あしながおじさん (続) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102082027

感想・レビュー・書評

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  • この歳になって初めて読みます「続・あしながおじさん」
    まるきっり予備知識がなかったもので、まさかジュディがいない(いるんだけれど
    いない。笑)お話だったことにはちょびっと面喰いながらも読み進む....。
    こちらは続編というよりも今風にいうところのスピンオフですね。
    前作「あしながおじさん」の番外編でした。とっても面白かったです♪
    エネルギッシュでポジティブ全開。初めから終わりまでうきうき上機嫌な気持ちで
    楽しく読めました。

    このたびの主人公はジュディの大学時代の親友サリー・マクブライド。
    彼女は、ジュディがクリスマスの日に愛しき夫(元おじ様)からプレゼントされた
    ジュディの出身孤児院を、模範的な孤児院に改革するための費用と
    その権限のすべてを依頼されて譲り受け、孤児院の院長となって改革に
    奮闘するというお仕事ラブストーリーです。

    サリーはお金持ちのお嬢さま育ちなので、こんな大仕事を引き受けちゃって
    大丈夫なのかしらと少々不安になってしまったのですけれど、これはもう余計な
    心配でした。ほぼ完璧に尽力を注ぐその奮闘ぶりは素晴らしいほどにお見事で
    とにかく気持ちよかった♪

    お話はやはり手紙が語る形式で、サリーが孤児院の改革に取り組む様子を
    主に依頼主であり、親友であるジュディに宛てて手紙を書いて報告していきます。
    こんな酷い仕事は絶対にお断りよ! と豪語しておきながら、見て見ぬ振りを
    することができずについ手を出せば、持ち前の知恵でどうにかこなしてしまう
    という才能がある。ジュディはこんなサリーだということを最初から見越して
    依頼していたのかもしれないですね。勝ち気で負けず嫌い。中途半端には
    しておけず、やり始めたことは最後までやり通す。頭の切れも抜群によくて
    ポジティブで前向き。そして小さな子供には優しくて...。もう言う事なしなのです。

    それでも困ったことや悩んでいることは素直に打ち明け、ジュディに相談したり
    かと思えば素敵な男性の出現に心ときめかせたり。常に明るくハイテンションな
    サリーでも時には心を痛めることもあって涙も誘います。

    サリーの書く手紙はジュディに宛てたものばかりではなく、心ときめかせた
    お人に宛てたり、はてまた「敵様」と、あからさまにけんかを売るような手紙も
    書いてみたり。時折混ざるサリーの皮肉たっぷりな文面もなんとも痛快で
    小気味いいのです。手紙はすべてサリーが誰かに宛てたものばかりですが
    それにはちゃんとお返事がきていて、それにまたお返事の手紙を書いている
    ということがわかり、ジュディもいなようでいてくれる素敵な楽しいお話でした。

    後半、サリーが自分の気持ちに自分自身で気が付いてからは一気に加速する
    本編「あしながおじさん」より少し大人なストーリー展開が楽しめました。

  • その見事な描写力が好きで、「あしながおじさん」は人生で3回も読んでいるのに、この「あしながおじさん(続)」は初読。なんでもっと早く読まなかったんだろうと思うぐらい、よく出来ていて、素晴らしいです。「あしながおじさん」とは好対照という感じで、違う良さがあります。

    続編は、前作の主人公ジュディの親友・サリーのお話。
    大学卒業後は有閑令嬢として暮らしていたのに、ジュディの策略?によって彼女が生まれ育った孤児院の院長にいきなり抜擢されてしまい、奮闘していきます。

    孤児の女の子がお金持ちの男性と結婚する「あしながおじさん」がシンデレラストーリーであるとすれば、続編のこの物語はどちらかというとその逆。そのまま周囲に流されていたら地位もお金もある男性の妻としてシンデレラになってめでたしめでたしの予定だったのに、自身の真の性質と価値観に目覚めて成長を遂げて一生の仕事を見つけるとともに、互いを真に理解し協力しあえる男性を見出すまでの、キャリアウーマン型ストーリー。

    時に頑固だけど、自分の未熟さや無知に気づいて経験を積みながら、100数人の子供達の生活と将来を守ろうと頑張るサリーはとっても魅力的です。

    それから、前作は、一視点から他者の行動を書くだけで巧みにその心理までも想像させていたのに対して、本作では、手紙に書く日付の絶妙な感覚からサリーたちの心理や環境の変化を巧みに想像させているのが見事でした。

