戦争と平和(二) (新潮文庫)

著者 :
制作 : 工藤 精一郎 
  • 新潮社
3.80
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本棚登録 : 545
レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (728ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102060148

感想・レビュー・書評

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  • 二巻は人間描写が多いですね。

    ニコライの狼狩、アンドレイとナターシャの舞踏会場面など美しく印象的な描写も多々あり。

     【ベズウーホフ伯爵家】
     ❖ピエール・キリールイチ・ベズウーホフ伯爵:
     二巻最後の方で「ピョートル・キリールイチ伯爵」と呼ばれていたので、ピョートルが本名、ピエールはフランス風自称名なんですね。
    エレンとの結婚生活は全読者が想像したようにさっさと破滅へ。
    妻の愛人(のうちの一人)ドーロホフと決闘をして、大方の予測に反して相手に瀕死の怪我を負わせるという怒れるマッチョっぷりを示すが、
    妻エレンに「あなたのような夫の妻で愛人を持たない女なんて珍しい(”けど私は浮気してないわよ。それなのにまったくのでたらめを信じるなんてバカじゃないの?” と続く)」
    「(愛人と噂されるドーロホフは)どこをどう見てもあなたより数段立派」
    「私と別れるですって?財産をくださるならね」とまで言われて、財産の半分以上を妻に譲渡して家出。何やってんだ、でもこれがピエール(苦笑)
    旅の途中でたまたま知り合ったフリーメーソンの老人を人生の師と仰ぎ、フリーメーソンへ入会。自己研鑽と社会貢献のために自分の領地改革に乗り出すが、成功したのは見かけだけで裏では役人の使い込みとさらに生活苦に追いやられた農奴たちがいることは見えていない。こんなところがピエール(苦笑)。
    せっかくフリーメーソンでの立派な演説により尊敬を受けたというのに、意志が弱いとか享楽的な面が出てきてフラフラしてしまう癖から抜けられない。
    そこへ社交界から「あの素晴らしいエレン夫人に恥をかかせるなんてひどい夫」とせっつかれて妻の元へ戻り、「聡明で美貌の公爵夫人の変わり者の夫」として社交界で生きていくことに。ほらやっぱりピエール f(^。^)

    …とはいっても懐の大きさや視線の広さ、感受性の豊かさ、知識への探求心、そして毅然たる性根なども見せてくれます。

     ❖エレン:
     ピエールの美貌の妻。読者とピエールが見るエレンは高慢で怠惰でふしだらで知恵は浅い姿。しかし社交界が見るエレンはは高貴で高い知識を持ち変わり者の虐げられる気の毒な妻であり社交界最高級の地位にいる女性という姿。
    彼女のような人はきっと地下室に”ドリアン・グレイの肖像”を持っているに違いない。(ーー;)

    【ボルコンスキィ公爵家】
     ❖アンドレイ・ニコラーエヴィチ・ボルコンスキィ公爵:
     家族の元に、アンドレイ公爵が戦死したと誤報が入ったが、怪我を治して帰宅した。その晩妻のリーザは男児を産んで死ぬ。
    父の田舎に籠り、ピエールが失敗した農地改革を成功させる。
    言動が現実に即して、ただの机上のインテリではないですね。

    そんなアンドレイが舞踏会で踊ったナターシャ・ロストフに対して新たな人生の輝きを見出し求婚、一年後の結婚を約束する。
    人生や社会を陰あるものと見ていたアンドレイ公爵が識った光。ナターシャとの恋愛描写は美しい。
    普段は斜に構えたアンドレイが、笑う時はとことん笑い、踊るときは踊りを楽しみ、明るく親しげな姿をみせる。
    舞踏会の場面は映画(メル・ファーラーとヘプバーン)でも印象的だった。

    しかし若い娘さんには、相手に会えない1年間は長すぎた。
    そしてそんなナターシャの心情を理解できず、理解しようともしないところがアンドレイ公爵の特徴か。
    もう少し柔らかくなれば人生楽なんだけどなあ、と思う。。

     ❖マリヤ・ニコラーエヴナ・ボルコンスカヤ:
     突然ナターシャとの婚約を決めた兄と、ますます意固地になる父に挟まれ苦悩の日々。現世を捨てて神の愛だけに生きたいが、甥(アンドレイとリーザの息子)の養育と、父を見捨てられないという思いからそうもいかず忍耐と苦悩の日々。

     ❖ニコライ・アンドレーエヴィチ・ボルコンスキイ公爵:
     アンドレイとマリアの父。一巻では「頑固で現政治社交界から煙たがられるが、尊敬もされる老人」だったはずなんだが、二巻では娘のマリヤをいびり萎縮させることが目的となり意固地と意地悪に磨きがかかって、現在なら「病院で認知症受診してきてくれ!」な老人となってきてるんだが…。

     【ロストワ伯爵家】
     ❖ニコライ・イリーイチ・ロストフ伯爵:
     戦争の途中休暇で家に帰ったらすっかり家族から大歓迎!事実上の許嫁もいるが、実家は破産の危機のため、持参金の多い娘との婚姻を望まれている。
    実家を助ける孝行息子と期待されながら賭博で大負けしたり、狼狩に興奮したり…要するに若さであっちこっち寄り道中。

     ❖ナターシャ・ロストワ(ナターリア・イリイニーシナ・ロストワ公爵令嬢):
     1巻で12歳の天真爛漫な少女は16歳の娘へ。自分を美しいと思わせてくれる男性のうっとりした目線や、輝かしい舞踏会に美しい若い娘としての輝きを存分に発揮する。
    舞踏会ではアンドレイ公爵を夢中にさせ、自分も彼を愛していると一年後の結婚を約束する。

    しかし精神的に自由奔放、世間は輝いていると思っている娘さんに一年間は長すぎた。
    廃頽と淫行のアナトーリ・クラーギン伯爵(ピエールの妻のエレンの兄)の目線と口説きに眩み、アンドレイ公爵も、自分の家族も生活も名誉も、すべてを捨て駆け落ちしようとする。
    すんでのところで阻止されたが、すべてを失ったと錯乱…しているあたりで二巻終わり。

     ❖ロストフ伯爵:
     ニコライとナターシャの父。人が良さそうで頼られると嬉しい性質のようで、サロンを主宰するためや、子供たちのために膨大な借金は重なるばかり。

    …というので同情していたら、「馬は50頭」「家族以外の食客20人」というので、これで破産の危機というのは現実の生活として理解できない(笑)。

     ❖ソーニャ:
     父母を亡くしたためロストフ家に養われている親戚の娘さん。ナターシャとは親友。ニコライとは事実上の公認の仲のようだけど、若くてまだ道の定まらぬニコライと、破産寸前の我が家を救うためには金持ちの娘を嫁に!と願っているロストフ夫妻からはあまり歓迎されていない様子。

     【クラーギン公爵家】
     ❖アナトーリ・ワシリーエフ・クラーギン公爵:
     ワシーリイ公爵の次男、エレンの兄。この一家には放蕩の精神に流れているが、その父をして家から半追放されるというくらいの放蕩っぷり。エレンとは廃頽の精神で繋がっている。

    莫大な散在、借金、秘密の結婚、そしてそれを隠してナターシャを誘惑し駆け落ち未遂。

    まあナターシャの信じたとおりアナトーリからナターシャへの「愛」は本物でしょう。しかし本気だからこそ余計に性質が悪い。享楽的で一時的な恋愛のために、嘘を付き、相手の名誉を失墜させ、他者の人生を狂わせることが平気な「愛」なんだから。

    怒りのピエールによりモスクワから追放される。

     【他の人たち】
     ❖ボリス・ドルベツコイ
     母からワシーリイ伯爵へ紹介してもらったコネを生かし順当に出世街道へ。昇格のために必要な情報、人脈を察知するのは登場人物でも長けてるほうか。
    ナターシャの幼い恋の相手だったが、エレンのサロンで特別扱い受けたり(おそらく愛人?)結婚相手には資産家の嫁を探したり、結局資産家のジュリイ嬢と婚約へ至った。
    ピエールはマリア(アンドレイの妹の)に彼との結婚を勧めるけど…結婚相手を出世の手段と思うボリスと大人し過ぎるマリアじゃ彼女に安定はないと思うんだが。

     ❖ドーロホフ:
     ピエールやアナトーリの放蕩仲間だが、エレンと関係したことからピエールを激昂させる。決闘による怪我が治った後、アナトーリとナターシャの駆け落ちに一枚絡む。

    • koba-book2011さん
      ちょうど2巻を読み終わりました。
      いよいよ面白いですね!
      それぞれの人物のダークサイドの描かれ方が、ゾクッとするほど秀逸!
      ちょうど2巻を読み終わりました。
      いよいよ面白いですね!
      それぞれの人物のダークサイドの描かれ方が、ゾクッとするほど秀逸!
      2016/11/25
  • 「渡る世間は鬼ばかり」とナターシャに言ってやろう。

    アウステルリッツでの戦い後、モスクワに戻ったアンドレイ公爵を待っていたのは息子の誕生とともに天に召された妻の悲報だった。一方ピエールは妻の不貞がもとで決闘騒ぎを起こし、ぺテルブルグへ去り新たな自分を求めてフリーメーソンに入会する。美しく成長したナターシャ始め長兄ニコライ、従妹のソーニャと、ロストフ家の子弟たちも人生の春を迎えていた。

     第二巻はこれまでおぼろげだった登場人物たちの人物造形もはっきりして、俄然ドラマが面白くなってきた。大邸宅のシャンデリアの輝き、眩しいほどの雪野原、暖炉の前に響くバラライカの音色などロシア情緒もたっぷりの内に、ロシア上流社会に棲息する家族たちがいきいきと描写されていく。

    ここで物語の核となる家族たちをまとめておきたい。

    「ロストフ伯爵家」
    子供の成長にやきもきする父、イリヤ・アンドレーヴィチ伯爵、困窮する家を切盛りするその夫人。軍に仕官している長兄、ニコライ。家族思いだが賭けに大負けして多額の借金をつくり父親に助けてもらうなどまだまだお坊ちゃんの一面もある。ロストフ家に同居する心優しい従妹、ソーニャ。ニコライを慕いナターシャとは姉妹同様であり親友でもある。末っ子で13歳のペーチャ。本編ではヒロインでもあるナターシャ。美しく成長しアンドレイ公爵を将来の伴侶を決めた彼女だが、その魅力を周囲は放っておけない状況。

    「べズウーホフ伯爵家」
    父から莫大な遺産を継いで伯爵となったピエールは、太っている上に眼がねをかけた容貌。社交界の花で美しいが淫蕩な妻・エレンとの関係に問題を抱えている。フリーメーソンに入会して自分探しをする真っ直ぐな面もあるが、基本は優しいのだろう。アンドレイやナターシャ他友人たちにも気を配る。優男で女たらしのアナトーリはエレンの兄。彼の毒牙はナターシャにも迫り…。

    「ボルコンスキイ公爵家」
    アンドレイ公爵の実家。癇癪もちで気難しい父、ボルコンスキイ老公爵と、心は優しいが不器量で未婚の妹マリヤ、居候のフランス娘、マドモアゼル・ブリエンヌがともに暮している。嫁が孫の二コールシカを残して逝って以来、老公爵は事あるごとに娘のマリヤに辛くあたっている。ちなみにこの一家は長男アンドレイのナターシャとの再婚を歓迎していない。

     舞踏会や狩り、オペラ観劇なの華麗な舞台で繰り広げられる、これらの家族が絡み合って綾なす人間ドラマから目が離せない。三巻突入にあたっては優男に惑わされた世間知らずな娘・ナターシャの恋の行方が一の番の関心事なわけだが。橋田壽賀子先生も顔負けの壮大な家族物語はまだ続く。

  • 第一巻で整えられた舞台と、大きな大きな予感とが交錯し、絡み合って、目にも綾な物語が織りなされる第二巻。

    本当にどれも素晴らしいエピソードばかりで、何から、そして誰から言えばいいのかわからない。
    だがあえて言えば、前半がピエールで後半がナターシャ、だと思う。

    ピエールがフリーメーソン会員になるのには本当に驚いてしまった。一体彼はどうなってしまうのだろう、宗教的なものに目覚め、彼と言う人間は変わってしまうのだろうか、ととても心配した。
    しかし、ピエールはやはりピエールのままだった! 彼は苦悩し、求め、そして行いをするが、それは彼にとって結果を生まない。物事は常に彼の思い込みを嘲笑うかのように、彼に自身の無力さを突きつける。
    けれど、ピエールはそれでも理想を捨てないし、善意を尊いものと考え、そして人を愛そうとするのだ。そして、わかる人にはそれがわかっている。わからない人が大半だけれど、そういう人たちは彼を滑稽な人間だと思いまたそう扱うけれど、それでもピエールのその温かい気持ちと人柄は必ず伝わる人には伝わっている。
    彼は不器用で全然実際的な物事には向かないけれど、それでも彼という人間にしかできないことを感じさせてくれる。彼が唯一の人物であると。

    そして、ナターシャである! 
    いやはや、びっくりしてしまった。第一巻を読んだ時から、「この子は絶対美人になるだろうなぁ」とは思っていたが、まさかここまで美しくなるとは思わなかった。
    彼女がアンドレイ公爵と踊る場面の、なんと美しいことだろう……
    それだからこそ、この巻の最後のエピソードで全く筆を滑らせなかったトルストイに驚嘆する。
    ナターシャがアナトーリに見つめられ、そして話しただけで良心の呵責を感じるということの、この説得力……どうしてトルストイはそんなことがわかるのか? どうして美しい女性の葛藤、それも輝かんばかりの、この上なく魅力的で、しかも若い(!)ナターシャの気持ちが、こんなにもわかるのか?……

    誰もが自分の気持ちのために笑い、話し、愛し、そして葛藤する。けれどもそれは決して利己的なものではなく、それが生きるということ、それこそが生きる原動力であるということ。私達は自分の感情のために動く、そしてそれが世界を作る。

    素晴らしいものを読んでいるなぁ、という幸福感を抱きながら、第三巻へ。

  • 「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」
    「ハチミツとクローバー」「3月のライオン」
    「天然コケッコー」「まんが道」
    「リアリティ・バイツ」「卒業」
    「北の国から」「ふぞろいの林檎たち」

    そんな名作たちを、ぎゅっと濃縮したような味わい。

    #

    あれから、たったの数年…10年も経っていない。

    若く、世間を知らず、獏とした不安と、根拠のない傲慢に包まれて。
    家族や友人を中心とした狭い人間関係が、世界の全てだと思っていて。
    傷つきやすく、すぐに無邪気な幸せと笑顔に戻れた、軽やかに危なっかしく踊りながら、てぶらで疾走する。そんな若者たちが。

    社会に出る。社交をする。新しい人間関係。変わっていく仲間。変わっていく自分。老いていく親。

    人を愛して、愛されて、愛されず、孤独と金銭と地位とに悩まされ。居場所を見つけたり、居場所を探したり。享楽に溺れ、自堕落に目をつぶり、「わたしはまだ、本気出してないだけ」。取り返しのつかない失敗と、消えない傷を負って。
    「こうありたい」と思った自分が、「そうなれない」ことにぶつかって。あがいて、受け入れて、いじけて、立ち直り。

