- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102050033
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(2012.07.20読了)(2012.07.16拝借)
【7月のテーマ・[キリスト教を読む]その③】
フランソワ・モーリヤックは、1952年度のノーベル文学賞受賞者です。
この本が発表されたのは、1936年です。
新約聖書を自由に構成して書かれたイエス・キリストの生涯です。
新約聖書からの引用と思われる部分は、訳者によって、プロテスタント訳の聖書からの文章がはめ込まれています。
格調高くていいのですが、きっと50年前だったら当たり前に読めたと思うのですが、いまでは、すっと頭には入ってきません。残念です。
キリストの生涯は、遠藤周作、等の作品で読んだことはあるので、だいたいのことは知っているので、その確認作業みたいなものになってしまいました。
【見出し】
一
ナザレの夜/シメオンという老人
二
博士にたちまじる子/青年イエス
三
かくれた生活のおわり
四
イエスの洗礼/最初の呼び声
五
カナ/決定的の呼びかけ
六
宮より追い出された両替人/ニコデモ
七
サマリヤの女
八
汝の罪ゆるされたり/マタイの天命
九
ユダ
一〇
山上の垂訓/百卒長
一一
ヨハネの弟子達/シモンの家での食事
一二
マグダラのマリヤの悪鬼/たとえならでは/おさまった嵐/ゲラセネびとのもとにて/ヤイロの娘ところものふさ
一三
ヘロデ洗礼者ヨハネの首をはねさせる
一四
羊門のほとりの池での中風患者の治癒/パンをふやすこと/波の上を歩むイエス/いのちのパン
一五
ピリポ・カイザリヤへの途上/主変容
一六
エルサレムへの出発/のろわれたる町々/エルサレムにて
一七
姦淫の女/父と等しいもの
一八
生まれながらの盲人/よき羊飼
一九
よきサマリヤ人/ベタニヤ/パテール・ノステル/精霊に対する罪/味方を安堵させる/不安と焦燥の溜息/エルサレムでの短い滞在
二○
キリスト、エルサレムを歎く/罪人への偏愛/蕩児/マモンナ/十人の癩病人/内なる王国/イエスの帰還
二一
婚姻/富める若者/最後の時間の働き人
二二
ラザロの復活/イエスをほろぼすこと決定す/ゼベダイの息子達の要求/エリコに入る バルテマイの治癒/ザアカイ
二三
シモンの家での食事/木の枝/聖月曜日/一粒の麦死なずば……/火曜日と木曜日/人殺しの葡萄つくり/カエザルのものはカエザルに……
二四
寡婦のレプタ/宮の崩壊と世の終わりについての予言
二五
聖木曜日/魂の匂い/聖餐/主の祈り
二六
ゲッセマニ/ペテロの裏切り/ユダの絶望/ピラト/ヘロデの前のイエス/バラバ/鞭打ち/エッケ・ホモ(この人を見よ) /十字架の道/十字架につく/死/墓におさめる
二七
復活
●嵐(100頁)
キリストは立ち上がって、海に命じ、たちまち海はないだ。弟子達は、おびえ、へさきに立って、長髪を風になびかせている人を、ただ眺めるばかりだった。彼等の恐怖は対象をかえていた。彼等は今、目の前に見る師に見覚えがなかったからである。
風と波に向かって命令を下し、風と波がその命令に服するとは……「こは誰ぞ?」この素朴な人々は互いにいぶかる。
●信仰(103頁)
恐怖ではなく、信仰。イエスを信じることは、それは同時に恩寵の中の恩寵であり、徳の中の徳である。信じる者は救われる。ただそれは神のたまものである。
●復活(127頁)
人の子は人の手に渡され、人々はこれを殺さん、かくて三日めによみがえるべし。
☆モーリヤックの本(既読)
「愛の砂漠」モーリヤック著・杉捷夫薬、新潮文庫、1952.09.15
☆関連図書(既読)
「死海のほとり」遠藤周作著、新潮社、1973.06.25
「イエスの生涯」遠藤周作著、新潮社、1973.10.15
「キリストの誕生」遠藤周作著、新潮社、1978.09.25
「旧約聖書入門-光と愛を求めて-」三浦綾子著、カッパ・ブックス、1974.12.20
「聖書物語」山形孝夫著、岩波ジュニア新書、1982.12.17
「ふしぎなキリスト教」橋爪大三郎・大沢真幸著、講談社現代新書、2011.05.20
(2012年7月22日・記) -
キリスト教の本質はキリストに宿っている。カトリック作家である著者のモーリアックは、「人」としてのキリスト像を掘り下げて、歴史の流れに打ち込まれた『イエス』その人を描いた。洗練された文章から浮き彫りにされるイエス像は、悲しみと苦しみの只中で誰よりも無力だった。人の心を動かすことが奇跡なのだとしたら、それは愛によってしかなされない。数々起こされる超自然的な奇跡に本質をおかずに、『愛』と言うどこまでも無力な情的な衝動に本質をおき、イエスの偉大さをこの上なく表現した作品。イエスの昇天は始まりなのだ・・・
それから、数週間後に、イエスが、弟子たちの群れから離れて、天に昇り、光の中にその姿がとけてしまった時も、それは二度とかえらぬ旅立ちというべきものではなかった。すでに、主は、エルサレムからダマスコへ行く道の曲がり角で待ち伏せをし、サウロを、彼の最愛の迫害者を狙っている。このとき以後、すべての人間の運命の中に、この待ち伏せをする神がいたまうであろう。
遠藤周作や三島由紀夫にも影響を与えた19世半から20世紀前半に活躍したフランス人作家。ノーベル賞作家でもある。
08/6/3