結婚式のメンバー (新潮文庫)

制作 : Carson McCullers  村上 春樹 
  • 新潮社
3.64
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本棚登録 : 522
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102042021

感想・レビュー・書評

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  • 村上柴田翻訳堂、第一弾。
    さすがに、素晴らしい作品。

    親密な人と、たわいもなく、なんでもない当たり前なことをしている時が実は一番幸せであり、その幸せな時間は瞬間瞬間過ぎ去って消えていく。そのことに私たちは普段気づいていない。

    「ライ麦畑でつかまえて」、「異邦人」のような青春をみずみずしく書いた小説に比肩するすごさ。ただ、よりナルシスティックな要素が少なく、シンプルで少し滑稽に表現できているところが良い。そもそも人はみな滑稽であり愛おしい。
    映画だと、ジムジャームッシュの初期作品やアキカウリスマキのような手触り、深みを感じる。

    思春期の女の子を通して、人間のおかしさ、メランコリックさ、ずうずうしさ、などを絶妙にミックスし、日常の中の非日常を淡々と(それでいて狂気を含ませながら)表現している。また孤独さと、人と人のつながりあいなどの関係性がテーマとして書かれていると思う。

    少女から女性へ成長しかけている主人公は、いろいろなことに気づきだし、疑似家族たちや父親から自立し、いままでの幼く古い「わたしたち」から脱皮しようとしている。
    突拍子もなく、行動的でありながら、(ナイフをつかって暴力的だったり、男並みの荒々しさをもっていながら、)どうでもいい細かいことに繊細にこだわったりする。ナイーブな心理が、心理描写ではなく、情景描写と会話劇で緻密に立体的に構築されている。

    フランキー(主人公)から見た、女料理人ベレニスは他人でありながら、母親代わり、お姉さん代わり。ジョン・ヘンリーはいとこだけど、弟や、子供代わりであり、本当の家族以上に家族らしい、繋がり(コネクション)がある。この構成を主題にして、リアリティーをもって成り立たせている。

    フランキーの視点から書かれている小説という印象を受けるが、第一人称ではなく、第三人称で描かれている。

    村上春樹があとがきで記載している以下がすべてを表している。すごい。
    以下、「訳者解説」より

    この小説は単なる「人生の通過儀礼」を描いた小説ではないということだ。つまりこれは「かつてこういう少女時代がありました。そのようにして私たちは大人になってきたのです」という物語ではないということだ。カーソン・マッカラーズにとっては、ここに書かれた物語は、彼女の中でそのまま生きて継続している物語でもあったのだ。何がノーマルであり、何がノーマルではないのか、その謎を彼女はいまだに追い求めているのだ。とても真剣に、自分自身の意味をかけて。彼女にとって、その「気の触れた夏」は今もなを続いているのだ。だからこそこの『結婚式のメンバー』という作品は、そこに描かれた限定されたジあkンとその限定された時間は、現代にあっても確かな力を持って、我々に訴えかけてくるのだ。

  • 大学の講義で「悲しき酒場のバラード」を読んでから、カーソン・マッカラーズのファンでして。

    でも、その本を手に入れるのに神保町を探し回れど見つからず、ネット見たらラスト一冊でウン十年前に翻訳されたやつを発見したという。でも、買ってよかったと思える本だった。

    それを、これまたファンの村上さんが訳されている、というのがちょっとうれしくてですね、

    この本を買ったわけです。成田空港の本屋で。フィリピンに出向く際に。それが2か月前。

    でも、なんか常夏のフィリピンに、この本の妙に重苦しさを漂わせる雰囲気が合わずしばし寝かせておいたのですが、フィリピン生活2か月目にして活字中毒の禁断症状が出て、ほかに読む本がほぼなくなってしまったがゆえ解禁したマッカラーズ。


    でもまぁ、読めてよかった。でもすぐにこう感想を述べられるような読後感とは程遠く、ちょっと消化したらまた感想をかけたらいいなと思います。

  • 読み終わった直後のこの気持ちは、岡崎京子の漫画を読んだ時に似ている。

  • 12歳。
    『波』2016.6にて。

  • アメリカ女性作家の作品を村上春樹が翻訳。舞台は戦時中、夏ののどかな南部の町。フランシス・アダムズ(通称フランキー)は12歳の女の子で、夏休みを退屈に過ごしている。仲良い友達も引っ越してしまったし、クラブのみんなには仲間はずれにされていて、毎日料理女のベレニスといとこのジョン・ヘンリーとトランプ遊びをやりながら手持ち無沙汰に日々を送っている。そんな中、兄のジャーヴィスが結婚することになり、フランキーの心境に変化が訪れる。兄夫婦の結婚式がもうすぐ新居で開かれる。結婚式に参加したら私は兄夫婦のところから帰らない。「わたしたち」は「三人で」一緒に世界を旅するんだ。そんな荒唐無稽な考えにとりつかれたフランキーは自分の名前を好みのものに変えたり、自分の計画を見知らぬ他人に触れ回ったりと退屈な日々から一転、行動を起こしていく。ベレニスはそんなフランキーを目を覚ませとたしなめるがフランキーは聞く耳を持たない。そして、ついに結婚式の日が訪れる。という話。