    親と、上司と、ぶつかり、あるいは離別して。
    永遠の友情と思ったものが、ただの甘えた馴れ合いだったことを思い知らされて。

    そして、深い闇を、ヒトの悪意を知らされて。自分の悪意も見つけてしまって。

    裏切り、裏切られ、比べられ、順位をつけられ、金や地位や美貌という暴力に侵されて。

    つるつるしていた輝きを失い。手で触れる全ての醜さと無秩序さと不条理さを思い知り。
    その代わりに、目に映る全ての愛おしさと美しさを再発見して。

    そうして重く苦しく、おずおずと怯えながら、それでも立ち上がって前を向いて歩き出します。若かったあの日には、知ることも無かった大きな勇気を、ポケットに入れて。

    そしてもう、あの日のように、だらだらと毎日のように会うことはなくなった、数少ない本当の友人との想いを胸にして。

    #

    うーん。なんて豊穣な「戦争と平和」。第2巻。
    もうこれで全編の半分が終わってしまっただなんて、寂しい限り。
    ずーっと読んでいたいような小説。

    かつて「戦争と平和、世界最高の小説」と簡潔に評したのが、確か井上ひさしさんだったか。

    #

    以下、長々と、完全に自分のためだけの備忘録。
    当然ネタバレです。

    #####

    第1巻の終わりは、アウステルリッツの戦いでした。
    主人公は大まか、3人の若い男たち。

    #

    ピエール・ベズウーホフは、庶子からまさかの財産相続を経て、夢見がちで不器用で女にもてない青年だったのが、一夜にしてロシア有数の資産家になった。
    翌朝から彼の周りには手のひら返しのチヤホヤモード。
    全ロシアが、全ヨーロッパが彼に敬意を払い、彼を賞賛し、彼との婚姻を望んだと言っても過言ではなく。
    その中で、ひときわ名門で美貌なエレンと結婚。それも、周囲に状況を作られて押し切られたような。
    本人は、彼女を愛しているつもりだったけれど、遊び好きでパーティ好きでイケメン好きでプライドの高いエレン。結婚は上手く行くはずもなかろう…という感じで1巻終了。

    アンドレイ・ポルコンスキイは、貴族の長男で軍人で、知的でイケメンで実務家で、ピエールの親友。
    ありきたりな妻との結婚生活と、社交界に倦み、戦場のリアリズムを求めて司令官付きの優秀な副官として従軍。
    アウステルリッツの戦場で勇戦、だが敵弾に倒れて捕虜となる。
    信じていたロシア軍の大壊滅とともに倒れた彼が見つめたアウステルリッツの青空は、アンドレイに全てが虚しく儚いという幻滅を味合わせてしまう。

    ニコライ・ロストフは、同じく貴族の長男。より若くより活動的で、より知的ではない。お坊っちゃん。素朴な憧れとプライドで従軍すると、初陣で何もせぬまま馬を撃たれ落馬負傷。だが、「奮戦した名誉の負傷」と他の多くの将校と同じように嘘をついて去勢を張っている。

    #

    1805年のアウステルリッツの敗戦後、欧州の国際政治状況は混迷の末に、大まかに言えばロシアは敵だったフランス・ナポレオンと同盟することに。
    そして、かつて同盟してナポレオンと戦ったイギリスを敵に回す。
    ナポレオンが宿敵イギリスに向けた経済戦争、「大陸封鎖」に加わります。
    それから5〜6年の間に、トルコなど各地でロシアは戦争を続けながら、皇帝アレクサンドルは、今風に言うと「民主化政策」を選択します。

    ルソーは1700年代に既に言論界に共和制、民主化の1石を投じています。フランスは1789年〜ナポレオンの治世に至るまで、共和制、封建制の打破を進めています。イギリスはいち早く産業革命を成し遂げ、植民地を効率的に搾取する経済政策優先の為に、自主的に王権制を形骸化させています。その植民地の中でアメリカは1776年に独立宣言、「王のいない国」を披露しています。

    物語の1805年〜1810年は、欧州の大勢はまだ王様がいる封建制、ロシアは農奴で溢れていましたが、知的な進歩派、特に若者たちの精神は共和制を眩しく見上げていたんですね。

    と、言う1805年〜1811年くらいかな、が、第2巻の時代背景です。

    若者たちは、それぞれに傷ついて。

    愛情。恋愛。暮らし。結婚。家計。仕事。家族。

    などなどのリアリズムの茨に絡め取られもがいて。
    血を流しながら、否応なく大人になっていきます。

    200年後の、日本という国でも、全く変わらない若者たちの物語。

    そして、どうやら第3巻から、1812年のロシア戦役。
    70万の兵を率いた軍事天才ナポレオンを迎え撃ったロシア軍が、100万を超える死者を出し、モスクワを燃やし尽くした果てに、冬将軍と共に、不敗神話を誇るナポレオン軍を壊滅させた、悲惨な戦争に突入していくようです…。

    #

    ピエールは、兵役からも仕事からも貧乏からも、自由な身の上。
    社交界の女王に君臨する美しき驕慢な妻とともに、連日のパーティに社交に馬鹿騒ぎに明け暮れます。
    ですが、根が真面目なピエールは、そこに染まりきれず。
    常日頃、人生とロシアと人間の真実について右往左往して悩み明け暮れています。
    今風に言えば、「飲み会でノリが悪い面倒な生真面目男」なのです。

    更に若くして巨万の金持ちになってしまったので、なんでも周りがやってくれます。彼には、何もやることがないのです。そして、現実的な政治や外交の泥水に身を投じるつもりもさらさらないんです。
    なんて純粋で、なんて心優しい、そしてなんて面倒くさい実務能力がゼロの青年なんです。

    そして、あっというまに妻と心はバラバラになります。
    妻エレンは、難しいことを考えるのは好まず、社交界に君臨し、悪ノリと虚栄と華美と色恋と肉欲に、あくなき飢餓を持てる人なんです。

