遠い声遠い部屋 (新潮文庫)

著者 :
制作 : 河野 一郎 
  • 新潮社
3.55
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本棚登録 : 886
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102095027

感想・レビュー・書評

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  • 13歳のジョエルは顔も知らない父親の元へ旅立つ。暖かいふるさとを捨てて、気持ち悪くて乱暴な世界へ。というお話。
    同類だと思ってた子たちもみんな勝手に大人になってしまう。などと被害者面をしてみても、彼ら彼女らと同じように大人の世界はジョエルの中にも染み入ってきている。気づかないふりをしていただけだったのだ。
    ところで私は主人公ジョエルよりアイダベルが好きです。この子が成長したら「ティファニーで朝食を」のホリーになるんじゃないかなとか思ってました。
    男の子みたいなしわがれ声で男の子みたいにふるまっていて、女の子であることが悔しくてたまらないんだけど、あきらめかかってる女の子。アイダベルは永遠に子どもでいることを選んだようにも勝手に大人になっちゃったようにも見えるけど、いずれにせよ大人にも子どもにもなりきれないジョエルを置いて遠いところに行ってしまった。
    ズーも好き。比類なき高潔な魂を持っているんだけどジョエルからすればズーも勝手に大人になってしまった裏切り者だ。物語クライマックスのズーの報告はもうつらくてつらくて読んでいて耳をふさぎたくなる。でもどうしようもなく聞こえる。物語の最後にほんとうにひとりぼっちになったのはズーだな…

  • カポーティは23歳にして自分の最期の姿をはっきりとみていた
    美しい少年も、桃肌で身体の弱い中年男も、突然泣きわめく女も、男の子に生まれたかった女の子も、雪のみたかった黒人も、みんなカポーティ自身だった
    何にでもなれるけれど、何ものでもない。私の想像を超える想像力で、想像の限界をもみていた

  •  1948年発表、トルーマン・カポーティ著。父からの手紙を頼りにアメリカ南部の町、ヌーンシティーを訪れる13歳の少年ジョエル。そこから更に馬車に揺られ到着した父の住む屋敷。そこは外界から隔絶され、過去にしばりつけられた人々が住む、幽霊屋敷のような場所だった。ジョエルはそこに住む姉妹のうち妹のアイダベルに惹かれていき、その果てに破滅的な幻想世界に囚われ、そこから脱出した時、自分が大人になったことを知る。
     非常に詩的で美しい小説だった。カポーティの作品は「ティファニーで朝食を」だけ以前読んだことがあったのだが、正直あまり面白くなかった。しかしこの小説はそれとは全く異なった雰囲気を持っている。
     まず比喩表現がすばらしい。午後の光の退廃的な雰囲気、廃墟や荒れ果てた庭の泥臭い匂い。単純に描写するだけで伝わらない抽象的な部分をうまく掬い上げている。まさに「濡れた文体」といったところだろう。しかし描写がジメジメしているわけではなく、むしろ幻想的でキラキラしている。こういったところに、少年の純粋な目で見た世界、という雰囲気がよく出ている。
     そして時折に飛び出てくる哲学的な考察が鋭い。一見気づきにくい配置のされ方をしているが、よく注視すると小説全体の暗喩になっている。こうした文章はともすると説教臭くなりがちだが、それを大人のキャラクターに語らせたり幻想性でぼやかしたりして作品の雰囲気に馴染ませている。おそらくかなり気を使って書いたのだろう。
     この小説のテーマは「少年の成長」だとよく言われるようだが、私には何だか少し違うように思える。「少年が大人になる」のと同時に結局「大人は根本的に少年性を心から切り離すことができない」と言いたいのではないだろうか。だから最後ジョエルは屋敷に戻っていくし、過去の自分という少年の幻影を振り返ることしかできない。そうしておそらく年老いた少年モドキとして生きた幽霊となる。この小説を書いた後の著者の末路を考えると、彼がそれを体現してしまったとしか私には思えないのだ。

  • 繊細。まさに。でも二回読んだけど、あんまり内容が記憶に残ってないんだよね。印象というか、後味がすごくいいんです。

  • 傑作だと思ったが自分の理解が追いつかず4。
    他の人も書いてる通り、「幻想的」と言われる文体は難解で、状況を追うのが困難。
    各所に散りばめられた表現、特に比喩表現が非常に詩的で、ずっと読んでいたくなる。個人的にはティファニーよりも好きだった。

  • 父親を探してアメリカ南部の小さな町を訪れたジョエルを主人公に、近ずきつつある大人の世界を予感して怯える一人の少年の、屈折した心理と移ろいやすい感情を見事にとらえた半自伝的な処女長編。戦後アメリカ文学界に彗星のごとく登場したカポーティにより、新鮮な言語感覚と幻想に満ちた文体で構成されたこの小説は、発表当時から大きな波紋を呼び起こした記念碑的な作品である。

  • 最後なにが起こったのか一回読んだだけじゃわからなくて数回読んだ。

    解説が1969年のものなので「真夏の航海」の原稿が紛失してることになってるけど、2005年(米)に出版されてます。

  • アメリカ南部のジュブナイル小説ということで、マークトゥエインと類似性があるのかな。読後感は何か、幻想文学を読んだような感じ。ストーリラインよりも文体や世界観を味わう一品。


  • アメリカ繋がりでしょうか
    ソールライター展で見かけた為、購入。

    表紙だけで察するに、
    さわやかで乾燥した物語かと思っていたら読んでビックリ!笑

    結構ウェッティな物語でした。
    あと冷たいような熱いような不思議な印象でした。
    最後のズーの話しは、聞いていてこっちも辛かった…。

    ちょっとのめり込めませんでした。
    さっくり読んで終わらせてしまったので、また後日読み直したいと思います。

  • 少年が大人へと成長する過程を、アメリカ南部のヌーンシティのにたたずむ怪しげな屋敷を舞台に描いた名作。
    知人にすすめられて読んでみました。実は初カポーティ。
    なんとなく海辺のカフカを読んだときのような気分でした。

    主人公のジョエルをさしおき、そのまわりの人物たちの個性がまあ強いこと。
    寝たきりの父親、不気味ないとこのランドルフ、暴走少女のアイダベル、その他にもたくさん。
    暗くて閉塞感のあるその土地とその人物像が相俟って、とことんゴシックで不思議な世界に魅了されました。
    われわれは常にたくさんのものを愛さなければならない、という一節が心に響く。

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