予告された殺人の記録 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102052112

感想・レビュー・書評

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  • 大きさも形も不揃いなモザイクのピースを、わかりやすい外枠や特徴的な部位からはめていくのではなく、まずはど真ん中の破片、次は右下、次は左上…とバラバラに置き続けて観る者の頭を混乱させておいて、最後はその正体も意味も、なんならピースの境目すら溶けてわからなくなってしまっているのにすさまじく吸引力のある見事なグラデーション模様の作品を完成させたような作品。

    冷静に眺めるとどう考えてもおかしいのに、あまりに緻密な描写から当然の現実と思い込んでしまいそうになる、マルケスの代名詞「マジックレアリズム」は健在。

    本作は実際の迷宮入り事件をモデルにしているのだけど、あまりにリアリティがありすぎたので、事件の真相を知ってるのではと疑われて警察の取り調べを受けたとか…。

    物語はいきなり一人の青年がこれから殺されることが明かされてスタートする。そして、犯人たちの名前もすぐ明かされる。
    では、犯人探しではなく、トリックや動機を暴くタイプのミステリー小説が始まるのか…と思ったらそうではない。

    語られるのは、登場人物たちの奇妙な行動。

    犯行直前に殺害の意志を触れ回りながらも誰かが犯行を止めてくれることを期待するような行動をとり続けた犯人たちの姿。
    それを目にしながらも結局誰も(悪意なく、決して故意でもなく)殺害を止められなかった町の人々の姿。
    事件後に人生が狂った人々の姿。
    町中がこれから殺されることを知りながら当の本人は知らなかった被害者青年の姿。
    そして、事件の当事者の一人であるはずのとある花嫁の心に事件後芽生えたあまりに異常な愛。
    そして、「最期」の瞬間。
    多くの人物の異質な行動が交互に入り組みながら語られていきます。

    そこで示されているのは、よそ者が持ち込む波紋、旧態然とした名誉の形、差別、偏見、そして、それらに振り回されて揺らいでもろさをさらす共同体の危うさといったもの。

    ミステリーであれば最も大事なはずの「真実」は最後まで明かされない。
    でもそれが当然で、全く重要ではないと思えてしまうのは、やはりマルケスのマジック。

    マルケス自身が最高傑作だと言ったとのことで、たしかによく作り込まれた作品です。

  • いやいやいやこれじゃ死ぬじゃん死ぬじゃんと思っていたらやっぱり殺された。

    読み始めたとき、終盤の「おれは殺されたんだよ」というセリフがたまたま目に入り、マジックじゃないリアリズムの小説だったよなあと訝しみながら読んだのだけれど、なるほど、の読後感だった。時折はさまれる突拍子もないロマンティシズムに、ああガルシア=マルケスはここがいいのよねと感じ入りつつ、すぐ「ここガボ盛ったよね?盛ったよね?」と落ち着きがなくなっていたので、他の作品を読むときより気が散っていたかも。町の人たちがなんであんなにトロトロしていたのか訳者の解説を読むまでわからなかったので、もう一回落ち着いて読んで町の空気を感じ取りたい。

    とりあえずアンヘラはあの時点で結婚しなくてよかった、ということがわかってよかった。あのあと二人はどうなったのか。

  • ようやく読めたマルケス。『百年の孤独』を読んでいる時と同じ感覚でしたが、こちらはリアリティな描写のみ。『百年…』に出てきた黄色い蝶のような不思議は一切なかったように思います。
    高評価作品ですが、個人的には現在読みかけの『エレンディラ』みたいな、不思議成分多めの作品が好みです。
    男臭い社会、母性の力強さの描写は、マルケス作品の象徴のようですね。
    『エレンディラ』もこの勢いで読了したいです。

  • 名誉殺人を理解できないせいか冬の寒さのせいか
    読後感はあまり良いものではなかった。
    少なくとも寒い年の瀬にストーブを抱えて読む本ではなかった。
    夏の暑い日の午後に読めばもう少し感じるものがあったのかもしれない。

