復活(下) (新潮文庫)

著者 :
制作 : 木村 浩 
  • 新潮社
3.67
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本棚登録 : 437
レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102060193

感想・レビュー・書評

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  • 高校生の頃トルストイはおおむね読んでいて、特に『幼年時代』『少年時代』とかは好きだったが、この『復活』だけは何故か読まずに来てしまった。
    本作は後期トルストイの、例の「転向」後のものなので、彼のストイックなキリスト教信仰や道徳観がここには強く現れており、当時のロシアの裁判や行政に関する批判が詳細に語られていたりする。
    ただしこの長編では、主人公の動機は宗教というより道徳的な改悛の情であり、若い頃の放縦を悔やむその真面目さから、自己の無産階級的安逸を否定し、自分の土地の私有制の廃止をもくろむ。
    キリスト教への回帰は、一番最後のシーンでやっと登場するのであり、つまりここでは、信仰から道徳が生まれるのではなくて、道徳から出発して信仰に到達しているのである。
    ただ、小説としては、「世界文学の名作」と言えるほどには優れていないような気がした。エミール・ゾラの作品の方が、トルストイより上なのではないか? そんなこと、高校時代の私には思いもよらないことだったが。
    そして倫理、「善」への意志の純粋さ、燃えるような情熱、強靱さにおいては、トルストイよりも我が国の宮沢賢治のほうがずっと素晴らしいのかもしれないと思った。

  • 母親がロシア文学が好きで、実家の本棚には今も「カラマーゾフの兄弟」だの「白痴」だの「チボー家の人々」だの(※これロシアじゃない;)がズラっと並んでいるんですが、どうも私はロシア文学が苦手で、登場人物の名前を覚えるだけで一苦労なものですから、ドストエフスキーの短編とか、チェーホフの戯曲くらいが限界という有様(ちなみにロシア映画は大好きなんだけど)。そんな中で唯一読んだ長編がこの「復活」。

    前述ロシア文学好きの母親は、私が子供の頃に「歌を歌って」とせがむと、♪カチューシャかわ~い~や~(※「復活」が日本で映画や舞台化されたときの主題歌?)だの、♪りーんごーの花ほころーびー(※ロシア民謡のカチューシャ。「復活」とは無関係かと)だの歌いだす人だったので、かろうじて「カチューシャ」にはなんだか愛着があったのですよね(笑)(余談ながら他に母のレパートリーには「青葉の笛」という平家物語の熊谷直実と平敦盛をモチーフにした歌があり、そんな子供の頃の刷り込みのせいか、平家物語は大人になってキチンと読みました)

    でもロシア文学長編はこれが限界でした。やっぱりロシア文学って読み難い・・・

  • 上巻を読み終えた際、
    数奇な運命に翻弄され、再び引き寄せられた二人は、
    この後一体どうなってしまうのかと思った。
    しかし、あのような結末を迎え、
    その結末を読者の自分は受け入れつつも、
    他にも違った物語の終わり方があったのではないかと
    考えさせられた。

    ハッピーエンドなのか否か、
    といった次元では判断できない結末だと思う。

    いつの間にか喪われていた、
    人としての誇りや生の実感を「復活」させ、
    お互いが「己にとっての正義」と信じた事の実行に向かい、
    突き進んだ二人の姿は美しい。

    物語もいよいよ終わりを迎えようとした時に、
    刑務所の事務室で二人で交わす会話がしみじみと美しくて、
    自分は好きだ。

  • ▼感想は上巻にまとめました。
    https://booklog.jp/users/kotanirico/archives/1/4102060189

  • 「カチューシャの唄」の甘いメロディーとこの小説の雰囲気はかなり違う.
    主人公であるネフリュードフ公爵が自分がかつて捨てた女性の有罪判決に陪審員として関わったことがきっかけで,囚人やその周辺の人々との関わり,ロシア社会の腐敗,貴族たちの欺瞞,堕落などを思索するという内容.
    「戦争と平和」や「アンナカレーニナ」のいきいきとした人物描写や,リアルな自然描写が背景に退き,社会告発や,道徳的な話が続き,私には少々退屈だった.最後に聖書に自分の生きる道を見出すというのも,キリスト教徒でない私にとってはなんだかなぁと思ってしまうのであった.