  • ある日、「あしながおじさん」の話になって、

    「あれ、確か続編あった?」と聞かれ、

    「続きじゃないけど、あるよ。全然面白くないけど…!」
    と鼻息荒く返答したけれど、
    なんだかちょっと気になって、読み直しました、ら、
    大層面白かったので、
    ここに訂正し、お詫びします。

    表紙はなんだか怖いのですが…

    「あしながおじさん」の主人公ジュディは、
    クリスマスに、結婚相手から
    彼女の育った「ジョン・グリア孤児院」を
    理想的な孤児院に改造するための
    莫大な資金をプレゼントされる。

    その院長になってくれるよう、大学時代の親友サリーに
    依頼するところからお話は始まる。

    前回(といっても昔も昔、大昔!)読んだとき
    つまらないと感じた理由として、

    『続』と銘打ちながらほとんど『続』じゃないこと。
    (これに関しては全然違う題名だと手に取る人が少ない、
    と言う理由での出版社の苦肉の策である、と
    今は理解できます。)

    また、孤児院の院長になって思いつく限りの理想的な施設を…
    と言う『面白さ』が、
    子供過ぎて理解できなかった為と思われる。

    また、手紙形式で話は進んでいくが、
    複数の宛名のものが混在するのも確か嫌だなと思った記憶が…

    今回読み直してみて、
    サリーに反発する人たちの理由も賛同しないまでも
    理解は出来たり、

    脇役のキャラクターやサイドストーリーも大いに楽しめた。

    『赤毛のアン』や『あしながおじさん』など
    いわゆる「乙女チック小説三つ編み系」(←私が名付けました)
    を熟読し、しつこいほど読み返している読者は

    ある人が登場した途端(かなり初期ですが)、
    ハイハイハイハイ…と「お約束」を確信するわけです。

    ところどころ、今の時代では考えられない
    「差別的表現」に出くわし、ちょっと「ギョッ」としますです。

    さて、ジーン・ウェブスターは
    マーク・トウェインの姪の娘。

    つまり、マーク・トウェインにとって、ジーンさんは
    「たまらなく可愛い存在」って、ことかしらん?

  •  14〜15年ぶりの再読。前作主人公ジュディの親友サリーが、ジョン・グリア孤児院の院長を任され改革に乗り出す奮闘記。安易な『続あしながおじさん』より、原題『Dear Enemy』の方がしっくり来る。現代の感覚で読むと価値観の違いにえっ!?と驚くシーンが多いが、さらに劣悪な環境だった孤児院を良くしようと奮闘するサリーを自然と応援したくなる。マックレイ医師の人となりが完全にサリーの主観に依るので、読者にとっても怪人物となる点が書簡集の魅力。ジュディが俗っぽく感じられるのも、それが原因だろう。
     訳が古いので仕方ないが、スコットランド訛りは表現に一捻り欲しい。今だったら地方差別、方言差別と取られるだろうに。

  • ジュディが主人公なのかと思いきやまさかの友人のサラが主人公で読み始めびっくりしました。手紙で進んでいくところは変わらず、今回は孤児院を改革すべく派遣されて、その中で孤児たちにばたばたさせられながら最終的に結婚まで。しかしこの多忙であろう中定期的に手紙を色んな人へ書いているサラには脱帽です。見習いたい。医者ともしやと思いながら読み進めましたが、やはりで最後にやにやしてしまいました。

  • 前作同様、主人公からの書簡のみで構成された書簡体小説。
    前作は等身大の青春と愛を主だった内容にしていたけど、今作はジュディの親友サリーが孤児院を立て直すという奮闘記+ラブ。
    ユーモア溢れるその筆跡から事件や心境を読み解くのがとても楽しく、やっぱ好きだなぁと。
    オチはもうほぼ最初から明白で、それが良い。

  • ジュディーの友人サリーが、孤児院の院長として赴任する。
    あしながおじさん(daddy long legs)が好きなら、
    続(dear enemy:拝啓 敵さん)も絶対気に入ると思う。

    孤児院の改革には、微妙な記述がある。
    遺伝、精神病に対する当時の理解が反映しているかもしれない。
    文学作品として不適切だという理解があるかもしれない。

    主人公孤児に家庭をという熱意の前には重要ではないかもしれない。

    ps.
    作者は、マークトウェインの姪の娘とのことである。
    作者が自分の子供を産んで、すぐに亡くなったのは、あまりにも悲しい物語。
    作者の自伝があれば読みたい。

  • 読んだ記憶はなかったのだけど、
    終盤に入ってどこかで聞いたような展開に……。
    前作『あしながおじさん』に続けて読んだのかしらん。
    (こういうことがあるから読書記録を付け始めたのです)

