完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (575ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102070123

感想・レビュー・書評

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  • コニーは裕福な貴族クリフォード・チャタレイのもとに嫁いだ矢先、夫はすぐに戦場に赴き負傷し下半身不随となってしまう。若いコニーは心も体も満たされず心苦しい日々を過ごしていた。ある日、森番のメラーズと出会い男女の一線を越えてしまうが、コニーは女として本当の悦びを知り逢瀬を重ねていく。

    20世紀最高の性愛文学と言われ、発禁処分や検閲から数十年を経て再版された完全版です。
    女としての経験を経て、はじめて「女として生まれた」と噛みしめているコニーの発散された想いは悦びと愛情に溢れています。メラーズもまた、心から愛した女性との行為に悦びを爆発させています。夫を持つコニーの行動は決して賞賛されるものではありませんが、絶望の淵にいたコニーとメラーズがぽっかりと空いた互いの穴を埋めるように惹かれ合い、体も心も満たされていく描写はただただ綺麗です。
    性描写が注目されがちで、言ってしまえば不倫関係です。しかし激情的なものではなく、傷を抱えた二人が求め見つけた、癒しにも似た真実の愛は温かみすら感じます。そこから派生する人間模様や心情描写、背景にある社会階級問題など、純粋に文学作品として上質なものを読んだという印象でした。

  • クリフォード・チャタレイ卿と結婚したコンスタンス(コニ-)は、第一次大戦での負傷で下半身不随となった夫との空虚な生活に不満を抱いていました。やがて森番のメラ-ズに魅かれていきます。嫡子の望みを絶たれたクリフォ-ドはコニ-に「ほかの男の子供を産んでくれるといいんだが」と漏らします。この時代の労働者階級は下層民として蔑まれていたので、チャタレイ夫人の相手の男を知ったクリフォ-ドは「あの生意気な田舎者とか! あの下卑た無頼漢とか!」と怒り狂うのでした。100年前の貴族社会の道ならぬ恋を描いた物語です。

  • ある年代以上の人なら「チャタレイ夫人」と言えば「猥褻」の代名詞というイメージだと思う。私も敢えて猥褻なものを読んでみようとは思わなかったので読んでいなかったのだが、たまたまロレンスの短編集を読んだら、素晴らしかったので、ロレンスの作品が猥褻だけの筈がない、と読んでみた。
    まず、読む前のイメージは、夫が戦争で下半身不随になり、性に飢えた上流階級のチャタレイ夫人が無学でマッチョな森番と性愛の悦びを知る、という感じ。
    だから、チャタレイ夫人がそもそも森番に出会う前にも浮気をしていたことや、夫もそれを認めていたこと、森番が中背で痩せていて、無学ではないことはちょっとした驚きだった。チャタレイ夫人とメラーズの関係は、身分違いだが真っ当な恋愛なのである。
    貴族であり、作家でもある夫の人間としてのつまらなさ、浮気相手ともわかり合えない空虚さ、さらには炭鉱で働く人々を搾取することについての夫との意見の相違(これは、階級についての小説なのだ!)がまずチャタレイ夫人の苦しみで、性的な問題はその苦しみのひとつに過ぎない。
    メラーズも、森番ではあるが、フランス語も操り、本も読み、戦争では出世した人物であるが、戦争や妻との関係、体を壊したことなどから、孤独であることを敢えて選んで生きている。
    身分違いの恋愛、それからイギリスにがっちり根付いた階級の問題、日本よりずっと早くやって来た炭鉱の黄昏、その中であがきながら生きる二人の物語なのである。性愛のシーンはあるが、多分今どきの一般的な恋愛小説よりずっとあっさりしていると思う。これが猥褻とされて最高裁までいったということに隔世の感を抱く。そういうシーン自体全体の分量からすれば、それほど多くないし、そもそも全体をちゃんと読めば、猥褻が目的ではないことはわかって当然なのだ。
    読んで面白い小説だし、本当に人間というものがよく描けていると思う。
    とりあえず一番古い伊藤整訳で読んだが、光文社の古典新訳文庫もよさそうだった。ちくま文庫の訳は、メラーズが九州弁を喋るのがどうしても違和感があり(なんだかコミカルになるというか)読めなかった。
    翻訳ものは、複数の訳がある場合は、よくよく吟味してから読んだ方が良いと思う。九州弁が悪いわけではないけど、外国の方言を日本の方言に置き換えるのは無理なのではないかと。

  • 期待せずに読み始めたら、とても面白かった。
    登場人物の個性がみんな強くて、更にコニーの内面の移り変わりが読んでいてワクワクする。

  • ショッキングな話題のほうで有名になってしまっていますが、作品自体とても魅力的です。
    問題となった箇所も全然卑猥だとかそういうこともなく、とても誠実な啓蒙小説という印象を受けました。