    エレンはどうやら、色男と浮名を流し、ピエールは俗悪な社交界では、ひそひそと、「知らぬは亭主ばかりなり、あの変わり者の大金持ち」と蔑まれるポジションに。

    ピエールがまだ財産を持たない青年だったころの、バカ遊び仲間であるドーロホフが、どうやらエレンと乳繰り合って、彼のことを笑いものにしている。
    ピエールは、頭に血が上ると止まらない激情家。とあるパーティで勝手に激怒してドーロホフに決闘を申し込む。

    決闘の日。ピエールはもう、自分も含めて全てが愚かに感じ、虚しくなっています。それでも、決闘は行う。
    ドーロホフは、ピエールとは逆タイプ。ちょいワルで、クールで、危険な女遊びも朝飯前。決闘も何度もしたことがあります。
    どう考えてもピエールが死ぬだろう。
    ところが偶然、ピエールが遠距離から適当に打った1弾がドーロホフに命中。重傷のドーロホフが至近距離から打った一撃は、当たりませんでした。
    (この場面では、ドーロホフ側の立会人としてニコライ・ロストフがいます。瀕死の手傷を負ったドーロホフがニコライに、母と妹のことを話す場面が、泣けます。ピエール側から感情移入して読んでいた読者は、ドーロホフが憎くてたまらないのですが、ドーロホフにはドーロホフの人生とドラマがあるんだ、と意外な背負投をかけられた気分。小説家トルストイ、半端ないです。圧巻です)

    ピエールは、財産の半分を放り出して、妻の下を去ります。
    そして、人生の真実と生きがいを求めて、「自分探し」の放浪の末に…。新興宗教に走ってしまうのと同じように(笑)、フリーメーソンに入会します。

    #

    フリーメーソンというのは、発祥は色んな説がありますが、中世から存在した「キリスト教に縛られない秘密っぽい友愛組織」なんですね。巨大な陰謀組織みたいな説もありますが、恐らくそれは面白おかしいワイドショー的な誤解です。何より、基本はその町や村の地域単位でしかありません。

    教義はご立派です。そして、ある種の秘密結社であることが謳われます。ですが、実態はまあ、今で言うとロータリークラブとかライオンズクラブとか、商工会議所とか青年会と似たようなものですね。
    ジョージ・ワシントンとかアメリカの独立の騎士たちがほぼ全員フリーメーソンだったそうですね。
    江戸時代、西郷隆盛さんの時代から鹿児島にあった青年会組織とか。そういうのは日本でも各地に必ずあります。
    それから、例えば海外ドラマの名作「アボンリーへの道」では、近代初期のカナダの田舎町でも、青年男子限定の秘密結社というのが出てきますが、秘密の儀式があっても要は大人のお遊びで、一種の自治組織、同好会みたいなものです。

    #

    ピエールはフリーメーソンの活動に熱中して、綺麗事の教義に基づいて、自分の農地の農奴を解放しようとしたり、色んな制度改善や慈善事業に熱中します。

    この興奮と理想を高らかに謳い描きながら、やがて彼はそれに飽きていきます(笑)。そして、取り巻きがバキバキとそれを有名無実化して適当に誤魔化していきます。でもお坊っちゃんピエールはそれに気づきません。「ああ、自分は素晴らしいことをした」と思いながら、自分で何も手がけないのですぐに飽きてしまいます。

    やがてまた、俗物な妻エレンも合流して、振り出しに戻ったような無為で虚しい酒と馬鹿騒ぎとパーティ三昧。ちやほや取り巻きに囲まれ、「俺はまだ本気出してないだけさ」と独りごちる明け暮れ。

    #

    ニコライ・ロストフは、「軍」という社会に自分の居場所を見つけます。そこでは、あまり難しいことを考えることもない。苦しいことも辛いことも怖いことも、仲間とわいわいと楽しめます。金を使う暇も無く、社交に疲れるわけでもなく。戦闘以外の時間(実はこの方がずっと長い)は、マッチョな男子校的な悪ノリの遊び、ゲーム、ギャンブルの馬鹿騒ぎ。軍の規律は団体心理の美学に酔わせてくれます。

    これはもう、完全に職場グループに居場所を見いだせた、ある種、幸せな若手マッチョ男性会社員の生活なんですね。

    なんですが、いくつかの問題が、幸せなニコライにも訪れます。

    大好きだったマッチョ上司は、組織の細かい規則に揚げ足を取られ、失脚します。

    たまに休暇で実家に帰ると、従姉妹のソーニャが彼を愛して、ラブラブ光線で永遠の愛を求めます。だけど、モラトリアムを楽しんでいるニコライは煮えきらず結論を先延ばしにします。
    (ソーニャはどうやら両親を亡くして財産も後ろ盾も持っていません。ニコライの実家に寄生しているんですね)

    そして、ニコライの実家、ロストフ家は、商品経済の緩やかに波に対応できず、昔からの杜撰な経営で、資産が先細りなんです。なんですが、ニコライの父はもう老いて、贅沢できらびやかな生活を何も変えることができずに、頭を抱えるばかり。

    そう、両親は、金と財産のために、息子のニコライに、資産家のお嬢さんと結婚してほしいのです。寄生している一文なしの従姉妹ソーニャとの結婚に反対です。
    (ここのところで、人の良い両親は、「自分たちの金のために」とははっきり言いたくなくて、言えないんですね。まず自分自身を騙して、色んな理由を言います。その卑劣さ、惨めさ、ずるさが、すごく人間くさい…痛い…)

