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Amazon.co.jp ・本 (144ページ) / ISBN・EAN: 9784102046012
感想・レビュー・書評
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海辺で過ごした短い滞在のあいだに、著者がじっくりと紡ぎ出した「生活」についての考えを綴った1冊。
年を経る中で波にもまれるようにゆるやかに変化する人間の生き方を、貝の姿に託して伝えてくれます。
シンプルに生きること。
自分と向き合う時間を大切にすること。
結局人間はそれぞれが孤独なものであり、人との関係とは、孤独と孤独が寄り添うことなのだ…と考えると、ふぅっと風が吹きこむように、すっきりとしました。
意識していなかったけれど、SNSでつながる時代に疲れていたのかも…とも気付かされました。
やや難しく感じるところもありますが、昭和42年刊行の本書の内容が瑞々しいことに驚かされます。
本書を読むことは自分と向かい合うこととイコールだと感じました。
人生の折々に手に取って、本書とともに自分の生き方をかえりみたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日野原重明 著『生きることの質 』(岩波現代文庫)のなかで紹介されていた。
不必要なものを捨て、簡易な生活を選び、それに満足している様子は『方丈記』に似ている。ただ、さすがに鴨長明ほど極端な隔離生活はあまりに非現実的。アン・リンドバーグは「私にとっての解決は、この世を捨てることにも、完全に受入れることにもなくて、その中間のどこかで釣り合いを取り、或いは、この両極端の間を往復する一つの律動を見付け」、「孤独と接触、退避と復帰の間に吊るされた振子になる」のだと語る。彼女の休暇の過ごし方は、文明社会で家族と家をもち、職業をもつ現代生活に即している。極端でなく、かといって中途半端でもなく、うまくバランスをとっている感じが伝わってくる。
一人の時間をもつことで、枯れた精神の泉に水を漲らせる…
定期的な孤独、内省のススメ。 -
今回この本を読むきっかけになったのは、先日読んだ須賀敦子『遠い朝の本たち』で、美しい本として紹介されていたから。
しかし、この本は、私が子どもの頃にはもう邦訳が文庫になっていたはず。
そのころは、もしかすると著者名を「リンドバーグ夫人」としていたかもしれない。
家族から離れ、海辺で仕事(おそらく原稿執筆)をする数週間の思索を、海辺の生き物に重ねながら表したもの。
読んでいて、不思議な気持ちになる。
これはいったいいつの時代なのか、と。
本書で語られる「現代」生活では、車により生活圏が広がり、情報が飛び交い、人々は限られた時間の中に目いっぱいするべきことを詰め込んで暮らしている。
それから半世紀以上経つ現在から見れば、生活が大きく変わったはず…なのに、生活の実感としてはここで著者が感じているものとたいして変わらない気がする。
筆者はもちろん、そんな生活に批判的だ。
シンプルな生活を神の恩寵を感じながら送ることで、精神が満たされていくことを、海辺の暮らしの中で発見し、実感していく様子が描かれている。
読み終えて、「つめた貝」「日の出貝」「たこぶね」を検索してみた。
女性が一人でいること、一人で創造的な仕事(それは料理や裁縫であってもよい)をすること、静寂を得ることの大切さを説く「つめた貝」。
そう要約してしまうと、何か味わいのない論文のように思われるが、つるりとした質感、ころんとした貝の形の「つめた貝」のイメージに重ねられ、とても詩的な感じがする。
「日の出貝」では、パートナーとの関係を、恋人時代の親密さが失われたと否定的にだけ捉えるべきではなく、それが壊れてしまったとしても価値がある、と捉え返す。
美しくはかない「日の出貝」の中に、永遠の価値を見出だそう、というのだ。
詩的な美しさと、独特なポジティブシンキングの結合に驚かされた。
本書の中心となるのが「たこぶね」。
貝、とされていたが、調べてみたらイカの一種とのこと。
表紙の写真にも大きく映っている、繊細な造形が印象的な生き物だ。
