夢判断 下 (新潮文庫 フ 7-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102038048

作品紹介・あらすじ

付: 文献277-292p

感想・レビュー・書評

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  • 6月末から読んでいたから読み終わるのに4ヶ月もかかってしまった。

    まず、最終章の「夢事象の心理学」という理論編を読んでから、上巻のはじめに戻り順次読んでいった。わたしのアタマが悪いのだから仕方がないが、なかなか読み進まなかった。とくに、下巻356ページから381ページの「E 第一次および第二次過程―抑圧」は書いてあることがさっぱり頭に入らず10回位読み返した。それでも、「わかった!」とはならないのだから、もうどうしようもない。

    それに、本文中に出てくる夢の解釈なんてフロイトさんの無意識が働いているのだからまぁ仕方がないか。わたしの無意識とフロイトさんの無意識がうまくシンクロしないとフロイトさんが言わんとされていることなんかわかんないんだろうなと勝手に思っている。

    それでも、読んでよかったとは思う。ちょうど、同時に読んだ「ねじまき鳥クロニクル」にも、さまざまの夢が出てくるし、この二冊はどこかでつながっているのじゃないかと感じた。

    フロイトさんの説では、夢は寝ている間に作られるものではないらしい。日中から無意識が働いて夢作業をやっているのだそうだ。そして、睡眠によって意識が後退したり、意識が戻ろうとするその一瞬に夢を見るもののようである。まぁ、夢は夜ひらく。お昼寝すれば昼にも開く。

    あと、精神分析でよく出てくる「退行」という言葉の意味も「逆行」と呼んだ方がいいような意味で使われていたのが印象的だった。「退行」といっても、最近、風俗嬢のお姉さんから聞いた赤ちゃんプレイみたいなものだけではないようである。

    Mahalo

  • 精神分析の創始者フロイトは、人間の心の大部分は無意識である、とし、日常生活において抑圧を受け、無意識界におしこめられた欲求が、錯誤行為あるいは夢として現われる、と説く。本書においてフロイトは、人間心理の根源に性愛衝動をおき、夢における象徴的表現、夢における知的業績、夢の中の情動、願望充足について、などを論じ、人間の深層心理と夢の関係を興味深く展開する。

  • 心というものを考える対象として取り戻したフロイト。彼の夢に対する執念というか探究心、その情熱があったからこそ、心というものが問題にされたと言っていいのかもしれない。心が治療できるという考えをもって心に臨んだことで、心というものを考えることを可能にした。
    夢とは何か。フロイト以前は身体的に生じる考えるに値しないくだらないもの、神的で触れてはならない禁忌とされていた。そうやって捨て置かれてしまった夢を、心、とりわけ無意識の思想を取り込むことで、考えられるように拾い上げた。夢は、満たされなかった願望を、近日の記憶を契機になるべく自身の道徳に沿うように改変し、満たされるように情動と生活で築き上げられた象徴を組み合わされて実現される。とするならば、夢の理論から心というものの正体が知ることができる。
    種々の非難・誹謗があるが、彼のこの業績のところどころに現れるものに、今後の療法につながるヒントがたくさんつめられている。一見すると願望が満たされていないように見えるが、必ずどこか別のところで願望が満たされているという点、無意識を言語でコントロールすることで解消を目指すという点、彼が拓いた道は確かに次世代に引き継がれた。
    それにしても、彼の夢理論のきっかけになった夢の歪曲や願望充足であるが、彼はこれを考えているときにこう考えなかったのだろうか。歪曲させたり、満たされてないと感じている意識ではない無意識は、はたして夢を見たり、夢が歪曲されたりするのだろうかと。自身の夢が歪曲されているとどうしてわかったのだろうか。分析している自身が無意識のうちに歪曲されたり、夢の移動の結果だとはどうして考えなかったのだろうか。
    考えたらきりがないに違いない。治療者として、科学者としてその声に耳をふさがなければならなかったはずだ。
    だから、彼のこの理論は決して決めつけることなく、その限界と、心という広大な未知の領域に対する恐れというのを決して忘れていない。心の構造にしても、機械的にとらえられる部分だけを、と言っていたりことば選びにかなり慎重になって議論を進めている。この限界を超えて「自己」というところまで彼の道が広がるのは、ユングを待たなければならない。
    ただ、起きたことに対しては、いくらでも理由をくっつけることができる。どうとでも言える。物語とおんなじだ。
    そういう点で、あらゆる願望を幼児期のことに結びつけるということが、正しいのか正しくないのか、知ることはできない。しかし、フロイトはこれを信じたのだ。フロイトが自分と袂を分かたせるほど排他的であるのは、まさに、自分が信じたものに従って実践したからだと思う。
    正しいのか、正しくないのかは知ることはできないにしても、批判というものをすることはできる。仮に幼児期の満たされない願望があるとして、それがなぜ、他でもないこの一夜の夢と成り得たのか。今ひとが紛れもなく夢をみるというこのことが、無意識の名の下で消し去られている。夢の解明がいつの間にか無意識の構造にすり替わり、夢はその一手段となっている。何かを選択して語るということには無意識が反映されている、だから夢を語るそこには無意識の働きが見える、そのように言っていたが苦しい。それならば、夢でなくてもいいではないか。これが、心理学者フロイトが、この夢をみるという事実はどのようなものか考える科学者であって、夢をみるという事実に驚く詩人や哲学者とは大きく異なる存在である。

  •  上巻では夢について中心的に論じられていたが、下巻の後半では意識、前意識、無意識についての論が繰り広げられていく。示唆に富んだ記述が多く、何度読んでも読みすぎるということは無いのではないか、と思えるほどの広がりと深まりのある内容だった。もっともっと勉強と経験を積んでから読み返したい、読み続けたい一冊。

  • 最終章で急に密度が濃くなった。大学の講義でさんざ聞いて概要だけは把握していた無意識にまつわる事柄を、議論のなかでとらえられたのがよかった、これが本を読むということだ、と思った。夢分析に際して紹介される夢の表現方法みたいなものはそのまんま小説や映画の話になるのだなと思った。

  • 105円購入2011-04-09

  • 世の中には3種類の人間がいる。①「夢判断」を読んでいない人間。 ②「夢判断」を悪戦苦闘しながら読んでいる最中の人間。③そしてその闘いに勝利し読了した人間。
    上下卷800頁、ほぼ1か月かかったが、上述のように威張りたくなるほど読後は充実する。およそ古典とよばれるものにはそのような山岳踏破のマゾヒズム的快感がある。
    本書は1900年の初版以来8回も改定が行われ、そのたびに行儀の悪い本になっているところがまた難読の一因であるが、そこがまたフロイトの考究の深さ、広さ、執拗さを実感させ圧倒させられるのである。まずはこのような思索者の姿勢を学ぶだけでも十二分なインパクトがある。
    夢に徹底的にこだわり続けながらも、目的はそこを契機にした無意識を明らかにし、心の装置を明らかにしてゆく最終章は、だから感動的である。
    すべてはここから始まったのだ。 

  •  2009.2.27-(28)-3.11.

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著者プロフィール

Sigmund Freud 一八五六―一九三九年。オーストリアの精神科医、精神分析の創始者。モラビア地方の小都市フライベルク(現・チェコのプシーボル)にユダヤ商人の長男として生まれる。幼いときにウィーンに移住、一八七四年ウィーン大学に入り、八一年医学の学位をとる。開業医としてヒステリー患者の治療を模索するなかで、従来の催眠術と決別する精神分析療法を確立。二十世紀思想に決定的ともいえる影響を与えた。

「2019年 『精神分析学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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