  • 本作が上梓されたのは1899年。描かれた時代も同じく19世紀末だとすれば、ロシア革命は、ネフリュードフとカチューシャの生きた時代から30年ほど後、ということになる。カチューシャら刑事犯の他に、政治犯の存在も描かれ、社会の不条理に異議を唱える者たちがいたことが伺える。だが、まだ、貴族階級が社会をおさえる体制に、揺るぎや綻びは表面化していないように思われる。その後、革命の機運がどのように高まり、拡がって行ったのだろう。そうした歴史への興味関心もまた、募るのであった。そして、激動のロシア革命をトルストイに書いてほしかった、と夢想。ネフリュードフらのその後の30年も、トルストイの大作で読みたかった。

    「復活」の下巻では、シベリアへの旅が始まる。徒刑囚カチューシャの道行きを追い、ネフリュードフも旅を続ける。道中、宿営地や監獄の情景がこと細かに描かれ、飽きさせない。
    終盤、カチューシャは、ネフリュードフの思いを受け取ることを拒む。カチューシャは、同行の政治犯シモンソンに添いとげる人生を選ぶ。その場面、ネフリュードフは、カチューシャは、私の人生に負担を強いることをさけるために、自分の求愛を斥けたことを直感した、と描かれる。だが、そうだろうか?という疑念を抱いた。カチューシャは、ネフリュードフを選ばず、同行の政治犯シモンソンへを選んだ。それだけのように思われた。
    また、私には、この場面はあっさりと感じられた。「戦争と平和」におけるナターシャの熱情の描写のような、真実味も臨場感も感じられなかった。そのためもあり、2人のロマンスとしては、少々の失望を味わった。映画なら、もっとドラマチックに描いてくれるだろうな、との思いもよぎった。

    ネフリュードフ公爵は、カチューシャを追ってシベリアへ出立。それに伴い、地主階級の彼は、土地や財産を手放すことも決意する。カチューシャの運命への贖罪、という思い、信念があったことはわかる。それでも、ネフリュードフそこまでするか? という疑念は、終章まで拭いきれなかった。
    また、物語の後半、監獄制度に犯罪抑止の効果は無く、逆に犯罪者予備軍を新たに生み出しているだけだ、とする批判にも紙幅が費やされる。かように筆者トルストイの、ロシア社会のありようへの批判がときおり噴出。その結果、ネフリュードフの行動や人生観を彫りこむ、説得力ある肉付けが追い付かなかったのではないか、という気もしている。

  • 復活の言葉が重い。。。

  • 2014.1.8 読了

  • ネフリュードフ侯爵はカチューシャが堕落するきっかけを作ったのが自分であったことを悔い,彼女を救わんと奔走するのだが,その過程でロシアの社会の矛盾に気がつき,最後にはキリスト教の教えの立派さを心から納得する,という話.最後,話の終着の全てをキリスト教に丸投げしてしまっているようで,ちょっと不満が残る.ネフリュードフが右往左往する間に,心が正義心,道徳心と,一方,貴族としての快適な暮らしの間で揺れ動いているのが丹念に描き出されるのと一方,カチューシャの方は今ひとつ,その心情の動きが読めないところがあり,彼女がネフリュードフに「あんたはあたしをだしにして,救われようとしているのよ」といったが,彼女はまたこの物語の中でだしにされているように思い,ちょっと残念.

  • トルストイ晩年の作。クロイツェルソナタなどと同様、信仰や性、生き方に対する厳格な姿勢が読み取れる。作者自身が人生の中で到達した境地を、ネフリュードフという若い主人公に託しているため、主人公の改心は少し性急な感もあるが、その後の揺れ動く心理描写など、文豪の筆が冴え渡っている。登場人物のその後が気になる、深い余韻を残す作品。
    前半、主人公に結婚を申し込んまれたカチューシャが言った、「改心という自己満足の材料に利用されるのはまっぴら」という意のセリフが、物語の結末と呼応しているように思った。
    (2015.6)

  • トルストイ『復活』新潮文庫

    陪審員のネフリュード公爵は我が目を疑った。被告人はかつて自分が犯した女カチューシャ…そしてシベリアへ流刑されることとなった彼女と自らを救うべく、ネフリュード公爵は奮闘する。

    ”ー社会や秩序が存在しているのは、他人を裁いたり罰したりしているこれらの合法的犯罪者がいるからではなく、むしろこうした堕落した現状にもかかわらず、人びとが互いに愛しあい、憐れみあっているおかげなのだー”

    解説によると、題材はトルストイの実体験と知り合いの実体験。
    知り合いの実体験はストーリーにおけるドラマティックな部分を担っていて、トルストイは知り合いに
    「そのエピソードめっちゃおもろいやん!小説にし!え、書かんの?ほな俺書きたいからそのエピソードもらうで?」的なことを言って、10年もかけて書いたのが本作品。

