博物誌 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (1954年4月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784102067017

感想・レビュー・書評

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  • ここにあるのは豊富な挿絵が添えられた、詩的な生物観察からなる短文の集まりです。著者は例えば以下のように生き物たちへの愛着を感じさせる視点で表現しており、俳諧の世界観を連想する方も少なくないでしょう。

    蛙「彼女らは、睡蓮の広い葉の上に、青銅の文鎮のようにかしこまっている」
    蝶「二つ折りの恋文が、花の番地を捜している」

    本書には同著者の『にんじん』にあるような、幼少時に受けた辛い経験も多分に影響したことが偲ばれる、著者の人間嫌いな側面も所々で確認することができます。それは例えば次のような心情の披歴としても表れます。

    蝦蟇「人間は、この世の中で、もっと胸糞の悪くなるようなものを、いくらも呑み込んでいるんだ」

    おそらくルナールの没入するような自然と生物への愛好心と、人間を嫌う孤独な心性は表裏を為すものであり、そうでなくては生物への愛着を感じさせる視点と、どこか寂しげな感性を併せ持つ本書独特の味わいもまた生まれなかったのではないでしょうか。しかもそれだけでなく「蛇」にあるような読み手を吹き出させてしまうユーモラスな一面も存在しており、味わい深く豊かな魅力をもつ短文集だと感じます。

    そして、この『博物誌』にせよ、『にんじん』にせよ、ルナールの作品は書名や装いから内容を的確に想像することが難しいため、相応の読者を獲得する機会を損なっているのではないかと考えてしまうところがあります。

  • 何となく手にとってパラパラめくって「へび - ながすぎる。」の一文が目に入った時、これは読むべき本だと思いました。
    ジュール・ルナールが独自の観察眼で身近にいる動物や昆虫について綴った随筆集です。ファーブル昆虫記のような学術的な要素はありません。例えば先述の通り「へび」の項目は「ながすぎる。」この一文で終わりなのです。
    「めんどり」の次にくる「おんどり」の正体、「くじゃく」が待っているもの、「毛虫」と薔薇の関係、「ちょう」や「りす」を表した見事な修辞、「こうもり」が生まれるわけ。
    哀しかったり可笑しかったり厳しかったり優しかったり、こんな文章を私も書いてみたいです。
    訳者あとがきに「訳してはおもしろくないことばのしゃれ」とありました。フランス語が分かって原書を読めればもっともっと楽しめるのだろうと思います。

  • 以前から読みたいと思っていた本書。
    先日読んだ『うたの動物記』(小池光/著、日本経済新聞社)でも書名を見かけたのをきっかけに読み始めました。

    ルナールが身近にある生命をじっくりと観察し、小さなものたちの中にある大きな宇宙を描き出したような文章です。
    個人的にフランス文学の言い回しに苦手意識があるのですが、1つ1つが短いせいか、すんなりと読み進めることができました。

    比喩がなんとも独特でした。
    ミミズを見て「上出来の卵うどんのようだ」…と感じる日本人はなかなかいないんじゃないかな…w

  • 博物学的な本かと思って手に取ったんですけどね。ぜんぜん違いました。

    農村で暮らす作者が身の回りの動植物を独自の表現で書き綴っており、
    その表現の妙を楽しむような趣向になっています。
    ある種の詩集みたいな感じですね。

    とはいえ、荘厳な雰囲気ではなくユーモラスな文体なので、
    独特な挿絵と相まってくすりと笑わせてさせてきます。

    パンチがある訳ではないですが、
    ほのぼののんびり楽しむには良い本です。

  • ルナールによる自然観察記
    動物に対する呼称が「彼 」「彼女」或いは名前で呼ぶので「誰」を指しているのかやや混乱する。
    時に愛情に溢れた賛美の文章で動物の生き生きとした姿を描写し、時に嫌いな動物だったのか或いは書くのが面倒だったのか、雑な一文で終わらせたり。しかしそんな雑な一文でもユーモアがあり楽しい

  • ちょうはふたつ折のラブレターだと描写できる世界に、感謝。

    言葉の世界に来てくれてありがとう。

  • どこかの書店員さんの書評でオススメされていたので読んでみた本。
    散文というか随筆というか…。
    身近な生き物を独自の目線から美しい文章で表現し、綴られている。
    言葉とリズムが優美で何度も眺めてしまう。
    長い表現もあれば、一行しかない表現もある。
    原文はわからないだけに、訳者の語彙力に魅了される。
    現代書にはなかなかない美しいことばが詰まった本なので、たくさんの人に堪能してほしいな。