    ――――――――――――
    風景描写、それも心象風景とか、心情の表現が抜群にうまい。また、著者は思春期の女の子の言語化できない気持ちを言語にしようと試みている。フランキー自体もうまく言えない、うまく言えないこの気持ちをどうすればいいのか、よくわからないからとりあえず言葉にしてみる、ころころと気持ちはすぐに変わっていくが、とにかくベレニスに矢継ぎ早に質問をしてみる、その質問のやり取りの中でフランキーの考えていることがおぼろげながら把握できる。世界から隔たっているような気持ち。閉じ込められているような気持ち。どこへも行けないんだという気持ち。誰かにほめられたいし、認められたい。これらの友達がいない子どもが退屈なときに強く感じる気持ちをうまく表すことができているように思う。また、フランキーの質問応じるベレニスの回答も良い。

    自分の匂いを気にしてつける安物の香水、急に伸びてしまった自分の身長、「私って大人になったら可愛くなると思う?」、結婚式のドレスの感想を求める様子、成長しつつある女子の気持ちというものがそこにはにじみ出ている。フランキーが少し変わった女の子として描かれてはいるがそこには多くの子どもの姿が投影できるだろう。

    そもそも子供自体の描写がうまい。フランキーとジョン・ヘンリーの退屈な様子がまざまざと描かれていて、それは自分も昔経験したような感覚を思い出させるようだ。台所をうろうろしたり、無駄に自分の足の皮を削ってみたりというような。ジョン・ヘンリーみたいな小学生いるよなぁと思いながら読んだ。

    最後は少し悲しくも希望ある終わり方だ。最後のフランキーの「わたしたち」が以前の「わたしたち」とは違うという事実がこちらもなんだかうれしくなってしまう。子どもは成長し、大きくなっていくのだ。

  • ちょっとしんどかった。
    でも訳者解説読んで、たしかに単なるイニシエーション的な物語じゃないところがいいなと思った。

  • 昔読み始めたのに挫折した本。新訳が出たので読んでみる。
    「PART ONE」はやはりちょっとかったるくて、昔はここいらで早々に挫折したんだなと思ったが、今回はクリア。
    「PART TWO」になったら俄然夢中になって読了。
    読んで良かった。

    思春期の思いこみの強い個性的な女の子の話というのは珍しくないし、そういう女の子はだいたい(第三者から見れば)辛い青春を送るものなので、そういった意味では珍しくない。(ミュリエル・スパークとかマヤ・ヴォイチェホフスカなんかにもそういう作品あるし。)素晴らしい文章を絶賛されたと聞くが、訳文で読んだわけだからそれに納得するわけにもいかない。
    しかし、アメリカ南部の気だるい夏、料理にたかるハエ、響くピアノの調律の音、何にも属することのできない三人の濃密な毎日がリアルに感じられた。
    三人の関係はあっけなく終わるけれど、この夏はフランキーにとっては生涯永遠に続く。
    どこか別の場所で全く違う人生を送りたいと思いながら、勇気がなく、あるいはチャンスがなく、あるいは現実に縛られて生きる(ベレニスの言う「閉じ込められた」)多くの人に届く作品だと思う。
    自分は自由に生きていると思っている、現状にある程度満足しているという人には、まあ、「何言ってるんだ」って感じだとは思うけど。

  • 主人公の少女が、まったく身に覚えがありすぎる。
    身体と心がアンバランスで、夢想好き、誰かに愛されたい、愛したい、そして何よりも今、この場から逃げ出したい気持ち。
    何が欲しいのかわからないけど、何かが足りない焦燥感。
    全てくっきりと思い出した。

  • 田舎の少女のはちきれんばかりの生(きること)への欲望と情熱。湧き出る心の訴えを周囲に理解して貰いたいのに、いまいち正体のわからない不満の消化方法を模索する。しかし自分がもがいてしんどい様子を知られるのは、子供っぽいから避けたい。大人の振りをして何もかもわかっているわよ、という素振りを見せなくてはならない。
    という、よくある思春期もの。

    南部の夏の重苦しい雰囲気は存分に伝わる。しかしやっぱり別の訳者で読みたい。この訳者は好みでない。

  • 一度読むのを挫折したのだけれど、最後まで読み通すととても心に残る作品になった。あの夏のあのキッチンに戻りたくなる。

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