予告された殺人の記録 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102052112

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  • バヤルドとアンヘラの結婚によって、アラブ系のナサール一家、よそ者のバヤルド一家、アンヘラ一家の三家族が没落している。ホントは、ビカリオ兄弟は真剣に、誰かに、このやるやる殺人をとめて欲しかったけど、村全体が無意識に、ナサールの死を願っていたし、バヤルドの追放も願っていたからスルーされた。あの朝、司教が上陸していれば、この殺人は起きなかったはずだ。カトリックなので、この二人は離婚できない。だから取り返しがつかない。アンヘラは、母親にぶたれて、はじめて、バヤルドを愛するようになるのだが、これは複雑な女性心理だ。

  • 婚儀と祭の輝かしい空間を、死を背負った男たちが駆け抜けてゆく不穏なイメージ… 当の殺人者たちさえ止めようとしていたのに、なぜ事件は起こってしまったのか。小さな町のモラルから、大きな近代化への過度期かと。前時代の秩序というものは、それが終わってみるとやはり狂気に思えますね。共同体が崩落するときの圧力(パワー)とは何とも恐ろしい。サンティアゴ・ナサールは正しく犠牲になったのだ…

  • すでに映画になっているようだが映像が次々思い浮ぶ流麗な面白い話だった。殺される事が予告されている男。犯人は性格の違う双子。2組みの結婚するカップル。その2組みの手紙は片方は愛が詰まって未開封。片方は愛がなく投げ出される…そんな風に対になっていたり順が逆になってたり技巧的な工夫も面白かった。登場人物の名前が几帳面にフルネームになるのはなぜなのかしら?あとがきにアナグラムが隠されているらしいとあったけど不思議な雰囲気だった。若い犯人のペドロとパブロ・ビカリオと殺されるサンティアゴ・ナサール。運命に翻弄される姿が証言の形で見事に浮かび上がった。アンヘラ・ビカリオが謎めいていて逞しくてとても魅力的だった。

  • 名作「百年の孤独」の作者の薄い小説。相変わらずの長いセンテンスで脱線気味の独特の文体がよい。だが読んでいて物足りない感じがあった。破天荒なマジックリアリズム描写が無かったせいで解説を読む。1950年台の実際に起こった事件を取材して再構成しているようだ。ジャーナリスト出身の著者の面目躍如で現実社会の綿密な取材と描写がこの作家の重要な要素であると再確認。しかし南米の古い前近代的な共同体社会は現実にもかかわらず実に泥臭く血なまぐさく傍から見て面白すぎる。

  • 時間軸のずれた文章が悲劇的な結末に向けて噛み合っていく。リアルな文章が幻想的に感じるような小説です。結構生々しいのに…
    何より本が薄い!登場人物が多いですが読みやすいです。

  • 物語の最後にいきたくて
    何回も何回も読んでいる本。
    1回読んだだけでは
    カタカナの名前が覚えられなかったけれど読めば読むほどもっと面白くなっていく。
    最初に読んだときは衝撃的でした。

    それにしても構成の仕方が
    素晴らしい。

  • 閉鎖的な田舎町で、町をあげての婚礼騒ぎの翌朝に起きた殺人事件。明確な犯行予告があったにもかかわらず、なぜ事件は避けられなかったのか……。
    実際に起きた事件をモデルとしたルポルタージュ風の中編。複数の視点、時制から重層的に語られる物語は短めながらも読み応え充分。幾つもの偶然が積み重なることで、必然ともいえる殺人に向かう様の息苦しさに圧倒される。これで150ページ足らずだとは……

  • ノーベル賞作家・ガルシア=マルケスが自身の最高傑作と評する作品。

    舞台はある閉鎖的な小さな村。あらすじは表題通り、誰もが起きると知りえながら、誰も殺人を止めることができなかったという話。犯人が凶器を手に携え、奴を始末する!と喚いている。冗談だろう、そんなことをするような人じゃない、あー忙しい忙しい…村人たちの唱える言葉は様々でも、一様に”昨日が平和だったのだから、今日も平和だろう”と信じて疑わない。しかし、殺人は本当に起こる。平和な村に訪れた突然の惨劇に人々は混乱し共同体は崩壊する。人々の目には突然だった崩壊は、しかしその実、殺人のずっと前からすでに始まっていた。

    これって今の日本じゃね…?と、石原慎太郎の「新・堕落論」を同時に読みながら思った。平和の毒…こーいうことですか?!

    短くて内容も濃くて字も大きくて読みやすかった。ただ登場人物大杉。143ページで50人強って何事よ(´・ω・`)

  • ガルシア・マルケスだけどこれはいつもの土っぽい香りのする幻想文学ではなく、実際に起こった殺人事件のルポルタージュ。タイトルや小説冒頭でも予告された殺人とあり、読者はなぜ誰も事件を阻止出来なかったのかという疑問を抱きながら読むことになるのだけど、この計算されつくした構成がすごい。徐々に明かされる動機やそれにまつわる花嫁の物語、殺人の計画が着々と進む様子など読み進めるほどに緊張感が高まり、最後の瞬間はまさに息を呑むほど。ページは150ページほどですが、とても濃密な本。

  • 誰の手によって誰が殺されるのか、街中の人々が知っていた。それなのに、誰ひとり、彼の死を防ぐことができなかったーー。小さな街で起きた、妙な事件の記録。

    薄いのに、非常に人口密度の高い小説。登場人物が選定されず、それゆえに妙にリアリティーがある。群像劇というよりはルポルタージュっぽいなぁと思っていたら、実際に起きた事件をモチーフにしているのだとか。納得。

    きっとマルケスの中では入門編だと思うのだけど、この薄さで既に登場人物が覚えきれない疑惑。この様じゃ『百年の孤独』に立ち向かえる気がしない…。

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