ商人の長男として生まれる。幼いときにウィーンに移住、一八七四年ウィーン大学に入り、八一年医学の学位をとる。開業医としてヒステリー患者の治療を模索するなかで、従来の催眠術と決別する精神分析療法を確立。二十世紀思想に決定的ともいえる影響を与えた。

「2019年 『精神分析学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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