完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

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レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (575ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102070123

感想・レビュー・書評

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  • コニーは裕福な貴族クリフォード・チャタレイのもとに嫁いだ矢先、夫はすぐに戦場に赴き負傷し下半身不随となってしまう。若いコニーは心も体も満たされず心苦しい日々を過ごしていた。ある日、森番のメラーズと出会い男女の一線を越えてしまうが、コニーは女として本当の悦びを知り逢瀬を重ねていく。

    20世紀最高の性愛文学と言われ、発禁処分や検閲から数十年を経て再版された完全版です。
    女としての経験を経て、はじめて「女として生まれた」と噛みしめているコニーの発散された想いは悦びと愛情に溢れています。メラーズもまた、心から愛した女性との行為に悦びを爆発させています。夫を持つコニーの行動は決して賞賛されるものではありませんが、絶望の淵にいたコニーとメラーズがぽっかりと空いた互いの穴を埋めるように惹かれ合い、体も心も満たされていく描写はただただ綺麗です。
    性描写が注目されがちで、言ってしまえば不倫関係です。しかし激情的なものではなく、傷を抱えた二人が求め見つけた、癒しにも似た真実の愛は温かみすら感じます。そこから派生する人間模様や心情描写、背景にある社会階級問題など、純粋に文学的な作品として上質なものを読んだという印象でした。

  • 読んだのは別の全集だけど訳者が同じなので。
    面白かった気はするけどあんま頭に残らない。

  • 期待せずに読み始めたら、とても面白かった。
    登場人物の個性がみんな強くて、更にコニーの内面の移り変わりが読んでいてワクワクする。

  • ロレンスといへばこれ、といふ作品ですが、安易な機械文明批判を展開してゐたり、或は表現の仕方が過度に感情的であつたり、とかく欠陥の多い作品でもあるため、ロレンス入門としてはあまりおすすめできません。『死んだ男』を読みませう。

  • 一時発禁問題となった作品らしいが、海外の小説を読むとよくこのタイトルが文中の登場人物が読んでいるので興味を持って借りて読んだ。
    (実際そういういきさつで借りた本多数)
    官能小説としてはいささか古ぼけており、現在ではなんら問題の無い内容、むしろ描写がまだまだ甘いw
    まぁそこは文学小説。そもそもイギリス小説というのは主人公がとにかく自己主張が激しい、コニーもすごいが周りの登場人物もかなり激しく、なでぜこまで口論するのかと思いたくもなるがこれはまったりした日常風景を描いたのでは無くあくまで文学小説w
    主張よりもそういった会話の情景を楽しむ本なのである。
    想像ではもっと淫靡でもっと多くの男性との経験が語られているのかと思っていたが1人の男性と性の真価を得る、といった話で、まぁ代表作を押さえたかな、と言う程度であまり印象にも残らず、記録の一冊として感想を閉じるとしよう。

  • シルビア・クリステルの「エマニュエル夫人」という映画を知っている人は、もう少ないだろう。
    僕の思春期の入り口くらいに、この映画は公開され、相当話題になり、幾つか続編も作られた。
    多分、籐椅子だと思われるが、それに腰掛けて、上半身裸で高々と足を組んでいる。
    そんなポーズと、テーマ音楽が流行って、成人映画なのに、漫才やコントのネタにもなった。
    その主演女優のシルビア・クリステルが主演したのが、「チャタレイ夫人の恋人」である。
    少し前に、そのリマスター版が地元の「ツタヤ」に入荷して、完全に下世話な興味本位で借りたかったのだが、ほぼ「読んでから見る派」の僕は、原作を読んでからと思って借りずにいたが、今回やっと読み終わった。
    これは、長らく出ていた削除版ではなく、完全版である。
    「チャタレイ裁判」とか「愛のコリーダ裁判」とか「四畳半襖の下張り裁判」とか、猥褻裁判の有名なものは、幾つか名前のみ知っているが、実際この作品を読んでみると、当時としては卑猥とも受け取られる表現があるが、この作品は無論それだけではない。
    文庫本で本編562ページ。これを、性描写一色で、埋め尽くすことは出来ない。
    むしろ、 被支配者階級が支配者階級の夫人と不倫関係になり、身籠って恐らくは最後は一緒になるという禁忌を破った作品だと思う。
    当時のイギリスの階級意識は、僕などの考えも及ばないほど、強固だったと思う。
    夫人の夫は、戦争で負傷を負い、下半身不随に陥って、夫人と性交渉が出来ない。
    その状況で、夫人派使用人の森番と関係を持ち、最終的には妊娠してしまう。
    ここで、階級意識が感じられるのが、事実上性交渉の出来ない(つまり自分の子供を持てない)夫が、仮に夫人が他の男の子を妊娠しても、それを自分の跡取りとして認めると、明言しているのと、後半、実際に森番の子供を妊娠している夫人と、決して離婚しないと宣言するところである。
    家の存続と、体面を保つことが、夫婦の愛情などよりも、優先される。
    最初、低俗な興味で読み始めたが、違った意味で、面白かった。
    何でもかんでもタブー破りをするのは、考えものだが、やはり森番と夫人が最後に結ばれるのを示唆するのは、カタルシスにはなるだろう。

  • 2017.12.28 日本の文学作品を読む(2018年に向けて)
    2018.11.10 読書開始
    2018.11.20 読了"