  • 街の大婚礼の翌日に彼は惨殺された。30年まえに何があったのか?
    様々な住民がそれぞれの思惑を持って彼との関係を持ち、独自に動いた結果、その因果がうまく絡み合い哀れなスケープゴートはあっけなく殺された…操り人形のように歯車が回る。ミステリなのかと思ってよむと全然そうではないが、外国の昔話だと思ってよむとなかなか謎が多く不思議な小説。

  • 誰の手によって誰が殺されるのか、街中の人々が知っていた。それなのに、誰ひとり、彼の死を防ぐことができなかったーー。小さな街で起きた、妙な事件の記録。

    薄いのに、非常に人口密度の高い小説。登場人物が選定されず、それゆえに妙にリアリティーがある。群像劇というよりはルポルタージュっぽいなぁと思っていたら、実際に起きた事件をモチーフにしているのだとか。納得。

    きっとマルケスの中では入門編だと思うのだけど、この薄さで既に登場人物が覚えきれない疑惑。この様じゃ『百年の孤独』に立ち向かえる気がしない…。

  • どなたか、この物語の意味を、教えてもらえませんか???
    実は、知り合いにお薦めされた本なのですが、さっぱりこの話の魅力が掴めませんでした。
    勿論それは、私に、この話を理解するだけの脳味噌
    がないからってことだけはわかってるんだけど。。。

  • 全く頭に入らずつらかった…

  • コロンビアの小さな町で起きた、殺人事件に町中の人達が巻き込まれている。
    実際の事件である。
    朝の7時前の、多勢の人が見ている広場に面した家の前での豚解体用の刃物によるものだ。
    1982年のノーベル文学賞を受賞したガルシア・マルケスは、この精緻な取材による自分達の町の事件をすっかり文学作品として昇華させている。マルケス流の神話作用も働いているようだ。

  • 事件の始まりから、時系列に沿って話を進め、佳境の直前で、一気に二十年時間を進め、事件後の展開を語った後で、最後に時間を戻してクライマックスに至るという手法は、みごと。
    日本人の私としては、馴染みのない名前が、四十人近く出てくるのが、厄介で、登場人物の名前と人物紹介のリストを作りながら読まないと、この人誰だっけ、という疑問で、筋も表現も頭に入ってこない。登場順に最初の30人をあげると:
    1 サンティアゴ・ナサール 殺された
    2 プラシダ・リネロ 1の母
    3 ビクトリア・グスマン 賄い婦
    4 ディビナ・フロール 3の娘
    5 イブラヒム・ナサール 1の父
    6 クロティルデ・アルメンタ 牛乳屋(食料品店&酒場)女主人
    7 パブロ・ビカリオ 1を殺した。7と8は双子
    8 ペドロ・ビカリオ 1を殺した。7と8は双子
    9 マルゴ 話者の姉
    10 カルメン・アマドール 神父
    11 クリスト・ペドヤ 1と話者の友人
    12 フローラ・ミゲル 1の婚約者
    13 ドン・ラサロ・アポンテ 町長
    14 アンヘラ・ビカリオ 離婚された娘 7&8の妹
    15 プーラ・ビカリオ 14の母
    16 ハイメ 話者の末弟
    17 ルイサ・サンティアガ 話者の母
    18 バヤルド・サン・ロマン 14の元夫
    19 マグダレナ・オリベル 18と同じ船の客
    20 ポンシオ・ビカリオ 14の父
    21 ペトロニオ・サン・ロマン将軍 18の父
    22 アルベルタ・シモンズ 18の母
    23 ルイス・エンリケ 話者の弟(16より年上)
    24 ディオニシオ・イグアラン医師 17の従兄弟
    25 メルセデス・バルチャ 話者の妻
    26 マリア・アレハンドリーナ・セルバンテス 慈悲の店女店主
    27 ファウスティーノ・サントス 肉屋
    28 レアンドロ・ポルノイ 警官
    29 ラサロ・アポンテ大佐 28の上司
    30 ドン・ロヘリオ・デ・ラ・フロール 6の夫

G.ガルシア=マルケスの作品

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