    『あしながおじさん』にも登場していたお嬢様のサリーが、
    働くこと、世の中に実際的に関わっていくことの面白さに目覚めていくお話。

    お嬢様というのは、目的を持って人を動かすには適任なのかもしれない。
    上流階級の世界を知っているから、スポンサーとの話がしやすい。
    教養があるから、経営的により良い判断がしやすい。
    こうと決めたら頑固な場合が多い(イメージです)ので、計画の実行力がある。

    慣習に凝り固まった孤児園をどんどん改革していくサリーの仕事っぷりは清々しく、
    こんなふうに働きたいと思わされる。

    ただ、終盤でゴルドンさんと別れるのは納得できるけれど、
    それで先生と一緒になって、果たしてうまくいくのだろうか。
    前作と違って、そこのところの確信が持ちきれない。

  • 前作に違わず面白かった!差別的な描写もありましたが、1900年代のアメリカともなれば植民地があり優生思想や啓蒙思想が流行ったころですよね。移民もいて白人至上主義の時代だったはず。麻薬の薬ってもしかしてコカイン!?離婚した女性のことを描くなんて先進的だし、孤児院と大卒の令嬢の組み合わせも好みでした。

  • 続編じゃないね。いわゆるスピンオフ。
    あしながおじさんの主人公のお友達が今回は手紙の書き手。
    英語の題も”Dear Enemy” 親愛なる敵だから、結末も大体想像がつく。
    けど!けど、、意外と面白い。孤児院等での色々なハプニングや展開(発展?)があり、その度に主人公のサリーの心境が気持ちいい位に揺れて変化する。気に入らないもの、気変わりも包み隠さず曝け出す気持ちの良さ。

    やたらスコットランド系と書かれているが、半分はアイルランド人らしいので、燃える様な赤毛の独立心の強い情熱的なアイルランド女サリーだと私は想像する。

    離婚がスキャンダルで女性に選挙権がなく家庭内に収まるものと考えられていた時代背景も垣間見られる。

  • 「あしながおじさん」のほうが好きだな。ジュディは出てこないし。私の中のサリーのイメージとは、ちょっと違いました。

  • 久々にあしながおじさんを読んだので、続編にも手を出してみたり。
    あしながおじさんでも出てきたジュディの親友が主人公。
    こっちもおもしろかったー!
    時代背景を鑑みても、サリーのエネルギッシュなこと。
    時に現実の厳しさや恋に揺らぎながらも、それでも自分を持って頑張る姿は今の時代の人が読んでも勇気付けられるところがあるかも。
    ジュディの幸せなその後が垣間見られるのも良かったです。

  • 前作が面白かったので続きがある時聞き…ただ、読む前に事前情報として「発刊当時には一般的であったと思われる誤った知識や、差別的表現なども多い。しかし、それらが物語の根幹を成す部分でもあるために、現在では新訳の発刊は困難であると思われる」というものがあったのでちょっと緊張してました。ら、結構表現がストレートと言いますか、読んでいてヒヤっとする場面が思った以上に多かったです。それとは別に…ジュディがサリーに対して何故この仕事を託したのか、ジュディの幸せな姿を垣間見ながらも何故この行為を…とつっこみを入れつつ納得もできず最後まで読みましたが、サリーの強気で正直で、芯がしっかりしたところ、自信たっぷりの台詞、その軽快さは楽しいものでした…ヒヤヒヤする表現も多いけど。ハッピーエンドに向けて加速しだした時などは、読んでいて幸せな気持ちにもなったものですが、それでもここに来るまであったいろんなことを思うと…なんとなく、モヤモヤを抱えたまま終わりを迎えた気がしています…。それと、今回は手紙の送り先が一人ではないので、読み手の想像力が前作よりもずっと試されている気がしました。

  • 前作のヒロイン、ジュディの親友サリーがヒロイン。前作と同様に書簡スタイルで物語が綴られていく。
    宛先は孤児院出身で現在は出資者の妻となったジュディ、院の小児科医であるマックレイ、サリーの恋人ゴルドン。
    サリーは持ち前の明るさとユーモアで閉鎖的だった孤児院の改革に乗り出す。

    初めは仕事から逃げたがっていた彼女が、子どもたちと過ごすにつれ次第に心からやりがいを感じるようになる。
    まだ女性の参政権もなかった時代、女性が社会の一員として働くことは偏見も多かったことだろう。けれどもサリーのポジティブで朗らかな心持ちはそれらを超えて、優しくもあたかい母性愛と高い教育によって培われた自立心によって、数々の事件を「愛すべき子どもたちの成長」と捉えていく。

