ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102057018

感想・レビュー・書評

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  • 【不自由を書くのが上手すぎる】

    この短編集の妙はこれに尽きると思う
    時代・格差・戦争によって心身の価値観を損なわされ、選択肢が狭められた人物が
    いかに無意識に自分自身の思考、行動範囲を狭められているのか、そしてそれを自分では気付けないでいるのかを描くのが上手い

    氏の作品一つひとつが難解と受け取られるのも、まさにここに起因すると思う

    もちろん、当時の異国の時代背景や戦争のリアルを日本人目線では掴めないのは大きい
    (原作で読めないのも十分ハンデだ)

    しかしそれ以上に私たちが一回でこの作品の本質を読み取れないのは、登場人物が自身の不自由に無自覚だからだ

    この短編集に出てくる登場人物らはほぼ全員、いかに自分の行動や発言が時代・格差・戦争によって制限を強いられているのか、その本質的なところには尽くが無自覚だ

    その言動がいかに不自由を強いられているのかを描いているのに、しかしその言動を取る登場人物は尽くその不自由さに無自覚だ

    だからあまりにもさらりと描く
    それが生々しい
    既にそうなってしまった人間の結果だけを描くことで、逆にその登場人物の今日に至る喪失の厚みを読者に押し付けてくる

    行間がとにかく重たい短編集だった

  • 文章の表現と構築を楽しむ感じ。しっかりスルメのように咀嚼して咀嚼して味わう感じ。
    最後のテディは、内容が好き。

  • *バナナフィッシュにうってつけの日
    交錯した、猥雑な世界。
    突然の最後。

    *コネティカットのひょこひょこおじさん
    みな自分を少し演技しているような。
    猥雑。

    *対エスキモー戦争の前夜
    物語の捌きはスッキリしてる。
    終わりは突然。

    *笑い男
    見事なストーリーテリング。至福かつ切迫の物語。

    *小舟のほとりで
    母子の温かさ。尊厳を奪う差別は子供にも刺さる。

    *エズミに捧ぐ――愛と汚辱のうちに
    愛らしい話と思いきや、一転して、ハードボイルドな展開に。

    *愛らしき口もと目は緑
    えっ?どういうこと?

    *ド・ドミーエ=スミスの青の時代
    詐欺と虚言

    *テディ
    子供性への疑問。だが?最後の悲鳴は、、

  • 当時の時代背景や
    アメリカ社会の様子など
    無知なので
    理解しえたとは言い難いけど
    会話のやり取りの中で
    それらを空想する

    戦争に行ってしまうと
    勝っても負けても
    日常に戻れない感
    戻って来れない感がある

    謎解きのようで
    繰り返し読みたくなる

    新潮文庫の100冊2023

  • サリンジャー独特の世界観。色々と考えさせられる9つの物語。ジム・ジャームッシュの映画、「コーヒー&シガレット」を思い出した。

  • 面白かった。ちょっと退屈に感じたり、ややこしく意地悪に感じているとぱしっと叩かれるような。油断していられない。冷静な文章なのにものすごい笑わされたり。エズミとテディとユダヤの話が気に入ってる。どの編も引き込まれた。こんな個性的な文章だと、訳って難しいんだろな。作者の第一言語で読めないことへのジレンマはあるけれど、こんなに楽しんだということは、この訳はすごく面白かったということなんだろな。

  • 小舟のほとりでが好きです。優しくて。

  • さっと読んだだけではなにがなんだかわからない話が多かった。
    これはこういうことが言いたいのかもしれない…といろいろ考えながら読みたい人にはすごく向きそう。

    『バナナフィッシュにうってつけの日』
    『笑い男』
    『小舟のほとりで』
    『エズミに捧ぐ』
    が好き。

    • まっちんぐ町子さん
      海外文学は読む機会が少ないが、言葉の使い方が面白いと思った。相手が人間なのか動物なのか、幽霊なのか、おばあさんであるのかなど、想像の幅が大き...
      海外文学は読む機会が少ないが、言葉の使い方が面白いと思った。相手が人間なのか動物なのか、幽霊なのか、おばあさんであるのかなど、想像の幅が大きくて、人によっていろんな解釈があるのかなと思った。
      短編物だけに物語空白が多いからこその想像力だと思う。
      2022/09/12
  • 「テディ」と「バナナフィッシュにうってつけの日」「コネティカットのひょこひょこおじさん」がお気に入り。特にコネティカット〜は、ラストの「あたし、いい子だったよね?」にすごく胸が締め付けられた。親として生活する彼女と、良い子かどうかを気にする幼さが、すごく刺さった。
    あとテディもラストがすんごい好み。哲学好きなのでこういう話をずっと聞いていたい。バナナフィッシュ〜はもう文句なしの名作。

  • 推しが読んだらしいので読んだ。
    「バナナフィッシュにうってつけの日」や「テディ」を読み終えた後のどうしてこうなった感が堪らなくよかったけども、個人的なオススメは「エズミに捧ぐ」と「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」

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