    話の筋道からそれてトルストイの批評文みたいなのがちょいちょい出てきて、そういうの好きじゃない人は鬱陶しく感じるかもしれない。私はそこが好きだったけれど。

    トルストイの他の作品に凄く惹かれる。
    読みたい。
    けれど、それはまたのお楽しみに。

    非常に読みやすく、面白い小説。
    凄く好き。
    一気にファンになりました。
    ロシア文学が合っているのかも。

    てかネフリュード公爵はポジティブ過ぎてワロタ。
    カチューシャがあんたをふったのは、別にあんたのためじゃないと思うよ。
    あいつのことを本気で好きになったんだよ。
    決してお前の為ではない!
    結局は全部、金持ちおぼっちゃまの自己満足でしたなかった感は否めない。
    カチューシャに利用されてただけだよ?
    どんまい。

  • 社会批評が若干前に出過ぎな印象と、それにともなってカチューシャのドラマが薄くなってしまった印象もあるんだけど、カチューシャを救うことから始まったネフリュードフの視点や感情がロシアの社会全体に向かっていくのは迫力があったなー

  • 疲れたー。ぶあついが全体としては最後がダメだ。意外にもまるくおさめたった的な感じはトルストイにもあったらしい…個人的にはトルストイ最低の作品。遊びがない。

  • 結論がキリスト教に丸投げになってしまっており非常に残念でしたが、テーマ、心理描写などは大変面白かったです。
    堕落しきった男が、自分の犯した罪のために堕落した女と再会することで、かつては信じていた善の原理に立ち返る(=復活する)…という、まあありきたりな道徳劇といえばそうなのですが、なかなかどうして、主人公であるネフリュードフの復活に対する周囲からの冷たい反応や、これまでの安楽な生活への様々な誘惑など、復活に至るまでの苦しい心理描写が真に迫っており、『現実に魂の復活なんてありえないのではないか?』と思わされるほどにそれが困難である部分にトルストイ自身の血が通った想いが感じられ、こういった物語にありがちな薄っぺらさ、白々しいわざとらしさがなくとても興味深く読めました。
    個人的には『戦争と平和』の方が好きですが、同テーマの物語群から考えると抜きん出て面白いと思います。

  • 名作

  • 現在の日本が、太平洋戦争前の状況に似ている、という人が沢山いる。戦争をしたい連中が権力を握っている!
    それ以外にも、帝政ロシア末期の状況にも似ていないだろうか?
    例えば以下のような記述は恐ろしいくらい、今の日本に似ている。

    p.37
    「でも、人がほかの人といっしょに福音書を読んだからといって、その人を流刑に処すことのできるような法律がほんとに存在しているんですか?」
    「いや、あまり遠くないところへ流刑にできますし、徒刑にだってできるんです。もし福音書を読んで、それを他人にむかって上から命じられているのとは違ったふうに説明した、つまり、教会の解釈をあえて批判したということが立証されさえすればですね。公衆の前で正教の教義を誹謗すれば、第一九六条によって移住流刑ですよ」
    「そんなばかなことが」
    「本当ですよ」

    p.279
    もし弱ってあえいでいる人間を見つけたら、隊列の中から連れ出して、日陰で休ませ、水をやったことだろう。そして万一、不幸な事態が起こったら、同情したにちがいない。ところが、連中はそれをしなかったばかりか、他人がそうするのまで邪魔をしたのだ。これはつまり連中が目の前に人間と人間に対する義務を見ないで、ただ勤務とそれが要求するもののみを見ているからだ。そのようなものを人間関係の要求よりも上に置いているからだ。それがすべての原因なのだ。

  • なんとか年内に読み終えることができた。思ってたのとは違うエンディングだったな。当時の社会情勢や不条理がよく伝わってくる作品だった。結局は地位とかお金とか…なのかな。『復活』というタイトルが素晴らしいね。2011/639

  • 4102060197 375p 1992・9・5 21刷

  • カチューシャとのロマンスは物語の装飾に過ぎない。人間として何が正しいかをここまでストレートに説いておきながら、一遍の小説としても十分愉しませてもらった。

  • 権力とか、暴力とか、今の時代にも存在する。
    大して変わってないな。

    初めてのロシア文学。読みにくい。。。
    ロシア人の名前が覚えにくいのと、
    同じ人がいろんな名前で呼ばれてて、いちいち「どなた?」ってなる。
    気にせず読んでたら話は分かったけど。
    何冊か読んだら違うのかな。

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著者プロフィール

一八二八年生まれ。一九一〇年没。一九世紀ロシア文学を代表する作家。「戦争と平和」「アンナ=カレーニナ」等の長編小説を発表。道徳的人道主義を説き、日本文学にも武者小路実らを通して多大な影響を与える。

「2004年 『新版 人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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