博物誌 (新潮文庫)

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本棚登録 : 441
感想 : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102067017

感想・レビュー・書評

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  • ここにあるのは豊富な挿絵が添えられた、詩的な生物観察からなる短文の集まりです。著者は例えば以下のように生き物たちへの愛着を感じさせる視点で表現しており、俳諧の世界観を連想する方も少なくないでしょう。

    蛙「彼女らは、睡蓮の広い葉の上に、青銅の文鎮のようにかしこまっている」
    蝶「二つ折りの恋文が、花の番地を捜している」

    本書には同著者の『にんじん』にあるような、幼少時に受けた辛い経験も多分に影響したことが偲ばれる、著者の人間嫌いな側面も所々で確認することができます。それは例えば次のような心情の披歴としても表れます。

    蝦蟇「人間は、この世の中で、もっと胸糞の悪くなるようなものを、いくらも呑み込んでいるんだ」

    おそらくルナールの没入するような自然と生物への愛好心と、人間を嫌う孤独な心性は表裏を為すものであり、そうでなくては生物への愛着を感じさせる視点と、どこか寂しげな感性を併せ持つ本書独特の味わいもまた生まれなかったのではないでしょうか。しかもそれだけでなく「蛇」にあるような読み手を吹き出させてしまうユーモラスな一面も存在しており、味わい深く豊かな魅力をもつ短文集だと感じます。

    そして、この『博物誌』にせよ、『にんじん』にせよ、ルナールの作品は書名や装いから内容を的確に想像することが難しいため、相応の読者を獲得する機会を損なっているのではないかと考えてしまうところがあります。

  • 何となく手にとってパラパラめくって「へび - ながすぎる。」の一文が目に入った時、これは読むべき本だと思いました。
    ジュール・ルナールが独自の観察眼で身近にいる動物や昆虫について綴った随筆集です。ファーブル昆虫記のような学術的な要素はありません。例えば先述の通り「へび」の項目は「ながすぎる。」この一文で終わりなのです。
    「めんどり」の次にくる「おんどり」の正体、「くじゃく」が待っているもの、「毛虫」と薔薇の関係、「ちょう」や「りす」を表した見事な修辞、「こうもり」が生まれるわけ。
    哀しかったり可笑しかったり厳しかったり優しかったり、こんな文章を私も書いてみたいです。
    訳者あとがきに「訳してはおもしろくないことばのしゃれ」とありました。フランス語が分かって原書を読めればもっともっと楽しめるのだろうと思います。

  • 以前から読みたいと思っていた本書。
    先日読んだ『うたの動物記』(小池光/著、日本経済新聞社)でも書名を見かけたのをきっかけに読み始めました。

    ルナールが身近にある生命をじっくりと観察し、小さなものたちの中にある大きな宇宙を描き出したような文章です。
    個人的にフランス文学の言い回しに苦手意識があるのですが、1つ1つが短いせいか、すんなりと読み進めることができました。

    比喩がなんとも独特でした。
    ミミズを見て「上出来の卵うどんのようだ」…と感じる日本人はなかなかいないんじゃないかな…w

  • 博物学的な本かと思って手に取ったんですけどね。ぜんぜん違いました。

    農村で暮らす作者が身の回りの動植物を独自の表現で書き綴っており、
    その表現の妙を楽しむような趣向になっています。
    ある種の詩集みたいな感じですね。

    とはいえ、荘厳な雰囲気ではなくユーモラスな文体なので、
    独特な挿絵と相まってくすりと笑わせてさせてきます。

    パンチがある訳ではないですが、
    ほのぼののんびり楽しむには良い本です。

  • あまりはっきりとしない記憶の影にこの本の存在があった。
    古本屋で見かけた時に、あぁずっと探していたんだ、と言う喜びがわき上がり、なんの躊躇もなく手に取ったのだが、実際の所私のほしい書籍リストにこの本の名前はない。
    誰かが己の作家生活に影響を与えた1冊、としてこの本をあげていた気もするのだが、それが誰なのかもわからない。
    ともかく謎の多い1冊であるルナールの『博物誌』。