  • ブック・オフでジュール・ルナールの『博物誌』(新潮文庫)を買ってきました。
    ひょっとしたら持っているのではという疑問がわかないわけではありませんでしたが、
    えいっ100円だということ購入してしまいました。こんなことしょっちゅうあることです(⌒-⌒;)
    で、家に帰り本棚を調べあげるとやはりありました、でも、岩波文庫版でした。
    まず翻訳者が岸田国士(1974年出版)と辻昶(1998年出版)と違い、
    また原本の出版社の違いで、話の項目数も岩波文庫がだいぶ多いようです。
    さて、ジュール・ルナールといえば『にんじん』という作品でお馴染みの方も多いでしょう。
    その彼が田舎住まいをしていて、身の回りにいるアヒル、猫、うさぎ、ロバなどを
    簡潔な文章の中に的確にその動物たちの様子をうつしとっているのです。
    新潮文庫版の岸田国士の訳はさすが明治生まれの人だけあって、
    少し言葉が硬いですが大変わかりやすい良い文章だと思いました。
    あっ、そうそう彼の次女が女優の岸田今日子なのです。
    所で、この2冊の本のもう一つの違いが、挿絵にあるんです。
    岩波文庫はあの大画家ロートレック、そして新潮社版はなんとボナールなんです。
    しかしながら、新潮社版はボナールの他に明石哲三という画家の絵も含まれており、
    注書きが無いため、ボナール作品と明石氏の絵の区別がつかないのです。
    これは困ったことです。
    実は、昨日3冊の古本を買ったのですが、パソコンで調べると、
    すべて持っていることになっています。でも、うち1冊は本棚のどこにあるかわかりません。
    そして、いつもながら思うのですが、古本屋さんにはあれだけ沢山の本があるのに、
    どうして、よりにもよってダブって買ってしまうのだろ~、不思議で不思議でたりません。

  • 「にんじん」で知られるフランス文学者の博物学エッセイ。
    美文に酔いしれる。各項目ごとに挿絵があり、散文詩のようで短く読みやすい。挿絵は後期印象派のP.ボナール。

  • 「二つ折りの恋文が、花の番地を捜している」蝶。昔好きだったこの一節を思い出し再読。ウィットに富んだ文章が楽しい。いっぺんに読むと味わえないから毎晩就寝前に少しずつ。蛇にぷっ。確かに、ながすぎるぜよ。

  • レビューが良いので読んでみたけど私には ちょっと…と、油断してたら「栗鼠」で吹出してしまいました。久々に笑った。やっぱり面白いです。

  • ゆるりとした、博物誌。家畜や身の回りの動物たちなんかをひとつずつ、一頁にもならないすこしずつの言葉で書いている。
    たまたま手に取った本だったけど、こういうものも好きだ。

  • うまいこと言うね世界チャンプ。
    ボナールの挿絵も味があっていい感じ。

    「蝶」 二つ折りの恋文が、花の番地を捜している。

  • やさしいまなざしでの観察者ルナール。

  • あまりはっきりとしない記憶の影にこの本の存在があった。
    古本屋で見かけた時に、あぁずっと探していたんだ、と言う喜びがわき上がり、なんの躊躇もなく手に取ったのだが、実際の所私のほしい書籍リストにこの本の名前はない。
    誰かが己の作家生活に影響を与えた1冊、としてこの本をあげていた気もするのだが、それが誰なのかもわからない。
    ともかく謎の多い1冊であるルナールの『博物誌』。



    ジュール・ルナールとはフランスの作家である。
    彼の代表作は『にんじん』。にんじん色の髪の毛をした少年の話だった気がするが、実はそちらは読んだことがない。
    どういう人でどういう本なのか、何もわからぬまま本著を読んだ。
    内容は小説ではなく、いわばちょっとしたコラム、それも身近な事物に対して言葉を綴ったものである。
    動物の扱いが多いので、勝手にシートン動物記をイメージしていたのだが、そんなものとはほど遠いフランス人らしいエスプリに富んだ筆者の生活的視点に即した小話集である。
    読み始めて非常に詩的だな、と当初は感じていたのだが、読み進めて行くうちにそうでもないかもしれない、とも思った。なんだろうか全体的にイマイチ入り込めないところがどうもあったのだ。ものの見方が日本人には縁があまり無い表現が多かったのかもしれない。


    『孔雀』の”釘付け”も好きだったが気に入ったのは連作めいた『鶸の巣』、『鳥のない鳥籠』、『カナリア』。
    特に『鳥のない鳥籠』はとても好き。こういった話を書く人なら次は『にんじん』に手が伸びるのも遠くはないだろう。


    軽いのに超したことはないがここまで軽いとさすがに拍子抜けする。
    とはいえ、”易しい”だけではなく、久しぶりに詩なんて読みたくなるような”優しい”一冊だった。
    牧歌的とも言えるのやもしれないな。

  • 表紙に惹かれて。イメージが水面の波紋みたいに連なってゆく。そこにアイロニーとユーモアが加わって、自分は全てとらえきれているのか不安になってくる。

  • 自然、禽獣を詩的な観察眼で描き起こすルナールの優しいまなざし。水底の泥から溜息のように上ってくる蛙、水面にのぞく淀んだ沼の腫物。孔雀の花婿、もう予行演習も何度もした。花嫁はまだ来ない。中庭の階段を美しい裾をたくし上げながら、結婚式は明日に延期されるだろう、と思っている。

  • 「蛇。長すぎる。」――この一文だけでももう満足すぎ、これが読みたくて買った(笑)。

  • 高確率でいつも鞄の中に入っています 笑 世界を見る目がちょっと変わる楽しい一冊。

  • 好きと言うか、賢治作品と並ぶ程愛してやまない本。なんてハイセンスな言葉の群れなのでしょう!   「鹿」のお話を一番読み返しているかな…。

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ジュール・ルナールの作品

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