- Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102071014
感想・レビュー・書評
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フランツ・カフカ(1883~1924年)は、オーストリア=ハンガリー帝国領(当時)プラハのユダヤ人の家庭に生まれ、プラハ大学で法律年を学んだ後、保険局に勤めながら作品を執筆し、肺結核で41歳の若さで死去した。生前には、1915年に発表した本作を始め多数の短編を残したが、注目されることはなく、死後に友人により『審判』、『城』等の未完の作品が発表されて評価が高まり、20世紀を代表する作家の一人と見なされるようになった。
その作品は人間存在の不条理を主題としており、アルベール・カミュ(1913~1960年)とともに、代表的な不条理文学と言われている。
ストーリーは、真面目な布地の販売員グレーゴル(グレゴリー)・ザムザが、ある朝目を覚ますと、巨大な虫に変身しており、家族からも忌み嫌われながら(妹だけは最初は食事を運んだりしてくれるが)、自室に閉じこもって虫として生活を続けていたが、父親にリンゴを投げつけられて死んでしまい、その後、家族は生活への希望を見出す、というもの。
巨大な虫になっている自分に気付く始まりは衝撃的で、その後もどのようなことが起こるのか、もしかすると何かの拍子に人間に戻るのではないか等と思わせる展開は、退屈させることはなく、一気に読み通させるのだが、結局、原因も分からずに虫になったグレーゴルが救われることはなく、不条理の極致である。
カフカが、グレーゴルにより具体的に何を暗示していたのかについては、執筆当時の自分、或いは、当時差別を受けていたユダヤ人等、諸説あるようだが、明確なものではない。
ただ、現代の我々にとっても、本質的に類似した境遇(突然、周囲が自分に否定的になり、自分の主張も通じず、救われることがない環境が続くような)に陥る可能性を否定することはできず、強烈な印象を残す作品といえる。
(再読/2022年6月)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭の幻惑的な衝撃、忘れられない。
読み手は、具体的にどのような造形を頭に浮かべるのであろうか。 -
やっと原作読めた〜確か小学生の時に教科書で取り扱われていた本だった。
映画の方もチェックしたい。
“変身”の無常、絶望。
なんとも独特な空気。
妹ちゃんかわいいね。
私もいつか虫になった日は、とっとと殺してほしい…でも、語り継がれるだけある海外文学の名作!
面白かった…! -
有給を取った日の朝、ふと読みたくなって電子書籍で読んだ。こういうとき、読みたいときにすぐ読める、電子書籍は偉大な発明だと思う。カフカの変身、「主人公が虫になっている」という話なのは知っていたが、実は一冊読みきったのは初めてな気がした。「虫」というのは比喩表現で、家族の中で自分がいらない存在になる、そんな状況は、いつ誰の身に降りかかるか分からないことである。実は、この話、他人事じゃないんだよな、と思いながら読んだ。
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人は他者との関わりの中で自分を確立していく生き物です。健全な社会生活を送っていた者が、ある日突然、近しい人に毒虫として厄介がられるこの苦悩はとても耐え難いはずです。現代においても、鬱病による失職、事故や病気により要介護者となるなど、社会や家庭に居場所が無くなり、自身は世間や家族にとっての厄介者、お荷物なのではないかと感じてしまう状況に陥る事があるかもしれません。その様な状況にいる者達の苦悩や現実の理不尽さを私達に強く訴えている気がします。
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家族想いで心優しいグレーゴルが毒虫に「変身」しただけで皆の態度が真反対に変わってしまい悲しかったです・・・
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これ書いたカフカ先生偉大だよねー。これ以降の作家みんなカフカ先生に影響受けたよねー
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2020年12月
自分が虫になっているという一大事なのに、グレーゴルの心配はまったく日常的なことで滑稽で妙にリアルである。
「虫(グレーゴル)はどのような姿をしているのか」というのがこの小説を語るときの一つの問いであるらしい。衝撃だった。描写は巧みで、頭の中に映像が浮かぶ。こういう形だよ当たり前でしょ、と思ったのだが、聞けばその形状は三者三様だった。わたしはカメムシ的なものを想像していたが、弟は芋虫的なものを想像していたのだとか。たしかにカメムシでも芋虫でもカブトムシでもムカデでも、違和感なく状況を想像できる。
カフカが扉絵に昆虫を描くことに猛反対したというエピソードに深く納得した。 -
2020年9月28日読了。
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『ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。』
この有名な冒頭で始まる、フランツ・カフカの代表作。
100年以上も前の作品であるにもかかわらず、現在でも多くの人に読み継がれる不朽の名作。
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何の前触れも無く唐突に虫になり、それをすんなりと受け入れてしまうグレーゴル。
虫になってしまったグレーゴルに驚きこそするものの、なんだかんだで家族の一員として接する両親と妹。
虫になっても家族の事を想い続けていたグレーゴルだが、次第に本人の意思とは関係なく、会話する事も出来ず、腐った食べ物を好むようになり、壁や天井を這いずり回る事に快感を得るようになったりと徐々に虫へと成り果てていく。
その様を目の当たりにした家族達は、グレーゴルを家族の一員ではなく厄介者として扱うようになっていく。
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不条理文学と言われるだけあって、不条理の連続。
内容が内容だけにこの作品には謎な部分が多く、何を表現していてどう伝わったかというのは読み手次第で変わってくると思われる。
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解説の部分でカフカが『変身』は恐ろしい夢であると断言している。とあるように、自分はこの不条理世界は一つの悪夢の話なんだと感じた。
冒頭の一文で『なにか気がかりな夢から目をさますと』という言葉がある事から、現実世界で何かしらの心配事や不安を抱えているグレーゴルが見ている夢なのではないかと感じた。
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虫になってしまうという比喩表現が、『鬱』であったり『引き篭もり』であるという解釈があったりと、様々な人の考察や見解を調べるのも読後の楽しみの一つかもしれない。
その点でやはり、安部公房や村上春樹の作品はカフカの影響を受けているのだと思う。
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また読む度に感想や思う事が変わりそうなので、別の翻訳のものも機会があったら読んでみたいと思う。
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(余談)
・堅い背中にリンゴがめりこむとか、父親はとんでもない豪速球を投げるんだなと感心した。
・ドイツの小学生は国語の授業でこの『変身』を学ぶそう。やべぇ。