風と共に去りぬ 第5巻 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2015年6月26日発売)
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本棚登録 : 204
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp (572ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102091104

作品紹介・あらすじ

スカーレットの二番目の夫フランクは敗戦後の混乱のなか殺されてしまった。周囲の批難を意に介さず、スカーレットはついにレット・バトラーと結ばれる。愛娘ボニーも生まれ、レットはことのほか溺愛するが、夫婦の心は徐々に冷え、娘の事故死をきっかけに二人の関係は決定的に変わってしまう。メラニーは、アシュリはどうなるのか。物語は壮大なスケールにふさわしい結末を迎える!

感想・レビュー・書評

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  • ついに読み終えてしまった…!
    昔は恋愛小説として読んでいたけれど、恋愛はこの作品の要素の一部でしかないのだなと思った。戦前、戦中、戦後、激動の時代をただ一人で突き進んだ女性の物語。
    1巻からつなぎの巻なんてものはなく、むしろこれだけの内容をよく5巻におさめたものだなと思うほどずっと波瀾万丈である。

    嵐のようなスカーレット。
    誰もが彼女に注目する。眉を顰めて彼女を見る。彼女に近づくと否応なしに巻き込まれ、跡には壊れた残骸が取り残される。

    …というと言い過ぎだろうか。
    自分が年をとったからか、新訳ではスカーレットの心の声がダイレクトに語られるからか、嵐の吹き荒ぶ5巻では何度も思ってしまった。
    "スカーレットは馬鹿だなぁ"って…。
    メラニーがどんな時もスカーレットの味方だったこと。レットが実はとてもスカーレットを愛していたこと。ずっとアシュリの幻想を追い続けてきたこと。本当に大切なもの、大切な人。
    終盤、スカーレットは怒涛のように気付く。

    "メラニーこそ自分を守ってくれた矛と楯であり、安らぎと力の源であったことを思い知り、スカーレットはパニックに駆られた"

    "アシュリという人は実は存在していなかったんだ。わたしの想像の中にしか…"

    "ようやくいま、レットは自分を愛し、理解し、いつでも手を貸そうとして後ろに黙ってひかえていてくれたのを思い知った"

    もう二度とひもじい思いはしない。あまりに苦しかった時代に立てたその誓いが強すぎて、スカーレットはどこまでも傲慢で唯我独尊に、お金と目先の損得に振り回されてしまった感じがする。

    今回、全編を通して再読してみて、レットよりもむしろ、メラニーの存在の大きさに驚く。作者は「本当のヒロインはメラニーなのです」と語っていたというが、確かに『風と共に去りぬ』のストーリーの要所要所にはメラニーがいるし、スカーレットはメラニーの補完なくしては立ち行かないヒロインだ。
    物語の中で、あらゆるしきたりを破り、仇敵の北部の連中とビジネスを展開する不届き者のスカーレットが完全な爪弾きにならないのは、コミュニティの中心人物であり尊敬を得るメラニーの身を盾にした擁護があったからだ。

    スカーレットには思いやりもモラルもない。狙って他の人の婚約者を略奪するし、囚人を安くこき使うことに良心の呵責は微塵も感じないし、フランクの葬儀の日にレットの求婚に応えるし、「私に子供なんていたっけ?」というほど子供達には無関心。その中でもお気に入りのボニーが亡くなった時にはなぜエラ(フランクとの娘)じゃなかったんだろう?と思って憚らないし、憔悴するレットを鬼のように責め立てる。
    『良妻賢母』や『淑女』の枷が軽くなった現代基準からしても、強欲で性悪で身勝手としかいいようがない。そんなスカーレットが読者に受け入れられるのは、彼女自身の強さや逞しさや魅力だけではなく、スカーレットに揺らぎない愛情を示し、受容するメラニーの存在が大きい。「メラニーがそこまで言うなら」と思わされる。読者すらメラニーの掌中にあるともいえる。

    ラストは現代に至るまで、読者を悶々とさせ続けてきたオープンエンディングだ。
    続きを望む気持ちはよくわかる。私もずっと思ってきたから。でもスカーレットは、現状にあぐらをかいて満足するタイプではないし、困難を乗り越え、現状を打破する行動力と決断力のある女性だ。
    大きな戦争でどん底に落ち、荒廃した故郷のタラを再生させ、事業を立ち上げて成功させ、3回結婚してそれぞれ子供を産み、それでもまだスカーレットは28歳なのだ。彼女の原点は、赤土の大地、タラにある。タラに戻って力を取り戻したら、レットを追いかけるにしても、他の道に進むにしても、これからも波瀾万丈な人生を歩むのだろうなと思う。

  • 数えてみたら高校生で読んで以来、ほぼ30年ぶりの再読である。数回読んではいるし、映画も観ているし、と思いつつ新訳で読み始め、旧訳・映画から受けていた印象がどんどんずれていくことに驚いた。
    とはいえ、スカーレット像はそのままである。なぜか。スカーレットの心情は包み隠さず、あけっぴろげに語られるからである。誰かが何か示唆的なことを語り、読者も神妙な気持ちになったとたんに、スカーレットは心の中で”何の話をしているのか、さっぱりわからない”とばっさり切り捨てるものだから、私も、小賢しく頷いちゃっていた自分が恥ずかしくなったりもする。
    ということで、高校生にも主人公の(単純な)心情は余すところなく理解できたのだろう。
    スカーレットのお向かいにいるのが「影の主人公」メラニー。対して彼女が本当は何を思い、どう考えていたのかは最後までベールに包まれたままだ。ただし、その行動には嘘がないので、読者もメラニーの人間性を理解し愛する(スカーレットは全く理解してなかったけど)。
    旧訳ではいかにも古い小説を読んでいる”ありがたさ”もあり、それも面白かったのだが、新訳は文章のリズムで読者の心を一気にその場に引っ張り込む。旧訳ではあまり印象に残らなかったスカーレットの「ダサさ」(敢えて言おう!)が際立ったのも非常によかった。
    ところで、映画の印象に引っ張られて当時は気づかなかったが、これは「戦争小説」でもある。最初は絵空ごとのように思えていた戦争が、やがて間近に迫り、わが身のこととして降りかかり、一般の市民すら、戦場でもないのに人を殺めることにもなる。
    背後に多くの物語を含む小説。訳者解説によると作者は「映画化は無理」と言っていたそう。映画はあくまで小説の一部分しか切り取っていない、だからこその傑作となりえたのだろう。語られていない部分を誰かと語り合いたいくなる(しかも熱を込めて)のは、各々の人物造形がしっかりとしているから。わたしが誰かと語り合いたいのはメラニーを後継者とする「聖母」の母、エレンである。

  • 圧巻の壮大なストーリー。全5巻に及ぶ長編ながら一度も飽きることなく次々と起こる展開に引き込まれて、読み終わってすごい話だったなと思う。読み終わった時点でまたもう一度読み直したくなったほど。結末を知ってまた違う読み方ができそう。
    学生時代に一度読んでいたものの、かなり忘れていた部分もあったし、大学生と40代では同じ作品を読んでも感じ方が違う気がする。
    アメリカ南北戦争前後の激動の時代背景とスカーレット・オハラの波乱万丈の人生。海外版の大河ドラマみたい。でもこれってまだスカーレットが28歳までの話だなんて驚き。
    スカーレットの強さと賢さに感嘆したり、反面の愚かさとじりじりしたり。またレット・バトラーとの擦れ違いにやきもきさせられ。そしてメラニーの優しさと聡明さと強さに最後はこの女性こそが影の立役者であったことに気づかされ。
    スカーレットの故郷タラに対する郷土愛も印象的。スカーレットの原点はタラの赤土。その強さの原点。最後に何もかも失ったスカーレットはタラに戻るところで物語は終わるけど、きっとスカーレットはをここでまた力を取り戻してこのままでは終わらない気がする。「今考えるのはよそう。明日考えよう。」スカーレットの印象的なフレーズ。彼女はそうして明日を切り開いていったのだから。
    激動の時代の流れに翻弄されながら強く生きたスカーレットの物語。間違えなく名作だ。現代ものばかり読んでいたこの頃だったけど、時代物の読み応えはたまらない。世界史の教科書ではわからないその時代のアメリカ南部の空気に触れられた気がした。本当に面白かった。

  • ここまで悪い女が、ヒロインの物語って
    他のいるのだろうか?

    スカーレットとは、強かで、世の中を渡り歩くのに
    十分賢く、ピンチに陥った時にも少しも
    同情心を抱かせることのない、ヒロインに似つかわしくない
    女性。

    一方、義妹のメラリーは、とても純粋で誰に対しても
    公平な女性らしい優しさを持った女性。

    スカーレットもメラニーも、最後まで自分を貫き通し
    ぶれることのない性格がとても良い。

    壮大な物語は、突然の終わりを迎えるが
    どんなことが起きても、屈することのなかった
    スカーレットが、一番大事にすべきレットを失い
    もう何も失うことのない、スカーレットは
    これまで以上に強く生きていくのだろうと
    予感させられる最後だった。

  • 突然に、目の前の扉を閉められてしまったかのような感覚が、最後の一文にありました。
    スカーレット!あなたの物語を人生を、もっと追っていきたかったのに。

    読み始める前は、この重厚な物語を読み切れるだろうかと不安を抱えていましたが、杞憂でした。
    海外文学は感情に付いていけず、戸惑いを覚える部分もありますが、本書に関しては、それよりも多くの共感があり、惹き込まれました。
    この一作品を書き上げた作者の体力と文章力に感服です。

  • 最後のシーン。本当に風が吹き抜けた。その風に後押しされるように、スカーレットはいつものように前に進んでいく。

     まさに、「明日は明日の風が吹く。」

     こんなに中途半端な終わりでも、きれいさっぱりしている作品はなかなかない。スカーレットなら、こんな終わり方でもいっか。そんな気にさせてくれる。


     あと、本当の主人公が誰か、全巻よんできっとわかる。


     この作品を計算してつくったと作者はいう。(p526)
     10年もの歳月をかけて織り上げた作品だという。納得がいく。
     どうしてこんな嫌味な女の物語を延々と読まされているのに、見入ってしまうのだろう。飽きが来ない、どころか先を求めてしまう。悪どい女のすさんだ心のやり口を見せつけられているのに。でも、その女が何をやってもうまくいかない、いや実際は最悪の状況をいつも切り抜けて成功にゴリ押しで辿り着いている。でも、決して満足できない幸せになれない。そんな滑稽さに胸がすくのだろうか。
     他人の不幸は蜜の味。
     しかし、何度打ちひしがれても立ち直る人間の姿は、さわやかで、むしろ小気味いい。読んでいて、やはりどこか勇気づけられてしまう。
     そういうところが名著なんだろう。

  • こんなにも心を動かされる物語に今まで出会ったことがなかった。わがままで強情なスカーレット。「本当に子どもだなぁ」と思うけれど、その強い生き様から学ぶものが沢山あった。結末は意外だったけれど、こういう終わり方だからこそ感じるものが多かった。

    登場人物全員が生き生きとした表現で描かれていて、一人一人本当に魅力的だった。結末を早く知りたいと思い ってページをめくってきたけれど、いざ終わりを迎えてみると、この世界とのお別れに寂しさがこみ上げてきた。スカーレット、レット、メラニー…本当に大好き!

  • 母になってから読み返すと、この物語の終盤は、親とは何かについて考えさせられるパートでもあった。超安産体質で出産後はマミーに預けビジネスに邁進するスカーレットと、自らの命と引き換えにでも産もうとするメラニーの対比。
    全編通して描かれているテーマの多様性に本当に驚かされる。

  • 2人がもう少しでも素直だったら、別れることは防げたはず。特にスカーレット。好意を持ってるなら「好き」、何かしてもらったら「ありがとう」、自分に非があったなら「ごめんなさい」。何かしら友好的な反応をしていたら、レットは愛されていないと思い悩むことを防げた。


    まあ両者ともプライドが高くて素直さに欠けていたからできなかったのだろうけど。この小説では似た者同士だけが安定した結婚生活を送れる論を推すけど本当か?似た者同士は似たような短所をもつことも意味する。共通の短所を原因とした問題が発生したときにうまく対処することができない。スカーレットとレットはその際たる例。

    作者はこの作品に10年かけた。長い時間をかけ作られた作品だけあって、どの巻も丁寧に抜け目なく描写されている。そして読書に没頭させる。一度読み始めたら止まらなくなり徹夜で2巻連続読んでしまうほど。この小説は言葉では表現できない興奮と刺激を与え読者に忘れさせない強烈な印象を与える。小説の快楽を存分に堪能させてくれる作品。出会えてよかった。

  • この話はスカーレットとメラニーのダブルヒロインですな、というくらいメラニーの存在感がすごい。そして魅力的。
    もし私が女優で、どちらの役をやりたいか、と言われたら、メラニーを選ぶかな。

    スカーレットもやっと自分の本当の気持ちに気がついて、一気に大団円に行くかと思ったらすれ違い……。
    それにしてもスカーレットの子供に対する愛情のなさはすごい。
    ボニーじゃなくてエラが死ねばよかったのに、くらいなこと言ってるし。
    これはつまり、その子たちの父親を全く好きじゃなかったというところにつながるのかな。
    アシュリへの愛のさめ方がウケる(笑)。

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