ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

制作 : 野崎 孝 
  • 新潮社
3.65
  • (491)
  • (477)
  • (973)
  • (95)
  • (16)
本棚登録 : 5161
レビュー : 524
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102057018

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • サリンジャーは若い頃にライ麦畑~を読んだきりだったのですが、小川洋子&クラフトエヴィング商会のパスティーシュ本『注文の多い注文書』に収録されている「バナナフィッシュの耳石」を経て、ようやく今更これを読むことに。実はそれ以前に辻原登の『闇の奥』で「笑い男」のエピソードがかなり重要な役割を果たしていたので、いい加減『ナイン・ストーリーズ』くらい読まねばなあと思っていたところでした。

    のっけから「バナナフィッシュにうってつけの日」のインパクトが絶大。この作品以外にも戦争の影は差しているけれど、深読みや解釈をせずとも、情景だけでとても鮮烈だった。原題は「A Perfect Day for Bananafish」。おかげで脳内でルー・リードの「Perfect Day」がずっと流れてます。

    あとはやっぱり「笑い男」が面白かった。外枠になる「コマンチ団」の少年と団長の物語より、団長が語ってきかせる「笑い男」の話に圧倒的に興味を惹かれてしまう。ユゴーの「笑う男」がベースにあるのだろうけど、たとえばバッドマンのジョーカーとか、もっと拡大したら日本の口裂け女にも通じる悲劇的な過去から悪への変貌、それでいて悪役ではなくダークヒーロー的な活躍をする「笑い男」と彼の仲間たちの魅力。

    「コネティカットのひょこひょこおじさん」は、大人たちのとりとめない会話の内容よりも、無慈悲にイマジナリー・フレンドを取り換える幼い女の子の存在が印象的。どの短編にもそういえば幼い子供が出てくるあたり、サリンジャー研究してるひとは分析しがいがありそうだなとか思いつつ。私はそこまで思い入れがあるわけではないので、どれも単純に筋を追うのが面白かった。

    ※収録
    バナナフィッシュにうってつけの日/コネティカットのひょこひょこおじさん/対エスキモー戦争の前夜/笑い男/小舟のほとりで/エズミに捧ぐ――愛と汚辱のうちに/愛らしき口もと目は緑/ド・ドーミエ=スミスの青の時代/テディ

  • 再読。

    やっぱり私、サリンジャーわかんない!(笑)

    外国文学って時々、翻訳で読む意味ってあるのかなぁって思うのね。
    ストーリーを追う話じゃない場合、
    日本の作品でも、日本語が母国語じゃない場合、果たしてこれが理解できるのだろうか
    って思う事、あるじゃないですか。

    あとがきで野崎孝氏の
    「サリンジャーの文学の魅力をうんぬんするということは、
    彼が操るアメリカ口語をその抑揚までも知悉した上に」の一文に、
    あーホラ、やっぱりそうじゃん!翻訳されたもの読んだって、
    「彼が展開する特殊な世界に自由に入って」はいけないんだよ!
    と、名訳者野崎孝氏の解説をもってして、ご本人の顔に泥を塗ってしまうみたいだけど、
    サガンは朝吹登水子、サリンジャーは野崎孝氏の世界を味わう事に
    どうしたってなるわけで、
    そしてやっぱり、非常に悲しいことに、私にはその世界がわからないのです。

    ・バナナフィッシュにうってつけの日
    はやっぱり一番世界が完成されてる気がする。
    海の色、シビルのカナリヤ色のセパレートの水着との対比で
    シーモアに見えてるだろう?ブルーの鮮やかさ!
    その色彩のコントラストがなんといっても印象的。

    『笑い男』と『愛らしき口もと 目は緑』も好き。
    幾分理解出来そうな気もするから(笑)

    ここに収められてる短編はどれも切ないのだけど、
    この二つの切なさが私の好きな切なさなのです。

  • 「エズミに捧ぐ」「笑い男」「バナナフィッシュにうってつけの日」が面白かった。
    短編なので比較的読みやすいが、アメリカ口語がどうにもしっくりこなかった。お話はなかなか面白かったけど、しっかり読まないと話がわかりづらく感じた。アメリカ口語的表現に慣れてからまた読みたい。

  • 「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」のストーリーは抜群に面白かった。迸る情熱がストーカー!
    二人の訳者で読み比べてみたけれど、どちらの訳にもよさがあり、どっちがよいとは言い切れなかった。

  • 若い人や子供の感性の描写が随所にちりばめられている。それを「大人」の世界からある種異端なものとしてとらえて書かれている。著者は両者の住み分けができる、行き来できる人。だからこそ板挟みになると痛みを感じただろうし、それを物語にしようとしたのだろう。

  • サリンジャーとくれば、ライ麦畑でつかまえてが一番最初に思い浮かぶことが多いです。

    この作品は題名通り9編の短編からなっています。

    この本を知るきっかけは、新潮文庫の夏の100冊

    大学生のころまだ、梅雨時期でした。

    何気ないストーリーが9編なのですが、非常に心にのころ1冊です。

    外国文学特有で、訳が難しかったりすると、何度か、読みなおしますので、それが、また印象を
    変えていることもあると思います。


    個人的に好きな短編は「バナナフィッシュにうってつけの日」

    シーモアと妻がフロリダへ2回目の新婚旅行に出かけた際の出来事が舞台
    ビーチで過ごすシーモアの一日を追いかけている。
    前半は、奥さんや奥さんの母親の会話が淡々と続いていきます。
    しかし、その日の夜、シーモアは突然拳銃自殺をとげる。
    なぜ?と思わせる展開に次を読みたいと思わせる作品

    淡々と描かれた作品群の中になぜか引き込まれていく1冊。

  • これを「面白い」という言葉で片付けるのは少し違うと思うんだよな/ 9篇それぞれ色々あるんだけど、最後の1篇がまぁ好きかな/ 最も有名な?笑い男?とはアッチに対する郷愁というか雰囲気の喚起があっていいけど、面白いかと問われればまた少し違う/ 愛らしき口もと目は緑、に関してだけはネットで答え合わせをしてしまった/ ライ麦のほうが好きなんだな、トータルね

  • 短編集ですが、話によって好き嫌いが分かれるので
    好きな話だけピックアップして読むのが良いかと思います。

  • 面白い話もあったけど、短編の楽しみ方が分からない…
    もっと色々読んで、またいつか再読してみたい。

  • 『バナナフィッシュ日和』が読みたくて手に取りました。サリンジャーの作品で幾度となく取り上げられる“グラース家”の兄弟たち。この作品では長兄であるシーモアが初登場します。

    冒頭で女性2人のやりとりからシーモアは神経衰弱であると分かり、以降、シーモアの謎めいた発言や行動が時折登場します。海のなかでシーモアが幼女シビルに対し「バナナフィッシュ」の説明をする場面は、優しく儚い口調と幼さが両立した危うい色気のようなものを感じます。その後突然の幕引きが訪れますが…この作品から格言めいたものを汲み取るのはほぼ不可能かと思います。
    事実を事実として伝えたシーモアの“とある1日”を切り取った本作は、単純なようでいざ考察しようとすると千差万別の意見が生まれているようです。私自身は今のところ快さも不快さも感じなく、起こる出来事を不思議とすんなりと受け入れたという読後感。でもグラース家の登場するサリンジャー作品を色々と読んでみたいとそわそわしたところを思うと“サリンジャーの計画通り”なのかもしれません。

サリンジャーの作品

ツイートする