島で、妹と過ごした理想的な一週間を振り返り、親しい人と、同じ律動の中にいながらも、互いに自由に過ごすことの快さが描かれる。
しかし、人間同士の関係も、生活も断続的なもので、それは海の満ち引きと同じで、そういう条件を人は生き抜かなければいけないのだ、という結論になる。
美しいイメージを喚起しながら、自然、あるいは運命を受け入れ生きていくことを伝えているのかな、と思いつつ、なんとなく東洋的な諦念にもつながるような気がしている。 -
経歴や肩書きなど一切封印して一人の女性として海辺にあるオブジェに化体させて書かれた精妙なエッセイ。特に序文は格調高い。
とはいえ、1955年時点で執筆された本作の背景を知らないともったいない。つまり、彼女は一人の平凡な夫人ではなく、あのリンドバーグ婦人であり、さらに長男を誘拐殺害された(1932年)過去を持ち、その夫には愛人がいたという厳しい現実。そんな彼女が平常心を保つため海辺の静謐さを求めたのは必然だったかもしれません。
以下は彼女のプロフィール。
著者のアン・モロー・リンドバーグ(Anne Morrow Lindbergh、1906年6月22日 - 2001年2月7日)は、1929年、単独での大西洋無着陸横断飛行を史上初めて達成したことで著名なチャールズ・リンドバーグと結婚する。1930年に米国の女性として最初にグライダーのライセンスを取得し、1931年にはプロペラ機のライセンスも取得した。チャールズ・オーガスタス・ジュニア(1930年)、ジョン(1932年)、ランド(1937年)、アン(1940年)、スコット(1942年)およびリーヴ(1945年)の6人の子供をもうけた。
1932年に長男チャールズ・オーガスタス・ジュニアが誘拐されて殺害される事件(リンドバーグ愛児誘拐事件)が起きる。その後夫妻でヨーロッパに渡り、ナチス・ドイツと親しくし、米国とドイツの連合を働きかけ、帰国後は反戦運動に携わる。
戦後、1955年に『海からの贈物』を書いてベストセラーとなり、文筆家としていくつかの賞を受けた。夫はミュンヘンの帽子屋ブリギッテ・ヘスハイマーと愛人関係にあった。(ウィキペディア) -
昭和42年に発行された書籍が、今もなお色褪せることなく現代に通ずる問題点を指摘してくれている。
どの時代においても、女性が抱える悩みやその解決の手がかりになる思考は変わらないのかもしれない、と思った。
そして、どんな立場に在る女性でも、他者との繋がりから一度離れ、自分ひとりで考える時間を持つ大切さを教えてくれた。
翻訳本であること、古い書籍であることから、少し表現が難解ではある。 -
死ぬ前にもう一度読みたい本。
1人の時間の大切さ。今慌ただしく、スケジュール帳が真っ黒になることに満足している自分に、本当の人生の充実は?と問いたくなる本。
大西洋単独横断飛行のリンドバーグの妻、アン•モロ•リンドバーグの本。
リンドバーグ夫人と訳されるところにも男性優位の社会を感じる。
自らも飛行機を操り、あの時代に、家庭、育児、仕事と忙しく過ごす女性の言葉は今も響く。
海からの贈物、貝殻に人生を重ねていく、文章が美しい。
昔の女性は今よりも1人でいられる時間が多く、自分の糧になる創造的な仕事をもっていたというのが意外。
自分の内部に注意を向ける時間、ゆっくりものを考える時間、世界の遠心的な力に抵抗するものを求める、大切。自分にとっては読書の時間が本当に大切。
私たちの任務、男も女も関係なく、まずは家庭を大切にし、今という時間を大切にする、全てはここからだ。 -
偉大な夫に寄り添った女史のエッセイ
聡明で凛とした佇まいが文体から溢れてくる
貝殻を模した人生訓が、私たちの疲れた生活を包み込んでくれるよう…
限定的な思考も多いが、性別を問わず許容すべき時代になり、得るものも多いと思う -
現代女性の必読書という触れ込みだが、男性が読んでも、意識が高いパートナーとどう過ごすべきかのヒント満載。貝殻のメタファーも素晴らしい。
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優しくて穏やかな海のような一冊。
一つ一つの貝殻をモチーフに、人生における大切なことを教えてくれる。それがスーッと心に入ってくる。
