イエスの生涯 (新潮文庫 モ 3-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102050033

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  • ■『イエスの生涯』 フランソワ・モーリヤック著 新潮文庫

    【後編 イエス路程】
     フランス人カトリック作家のフランソワ・モーリヤックによる『イエスの生涯』。こちらは、学としての研究から表されたイエス伝ではなく、あくまでもカトリック作家の信仰告白のような、詩的で美しいイエス伝です。もう最後に読んでから久しいので、細かな描写はほとんど忘れてしまいましたが、ただ美しかったということは鮮烈に覚えています。
     イエスの生涯を福音書に沿って丁寧になぞっているので、不足はないと思います。特徴的な部分は、奇跡物語ではなく、イエスの愛に深く関心をおいているところ。正しいクリスチャンはイエスをそのように見つめます。イエスの生涯を「知る」よりも、「感じる」一冊であると思います。モーリヤックの信仰の精錬さと、暖かさを感じることができる良書であると思います。遠藤周作が大きく影響を受けた作家です。ぜひ一読ください。

     最後の一文を引用します。
     「それから、数週間後に、イエスが、弟子たちの群れから離れて、天に昇り、光の中にその姿がとけてしまった時も、それは二度とかえらぬ旅立ちというべきものではなかった。すでに、主は、エルサレムからダマスコへ行く道の曲がり角で待ち伏せをし、サウロを、彼の最愛の迫害者を狙っている。このとき以後、すべての人間の運命の中に、この待ち伏せをする神がいたまうであろう。」

    <イエス伝関連資料>
    ルドルフ・ブルトマン 『イエス』
    田川建三 『イエスという男』
    八木誠一 『イエス』 清水書院・人と思想シリーズ
    遠藤周作 『イエスの生涯』
    フランソワ・モーリヤック 『イエスの生涯』 など

  • (2012.07.20読了)(2012.07.16拝借)
    【7月のテーマ・[キリスト教を読む]その③】
    フランソワ・モーリヤックは、1952年度のノーベル文学賞受賞者です。
    この本が発表されたのは、1936年です。
    新約聖書を自由に構成して書かれたイエス・キリストの生涯です。
    新約聖書からの引用と思われる部分は、訳者によって、プロテスタント訳の聖書からの文章がはめ込まれています。
    格調高くていいのですが、きっと50年前だったら当たり前に読めたと思うのですが、いまでは、すっと頭には入ってきません。残念です。
    キリストの生涯は、遠藤周作、等の作品で読んだことはあるので、だいたいのことは知っているので、その確認作業みたいなものになってしまいました。

    【見出し】

    ナザレの夜/シメオンという老人

    博士にたちまじる子/青年イエス

    かくれた生活のおわり

    イエスの洗礼/最初の呼び声

    カナ/決定的の呼びかけ

    宮より追い出された両替人/ニコデモ

    サマリヤの女

    汝の罪ゆるされたり/マタイの天命

    ユダ
    一〇
    山上の垂訓/百卒長
    一一
    ヨハネの弟子達/シモンの家での食事
    一二
    マグダラのマリヤの悪鬼/たとえならでは/おさまった嵐/ゲラセネびとのもとにて/ヤイロの娘ところものふさ
    一三
    ヘロデ洗礼者ヨハネの首をはねさせる
    一四
    羊門のほとりの池での中風患者の治癒/パンをふやすこと/波の上を歩むイエス/いのちのパン
    一五
    ピリポ・カイザリヤへの途上/主変容
    一六
    エルサレムへの出発/のろわれたる町々/エルサレムにて
    一七
    姦淫の女/父と等しいもの
    一八
    生まれながらの盲人/よき羊飼
    一九
    よきサマリヤ人/ベタニヤ/パテール・ノステル/精霊に対する罪/味方を安堵させる/不安と焦燥の溜息/エルサレムでの短い滞在
    二○
    キリスト、エルサレムを歎く/罪人への偏愛/蕩児/マモンナ/十人の癩病人/内なる王国/イエスの帰還
    二一
    婚姻/富める若者/最後の時間の働き人
    二二
    ラザロの復活/イエスをほろぼすこと決定す/ゼベダイの息子達の要求/エリコに入る バルテマイの治癒/ザアカイ
    二三
    シモンの家での食事/木の枝/聖月曜日/一粒の麦死なずば……/火曜日と木曜日/人殺しの葡萄つくり/カエザルのものはカエザルに……
    二四
    寡婦のレプタ/宮の崩壊と世の終わりについての予言
    二五
    聖木曜日/魂の匂い/聖餐/主の祈り
    二六
    ゲッセマニ/ペテロの裏切り/ユダの絶望/ピラト/ヘロデの前のイエス/バラバ/鞭打ち/エッケ・ホモ(この人を見よ) /十字架の道/十字架につく/死/墓におさめる
    二七
    復活

    ●嵐(100頁)
    キリストは立ち上がって、海に命じ、たちまち海はないだ。弟子達は、おびえ、へさきに立って、長髪を風になびかせている人を、ただ眺めるばかりだった。彼等の恐怖は対象をかえていた。彼等は今、目の前に見る師に見覚えがなかったからである。
    風と波に向かって命令を下し、風と波がその命令に服するとは……「こは誰ぞ?」この素朴な人々は互いにいぶかる。
    ●信仰(103頁)
    恐怖ではなく、信仰。イエスを信じることは、それは同時に恩寵の中の恩寵であり、徳の中の徳である。信じる者は救われる。ただそれは神のたまものである。
    ●復活(127頁)
    人の子は人の手に渡され、人々はこれを殺さん、かくて三日めによみがえるべし。

    ☆モーリヤックの本(既読)
    「愛の砂漠」モーリヤック著・杉捷夫薬、新潮文庫、1952.09.15
    ☆関連図書(既読)
    「死海のほとり」遠藤周作著、新潮社、1973.06.25
    「イエスの生涯」遠藤周作著、新潮社、1973.10.15
    「キリストの誕生」遠藤周作著、新潮社、1978.09.25
    「旧約聖書入門-光と愛を求めて-」三浦綾子著、カッパ・ブックス、1974.12.20
    「聖書物語」山形孝夫著、岩波ジュニア新書、1982.12.17
    「ふしぎなキリスト教」橋爪大三郎・大沢真幸著、講談社現代新書、2011.05.20
    (2012年7月22日・記)

  • キリスト教の本質はキリストに宿っている。カトリック作家である著者のモーリアックは、「人」としてのキリスト像を掘り下げて、歴史の流れに打ち込まれた『イエス』その人を描いた。洗練された文章から浮き彫りにされるイエス像は、悲しみと苦しみの只中で誰よりも無力だった。人の心を動かすことが奇跡なのだとしたら、それは愛によってしかなされない。数々起こされる超自然的な奇跡に本質をおかずに、『愛』と言うどこまでも無力な情的な衝動に本質をおき、イエスの偉大さをこの上なく表現した作品。イエスの昇天は始まりなのだ・・・

     それから、数週間後に、イエスが、弟子たちの群れから離れて、天に昇り、光の中にその姿がとけてしまった時も、それは二度とかえらぬ旅立ちというべきものではなかった。すでに、主は、エルサレムからダマスコへ行く道の曲がり角で待ち伏せをし、サウロを、彼の最愛の迫害者を狙っている。このとき以後、すべての人間の運命の中に、この待ち伏せをする神がいたまうであろう。


    遠藤周作や三島由紀夫にも影響を与えた19世半から20世紀前半に活躍したフランス人作家。ノーベル賞作家でもある。


    08/6/3

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