クロイツェル・ソナタ/悪魔 (新潮文庫)

著者 :
制作 : 原 卓也 
  • 新潮社
3.64
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本棚登録 : 552
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102060117

作品紹介・あらすじ

嫉妬のため妻を殺した男の告白を通して、惨劇の理由を迫真の筆に描き、性問題に対する社会の堕落を痛烈に批判した『クロイツェル・ソナタ』、実在の事件に自身の過去の苦い経験を交えて懺悔の気持をこめて書いた『悪魔』。性的欲望こそ人間生活のさまざまな悪や不幸、悲劇の源であるとして、性に関するきわめてストイックな考えと絶対的な純潔の理想とを披瀝した中編2作。

感想・レビュー・書評

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  • 描写が見事。展開に引き込まれる。時間の流れ方が柔軟で、しかしそれが自然で効果的。
    原卓也氏が強調する、キリスト教倫理から見た堕落の批判というのはあまり賛成できない。少なくとも、そこに作品の眼目は置けない。
    いつの間にか陥ってしまっている視野狭窄、追い詰められた憎しみ、昂ぶり、抗せない黒い欲望、倫理との葛藤。その生々しさこそ味わうに足る。性欲を中心に、さまざまな欲望や虚栄心が絡み合いがんじがらめにして追い詰める様子をコンパクトに精緻に描き出した、すごく好きな小説。

  • この小説は非常におすすめで5つ星ならぬ6つ星をつけたいくらいです。
    なぜなら、あのトルストイの小説にも関わらず、薄い!短編集です。より詳しく言えば、短編が二つです。これは読みやすい。
    そして、内容が面白い。男の嫉妬を描かせたら、トルストイか漱石かだと私は思います。

    詳しくはこちら http://d.hatena.ne.jp/ha3kaijohon/20120322/1332389523

  • 裏表紙に書いてある通り、ストイックだった。
    もう好きなようにしちゃいなよ。と、言いたくなるほどの苦悩。
    トルストイの小説はなんていうか、すごくロマンチックな男が多いというか、女以上に純粋と言うか…でも不誠実。完璧な誠実寄りの不誠実。そこがすごく人間っぽくてたまらないです。

  • 「お前の彼女超ブスじゃん。なんで付き合ってんの?」本人は至って幸せで不安を感じていないので、心ない雑音は全く気にならない。そういう感じの本。毎年決まった月に殺人事件が起こるので、連続殺人記念のお祭りを毎年町で行う。絶叫コンテストで選ばれたクイーンがパレードの主役なので、主人公の女子は今年の最後のチャンスと奮闘する、つもり。してる、つもり。町の外に出たことなく、ゴールを決めてそこを目指してきたが、自我が目覚めてきて、町をあとにするという成長物語。紛れもなくB
    級作品であり、素敵な本。

  • 「悪魔」の方は、田山花袋の「布団」の元祖みたいなお話。文豪も人の子、遺伝子プログラムに打ち勝てたら、それはそれで、プログラムエラーなのかもしれない。実際そういう終わり方。。

  • 2017/10/31-11/08

  • ・「 クロイツェル・ソナタ 」

     『 九十九パーセントの夫婦が、わたしの生きてきたような地獄の生活を送っており、それ以外の場合はありえないのです 』(17章) 
     クロイツェル・ソナタとは、妻と“浮気相手”の(密通しているらしき)バイオリン弾きの男が合奏する曲。音楽で心を通わせる妻と男の姿に、主人公の「わたし」は、大いに嫉妬する。
     初老の貴族ポズドヌイシェフが、列車内で「わたし」の一人称で問わず語りの独白を続ける構成になっている。わたしと妻の不和、対立、売り言葉に買い言葉の感じなど、あるある、と思わせるものがある。
     現代日本でも、松居一代の例を待たずとも、男女間の事件、男女間の狂気は激烈であり、事実は小説よりも奇なり、である。この小説の展開も、あるかも…、あるある…と、リアリティを感じながら読みすすめた。トルストイの「人生論」を読了した直後だっただけに、理念的な内容でなく、実に生々しく刺激的な内容なので、退屈せずぐいぐい読めた。

    ・「 悪魔 」
     『 彼は、自分が破滅したことを、もはやまったく救いがたく破滅したことを感じた。 』(19章)

    主人公エヴゲーニイ・イルチェー二ェフは、その人のことを思うと、居ても立っても居られなくなるのであった…。一見、誇張しているようにも思える。だが、それが全くの虚構ではないことを知る人は多いはずだ。私自身10代20代の頃には、相手のことで頭がいっぱいになった経験がある。あのとき、どうしてあれほど迄に…、と今では不思議なほどである。エヴゲーニイの思いは、あながち、ありえないものとは思えなかった。
     地主貴族エヴゲーニイは、領地の村娘ステパニーダと人目を忍んで逢っては肉体関係を重ねる。その後エヴゲーニイは別の女性と結婚。村の女との過去は忘れたつもりになっていた。だが、数年後、思いがけず領地でステパニーダの姿を目にしてから、その心は激しく動揺し始める。そしてエヴゲーニイは、ステパニーダとの関係を再び欲するようになり、自分はこのままでは破滅する、とおそれる。ステパニーダもまたたいした女で、エヴゲーニイを焦らし、誘うような素振を見せる。彼女の魅力は相当のもので、まさにファムファタル。エヴゲーニイにとっては悪魔のようである。
    この物語もまた、妙なリアリティがあるのだが、それは、実際におきた事件をモチーフにしていることと、トルストイ自身の実体験がベースにあるためらしい。トルストイは青年時代に下女に手を出した過去があるそうだ。(トルストイは、このことを生涯引きずっていたようで、小説「復活」も、その体験が基になっている)。

    男女間の情愛のもつれ、激情。これぞ、文学の大いなるテーマのひとつ也、と改めて思うのであった。 恋愛もの小説、情事系文学を「テーマ読み」したくなった。

  • 極端すぎる
    なんのかんの理想は並べたって、結局性欲の前にひれ伏してしまっているではないか

    とか思ったけど、読んでいくうちに自分だって、というか人間は皆この人と同じなのかも、という気にさせられた。
    今のところは、結婚が酷いものだとかは信じたくないから「こんなの極端すごる。ありえん」とか思おうとしてたけど、圧倒的な文章の前に少しその気持ちが揺らいだかも笑

  • 性欲が我々を苦しめる。

  • 2014.10.26 読了

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著者プロフィール

一八二八年生まれ。一九一〇年没。一九世紀ロシア文学を代表する作家。「戦争と平和」「アンナ=カレーニナ」等の長編小説を発表。道徳的人道主義を説き、日本文学にも武者小路実らを通して多大な影響を与える。

「2004年 『新版 人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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