ねじの回転 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.20
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本棚登録 : 410
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102041031

作品紹介・あらすじ

イギリス郊外に静かに佇む古い貴族屋敷に、両親と死別し身を寄せている眉目秀麗な兄と妹。物語の語り手である若い女「私」は二人の伯父に家庭教師として雇われた。私は兄妹を悪の世界に引きずりこもうとする幽霊を目撃するのだが、幽霊はほかの誰にも見られることがない。本当に幽霊は存在するのか? 私こそ幽霊なのではないのか? 精緻で耽美な謎が謎を呼ぶ、現代のホラー小説の先駆的な名著。

感想・レビュー・書評

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  • 果たして幽霊は居るのか?居ないのか?
    126年前に描かれた怖い話。純真無垢な子供が
    不気味。見えてるの?見えてないの?謎は深まっていく。
    両親と死別し、イギリス郊外の古い屋敷に暮らす聡明な兄妹。離れて暮らす伯父に雇われ、赴任してきた家庭教師である「私」。
    可愛く従順な子供達と屋敷を仕切る事となった「私」はある日、高い塔に見知らぬ男の影を見てしまう。それは以前勤めていた使用人に似ていた。しかし、その男はすでに死んでいた。

    YouTubeで知った本作。ホラー苦手な私はこれなら読めるかもと手に取った。ほど良い怖さで一気読み。いろんな解釈ができる。元祖、信頼できない語り手かも。人が一番恐ろしい。
    イギリス、子供、古い屋敷には幽霊がとても似合う。めちゃめちゃ面白かった。

  • 「ねじの回転」の新訳が出たんだってね~と
    いつものBBの本屋さんへ…

    翻訳者が最近読んで面白かったエリザベス・ストラウトさんの
    本を訳した方だったので安心して購入してきました。

    「ねじの回転」は一番初め、
    新潮文庫の蕗沢忠枝さんの訳で読み、
    「えっ?(ポカーン)」状態になったけれど、

    「たぶんこの小説は本当はもっと面白い…」
    と言う気がたまらなくして、
    (その時の感想文を読み返すと
    「訳文が時折変てこで気が散る」と書いてある!)

    行方先生訳(岩波文庫)で読んだら大当たり、
    大好きな小説になった。

    ストーリーは、両親を亡くした幼い子どもが住む
    イギリス郊外のお屋敷へ、
    家庭教師として雇われた若い娘が、
    その子どもたちにまつわる人物の幽霊を目撃するのだが…。

    単純に考えて、あの人とあの人が連続でって
    それだけでも、もう怖いよね~。

    ただ今回、この主人公のことを
    「頑固で人の話を聞かない、独善的で思い込みの激しい
    厄介な人だな…」と思った。

    「本当に見えてるのですか?!」ってね。

    行方先生訳では、私、割合先生の味方だったんですのよ!
    この変化、不思議。

    私の中でお勧めは、やっぱり行方訳なんだけど、
    読み比べると面白いと思います。

    と こ ろ で、
    日本で海外文学(所謂翻訳もの)を読むのを趣味としている人って
    3,000人(しか)いないそうですぞ!!

    3,000人…、頑張れば全員と会うのも無理じゃないくらいの人数…

    最近はBBの本屋さんでも、その他行きつけの本屋さんでも、
    海外文学のコーナーは徐々に縮小されていると言う由々しき事態。

    つまり、翻訳ものの未来は
    まずは3,000人の双肩に全てがかかっているってこと。

    とにかく、存在をアピールするには「本を買う」しか無いので、
    これからもしっかりとその活動をして行きたい。
    (本を買いすぎ?と思ったとき、正当化する理由付け)

    • ゆきやままさん
      いきなりのコメ失礼します。

      海外文学というか、海外小説じたい読んでる人にあまり出会えません。本もすぐに絶版になっちゃうし。読みたいなと思っ...
      いきなりのコメ失礼します。

      海外文学というか、海外小説じたい読んでる人にあまり出会えません。本もすぐに絶版になっちゃうし。読みたいなと思った時に買わないとと思います。読者が少ないのって、訳者さんの割合も大きいかもしれないですね
      2022/04/15
  • 読みやすいのだが、とても難しい話だった。結局、幽霊はいたのかいないのか。子どもたちは無垢だったのか邪悪だったのか。
    いろんな解釈ができるホラー。訳者あとがきがとても興味深かった。幽霊が見えていたとしても見えていなかったとしても、子どもたちや屋敷を支配したい(それは最終的に雇い主であるこどもたちの叔父に認めてもらうこと)という主人公の奥底の願望から、幽霊を無意識に利用していたのではないかという推測はおもしろかった。

  • 奇妙で独創的な文体で綴られた【ヘンリ-・ジェイムズ】の著作を翻訳した【小川高義】氏は、ねじの回転によって神経をギリギリと締め上げられるような拷問に等しい翻訳と後述されている。兎にも角にも、のっけから最終章までフラストレーションの連続であり、怪奇と幻想の雰囲気を濃厚に漂わせながら、謎の解明を暗い闇の奥に閉ざしたまま終わる奇抜すぎる小説であった。

  • 幽霊は出ていても出ていなくてもいい、この語り手の仕事のできなさ加減が酷くていらいらしっぱなしだった。事実と類推と意見をごっちゃにしたコミュニケーションは仕事でやっちゃだめです。だめです! ジェイムズが読み手を苛立たせたかったんなら大成功ですよ...

    本書はホラーの先駆ということなのだけれど、できない人が手に余る案件を完全に駄目にしちゃった、お仕事失敗小説として読んでしまった。ある意味読書会向きかもしれない。わたしがイラついてすっ飛ばしたであろう幽霊二人と子供たちの関係とか、聞きたい気がする。

  • 新訳ということで、読みやすくなった(わかるようになった)と期待していたんですけど……

    しょっぱなから延々4行にわたって続く一つの文に(しかも続けて2文章)、思わずうめいちゃいました(笑)
    いや、その後はそれほど長い文章はなかったんですけど、まあ、それでも読みづらい、読みづらい。
    ただ、それは訳のせいでなくて、作者の地の文章がそうだから仕方ないんでしょう(たぶん)。
    (ただ、訳はかなりこなれた日本語になっているように感じます)

    訳者のあとがきを見ると、ヘンリー・ジェイムスという人の文章はわかりづらいということですが、この『ねじの回転』については、わざとわかりづらく書いている面もあるのかなーと。
    つまり、幽霊は出たのか?出ないのか?ではなく、出たとも出ないとも読めるように書いたんじゃないですかね。

    『ねじの回転』は10年前に創元文庫のものを読んだことがあるのですが、その時はそんな風には思わず、たんに「結局どういうことだったんだろう?」で終わってしまったんです。
    でも、この新潮文庫のものは、なんとなくでも「もしかしたら、そういうこと?」となったんで、そういう意味ではこっちの方がいいのかなー。

    ただ、創元版の方が、読んでいて情景が浮かんだような気がするんですよね(ただし、10年前の記憶なのでソート―いい加減w)。
    なんと言っても、創元版は冒頭の一文が4行に渡ってないから、とっつきはいいし(笑)
    まあ、幽霊は出た?出ない?じゃないですけど、どっちがいい/よくないは人それぞれなんでしょうね。

    しかし、語り手のマイルズに対する、最初の萌えぇぇ~っぷりと終盤の怒りからくる嫌悪の落差。
    「かわいい」というのはポジティブな感情である一方で、それはあくまで対象が自分の意に逆らわない、自分の興を削がないと感じた時の感情で。実は、身勝手に一方的に押し付ける、かなり“黒い”感情でもあるんだなーと思っちゃいました(笑)

    で、結局どうだったのか?というのは、この訳を読んでもわからないですね。
    というのは、終わりがかなり唐突に来るというのもあって。結局「え?どういうこと!?」になってしまうんですよね。
    というか、読者がそうなるように書かれているんじゃないでしょうか(?)