  • アダムとイヴのように原始的で、動物のように激しく開放的で。チャタレイ夫人コニーと森番メラーズとの愛に、そんな真実の生命を感じました。それは特権階級の古くて醜い価値観を、根底から覆すかのような愛でした。

  • 性と愛という主題のために、ここまでの切り込んだ表現をする必要があったかはわからないが、読み物として面白かった。なお、現代的感覚からすればわいせつ物には当たらない印象。

  • 大学で軽音楽サークルに入りました。「オヤジ君は、そうだな、むっつりスケベでしょ?」先輩にこう言われて即座に否定しました。普通にスケベであると自任していたから。

    その点、本作『チャタレイ夫人の恋人』も謂わばむっつりじゃないスケベ、おっぴろげエロです。むしろどぎついかもしれない。

    ・・・
    チャタレイ夫人ことコンスタンスは中流ながら自由な空気の下で教育と経験を積み、貴族であるクリフォード卿と結婚する。しかしクリフォード卿は第一次大戦で下半身が不具となり、いなかの炭鉱町テヴァーシャーの屋敷に夫人と引っ込み隠遁的生活を送る。クリフォードはいくつかの文芸作品で名声を得つつあるなか、コンスタンスは閉じこもった田舎生活・貴族仲間の辛気臭い高尚な議論に飽き飽きし、果ては森番メラーズと不義の愛を交わし、その関係にはまっていく。

    ・・・

    つまり本作はありていに言えば不倫モノであるが、描写が非常に生々しく肉感的。一番印象的だったのは愛し合う二人が互いの陰部を『ジョン・トマス』『ジェイン夫人』と呼ぶところでしょうか。しばしば陰部とは抑制や理性の網の外になりますが別人格として呼ぶところにエロチシズムを感じます。


    とはいえ、これがただのエロ・グロ・ナンセンスかといえば、そればかりではなく、他の切り口があると考えます。それは例えば、人間らしさとは何かとか、自然の重要性とは何かとか、肉体の不自由はどのように克服するか(むしろしなくても良いのか)等々です。

    主人公のコンスタンスは鬱屈した生活の果てに、肉体の満足こそ善でありすべてと言わんばかりに自らの愛の道を突っ走ります。他方で不倫浮気は社会通念上も法律的にも許されないこととされており、そのルールには必ず背景があるわけです。社会と個人との関係、社会にあっての倫理、こうしたトピックを考える上ではよいマテリアルかと思いました。

    コンスタンスのように夢中になるときは忠告も悪口に聞こえますし、見境もなくなります。そういう状態は理解できるものの、もう破滅に向かっていることがわかり、助けてあげたいけど助けられないもどかしさを感じました。

    ・・・
    巻末の解説を読み、筆者ローレンス自身が人妻と不倫して、いわば駆け落ち然の海外滞在を余儀なくされたことを知りました。その点で本作は私小説的作品といえます。ノマド的生活の中で一生を終えた彼が、それでも愛が勝つ、と30年前に流行った曲のように主張したかったかはわかりませんが、作品の終わりはいまだ一緒になれない二人の間の近況文通で終わります。その印象は二人の行く末が明るくないことを示しているようにも見えますし、あるいは『社会』に自分たちの生活を踏みにじられたローレンスのルサンチマンのようにも思えました。いずれにせよ、社会に反して生きるというのは楽ではない、そのことは実感しました。

    皆さんはどう読まれますでしょうか。

  • 姉との対話でコニー自身が言うように、コニーとメラーズは互いに名前で呼び合わない。地の文においても二人のみが登場する場面は、一部を除いて、「彼」「彼女」と称されている。コニーに即して言えば、夫との精神的生活(という名のひきこもり生活)を通して彼女は観念的な言葉など無意味だ、ということを悟った。二人の間では既成の名前も意味を持たない。代りに、彼らは自分らの性器に自ら名を与える。『旧約聖書』「創世記」のように、名を与えるところから世界が始まる。二人にとっては肉体が第一であり、肉体の交合を通して生まれる言葉こそが重要な意味を持つ。

  • ちきりんさんの「未来の働き方を考えよう」に出てきた本

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著者プロフィール

D.H.Lawrence.
1885 ~ 1930 年。イギリス出身の作家。
大胆な性表現や文明社会と未開社会の葛藤などを主なテーマに据えた。
イギリスからイタリア、オーストラリア、ニューメキシコ、メキシコと遍歴。
この間に、『アーロンの杖』『カンガルー』『翼ある蛇』などの問題作を
次々と執筆。ローロッパへ戻ってものした『チャタレイ夫人の恋人』が
発禁処分となるなど、文壇の無理解もあり長編の筆を折る。
その他の代表作に『息子と恋人』『虹』『アメリカ古典文学研究』
『アポカリプス論』など多数。

「2015年 『ユーカリ林の少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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