アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)

  • 新潮社
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レビュー : 124
  • Amazon.co.jp ・本 (580ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102060018

作品紹介・あらすじ

モスクワ駅へ母を迎えに行った青年士官ヴロンスキーは、母と同じ車室に乗り合わせていたアンナ・カレーニナの美貌に心を奪われる。アンナも又、俗物官僚の典型である夫カレーニンとの愛のない日々の倦怠から、ヴロンスキーの若々しい情熱に強く惹かれ、二人は激しい恋におちてゆく。文豪トルストイが、そのモラル、宗教、哲学のすべてを注ぎ込んで完成した不朽の名作の第一部。

感想・レビュー・書評

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  • 青年期、中年期に、そして今回の老年期にと3回目の再読です。
    このような世界文学をけっこう再読しておりますが、読む時期のパターンがだいたいこのようになっております。

    新型コロナウイルス肺炎の自粛が長引く中、再読し遺したものはないか?と頭をよぎるのも精神的影響でしょうか。

    この有名な不倫小説『アンナ・カレーニナ』を選びました(笑)深いわけはありません。むしろヒロインアンナの運命より、副主人公リョーヴィンの堅苦しいほどの真面目な人生観が、若年の頃より印象深く残っているので、もう一度しっかり読んでみたいと思ったのでした。

    さて、上巻は美しい魅力的なアンナ・カレーニナが兄オブロンスキーの浮気が原因の夫婦喧嘩を仲裁するためモスクワにやって来て、舞踏会で出会った美青年士官ヴロンスキーと不倫愛に至ってしまうところから始まります。
    オブロンスキーの友人リョーヴィンは、オブロンスキーの妻ドリーの妹キチイに結婚を申し込んであっけなく振られます。なぜか?キチイはヴロンスキーが好きだからです。けれどもヴロンスキーはアンナに心奪われていてキチイは目じゃありません。リョーヴィンもキチイも失意のどん底。やがてアンナも好きではない夫カレーニンに、浮気がばれて困りはてるどん底が。

    などとあらすじを言うとなんだかハーレクイン出版物のようですね。でも、トルストイさんの筆にかかると世界文学の名作になるのですよ。ま、わたしは登場人物の一人ひとりに寄り添ったるるたる描写が、人間のこころ、気持ちの動きを奥深く見せてくれる、そこに魅力を感じるのです。

  • 恥ずかしながら、この年になるまでトルストイには手を付けたことがなかった。よくドストエフスキーと並んで19世紀文学の双璧として扱われる人だけど、海外文学を読み始めた中高生のころは、ドストエフスキーの方が苦みがあって、深刻な感じがして、なおかつ都会的なイメージがあった。ちょっと小難しいものに触れていたいという、ひねくれた自尊心からドストエフスキーに手をつけて、【罪と罰】にどっぷりハマった。それに、好きだった日本の文人は小林秀雄にしろ、安部公房にしろ、ドストエフスキーを自分の文学の根底に据えているような人ばかりだったし、なによりもトルストイの方にはなんとなく抹香臭い、悟り澄ました爺さんのようなイメージが根強かった。

    トルストイを意識したのは、映画評論家の町山智弘が、大好きな新井英樹の漫画をトルストイの【戦争と平和】になぞらえていたのを知った時だ。新井英樹の漫画は膨大な登場人物が登場するが、そのいずれもがもの凄くキャラクターが立っていて、なおかつ脇役に至るまで人物の人生や人格が克明に描かれている。町山智弘はそれを「世界を描いている」と呼んでいた。かれにそう呼ばしめた根幹がトルストイにあるのなら、触れておいて損はない。そう思い、六本木の青山ブックセンターで新潮社版の【アンナ・カレーニナ】上中下と【戦争と平和】一~四までを買い込んだ次第。

    読んでみて驚いた。損はないどころじゃない。大当たりだ。ここ数カ月読んできた古今東西(と威張るほど幅広く手をつけられてはいないけど)の作品の中でぶっちぎりに面白い。上巻は亭主持ちのアンナがモスクワで青年将校ヴロンスキーと出会い、彼との密会を重ねて妊娠が発覚し、旦那のカレーニンと決別するまでが主軸となっているが、貞淑だったアンナが恋愛に狂って旦那を生理的に受け付けなくなるまで、もの凄く克明に描かれている。ここの部分だけ抜き出しても、十分すごい。

    しかしトルストイがさらにすごいのは、当時の貴族社会の諸相を多彩な人物の個性を通じて描き出していること。女にはだらしないが精力的なオブロンスキー、農場経営をしているリョーヴィン、共産主義のその兄貴ニコライ、ヴロンスキーにフられて宗教的な献身生活に傾きかけるキチー、そのほかもろもろ。ここはドストエフスキーとは違うところだ。ドストエフスキーの登場人物はあまりにも長い長いモノローグを繰り返して、まるで観念の幽霊みたいになることがあるが、トルストイの描く登場人物は存在感がものすごくどっしりしていて、安心してその挙動を見ていられる。そこにはドストエフスキーのような「近代」に対する不安と省察は乏しいかもしれないが、小説としてはこの上なく面白いのだ。

