- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102060193
感想・レビュー・書評
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高校生の頃トルストイはおおむね読んでいて、特に『幼年時代』『少年時代』とかは好きだったが、この『復活』だけは何故か読まずに来てしまった。
本作は後期トルストイの、例の「転向」後のものなので、彼のストイックなキリスト教信仰や道徳観がここには強く現れており、当時のロシアの裁判や行政に関する批判が詳細に語られていたりする。
ただしこの長編では、主人公の動機は宗教というより道徳的な改悛の情であり、若い頃の放縦を悔やむその真面目さから、自己の無産階級的安逸を否定し、自分の土地の私有制の廃止をもくろむ。
キリスト教への回帰は、一番最後のシーンでやっと登場するのであり、つまりここでは、信仰から道徳が生まれるのではなくて、道徳から出発して信仰に到達しているのである。
ただ、小説としては、「世界文学の名作」と言えるほどには優れていないような気がした。エミール・ゾラの作品の方が、トルストイより上なのではないか? そんなこと、高校時代の私には思いもよらないことだったが。
そして倫理、「善」への意志の純粋さ、燃えるような情熱、強靱さにおいては、トルストイよりも我が国の宮沢賢治のほうがずっと素晴らしいのかもしれないと思った。 -
復活の言葉が重い。。。
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カチューシャとのロマンスは物語の装飾に過ぎない。人間として何が正しいかをここまでストレートに説いておきながら、一遍の小説としても十分愉しませてもらった。
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ネフリュードフを愛するが故に、彼との別れを決めたマースロワの生き方など、きわめて道徳的な小説だ。ネフリュードフが社会の底辺を垣間見た後、社会の悪しき構造を見て取るまでは、よいのだが、その解決を聖書に見出した、という結論は胸に迫るものがない。トルストイの人生そのものではあるのだが。ネフリュードフとマースロワの二人と社会の悪とどういう関係があるのか、にわかに分かりかねる。
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トルストイの中で一番好きな作品です。トルストイ始める方はぜひ!
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物語とは別に、社会に対する批判をする筆者のコメントが所々に現れるので、一種の思想書とも言える。
刑務所の様子や農村の様子を描くことで、社会・政府・司法の堕落を批判しており、こうした社会への不満がロシア革命への原動力になったのかと読み進めていた。しかし、宗教(キリスト教)については当時の教会に対する批判はあるものの、原点である聖書に返り、精神の安定を訴えており、唯物論とは逆の見解であった。