にんじん (新潮文庫)

  • 新潮社
3.36
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102067024

作品紹介・あらすじ

にんじん。髪の毛が赤くてそばかすだらけのルピック家の三番目の男の子はみんなからそう呼ばれている。あだなをつけたのはお母さんだ。お母さんは、にんじんに夜の暗闇のなかをにわとり小屋の扉を閉めに行かせたり、おもらししたおしっこを朝食のスープに混ぜて飲ませるたりする……。だが、にんじんは母親のいじわるにも負けずに成長してゆく。生命力あふれる自伝的小説の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 1894年の作品。自伝小説。母親によるDVからサヴァイヴしていく話‥‥想像していたより切なくて深かった。

  • #読了 2020.6.11

    小学4年生以来の再読。
    やっぱりなぜこれが児童文学の名作なのか考えてしまう。何かとハラスメントとうるさい昨今だけど、それ抜きにしてもこれは精神的虐待だよね?これを児童に読ませる?闇が深すぎない?(--;)でも、それを受けてるにんじん本人は悲しすぎるほど、その事象を理解しようとしていて、その影響か一部では鋭い感受性と深い価値観が身につき、一方で歪んだ思考力が養われつつある気がした。

    大人になった今「これは虐待では?」と思えるのは、いろんな経験や考え方が身について、自分の中の正義と一般論を理解しているという自信があるからで、まだ世界の狭い子供には、親の行動を肯定しようとする心理があるのかもしれない。そこから人格が形成される。いわゆる幼少期の家庭環境ってやつだ。だから、これを児童文学として、児童がこれを読んでどう思うかでその子がいま置かれている家庭環境を垣間見ることができるのかもしれない。

    小学4年生当時、母親が読書感想文の本にすすめてくれたんだけど、そのときの母親の心理も気になる。そして私は当時どんな感想文を書いたのだろう。

    ◆内容(BOOK データベースより)
    にんじん―。髪の毛が赤くてそばかすだらけのルピック家の三番目の男の子はみんなからそう呼ばれている。あだなをつけたのはお母さんだ。お母さんは、にんじんに夜の暗闇のなかをにわとり小屋の扉を閉めに行かせたり、おもらししたおしっこを朝食のスープに混ぜて飲ませたりする…。だが、にんじんは母親のいじわるにも負けずに成長してゆく。生命力あふれる自伝的小説の傑作。

  • 訳者による解説が秀逸である。今から読むならこの高野優さん訳の新潮文庫版をおすすめしたい。
    にんじんはかわいそうだけど、にんじんも小憎たらしいところがあるからそこまで感情移入できないというような書評や感想を目にしたことがあるが、なぜにんじんはそういう言動に及んでいるのかということだ(訳者の違いによって、よりどっちもどっちと受け取れるような訳になっているものもあるのかもしれない)。
    誰がなんと言おうが、このにんじんという作品は母親に苦しめられている少年が母親を拒否するまでの成長を描いた物語である。
    なんとなく児童文学ぽく扱われている気がするけど、大人こそ読むべき本ではないかと思う。

  • ★3.5
    母親の虐待を受ける末っ子のにんじんが可哀相すぎる。しかも、その方法は巧妙で、周囲を味方につけているから始末が悪い。ただ、母親がいない時の兄姉や父親、名付け親のおじさんが、にんじんに普通に接してくれるのが救い。逆に、にんじんが自発的に残忍な行動を取る時は、少し裏切られたような気持ちになったりも。が、それも日頃の虐待があるが故で、本当にただただ辛い。愛情を欲する姿が切ないけれど、にんじんも作品全体も、語り口調は比較的淡々としたもの。徐々に母親の呪縛から解き放たれていく、にんじんの姿が清々しい限り。

  • ジュール・ルナール『にんじん』新潮文庫

    はじめの方は、読み進めれば進めるほどに憤りや嫌悪感、不快感が募るばかりだった。

    一言で片付けるなら、かわいそうなにんじん。

    しかし、話が進むにつれて、段々とお母さんの方がかわいそうに思えてくる。

    なぜなら、お母さんは誰にも好かれていないからだ。

    一方のにんじんは、母親からの精神的虐待はあるものの、彼を想う人は周りにいく人もいる様子だ。

    特に、名付け親のおじさんは、この話のなかで唯一と言っていいほどにまともで暖かい人物である。

    ルナールの自伝的小説である本書の大きなメッセージの一つであり、ルナール自身が最も求めた言葉が、次に述べる名付け親のおじさんのセリフのように感じる。

    「わしには子供がおらんが、自分の子供が猿だとしたら、猿のケツでも舐めるがね。」

  • 本作は、赤毛の少年「にんじん」の生活を描いた連作掌編です。

    その特徴は何と言っても、彼が母から執拗な虐待を受け続けていること。かなり重たいエピソードもあります。愛に飢えた子らしく、爆発してしまうシーンもあります。それでも「にんじん」君は成長していきます。内省的で自責的な少年として。そして、小さなことからも幸せを得られる、多感な少年として。

    扱う話はエグいですが、案外読みやすいです。柔らかい文章で、ユーモラスでさえあります。いろいろ考えさせられる元祖・児童虐待文学です。

  • おいルナール!!!博物誌から来たからこんなにつらいはなしと思わなかったよお~~~しんどかった…

    ちょうど博物誌をよんでるときにヴァロットン展に行って、にんじんの挿絵書いてると聞いたので購入した本来

    160ページくらいずっと淡々といじめられてて、つらすぎながらヴァロットンの挿絵いいなーとおもいつつ、がんばって読み、耐えた先に最後はちょっとレジスタンスと希望があって最悪なんだけど読後はわりとよかったのでルナールの力を感じました…

  • にんじんって大人が考えてることがわかってしまう非常に切れ者な少年であると思う。先回りして色々なことをするから。でも、そんな風に行動するのも家での扱いのせいで自然と身についた自分を防御する方法なのかなって思うとすごく胸が痛い。ひねくれ者の少年だけど、誰よりも愛に飢えている感じがあってそこがまたいじらしくて…。でも淡々と進んでいくストーリーを読んでいても彼決して家族(特にお母さん)に負けていないと思う。

  • 読んでいて辛くなってきたけど、ニンジンがメンタル強すぎて救われた!最後の人参の反逆は気持ちが良い!!

  • 小3の時、産休に入る先生からクラスの子供たちに1人一冊ずつ本をプレゼントされた。私がいただいたのはこの『にんじん』。大人になり、ヴァロットン展で彼が挿絵を描いた本に惹かれて購入。
    何故こんな物語を、という疑問は巻末の解説で納得。さらに心が痛くなった。

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