- Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102060124
感想・レビュー・書評
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この話は短い上にそんなに難しくないので、(勿論読み解いていけば十分難しい部類に
属するでしょうが)海外文学敬遠派の私でもすらすら読めました。オススメ。
キリスト誕生100年後、ローマ皇帝トラヤヌスの時代のお話です。
(トラヤヌス帝の時代と言っても、私にはピンとこないのですが。)
キリスト教徒として充実した幸福な人生を歩むパンフィリウス。
人生の節目節目でキリスト教徒になろうかと思い悩み、結局俗世に残って
それなりに成功するユリウス。
ユリウスの心は「キリスト教徒になるかならないか」の間を行ったり来たりする
振り子のようです。宗教的な葛藤に限定しなければ、誰しもがこの振り子を体験
したことがあるのではないでしょうか。
ユリウスを俗世に引き留めるのは何故かいつも同じ医者です。
医者の言葉に魅了されることからも、俗世が如何に蠱惑的かが察せられます。
医者はユリウスの心をはかるために神(パンフィリウスの言葉を借りれば「父」)から
遣わされた使者だったのかもしれません。トルストイはそのつもりだったのでしょうか。
ところで、私にはパンフィリウスの説くキリスト教の真義より、引き留め役の医者の
言うことの方が納得出来てしまいます。
パンフィリウスたちのような生活は何処か老子の説く理想の世界に似ていました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
トルストイ晩年に書かれた傑作品。
神に関する考えが集約されています。 -
ひたすら人間の欲に浸りまくる生活と異端者の地で安楽の生活を送ることとの間を行ったり来たりする話です。俗世で挫折すると必ず安住の地への誘惑があり、その度に言い訳を付けてあっちの生活とこっちの生活を行ったり来たりしようとするが…。きっと人間は他者の言葉に振り回されながら自分に何らかの根拠(言い訳ともとれる)を見つけて生きていくんだな。という読み終わりでした。
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キリスト教に対する一般人の懐疑や疑念や斜視をそのまま説きほぐすことにすべてを注いだ作品。
ユリウスが最終的に神の道に入ってから悟った一事一事はまさに真実と思った。 -
ひとりの男がキリスト教によって救われるまでのプロセス、またそれに至るまでの葛藤を記した作品。
徹底的な他人愛。隣人愛。
言ってることは妥当。
この通り行けば犯罪もないだろう。
でも宗教だけではなんとも。 -
人間行為の最も根本的な問題。
とても奥の深い考えるべき大切なテーマであると思う。
日本人は宗教的な影響なんて殆んど受けていないんじゃないか・・・ なんて思っていたけど、とんでもない。
根本的な考え方、基本的な価値観は宗教的な影響を受けているんだろうと思い至りました。
時代は違えど根本的な問題は常に同じなんだということが良く分かる。 利潤追求が当たり前になり大事なものが抜けてしまっている風潮が出ている現代社会。
まさに「光あるうちに光の中を歩め」ということなんだろう。 -
今まで読んだ宗教(肯定的)がらみの小説の中で一番よかったかもしれない。
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080721
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先日に同著者の『人生論』を読んでいたので、かなりスムーズに読み通すことが出来た。トルストイの思想の中に一貫している、善と悪の明確な対比の手法と読み取りやすい文章で、『キリスト教的アナキスト』と称される著者の思想を端的に表した好書。一般の価値観と習慣に生きるユリウスを放蕩息子とたてて、親である神に帰って行く物語。キリストの譬話を思い出させる。
神の仕事はあんたの内部にありますのじゃ。あんたは神のもとへ行って、労働者ではなく、神の息子になりなさい、それであんたは限りない神とその仕事に参加する人間となるだろう。神のもとには大きいもの小さいものはありはしませぬ、また人生においても大きいものも小さいものもなく、存在するものは、ただまっすぐなものと曲がったものばかりじゃ。・・・
08/6/25 -
有名な本なので取り合えず買ったのだが、あまりにも宗教臭がキツくて本棚に封印された本。
そういう思想流布の要素が強い本って嫌いなのよね。
でもある日、あまりにも読むものが無かったので読んだ。
まあ・・・非常にわかり易いというかコテコテというか・・・宗教本だわな。
一応は仏教国である日本人には分かり辛いかもしれんね。
欧州の(というかキリスト教系の)宗教史観があれば意味は分かる。
でもそれだけよ。