    自然やスポーツの描写もエンタメ系に近い楽しさがある。リョーヴィンとオブロンスキーがシギ狩りをするところや、ヴロンスキーが競馬の御前試合に出場するようなところ(ちなみに、このシーンはけが人だらけの流血の大惨事になる。ロシアの当時の競馬は超キケンだったらしい)は、今の日本の作家がお手本にしても全く問題ないだろう。

    面白さ際立つ上巻だったが、中盤以降はアンナの幸福の行方や、キチーの宗教的理想などが語られていくのだろうか。興奮しすぎてこの小説が発する問いかけにはほとんど耳を傾けなかったけど、中盤からは腰を落ち着けて取り組んでみたい。

    ケチをつけるとすれば、適当すぎる装丁だろうか。

  • アンナとヴロンスキー、リョーヴィンとキティ。共に対照的な二組が物語を際立たせる。アンナは情熱的に不倫を受け入れてしまい。刹那的な恋に走り、リョーヴィンは農業を経営しながら、宗教観の何たるかを考え、人生の根源にたどり着く。

    トルストイの宗教観・人生・道徳を盛り込んだとてつもない大作。読んで終わって欲しいと思いながらも、その先の展開、考え方を学びとおした。

    神の教えに従い、しかし人生は流れる如くの連続。その連続の日常こそが愛しいのだと考えさせられた。

  • さすが、名作。

    他の人から見れば羨むような美しい存在でも、いとも簡単に、切り立つ崖の先にいるかのように暗く、深遠な醜さに満ちた世界に落ちていくもんやと。
    ちょっとした生活の綻びからやで。
    こんなにも・・・

    良心とか、ほんとに生きるとか、正しいとか、正義とか、そうあるべきだと思われているもんなんか、あんの?と、それがさらに劇的でも何でもなく日常の端っこをちょっとつまんで引き上げるだけでこんなに出てくるでと、ほんで現代でもありえるねんでと、テレビドラマの比ではない。

  • どうしてトルストイの小説を読もうと思ったのか、もう3か月くらい前のことなので思い出せません。ただ『戦争と平和』は長すぎるのでアンナで妥協、などと適当なことを考えていたことは覚えています。

    舞台は1870年代のロシア。アレクサンドル2世の統治下、農奴解放令の余波、社会主義思想の萌芽、ポーランドやトルコとの不穏な関係・・そんな時代背景。全編を通してなんとなく人びとのそわそわした雰囲気、社会が大きく変わろうとしている兆候を感じます。登場人物政治とか教育とか経済とか信仰とか、お堅いテーマについてなにかと議論しています。

    タイトルにもなっているメインヒロイン、アンナを中心として展開される上流階級のきらびやかな社交の世界。色恋沙汰で揺れ動く男子と女子のお話です。ピュアでこじらせる系のリョーヴィンは現代日本非モテ界においても共感を呼ぶ可能性あり。

    もちろん単純に明るく華やかというお話ではなく、特にリョーヴィンの兄ニコライのエピソードなど、どよーんとしたピースもあちこちにはめ込まれていますが、いずれにしても全体的にはニ長調アレグロのトーンです。

    あとストーリーの最初に登場するオブロンスキーというオッサンは、この小説を通して個人的にイチ押しのキャラクターです。本書そのものは重厚感たっぷりのザ・露西亜文學なのですが、このオブロンスキー氏は絶妙なタイミングでちょいちょい顔を出し、上がりすぎたテンションを緩めるスチームトラップのごとき役目を果たしています。

  • 面白かったとか言うところをすぎて、なにか、この先の私の人生や
    物の考え方にまで、大きく影響を及ぼしてくる作品

  • 「恋愛はテロ」。いつだったか、ある本にそんな台詞があった。恋は盲目ともいうけれど、宗教と恋愛ほど思考停止を招くものはこの世にないのではないか。

  • 文学

  • 2017.11.05 『文学入門』
    2017.12.27 世界の文学作品を読む(2018年に向けて)

  • 初めはばらばらだった登場人物がだんだんつながりそれぞれが強い個性を失わずに話が展開する様はさすが文豪と納得。一人一人の登場人物が全員際立っていてそれを1つの話にずれることなくまとまっていて読みながら感心する。上巻なのでまだ話の三分の一しか進まないがボリュームはあるのでたっぷりと楽しめる。

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著者プロフィール

一八二八年生まれ。一九一〇年没。一九世紀ロシア文学を代表する作家。「戦争と平和」「アンナ=カレーニナ」等の長編小説を発表。道徳的人道主義を説き、日本文学にも武者小路実らを通して多大な影響を与える。

「2004年 『新版 人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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