    #

    そして、ピエールと決闘して負傷した、ドーロホフ。
    ドーロホフは恐らくそこそこの財産のあるそこそこの貴族で、軍人。ニコライ・ロストフの軍人仲間なんです。
    負傷の癒えたドーロホフは、ニコライの実家、ロストフ家に出入りしているうちに、なんと。
    ニコライに一途な愛を貫く、資産の無い従姉妹ソーニャに、惚れしまうんですね。結婚を申し込みます。
    ドーロホフは遊び人のイケメンだけど、悪人ではないし、社交界の、貴族会の、れっきとして一員。資産の無い孤児ソーニャには、「良い縁談」なんです。

    ところが。
    ニコライへの愛を貫くソーニャは、断ってしまいます。

    そして、ニコライとドーロホフの友情も終わります。ドーロホフは得意のトランプ賭博で、復讐のようにニコライを大負けさせます。

    ここの場面、ニコライが意地とプライドからずぶずぶと、足元が崩れ落ちるようにギャンブルに飲み込まれていくありさま、これも圧巻です。レフ・トルストイさん、絶対、ギャンブルで破滅寸前までいったことがあるんだろうなあ…。

    実家の窮状を見てみぬふりをして、軍での暮らしを謳歌してきたニコライ。
    ですが、両親から「このままでは破滅だから、家計、領地の経営をみておくれよ」という泣きが入って。長期休暇で実家に帰ります。

    ここでは、傾きゆく実家の中で、ニコライ、妹のナターシャ、従姉妹のソーニャの3人を中心に、家族の温かい時間が描かれます。
    偶然のノリで盛り上がってしまう仮装パーティー。無邪気で温かい時間。そんな中で、ニコライははっきりと、「ソーニャを愛している」ことに気づきます。そして、プロポーズ、婚約。
    この場面も、執拗な描写の積み重ねで、「大人になりたくない青年ニコライが、なにげない時間の中で、大人への階段を一歩上る」という穏やかな感動が、物凄く鮮烈でした。

    しかし。ニコライがソーニャと結婚するということは。
    ロストフ家の家計としては、唯一破滅から救われる可能性、「長男坊の立派な軍人ニコライが、資産家の娘と結婚する」という手段を失うことを意味します。老いた両親は、狂乱のように反対します…。

    #

    アンドレイ・ポルコンスキイ。
    アウステルリッツの悲惨な敗戦で行方不明になったアンドレイ。
    長男坊の帰還を待つ、実家。名門貴族。
    老いた厳格な元軍人の父。容貌が醜く生涯独身を覚悟して、キリスト教の信仰に生きる妹マリア。そして、妊娠中のアンドレイの妻。
    皆、「ああ、どうやらアンドレイは戦死だ」という、言葉に出来ない絶望の中で、アンドレイの妻の出産を迎えます。

    そして、赤ん坊が、男の子が生まれ落ちた夜に。
    長く捕虜生活を送ったアンドレイは、実家に帰還します。
    喜びもつかの間。その同じ夜に、長男を産み落として、妻は死んでしまいます…。

    アウステルリッツで地獄を見て、全てに虚しくなったアンドレイ。
    領地に引っ込んで、公務を最低限に拒否。
    戦場で負った傷を癒やしながら、赤ん坊の世話と領地経営に淡々と暮らします。それまで、ロシアを背負って立つような、スーパーエリートだったのに。

    そんなアンドレイの下を、「永遠の自分探し」にさまよう、親友ピエールが訪れます。数年ぶりに抱擁しあうふたり。人生について、愛について語り合い、議論します。夢想家のピエールを鼻で笑いながら、ピエールの無垢な心と、温かい友情に打たれたアンドレイ。

    アンドレイは徐々に人生に前向きさを取り戻します。

    笑っちゃうのは。
    ピエールが大騒ぎして立ち上げながら、竜頭蛇尾の尻すぼみに挫折した、「自分の領地内の農奴を解放し、福祉を充実させ、それでも収穫を落とさず、むしろ経営を上向きにする」という、先進的な共和主義風の大事業。
    これを、ピエールに触発されたアンドレイが、自分の領地内で、サックリアッサリと成し遂げてしまいます。イケメンさんな上に、実務的な処理能力、政治感覚、禁欲さ、自律心、リアリズム、全てにおいて、「デキる男」なんですね。

    徐々に、人生に前向きになっていくアンドレイ・ポルコンスキイ。

    #

    ここから、3人の主人公、3つの一族。ベズウーホフ家、ロストフ家、ポルコンスキイ家。3つの世界が絡み合って。
    第2巻の怒涛の終盤戦が始まります。

    アンドレイ・ポルコンスキイは。たまたまロストフ家を訪問した際に、(このとき、ニコライは不在でした) ニコライの妹のナターシャと出会います。

    第1巻ではまだ12歳くらいだったやんちゃな娘っ子は、美しい思春期の女性になっています。活発で無邪気で明るくて美しい。みんなに愛されて育ち、聡明で、大胆で、ダンスが上手くて、歌が上手くて、世間知らずで、すれていない。

    そんなキラキラしたレモンジュースみたいな(笑)、ナターシャと出会い、アンドレイは恋に落ちます。愛し合います。
    プロポーズします。
    (多分ですが、ナターシャが17歳、アンドレイが30歳とか、そんな感じだと思います)

