地の糧 改版 (新潮文庫 赤 45-E)

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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102045053

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  • 久しぶりのジッド。新潮さんはぜひジッドのこれまでに翻訳した作品を再版してください。全集版を買わないと読めないものが多くなってきました。それに、固有名詞の仮名遣いが大分変わってきているので、よくわからないものが増えているので、その辺もお願いします。
    今までに読んできた作品と違って、ジッドの感覚をフルに用いられて書かれた作品であると感じられる。ランボーが砂漠のようにどこまでも乾いた精神なら、ジッドはどこまでも透明であろうとする、そんな精神であるような気がする。
    彼の目に映るもの、通りすぎる人物、どれにおいても簡単にするりと流れていってしまう。どこにも存在しないということはどこにでも存在しているということの裏返しであるから、彼の透明な精神はこの大地のあらゆるところまで滲み拡がっている。しかと大地を踏みしめるのではなく、大地そのものに溶けこむ。そこから生まれる糧は、果たして彼でないものはあるというのか。
    欲望の解放、そんな風に謳われているが、解放というよりも欲望そのものとして生きている、そういう等身大でいるから、彷徨い、目に映るものすべてが美しくてたまらないのだ。これが、彼の辿りついた無一物というところか。
    もう彼にはすがるべき本も還るべき拠り所もない。どこにでも彼は還ることができるし、すがるべき何ものもこの大地にはないと知ったから。透明という色はないけれど、透明でないものはない。存在の確固たる同時にひどくぼんやりとした境界。ナタナエルとは、そんな自分と共に生きる他者なのか。大地とは、彼にとって存在というものだったのか。
    自由とは与えられるべきものではなく、生きられるものである。生きて何かを求め、彷徨うこと自体が自由の大いなる海に漂っている。

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