    ジュール・ルナールとはフランスの作家である。
    彼の代表作は『にんじん』。にんじん色の髪の毛をした少年の話だった気がするが、実はそちらは読んだことがない。
    どういう人でどういう本なのか、何もわからぬまま本著を読んだ。
    内容は小説ではなく、いわばちょっとしたコラム、それも身近な事物に対して言葉を綴ったものである。
    動物の扱いが多いので、勝手にシートン動物記をイメージしていたのだが、そんなものとはほど遠いフランス人らしいエスプリに富んだ筆者の生活的視点に即した小話集である。
    読み始めて非常に詩的だな、と当初は感じていたのだが、読み進めて行くうちにそうでもないかもしれない、とも思った。なんだろうか全体的にイマイチ入り込めないところがどうもあったのだ。ものの見方が日本人には縁があまり無い表現が多かったのかもしれない。


    『孔雀』の”釘付け”も好きだったが気に入ったのは連作めいた『鶸の巣』、『鳥のない鳥籠』、『カナリア』。
    特に『鳥のない鳥籠』はとても好き。こういった話を書く人なら次は『にんじん』に手が伸びるのも遠くはないだろう。


    軽いのに超したことはないがここまで軽いとさすがに拍子抜けする。
    とはいえ、”易しい”だけではなく、久しぶりに詩なんて読みたくなるような”優しい”一冊だった。
    牧歌的とも言えるのやもしれないな。

  • ちょうはふたつ折のラブレターだと描写できる世界に、感謝

  • 手持ち無沙汰の時に適当に開いたページを適当に読むのに丁度良い面白さ。
    但し、蛇と驢馬と油虫(ゴキブリ)と蝶の項目だけは抜きん出ている。とくに油虫‼︎

  • 動植物の観察日誌を手にした気分。書いた日の機嫌はどうだったのか、よく見かける光景だったのかどうか、そんなことを気にしながら読んでいた。蛇へのそっけない一言なんかは想像を掻き立てられ、カナリアの話などは最後まで責任持ちなさいとつい小言を並べたくなる。まあ、ほのぼのしないし和まない。自然に暮らす動植物と人間の関係って、愛おしくはあっても優しくはないよなと改めて思う。

  • 「博物誌」ルナール著・岸田国士訳、新潮文庫、1954.04.15
    262p ¥240 C0145 (2021.06.18読了)(2021.06.14借入)(1981.07.15/35刷)
    原著の初版は、1896年に刊行されています。45項目です。その後、1904年に70項目で刊行されています。この訳書は、1904年の版をもとに翻訳されています。
    挿絵は、ボナールです。
    小遣いで文庫本を購入して読み始めたのが、高校一年生の時です。そのころから何時かルナールの「博物誌」をいつの日にか読んでみたいと思っていたような気がします。
    50年以上たってやっと読めました。
    家畜や野鳥、身近な生き物などにまつわるエッセイです。ボナールの挿絵も楽しく見せてもらいました。ページ数の割には、活字の少ない本なので、すぐ読めます。

    【目次】
    影像の猟人
    雌鷄
    雄鷄
    家鴨
    鵞鳥
    七面鳥
    小紋鳥

    孔雀
    白鳥


    牝牛
    ブリュネットの死

    水の虻
    牡牛

    驢馬

    豚と真珠

    山羊


    蜥蜴

    蚯蚓
    やまかがし

    蝸牛


    蜘蛛
    毛虫

    小蜂
    蜻蛉
    蟋蟀
    ばった


    蟻と鷓鴣の子
    あぶら虫

    栗鼠

    鹿
    かわ沙魚

    庭のなか
    ひなげし
    葡萄畑
    鶸の巣
    鳥のいない鳥籠
    カナリヤ

    蝙蝠

    鶺鴒
    くろ鶫!
    雲雀
    こま鶯
    かわせみ


    鷓鴣

    猟期終る
    樹々の一家
    あとがき  昭和26年1月 訳者

    (アマゾンより)
    影像(すがた)は、素直に、思い出のまにまに蘇って来る――。
    名作『にんじん』の著者が自然を愛で、草木禽獣のいのちを鋭く捉えた名著。
    朝早くとび起きて、頭はすがすがしく、気持は澄み、からだも夏の衣装のように軽やかな時だけ、彼は出かける――。
    彼は最も鋭い観察者である。愛情のこもった眼を、彼を取巻く自然に注ぎこみ、最も簡明な文体にその愛を凝縮させる。本書はわが国の俳文を思わせる軽妙な短文に、作者の純粋な生活の讃美、高邁で孤高な魂の哀しい表情を写し出した特異な作品である。(挿絵はボナール)

  • 「にんじん」の著者。自然を簡潔に詩的に書き連ねている。2020.12.15

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