    アンドレイは、立派な一門の長男で、出世を約束された秀才で、クールでイケメンで、妻を亡くしたちょっと影のある男やもめ。社交もトークもダンスも礼儀も、全て一流の男なんです。(ピエールとは違って)。全ロシア社交界でも、「娘を嫁にやりたい立派な男リスト」の上位に入るんです。

    ロストフ家はOK。ナターシャ本人もOK。
    ですが、アンドレイのポルコンスキイ家は、ナターシャのロストフ家より、名門らしく。老いた頑迷なアンドレイの父が、「一年待って、戦場の傷を外国の保養所でちゃんと治して来い。一年後でもお互い気持ちが変わらなければ、認めよう」と…。
    (脇筋ですが、アンドレイの妹のマリア。不美人で生涯独身を覚悟して信仰に生きる、そして家族への愛に生きる人です。アンドレイの息子の面倒も見ています。このマリアが、「自分と正反対の個性を持つナターシャのことが、生理的に好きになれない」という、どろどろした内面と戦います…。この辺りの描写も、唸ってしまうくらい、深い…)

    言いつけ通り、海外に去るアンドレイ。
    あみん、ぢゃないですが「わたし、待つわ」と健気なナターシャ。
    ところが。この1年が、悪魔の歳月でした。

    酸いも甘いも味わい尽くし、戦場の死の恐怖、結婚の幻滅、虚無からの再生、妻の死、孤独な捕虜生活… 色んな状況を生き抜いて、騙し騙され、人の世の美醜を知ったアンドレイは、良いんです。

    10代のナターシャには、この1年が不毛で辛い。
    無為で悲しい。
    手紙だけでは満足できない。
    疑心暗鬼になる。躁鬱になる。

    そして、たまたまなことで、社交界デビューもしてしまう。
    若い、美しい、自信家で、恋に恋するお嬢様は、悪い狼たちの甘い餌だったわけです。

    ピエールのベズウーホフ家。その妻の驕慢享楽家、エレン。
    その兄のアナトーリというのが、この兄にしてこの妹あり、という、身を持ち崩したヤクザな遊び人なんですね。
    高級貴族の出身で、一応軍務にもついていましたが、不良。ドンファン気取りで女遊び、火遊び。社交界では崩れた爛れた若者として有名なんです。父親からは名家の令嬢との結婚を強要されていますが、のらりくらり。そして隠していますが、かつてポーランドで地元娘と遊んで、結婚したことがあるという、脛に傷持つ身。教会的な、正式な離婚はしていないんです。無論、妻のことは投げ捨てて、独身として悪い仲間と日々遊んでいます。金がありますから。

    現代風に言うと、勝ち組の息子で、名門の大学生で、サークルの悪友とレイプ寸前というか、実質レイプのような女遊びとかしてゲラゲラ笑っているような不良くんです。

    この不良くんのアナトーリが、「あのナターシャっていうの、俺が絶対、騙して落として妻にして弄んでやるぜ」みたいな計画を立てます。

    この悪党の心理も、トルストイさん、ぞっとするほど克明に描くんです。恐らく、きちんと家族から愛されたことがない。自分のことも愛していない。どこか刹那で破滅的。女遊びの冒険が、マッチョさが、自分のプライドなんです。それについて、周りがどれくらい傷ついて不幸になろうが、「知ったことか」と悪魔的に高笑い。
    どこか、破滅願望なのか。長い歳月の先行きなんか、計算していない。気にしていない。最後には親に頼ればなんとかなる。

    二枚目で美しく優雅な不良くん、アナトーリ。純情な恋に落ちた青年を演じて、ナターシャに言い寄ります。

    「許嫁?知りません。あなたが美しすぎます。返事を下さい。イエスか、ノーならば、哀れな僕は死ぬしかありません。僕は今まで不良でした。今はあなたの愛の奴隷です」

    心打たれるナターシャ。のりで、キスまで許してしまいます。アンドレイとも、キスまでしかしていないナターシャ。おぼこです。ウブです。スキンシップにすぐ動揺します。

    「ああ、なんて素敵なアナトーリ」。

    影で悪友とせせら笑っている、アナトーリ。

    もうこの辺、心配で心配でたまりません。

    周囲に知れます。
    ナターシャの親友ソーニャ(ニコライ・ロストフの許嫁)、親戚などが、大反対します。「あいつは名うての不良、遊び人だよ。騙されているんだよ」。

    ところが、このあたりが、なんだか異様にリアルっていうか凄いなあと思うのが。
    ナターシャは、ブチ切れで意地になるんですね。
    「みんなあの人のことを誤解しているのよ。あの人は心のきれいな人よ。あたしは知っているわ。あたしだけが」
    (実際は、三回くらいしか会ってないんです)

    暴走して意固地になる、10代後半の若者の愚かさ。
    ざらざらした不吉な手触り。
    すごい、リアル。

    さあ、不良のアナトーリ、ここまでは思い通り。
    悪友たちと、ナターシャを拉致して(本人の協力の下に)、田舎か海外に逃亡してそこで弄んで、場末の教会で結婚して、一生をめちゃくちゃにしてやろう、と駆け落ち計画を立てます。

    そして暴走するナターシャはそれに同調し、アンドレイに宛てて「アナトーリを愛しているから、あなたとの婚約は破棄します」という決定的な手紙を出しちゃいます。

    駆け落ちの夜。もうドキドキです。
    ところがこれは、察した親戚の叔母さんの堅実なブロックで、未遂失敗に終わります。
    でも、ナターシャは愛に盲目、家出寸前です。