読んだ後、自分とたくさん語り合いたくなった。孤独と友達になりたい。
夫婦や友達関係で悩んでる人にも
救いになる言葉がたくさんあった。 -
求めるものは静寂と平和、自由
そうはいかなくてもわずかでも自分の暮らしにあればそれでよし -
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非常に優れた当事者研究の書物といったところか。過去や未来を出きるだけ排し、「いま、ここ」に集中している点が特に素晴らしい。
「気が散る」というワードに始まり、貝を見つめ続けることで「現在」のあり方を丁寧に探っていく思考の流れは、美しい螺旋階段を見ているかのよう。
中年以後をいかに生きるかの手引きにもなりそうだ。久々に良い本。 -
タイトルから想像する内容とはだいぶ異なる。
古典的な女性の生き方を世間や周囲から求められる中で、内的な創造力をいかに確保して、率直に飾らないでまっすぐ生きるか、というメッセージを、とてもストレートに書き下ろしたエッセイです。
舞台はアメリカで、個人の考えをまとめただけのものですが、今中年以降の日本の女性にオススメです。表現がストレートなだけに、深くうなづいてしまう。 -
内容は他の皆さんが書いていらっしゃるので割愛。
私にとっては、穏やかな波の砂浜で長回しして撮っている映画のように情景が浮かびます。爽やかな海風、潮の香り、海鳥の鳴き声…そんな風景の中でとつとつと語られる人生の様々なシーン。
20代の頃から、何度読んでも毎回受ける新しい感動・驚き・気づき。これこそ『愛読書』と呼ぶべきものでしょう。
薄いので旅先への鞄にいつも忍ばせ、何度無くしてもまた手に入れたくなる。いつもそんな風にお付き合いしている本です。 -
詩集のような本。人間の内的・精神的なことについて言及している。
最初は文体になれなくて戸惑っていたが、読み進めていくにつれて世界観にハマってしまった。
浜辺に落ちている中から拾ったいくつかの種類の貝がらに、人生の流れをなぞらえている。波音あるいは潮騒が聞こえてきそう。
人間同士が繋がっていること、それを断つこと、現代社会のわずらわしさと見つめ合い方を再考する。
「砂の上に仰向けに寝そべって空を見上げ、空の広さに私たちも拡がって行くような感じになった。星は私たちの中に流れ込んできて、私たちは星で一杯になった。」こんな体験をしたい。 -
・生活するということにも技術があって、恩寵を求めるのにも技術があるとさえ言える
・なぜ女で聖者だった人たちが稀にしか結婚しなかったかを理解する
・私たちは今日、一人でいることをもう一度初めから覚え直さなければならないのである
・与えるのが女の役目であるならば、同時に女は満たされることが必要である
・女は他のものに頼ったり、自分の力を験すのに他のものと競争しなければならないと思ったりするのを止めなければならない -
何度でも読み返したい本。
本当は自分たちは満ち足りることができるのに、周りに反応して生きている。もっと自分の心や体に反応しないといけないのに。社会がそうだから仕方ないかもだけど。
自分と向き合えてこそ、人と向き合える。自分と向き合うためには少しでも自分の時間を作り、自分の内側にある創造を大切にする。
自然は人が忘れているいろんなことを教えてくれると思った。 -
これはいわゆる“バイブル”ではないだろうか。
今の世の中、今を生きる女性たちにも通ずる内容が、もう半世紀も前に書かれたものだということには非常に驚いた。 -
晴れている日にふと思い出して読みたくなる本。
生きていくにしたがって、要らないものを取り込み身につけてしまっているかもしれない。一つずつ外してピュアな自分でいたい。 -
人間関係、特に夫婦関係について考えさせてくれる本。
当時のアメリカの女性は、私が今感じている社会とはまた違った社会を生きていたと思うけれど、女はいろんな方面の顔を持って複雑に生きているから、一人になって内面を見つめる時間を持つことや、一人の孤独な一つの世界を持って依存ではなく他者と触れ合って生きていくことが説かれている。読めば読むほど味が出る文章。
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