  • ある年代以上の人なら「チャタレイ夫人」と言えば「猥褻」の代名詞というイメージだと思う。私も敢えて猥褻なものを読んでみようとは思わなかったので読んでいなかったのだが、たまたまロレンスの短編集を読んだら、素晴らしかったので、ロレンスの作品が猥褻だけの筈がない、と読んでみた。
    まず、読む前のイメージは、夫が戦争で下半身不随になり、性に飢えた上流階級のチャタレイ夫人が無学でマッチョな森番と性愛の悦びを知る、という感じ。
    だから、チャタレイ夫人がそもそも森番に出会う前にも浮気をしていたことや、夫もそれを認めていたこと、森番が中背で痩せていて、無学ではないことはちょっとした驚きだった。チャタレイ夫人とメラーズの関係は、身分違いだが真っ当な恋愛なのである。
    貴族であり、作家でもある夫の人間としてのつまらなさ、浮気相手ともわかり合えない空虚さ、さらには炭鉱で働く人々を搾取することについての夫との意見の相違(これは、階級についての小説なのだ!)がまずチャタレイ夫人の苦しみで、性的な問題はその苦しみのひとつに過ぎない。
    メラーズも、森番ではあるが、フランス語も操り、本も読み、戦争では出世した人物であるが、戦争や妻との関係、体を壊したことなどから、孤独であることを敢えて選んで生きている。
    身分違いの恋愛、それからイギリスにがっちり根付いた階級の問題、日本よりずっと早くやって来た炭鉱の黄昏、その中であがきながら生きる二人の物語なのである。性愛のシーンはあるが、多分今どきの一般的な恋愛小説よりずっとあっさりしていると思う。これが猥褻とされて最高裁までいったということに隔世の感を抱く。そういうシーン自体全体の分量からすれば、それほど多くないし、そもそも全体をちゃんと読めば、猥褻が目的ではないことはわかって当然なのだ。
    読んで面白い小説だし、本当に人間というものがよく描けていると思う。
    とりあえず一番古い伊藤整訳で読んだが、光文社の古典新訳文庫もよさそうだった。ちくま文庫の訳は、メラーズが九州弁を喋るのがどうしても違和感があり(なんだかコミカルになるというか)読めなかった。
    翻訳ものは、複数の訳がある場合は、よくよく吟味してから読んだ方が良いと思う。九州弁が悪いわけではないけど、外国の方言を日本の方言に置き換えるのは無理なのではないかと。

  • 20世紀初頭、英国中部。貴族のクリフォード・チャタレイ。夫人のコンスタンス・チャタレイ(愛称コニー)。コニーは、領地の森番メラーズと身体の関係を結ぶ。そして、終盤、それぞれの夫婦関係を精算し、ふたりの生活を築こうと歩み始める。

    巷間では、戦争で不能となった夫、それ故に…という文脈で紹介されがちだ。だが、実際に読み進めると、それが最大の理由ではないように思われた。むしろ、夫クリフォードの理屈屋すぎる感じや、夫婦間の空気の違いが原因のように感じられた。
    思えば「性愛」は、人生の大切な要素のひとつ。だが、文学は人生を描くのを使命としているにも関わらず、性愛そのものを主題に据えた小説は稀である。その意味で、文学の営みとして、この作品が性愛そのものを主題のひとつにしたことは、至極全うなものである。
    しかし、刊行された1928年当時は、この内容・表現は衝撃的であり、それまでの表現の水準からは、唐突な、突き抜けたものであったように思われる。 現代に生きる私の基準でも、この小説の性愛についての表現は、少々驚かされた。腰の動きであるとか、射精という語まであるのだ。さらには、そのものずばりの4文字言葉まである。 

    さて、作品中、炭鉱の町の殺伐とした風景。鉱山労働者達の非人間的な様相。貧しさゆえの希望のない表情。産業社会への不安と警戒感が暗示される。一方で、上流階級の人間達(夫、クリフォードを筆頭に)の、理念や空論に走り、空しく虚ろな姿。血と肉の実体、身体の存在感が希薄さが、印象に残る。
      
    「生」の実感の尊さを呼びかけ、非人間的な工業社会の危機を訴える、そんなメッセージを感じた。

    コニーが、夫の屋敷を離れてすごす、ベニスの夏の日々を描く章もある。意外な味わいポイントで楽しい。
    終章、コニーとメラーズの、往復書簡だけで、ふたりの日々と、その想いが描かれる。内省的で、心に沁みてくる静けさがある。
    性愛についての表現で話題にされることが多い小説だが、落ち着いた深みのある、静謐な趣に満たされた小説なのであった。

  • 古本

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著者プロフィール

D.H.Lawrence.
1885 ~ 1930 年。イギリス出身の作家。
大胆な性表現や文明社会と未開社会の葛藤などを主なテーマに据えた。
イギリスからイタリア、オーストラリア、ニューメキシコ、メキシコと遍歴。
この間に、『アーロンの杖』『カンガルー』『翼ある蛇』などの問題作を
次々と執筆。ローロッパへ戻ってものした『チャタレイ夫人の恋人』が
発禁処分となるなど、文壇の無理解もあり長編の筆を折る。
その他の代表作に『息子と恋人』『虹』『アメリカ古典文学研究』
『アポカリプス論』など多数。

「2015年 『ユーカリ林の少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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