    ここで登場するのが、社交界の異端児、心のきれいな無用者、我らがピエールです。
    ピエールは、ふらふらしていますから。アナトーリは義理の兄弟に当たるし、アナトーリの不良具合はよく知っているんです。若い頃は一緒にバカをやっていた間柄。

    ピエールは以前から、純粋なナターシャのことが可愛くて、大好きで。ナターシャも変わり者のピエール、許嫁アンドレイの親友ピエールのことは好きなんです。事態を知ったピエールが登場。アナトーリの悪行を明かします。他ならぬピエールの言葉。ようやくナターシャは自分が遊ばれていた、笑われていたことを悟ります。そして、アンドレイに物凄く侮辱的なことをしてしまったことに気づきます。

    ピエールは不良アナトーリに激怒して、街から出ていけと宣言。
    金持ちの義理の兄弟の言葉に、アナトーリは従って、街から去っていきます。

    危機は回避されましたが、汚名は残ります。
    社交界では、駆け落ち未遂の話は広まります。
    健全で美しい美少女ナターシャの名前は地に落ちて、笑い者。
    婚約者を奪われてフラレた、アンドレイも屈辱的な評判になります。

    そして、その頃に、外地での保養を終えて、アンドレイがロシアに戻ってくる…。

    激怒。憤怒。

    当然、婚約破棄を受け入れて、ナターシャと絶交。

    ナターシャは、取り返しのつかない愚行を悔い。アンドレイの顔に泥を塗った罪悪感に苛まれ。自殺未遂…。

    そんなげっそりしたナターシャの手を握って、ピエールが言います。

    「僕がこんな僕ぢゃなかったら、今すぐあなたにプロポーズしたいくらい、あなたは素敵な人です。人生はこれからです」

    ※ピエールは、破綻しているとは言え、立派な妻帯者。

    そんなピエールの言葉に、微かに微笑んだようなナターシャ…。

    #

    と、これで、第2巻終了。

    • 淳水堂さん
      koba-book2011さん

      コメントありがとうございます!
      読むのはやい!
      二巻は人間描写が見事ですよね。
      良くも悪くも人生...
      koba-book2011さん

      コメントありがとうございます!
      読むのはやい!
      二巻は人間描写が見事ですよね。
      良くも悪くも人生を生きてきらめいている。

      しかしやっぱり政策や大陸情勢分からないと理解は半分だったかもしれないf(^^;)
      2016/11/25
  • トルストイ自身の分身とされるアンドレイとピエール、父を写したニコライという3人の主人公。ヒロインはニコライの妹ナターシャとアンドレイの妹マリヤ。そして、2人の影になるソーニャ。2巻では彼らの恋愛模様が複雑に絡み合ってきます。

  • ちびちび読んでいたら読み終えるのに3カ月。
    主に感情の揺れ動きを描く。

  • 分厚い 文庫 NZ行くとき 暇な時 読みたい
    忙しい中ちびちび読むんじゃなくて

  • 面白くないわけではないが、読み進めるのが非常に困難だった。まだ第2巻。
    前巻と違い、戦争の描写はなく、つかの間の平和に起こる人間の愛憎劇が描かれる。最後のナターシャの破滅と再起の兆しの部分はグイグイ読めたが、そこまでが長くかかった。

  •  ピエールは、妻エレンにちょっかいを出したドーロホフと決闘。彼を撃ち倒す。ピエールは秘密結社フリーメーソンに入信。結社の儀式も描かれる。一方、ピエールの妻エレンは、社交界で好き勝手に日々を送る。ふたりの生き方、価値観の違いが鮮明になってゆく。ニコライ・ロストフは、賭博でドーロホフに大負け(恐らく彼奴の罠にはまって)。一夜にして莫大な負債を抱え込み、眼前が真っ暗になるロストフ(恐ろしや…。4万3千ルーブリとは如何程の額か? )。その後ロストフは戦場へ。そして、負傷したデニ―ソフを探し野戦病院へ。死臭に満ちたその惨状。 
    …この巻では、これらのことが印象に残る。

     そして、この巻の終盤、第五部(9章)からのナターシャの激情。ぐいぐい読ませる。
    アンドレイと婚約したナターシャであったが、アンドレイは1年後の再会を告げて旅立った。彼を待つ日々、ナターシャは、アナトーリ・クラーギンに誘惑され、駆け落ちを企てる。ナターシャはまさに、恋は盲目…の状態。周囲の制止に聞く耳を持たない独走ぶりの描写、なんとも巧い。600頁超えての終盤、読み疲れしてきたところでの加油された如く、熱がこもる。
     16歳の小娘の愚かな恋心から、皇帝ナポレオンの心情まで。多彩な登場人物を、それぞれ不足無く描き込む筆力はさすが。

  • 物語は進行していく。
    ドーロホフは悪役として常に振舞っている。
    アナートリに対してピエールが「ああ、なんという卑しい非情な一族なのだ!」と言い捨てる台詞が象徴的。

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著者プロフィール

一八二八年生まれ。一九一〇年没。一九世紀ロシア文学を代表する作家。「戦争と平和」「アンナ=カレーニナ」等の長編小説を発表。道徳的人道主義を説き、日本文学にも武者小路実らを通して多大な影響を与える。

「2004年 『新版 人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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