- Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102052112
感想・レビュー・書評
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サンティアゴがどうしても、生贄に感じられてならない。
古い考えの人々にとって、ここの書かれてあるようなことはある種、本能的でごく自然な行為なのだろう。
開かれた考えの人々にとっては、残酷極まりないものだが、ラテンな国を舞台にしているためか、時折、情熱や美しさを感じる。
こういう本能的な残虐性、集団心理は、妬みや差別意識がベースにあるように思う。
殺人とまでは行かずとも、会社や地域など、コミュニティの存在する場所であればどこでも、似たような事象は生じ得るのではないか。
そう思う。
それを象徴するかのような小説に昇華させたのが、ガルシア=マルケスという作家のすごいところである。
名作。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
行ったこともないコロンビアの街の情景が浮かび上がるような作品。当時の市井の人々の暮らし振りや、文化と宗教が混ざり合った猥雑な作品の雰囲気が素晴らしい。
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町の人間の殆どに、ましてや本人にさえ予告されていた殺人が起こる。その経緯を第三者が記録という形で淡々と語る。
多数の登場人物の人間関係や、小さな偶然、また過去に行われた卑劣な行為が相互作用し、犯行は行われる。
ミステリィではなく、純粋な人間ドラマ。短いのでぜひ読んでほしい。 -
町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか? 閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた、幻想とも見紛う殺人事件。凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。
(Amazonレビューより) -
読書会の課題本なので読んだ。著者はノーベル賞作家。モデルとなった実際の殺人事件もあったらしいが、そういうウンチク抜きに読んでも十分面白い。
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難しいのかと思ったら全然そんなことはなく、スローモーションでサスペンスの現場を見ているような、しかもすでに1度見ているような、なのに1度も見ていないような、実は途中から見ているような、そもそも始まりも終わりもないような。そんな不思議な読書体験だった。最初からまた読みたくなる。
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なるほど、それで「予告された殺人の記録」になる訳か。うーん、あんまりピンと来なかった。
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コロンビア出身とのことなので、読んだのですが、挫折しそうでした。ガルシアマルケスは好みがはっきり分かれる気がします。
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名前だけはよく知っていたが、一度も読んだことのないガルシア=マルケス。
本屋さんで見かけて、これだけ薄い本なら読めるかなと手に取ってみたら、懐かしい絵が表紙になっていた。
メナード美術館に船越桂さんの作品を観に行ったときに、常設展か何かで観た作品。
顔だらけの迫力ある作品で記憶に残っている。
という、薄い本で表紙が気に入ったという理由で購入。
薄いのは本の厚みだけだった。
もっと若いときだったら途中でやめたと思うくらい読みにくかった。
登場人物が多い。どんどん出てくる。
もともと外国の名前に混乱しやすいのに、こんなにドヤドヤ出てきたらダメでしょうと焦る。
物語としてはサンティアゴ・ナサールという青年が殺される。
この青年が殺されることは、周りも十分知っていたことなのに何故殺人は起きてしまうのか。
サンティアゴの友人が謎を解く。
こういった感じのもので、始まりからサンティアゴが死ぬことありきで物語は進む。
本の裏表紙の文章によると推理もののようにも感じられたが、推理というより閉鎖的な田舎での人間模様を読んでいくような作品だった。
日本だと横溝正史なんかがこういった環境での物語を多く書いているが、それとも違う運び方。
こちらも殺され方はなかなか残酷ではあるけれど、見立て殺人ではないので残酷さそもそもが目的というものと結果でしかないということからしても違う。
わかりやすい被害者であるサンティアゴの事件を通して、閉鎖された環境における被害者が浮き彫りにされてくる。
悪意なく害を被るということが、外からの刺激や交流の乏しい環境にいると起こりやすいのかもしれない。
おそらくは読み方を変えれば見えるものも変わる深い作品だろうと思うけれど、先述した通り登場人物が多くて混乱しそうになるのを堪えることに気が行ってしまい、うまく読み取れなかった。
一度でなく二度三度と読んだほうが、見えてくるものも違って面白いと思うので、また読み返してみたいと思う。 -
マルケスで初めて読んだ本。
登場人物がいっぱい出てきて名前を覚えるのは大変だが、多面的視点で描かれていて、人物の印象がころころ変わり面白い。
構成もいいが、ミステリーとして読むには物足りないかも。