精神分析入門 (上巻) (新潮文庫)

著者 :
制作 : 高橋 義孝  下坂 幸三 
  • 新潮社
3.28
  • (28)
  • (45)
  • (173)
  • (12)
  • (7)
本棚登録 : 1056
レビュー : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (547ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102038055

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • フロイト精神分析の概要を、当のフロイト自身が、自身のフォロワーたち(学者ではない一般の人)を相手に講義をした記録です。

    わたしはフロイト精神分析のエディプス・コンプレクスや夢分析のいくつかのエッセンスを、ほかの本を経由して知りました。そのころのフロイトという人に対する印象は、「おもしろいアイデアを思いついた、ちょっと電波系のおじさん」というものでした。

    本書と『夢分析』(新潮文庫)を読んだいま、フロイトという人に対する印象は大きく変わりました。それは「人間ってそもそもなんなんだ?ということを、誰よりも、とことんまで考え抜いた、それでもやっぱり電波きてるおじさん」というものです。

    この上巻では、大きく「錯誤行為(主に言い間違い)」、「夢」、「神経症」の3つの現象について、著者なりの解釈が展開されます。どうにも科学的(再現性や反証可能性がある)とは言い難いですが、縦横無尽の知識とともに、どこまでもどこまでも話が広がっていきます。下巻は主にそのまとめです。

    そもそも本書で取り上げられている錯誤行為、夢、あるいは強迫神経症の反復行為にしても、普通に考えればどれも人の一生において些末な、残りカスみたいなものだと思えます。それでもフロイトは、その残りカスの、さらにそのチマチマした細部のエピソードを取っ掛かりにして、偏執的なまでに「人間」を追及していく。「人間について考えるとはこういうことだ!」というようなテンションに読み手は圧倒されてしまう。

    申し上げた通り、いまでもわたしはフロイト精神分析を「電波系」だと思っています。しかしフロイトの「人間」に対する真摯な姿勢、まなざしの偉大さには、ただ絶句するのみです。
    この講義は第一次世界大戦の最中に、ウィーン大学で土曜の夜7時からまったりと進められたようです。10人前後の出席者をうらやむばかりです。

  • 表面には出てこない「本当の欲求」を知る方法。
    精神分析学の創始者フロイトが第一次世界大戦中に
    ウィーン大学で行った講義内容をまとめたもの。

    フロイトの精神分析論には、次の3つの基本的な要素がある。
    1.人間の心には、無意識的な心の働きがある。
    2.抵抗と抑圧が大きな影響を及ぼす。
    3.性とエディプスコンプレックスが重要である。

    人間の心理は、表面にあらわれたことだけでは判断できない。
    その奥に潜む願望や欲求を探り出したとき、初めてその人の本当の姿が見えてくる。

  • 『聴講者のみなさん、私は、あなた方一人ひとりが精神分析について書物を読んだり人づてに聞いたりなさって、どれほどのことをすでに知っておられるか、それは存じません。しかし「精神分析入門」という講義題目を掲げたのですから、あなた方を、精神分析についてはなんの知識ももたず、第一歩からの手引を必要とする方々とみなすことにします』

    このような書き出しで始まる『精神分析入門 上 下』は、『精神分析入門』と『精神分析入門(続)』の2つから成ります。

    『精神分析入門』は、フロイトがウィーン大学医学部精神科の講堂で全学部からの雑多な聴講者を前にして行なった講義の講義録です。
    この講義は、1915-1916年の冬学期と1916-1917年の冬学期に行なわれました。
    当時のフロイトの年齢は60歳前後です。
    時代は第一次世界大戦の真っ最中です。

    『精神分析入門(続)』は、それから15年後の1932年に、その講義の体裁を踏襲した形で書かれたもので、実際の講義録ではありません。
    1932年は、ドイツでヒトラーが首相に就任する前年です。

    『精神分析入門』は、3つの部分から成ります。

    1つめは、「錯誤行為」です。

    言い間違い、記憶違い、書き間違い、物忘れ、思い違いなどの、日常生活で発生する些細な間違い行為を分析します。ここでは、無意識、精神力動論、意識と無意識の干渉、自由連想法、エディプスコンプレクス、去勢コンプレクス、幼児性欲など、精神分析の基礎概念を導入します。

    2つめは、「夢」です。

    顕在夢、夢の潜在思想、夢の作業、夢の検閲、夢の解釈、圧縮、移動、夢の太古的性格、退行、願望充足、象徴表現など、夢の分析を論じながら、精神分析概念のさらなる展開と詳細な説明が続きます。

    3つめは、「神経症総論」です。

    ここは精神分析理論の本丸です。

    固着、退行、症状の意味、治療の公式、抵抗、抑圧、前意識、サディズム、マゾヒズム、性的倒錯、幼児の多形倒錯、幼児の性探求、リビドー、性的発展段階論、口唇期、肛門期、男根期、性器期、去勢不安、ペニス羨望、昇華、神経症病因論、症状形成のメカニズム、快感原則、現実原則、疾病利得、不安、自体愛、ナルシズム、感情転移・・・
    などなど、精神分析の重要概念が、次々と出てきます。


    『精神分析入門(続)』は、大きく分けて2つの部分に分かれます。

    1つめは、「自我心理学」についてです。

    『精神分析入門』では、深層心理学としての精神分析に力点が置かれていましたが、続編の方では、自我心理学としての精神分析に力点が置かれます。

    自我、超自我、エス、意識、前意識、無意識などの、心の構造論。
    生の欲動、死の欲動、反復強迫、サディズムとマゾヒズムなどの、心の欲動論。
    不安、恐怖症、躁鬱病、妄想などの、自我心理学的観点からの分析。