    時代の流れに逆らわず、それを活力として道を開いていく姿は清々しく凛としていて心地よい。
    これは現代の働く女性にも通じる感覚だと思う。
    いつの時代も女性はしなやかで強いものなのだ。
    サリーが多くの人々の中で苦労しながら成長する過程も、まるで自分のことのように思えるほど、時代に関係なく同じなのだ。

    これは一体どういうことだろうか、と考えてしまう。
    そして今、わたしは果たしてサリーのようにユーモアを持って人を見る目があるだろうか。
    学ぶべきことが多い作品だった。

  • 京都女子大学図書館での請求番号は[081/I953/3027]です。

    「あしながおじさん」の主人公、ジュディの親友サリーの物語。「親愛なる敵さん」というフレーズが素敵!

  • 前作は少女小説でこちらはお仕事小説、かな?
    サリーは仕事も恋も頑張るタイプのようで。
    ジュディの文章からは分からなかったサリーの頑固なところが見えておもしろかった。
    さようなら青ギンガム。

  • Linker No.15
     工学府修士1年
     たなちゅーさん

     「あしながおじさん」という本は知っている方も多いと思いますが、この本に続編があるのをご存知でしょうか。かくいう私も最近知ったのですが、読んでみるととても面白かったので紹介したいと思います。
     「あしながおじさん」は、孤児院育ちのジルーシャが‘あしながおじさん’の援助を受け大学に進み、その生活をジルーシャの書く手紙という形式でつづったものです。「続 あしながおじさん」は、ジルーシャの大学時代の同級生のサリーが主人公です。ジルーシャの頼みで孤児院の院長を任されることになったサリーが書いた手紙という形で物語が進んでいきます。日に日に変化していくサリーの心情がうまく表現されていて、孤児院経営の問題なんかも随所にちりばめられている作品です。

  • その名のとおりあの有名な「あしながおじさん」の続編でございます。その時点でびっくり仰天驚きものの木ってな具合でページを繰る手が震えざるを得ないのでありますが、なんと本書はビジネスストーリーなのでございます。
    「あしながおじさん」でチャンスを掴んだジュディさんが友人の独身有閑婦人サリー・マクブライドを院長としてジョン・グリア孤児院に送り込むのです。


    これはビジネスストーリーだ!

    社交大好きサリー嬢はあまりに劣悪な環境に愕然としますが、子供が可愛すぎたのかぎゃくに闘争心が湧きまくったのかその両方なのかよく分からない情熱でもってコノヤロウバカヤロウと改革の風をふかしまくります。どこぞの市長も驚きの改革っぷりです。

    その一部始終をスポンサーであるジュディさん向けに書いた手紙形式で語るのが本書であります。組織改革なぞを企んでいらっしゃる諸氏方々にはぜひとも読んで頂きたい所存でございます。

    こぼれ話ですが、原題は「DEAR ENEMY」でございまして、これがまたなかなかウィットに富んだラブストーリーとも読み取れる話ではありますが、その読み方は悪手であることをご忠告差し上げます。本書はあくまで組織改革を扱ったビジネスストーリーであり、「あしながおじさん」とタイトルにあるからといってファンタジーや夢を売るものではないのでございます。いつまでも夢見る少女ではいられないのであります。

    書店員の皆様方に置かれましては本書はビジネス書のコーナーにそっと鎮座させて頂くようよろしくお願い申し上げます。

    追伸

    ブログ主は「あしながおじさん」を読んでいないことをここに報告
    させて頂きます。

    いつもと変わらぬ wakky より

  • 解説:松本恵子(一九六一年六月)

  • 40を目前に控えるまで続編があるとは知らなかった。
    前作では当時の女学生の日常と感情を知ることができ、
    本作は、当時の孤児院・孤児とその周りの人々の日常?
    続とあるがDaddy Long LegsとDear Enemyという
    タイトルの違いにあるとおり登場人物と舞台につながりはあっても
    物語自体は別のもの。書簡式なので語り手の一方的な言い分を
    読み続けることに疲れることもあるが、感情や心情のゆれを
    言葉遣い・文体で追ったり楽しむことはできる。
    オチの骨格は前作と同じだが人物の正体が明らかになるのではなく
    感情、関係の正体が明らかになるのが前作との違い。
    (気付いていないのは本人たちだけで、読者はとっくに気付いているのだけど)

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著者プロフィール

ジーン・ウェブスター

「2004年 『あしながおじさん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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