    そこいくと訳者はさすがで、何がどうなったのか?をわかっているようで、あとがきで「やっぱりそういうこと?」と読者がおぼろげに想像できるように書いてくれています。
    ただ、あくまでそれは訳者の見解であって。何が起きたのか、起きていたのかは、オバケは出た?出ない?を含め、正解なんてものはなく、読んだ人がそれぞれ思ったストーリーでいいんじゃないですかね。
    (訳者もそんなようなことを書いていますし)

    正解(?)という意味では、訳者があとがきで、「…成就しない恋愛感情を、〇〇を可愛がる職務で代償して…虐待に行き着くのと、どっち(前任者と語り手の家庭教師)が醜悪だったのだろう」書いていましたけど。
    その前任者の不義のエピソードをこの小説の「答え」代わりに、誰でもいいから書いてくれないかと切望します
    (それでも、その作家の解釈でしかないわけですけどね)。

  • おもしろかった。
    文庫裏側あらすじの「私が幽霊なのか?」にだいぶ惑わされたんだけど、読み終わってもはっきりした解答は得られず、ひたすら不思議な話だった。作者がいろんな趣向を凝らして、いろんな憶測ができるよう考えて書いたことがわかる。

  • 想像を掻き立てられる。
    最後の章でものすごく恐ろしい情景が浮かんでしまったのだけど、冒頭を読み返してみると、自分が思い浮かべた結末は違うなと改めた。

    雇い主から自分に課せられた立派な任務を果たす…という強い思いを抱いた家庭教師が見た幽霊。
    いくつもの膜に覆われ、歪んだ鏡に映し出すようにして語られる物語。
    その不明瞭さが無気味で、何が現実なのかわからない感覚の中に読者も閉じ込められてしまうようです。

    “現実を見たい”と言ったマイルズ。呪縛を解かれたのは彼だったのかなあ。

  • ★3.5
    序盤は読み辛さがあるものの、それを超えれば俄然面白くなってくる。静かな田舎に建つ古い館、両親を亡くした幼く美しい兄妹、そして、家庭教師として派遣される“私”。最初から最後まで“私”の視点で綴られ、その全てが曖昧かつ独善的で本当のことは何も分からない。また、“私”以外の人物の発言も、“私”というフィルターを通してしか伝えられない。恐らく、マイルズもフローラもグロースさんも、“私”の想像とは違うことを思っていると思う。幽霊が登場するけれど、見える・見えないよりも精神的な恐怖と不安定さが魅力の1冊。

  • すべて大人からの視点で語られており、あくまで大人から見た様子しか描かれないので子どもたちの詳しい心理はわからないが、大人の子どもに対するステレオタイプな見方が非常に滑稽であることを皮肉り、茶化しているお話のように感じた。この教師にとって子どもはいつでも愛らしくて傷つきやすく、守ってやらなくてはいけない存在なのだという大人の「常識(固定概念ともいう)」があり、だからこそそこから大きく逸脱した子どもたちが恐ろしく思える。怖いのは幽霊ではなくて生身の人間である子どもたちのほうだというのが面白い。
    ただ文がすごく読みにくい。読みにくさがかえって語り手がパニックで右往左往している感じを出していると言えなくもないけれど、とにかくまどろっこしい。

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著者プロフィール

Henry James.1843-1916
19世紀後半~20世紀の英米文学を代表する小説家。
主要作品に『デイジー・ミラー』、『ある婦人の肖像』、
『ねじの回転』、『鳩の翼』等。
映画化作品が多いが、難解なテクストで知られる。

「2016年 『ヨーロッパ人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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