    2つめは、他の分野との関係や世界観についてです。

    テレパシー、女性論、教育、科学、宗教など、周辺領域と精神分析との関係を論じます。


    『精神分析入門 上 下』は、フロイト自身による精神分析理論の概説であり、入門と銘打っているものの、決して易しい本ではありません。神経症論などは、相当に難しいです。しかしそれでも、精神分析に多少なりとも本気で関心のある人にとっては、読んで損のない本だと思います。

    なによりもフロイト自身による、雑多な現象からの概念の切り出し、各概念の関連付けの仕方、その概念の操作、論理の組み立て方をトレースして、天才の思考過程を直接学ぶことができます。

    また、自己保存本能と種族保存本能の関係、個体発生と系統発生の関係など、精神分析の根底に横たわっている生物進化論的発想を、直接知ることができます。

  • なんとなく難しいイメージがあったのだけれど、
    タイトルに「入門」と書いてある通り、
    大学での講義をもとにしてあるのでわりかし読みやすい。

    「錯誤行為」
    まず気付くことは、
    フロイトは非常に科学的な人間であるということ。

    反証例をことあるごとに提示し、
    それをひとつひとつ検証していくのは、
    ある側面においてはくどくもあるのだけれど、
    科学者としては正しい姿勢なのだろうと思う。

    有名な「無意識」「欲動」というワードは、
    本書の冒頭ですでに登場している。

    精神分析には一般解はない、
    ということを肝に命じておかなければなぁ。


    「夢」
    夢は眠りを妨げる、
    潜在思想(無意識)の活動を和らげている、
    という解釈は新鮮。

    人生の1/4~1/3を占める、
    眠っている時間について熟考することは、
    目覚めている時には決して顕在化しない、
    無意識を探るうえでの大きなヒントになるのだろう。

    わたしが何の気なしに夢の日記を綴るのも、
    こういう直感によるところが大きいのかもわからない。

    フロイトの論理的な推理は、
    プラトンの描くソクラテスを彷彿とさせる。

    対話的な語り口も似ている。
    とても面白い推理小説を読んでいるようでもある。


    「神経症総論」
    夢の分析は神経症の分析にまで広げられる。

    「外傷(トラウマ)」「抑圧」「抵抗」といった、
    概念の説明はこの部分になる。

    幼児期の記憶がほとんどないのは、
    こういった無意識的な操作が行われているから、
    というのはとても面白い指摘。

    ほとんどの原因が
    「リビドー(性の欲動)」に帰せられるのは、
    少々納得しがたいところではあるけれど。

  • フロイトは日本語で読むな、という精神分析の先生の言い分が最もだと思った本。訳が悪いのか、すごく退屈に思えてしまう。心理学を少し勉強した今なら、少しは違う風に読めるのかな・・・?

  • 最近、会社通勤の電車の中で読んでいる本であるけど、最初は錯誤行為について延々と述べている。

    錯誤行為というのは、例えば言い間違いとか書き間違いとかがあった場合は、深層心理の中で実はそうしたい願望があったりするものとか、実際は言えないけれども、何か言いたいことがある場合や気になることがつい口に出てしまうと考えるものである。

    例えば国会の開催宣言をする時に、議長が「XX国会の開催を宣言する」と言う所を「XX国会の閉会を宣言する」といい間違えることがある。実際にありそうな話であるが、それは議長がいろいろな汚職とか不祥事を追及されそうな事態に陥っており、早いとこその質問などを切り抜けて閉会させたいと思っていたところであって、開催の宣言をいきなり閉会宣言してしまった例である。

    そういうのは、あるといえばあるし、単純な本当の意味での言い間違いの場合もあるし、なんとも言い難いですね。
    この章では色々な角度から、いろいろな例について記載されている。

    その次の章は「夢」について書いてある。夢についての意味とかは色々と研究もされているだろうけど、どこまで意味があるんだろう?まだこの章は読んでいる途中。

    読んでいる中で夢とは関係ないけども、気になった文章があった。それは「人間は、いやいやながらこの世に生をもらい生まれてくるもの」というような文章があった。これは何だろう。何で人間は生まれてくるのはいやいやながら生まれてくる、とフロイトは当たり前のように書いているんだろう?

    よく生まれ変わり説を信じる人は、この世に生をいただいたものは、何らかの修行をするためにこの世に生まれてきているのであって、喜んでこの世に来る人はいない。この世に生まれるものは、すべからく何かの課題を背負って生まれてきているものだ、などという人生観をもっている。こういうことを思っているのだろうか?

  • 全部性欲のせい。
    みたいなのは違うかな〜と思いながら読んだ。
    後半の神経症総論は面白い。
    ユングと決別したことを示唆する下りが出てきてふふってなった。
    ユングはスピリチュアル過ぎるけど夢解釈に多様性があって好み。

  • 2017.2.16 読了

  • 今月の4冊目。今年の11冊目。

    大分前に買っていた本を読み終わりました。
    正直下巻は読む気はおきません。フロイトの言っていることは面白いのかもしれません。また、同時代的にほかの著名な人と比べてみると面白いかもしれません。しかし、読んでいて、共感ができないところがあったので、最後のほうはじっくり読むことなく、目で追っていく感じでした。

  • この上巻では、フロイト氏の錯誤行為・夢・神経症総論の前半が収録されています。

全69件中 1 - 10件を表示

精神分析入門 (上巻) (新潮文庫)のその他の作品

フロイトの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島 由紀夫
ヘミングウェイ
フランツ・カフカ
安部 公房
三島 由紀夫
ドストエフスキー
ドストエフスキー
有効な右矢印 無効な右矢印

精神分析入門 (上巻) (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする