予告された殺人の記録 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102052112

感想・レビュー・書評

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  • サンティアゴ・ナサールが殺される?
    誰が、誰を、何故殺すのか、その凶器さえも町中が知る所になっていたその犯行は、その日何故止められることなく起きてしまったのか。
    「わたし」という、被害者の親友であり、加害者とも飲み友達であった語り手を通じ検証される事実は、時間軸を意図的に操作されて(前後して)紡がれ、物語られる。

    「田舎町」という特別な共同体の中で発生した非日常をめぐる町民たちの繊細な感情や心の機微の描写が技巧的で、とてもおもしろい。

    解説によれば、「崩壊しゆく共同体」を描くことがガルシア=マルケスの十八番だと言うが、そう聞くと、サンティアゴを囲む町民が、彼の殺害に向け「目を閉じてゆく」「目を背けてゆく」過程が象徴的に描かれているようにも思われてくる。

    最後の章で、直前まで不運にも予告を知ることのなかった二人、サンティアゴの母プラシダ・リネロと彼の親友で医学生のクリスト・ベドヤの努力虚しく、惨殺という予定された結末へと向かうサンティアゴの姿は、悲劇的でありながらどこか喜劇的でもあり、また虚構的でありながらもリアルで、これがガルシア=マルケスの「物語」かと、鳥肌がびりびりと立つのを禁じ得ない。

    最後までアンヘラの純潔を奪った真犯人(?)が明らかにならない点は、まさに「物語られる」過去といった感じで、光の当たらない「闇」が残されるようで印象的だ。小説としては、煮え切れず不満に思う読者もいるかもしれないが、僕はむしろそこに好感を持ったし、にくい演出だなあと思った。

    物語の最後、生前のサンティアゴの最後の目撃者が、「川の向こうから」彼と話す場面は秀逸だと思う。
    「おれは殺されたんだよ」と自分の腸に触れながら言う画は最早滑稽でさえある。

    時間が章によって前後することで、物語がまさに穴を埋めるように展開していく様はさすがノーベル文学賞作家と言うべきか、久しぶりに「面白い」小説を読んだ気がする。

  • 「予告された殺人の記録」(G・ガルシア=マルケス:野谷文昭 訳)読了。『人は運命からは逃れ得ないものであるのか。』読み終わって最初に思ったのがこのことであった。淡々と書かれた文章がかえって物語の悲劇性をいや増す。ナサールの人生に深く深く同情してしまう私である。この作品におけるガルシア=マルケスの透徹した視点は、ラテンアメリカ文学としての独特の空気の色や匂いを持ちつつも、地域性や人種の枠を超えた共感を呼ばずにはおかないですね。確かに傑作でした。これは読むべし。

  • 犯人が殺人予告をし、町民のほとんどがそのことを知っていたにもかかわらず、アラブ人系住民のサンティアゴは惨殺された。ある僻地の村で起こった殺人事件を描いた小説。

    訳者あとがきにあったような深い読みはできなかったけれど、それでも充分楽しめた。数十人の町民の証言によって組み立てられた殺人の記録は、ミステリっぽい。しかし、謎解きがメインではなく(実際に真実は不明)、この殺人事件の顛末やその背景、人間関係が興味深いため再読に耐えうると思う。

    最終章の殺人シーンは、幻想的で素晴らしい。

    ノーベル賞作家G・ガルシア・マルケスに興味がある人は、いきなり『百年の孤独』は大変だから、まずはこの中篇がオススメ。

  • どうにもね。あたしゃ好きだな、ガルシア・マルケス!!
    この重く、熱い感じが私を熱狂させる。
    それもサッカーサポーターのような熱狂ではなく、
    静かにそっと狂わせるのだ。

    この土地の人間でなければ分からないことも五万とあるのだろう。
    でも、私はマルケスの本を読んでいるとき、
    その価値観を一瞬だが生きることができる。
    そしてその重苦しさに窒息しそうになる。

    彼には予告された殺人が遂行されてしまう。
    しかしそこに立ち現れる、顔のない運命の神様のようなものを感じるのだ。それは、もう、そうとしか言いようのないものだ。
    神様、それは残酷な響きをもっているけれど、
    とにかく、神様がいるのである。

  • すごい、すごい、白い光と匂いがたちこめる、でも箱の中。みたいな印象。
    時間もぐらぐらで、でも流れは一本で、最後までとまらず最後はとまる。
    これが一番面白い。って言う人いっぱいいるのかな。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「でも箱の中。」
      箱の側面にある窓から見える外の世界が、チョッと歪んでいると言うか、屈折してちゃんと見えてない(上げ足取りみたいなコメントに...
      「でも箱の中。」
      箱の側面にある窓から見える外の世界が、チョッと歪んでいると言うか、屈折してちゃんと見えてない(上げ足取りみたいなコメントになってしまった)。。。
      2013/04/15
  • どなたか、この物語の意味を、教えてもらえませんか???
    実は、知り合いにお薦めされた本なのですが、さっぱりこの話の魅力が掴めませんでした。
    勿論それは、私に、この話を理解するだけの脳味噌
    がないからってことだけはわかってるんだけど。。。

  • ガルシア・マルケスの作品の中でいちばん好き。

  • 「百年の孤独」で有名なガルシア・マルケスの中では短編ということで、図書館で見つけて読んだ。

    名前が馴染みがない上にボリュームの割に登場人物が多い。
    グロいかもという口コミもあったが個人的には大丈夫だった。刺されてからこと切れるまでの描写、そこまで詳述されているわけでではないものの苦手な人はちょっとおどろおどろしく感じるかも。
     名誉殺人は概念としては知っていたがやはり不思議な感覚。アンヘラと関係を持ったという意味での真犯人が気になる。
    人物相関関係や状況・位置関係の整理をしてもう一度読み直したい。

  • ガルシアマルケスの描く街には、芳しい花や広大な海の香りが漂いつつも、どこかもの寂しい荒廃の風が吹いている。

  • 2023/08/29 ★★★★★

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