アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)

著者 :
制作 : 木村 浩 
  • 新潮社
3.72
  • (131)
  • (126)
  • (218)
  • (18)
  • (5)
本棚登録 : 1640
レビュー : 119
  • Amazon.co.jp ・本 (580ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102060018

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 恥ずかしながら、この年になるまでトルストイには手を付けたことがなかった。よくドストエフスキーと並んで19世紀文学の双璧として扱われる人だけど、海外文学を読み始めた中高生のころは、ドストエフスキーの方が苦みがあって、深刻な感じがして、なおかつ都会的なイメージがあった。ちょっと小難しいものに触れていたいという、ひねくれた自尊心からドストエフスキーに手をつけて、【罪と罰】にどっぷりハマった。それに、好きだった日本の文人は小林秀雄にしろ、安部公房にしろ、ドストエフスキーを自分の文学の根底に据えているような人ばかりだったし、なによりもトルストイの方にはなんとなく抹香臭い、悟り澄ました爺さんのようなイメージが根強かった。

    トルストイを意識したのは、映画評論家の町山智弘が、大好きな新井英樹の漫画をトルストイの【戦争と平和】になぞらえていたのを知った時だ。新井英樹の漫画は膨大な登場人物が登場するが、そのいずれもがもの凄くキャラクターが立っていて、なおかつ脇役に至るまで人物の人生や人格が克明に描かれている。町山智弘はそれを「世界を描いている」と呼んでいた。かれにそう呼ばしめた根幹がトルストイにあるのなら、触れておいて損はない。そう思い、六本木の青山ブックセンターで新潮社版の【アンナ・カレーニナ】上中下と【戦争と平和】一~四までを買い込んだ次第。

    読んでみて驚いた。損はないどころじゃない。大当たりだ。ここ数カ月読んできた古今東西(と威張るほど幅広く手をつけられてはいないけど)の作品の中でぶっちぎりに面白い。上巻は亭主持ちのアンナがモスクワで青年将校ヴロンスキーと出会い、彼との密会を重ねて妊娠が発覚し、旦那のカレーニンと決別するまでが主軸となっているが、貞淑だったアンナが恋愛に狂って旦那を生理的に受け付けなくなるまで、もの凄く克明に描かれている。ここの部分だけ抜き出しても、十分すごい。

    しかしトルストイがさらにすごいのは、当時の貴族社会の諸相を多彩な人物の個性を通じて描き出していること。女にはだらしないが精力的なオブロンスキー、農場経営をしているリョーヴィン、共産主義のその兄貴ニコライ、ヴロンスキーにフられて宗教的な献身生活に傾きかけるキチー、そのほかもろもろ。ここはドストエフスキーとは違うところだ。ドストエフスキーの登場人物はあまりにも長い長いモノローグを繰り返して、まるで観念の幽霊みたいになることがあるが、トルストイの描く登場人物は存在感がものすごくどっしりしていて、安心してその挙動を見ていられる。そこにはドストエフスキーのような「近代」に対する不安と省察は乏しいかもしれないが、小説としてはこの上なく面白いのだ。

    自然やスポーツの描写もエンタメ系に近い楽しさがある。リョーヴィンとオブロンスキーがシギ狩りをするところや、ヴロンスキーが競馬の御前試合に出場するようなところ(ちなみに、このシーンはけが人だらけの流血の大惨事になる。ロシアの当時の競馬は超キケンだったらしい)は、今の日本の作家がお手本にしても全く問題ないだろう。

    面白さ際立つ上巻だったが、中盤以降はアンナの幸福の行方や、キチーの宗教的理想などが語られていくのだろうか。興奮しすぎてこの小説が発する問いかけにはほとんど耳を傾けなかったけど、中盤からは腰を落ち着けて取り組んでみたい。

    ケチをつけるとすれば、適当すぎる装丁だろうか。

  • どうしてトルストイの小説を読もうと思ったのか、もう3か月くらい前のことなので思い出せません。ただ『戦争と平和』は長すぎるのでアンナで妥協、などと適当なことを考えていたことは覚えています。

    舞台は1870年代のロシア。アレクサンドル2世の統治下、農奴解放令の余波、社会主義思想の萌芽、ポーランドやトルコとの不穏な関係・・そんな時代背景。全編を通してなんとなく人びとのそわそわした雰囲気、社会が大きく変わろうとしている兆候を感じます。登場人物政治とか教育とか経済とか信仰とか、お堅いテーマについてなにかと議論しています。

    タイトルにもなっているメインヒロイン、アンナを中心として展開される上流階級のきらびやかな社交の世界。色恋沙汰で揺れ動く男子と女子のお話です。ピュアでこじらせる系のリョーヴィンは現代日本非モテ界においても共感を呼ぶ可能性あり。

    もちろん単純に明るく華やかというお話ではなく、特にリョーヴィンの兄ニコライのエピソードなど、どよーんとしたピースもあちこちにはめ込まれていますが、いずれにしても全体的にはニ長調アレグロのトーンです。

    あとストーリーの最初に登場するオブロンスキーというオッサンは、この小説を通して個人的にイチ押しのキャラクターです。本書そのものは重厚感たっぷりのザ・露西亜文學なのですが、このオブロンスキー氏は絶妙なタイミングでちょいちょい顔を出し、上がりすぎたテンションを緩めるスチームトラップのごとき役目を果たしています。

  • 面白かったとか言うところをすぎて、なにか、この先の私の人生や
    物の考え方にまで、大きく影響を及ぼしてくる作品

  • 文学

  • ロシア文学って言葉のイメージとトルストイの風貌からして勝手に難解で取っつきにくい印象持ってたけど、割りと読みやすい。心の襞が書いてある。読み進めて行くごとに、登場人物に対する人物像の理解に深みが増していく。

  • 2017.11.05 『文学入門』
    2017.12.27 世界の文学作品を読む(2018年に向けて)

  • 初めはばらばらだった登場人物がだんだんつながりそれぞれが強い個性を失わずに話が展開する様はさすが文豪と納得。一人一人の登場人物が全員際立っていてそれを1つの話にずれることなくまとまっていて読みながら感心する。上巻なのでまだ話の三分の一しか進まないがボリュームはあるのでたっぷりと楽しめる。

  • 「幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである」という世界文学史上、最も知られた警句の一つで始まる重厚な本作こそ、時間のある休暇にはふさわしいと思いセレクト。

    夫婦の不貞という現代にも通用するテーマであるにも関わらず、その心理描写は一瞬たりともだれず、紋切り型の描写は一切使われない点に古典の重みを感じる。引き続き中巻へ。

  • 【No.116】「幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである」「自分の心を占めていた思いが言葉になって語られたのを聞くと、またもや深い満足の紅がその顔をそめた」「今彼の感じた気持は、深淵にかかった橋の上を悠々と渡っていた人が、不意に、その橋がこわれており、目の前に深淵を見出したときの気持に似ていた。その深淵は人生そのものであり、その橋はカレーニンの生きてきた人為的な人生であった」

  • 2017.12.11 読了

全119件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一八二八年生まれ。一九一〇年没。一九世紀ロシア文学を代表する作家。「戦争と平和」「アンナ=カレーニナ」等の長編小説を発表。道徳的人道主義を説き、日本文学にも武者小路実らを通して多大な影響を与える。

「2004年 『新版 人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

トルストイの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ドストエフスキー
エミリー・ブロン...
ドストエフスキー
川端 康成
ヘルマン ヘッセ
谷崎 潤一郎
ドストエフスキー
有効な右矢印 無効な右矢印

アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)に関連する談話室の質問

アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする