冷血 (新潮文庫 赤 95C)

著者 :
制作 : 龍口 直太郎 
  • 新潮社
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本棚登録 : 148
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (559ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102095034

感想・レビュー・書評

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  • 真実はどちらだったのかは自白からは確定できなくて、どちらもあの事件を起こす可能性があった。
    だからこそ、結局結果は変わらないのに、「この人ではなく、あいつが犯人だろう」と思ってしまう。
    どんな悪人にもそうなった背景、いわゆる「his story」があるもので、けれど、本当のそれが何なのか、外から見ている他人には分からない。
    もしかすると、本人にも分からなくなっていて、だからこそ、やりきれない思いが拭えない。

  • クラター家の殺人事件を、唯一無二の劇的な事件として描いているのではない。その後発生した模倣犯に短く触れながら、センセーショナル性・鮮度が失われていくところも描いているところが、むしろ生々しく現実感を伴う。そこはいい。
    関係ない話だが、生前に三島由紀夫が開高健のベトナム戦争絡みの小説を、止むにやまれず書いているのではなく書きたいことを求めて彼の地へ行っている、と批判していた。本作を読みながらそのエピソードを思い出した。
    個人的な感覚だが、ここにあるのは「書かずにはいられなかった何か」ではなく「書かずにはいられなかった私」なのだろうと思う。

  • この本の476ページ以降、2人の殺人犯に関する精神病医の分析が書かれた箇所は、特に私たちの目を開かせ、深いため息をつかせる。

    まずヒコックの分析。
    「知性は平均以上」「思考力はよく組織されて論理的」だが、「あとの結果とか、そのため将来、自分自身や他の人間にどのような不快なことが起こるかといったことを考慮せずに物事を行う傾向のある人間」であり、「挫折感にたいしては、もっと正常な人間ならばがまんしていくところを、がまんすることができず、反社会的な行動に出る以外に、その挫折感を取り除くすべを知らないよう」なタイプ。

    もう一人の殺人犯ペリーの分析。
    「その貧弱な教育的背景を考慮すれば、なかなか広範囲の知識をそなえている」が、「他人が口にする事柄のうちに侮蔑とか侮辱とかいったものを鋭く感じとり、しばしば善意の言葉を曲解」し、「他人にだまされたり、さげすまれたり、劣っているとレッテルを貼られたと感じると、わけもなく激発」し、そして「彼は非常に狭い範囲の友人以外の人たちにたいしては、ほとんどどのような感情も示さず、人間の生命というものにたいしてほんとうの価値をほとんど認めていない」タイプ。

    まさに、日本でもほぼ日常的に報道されている凶悪犯の人物像が、ヒコックとペリーに見事に重なる。それどころか、アイツがそっくりだ、と自分に身近な人間が思い浮かぶはず。

    そして、486ページ以降に出てくる、ある論文に書かれた仮説がさらに裏付ける。
    この論文では、“精神正常者”と“精神異常者”という区分のどちらにも入らないような犯人-「殺人者が一見、合理的で、矛盾がなく、抑制がきいているような人間に思えながら、それでいて、怪奇な、一見、無意味と思われるような殺人行為を犯す」犯人を考察している。

    論文では、それらの犯人は「将来の犠牲者が、ある過去の外傷性形態において中心的人物であると無意識に感知される場合」に(暴発的な殺意が)活性化する、と書いている。
    わかりやすく言うと、殺される人は、殺人犯が悪意を抱くような言動は全くしておらず、悪い点は一つもない。
    しかし、犯人側のトラウマ(幼少時の虐待、両親の不仲など)がある瞬間に蘇えり、その何も罪のない被害者に“偶然”重なってしまった場合、犯人の凶行が噴出するのだという。

    大阪府池田市の事件、秋葉原の事件…日本の犯罪史上でも、私たちは論文の仮説と重なるような事件を容易に思い出すことができる。殺人、裁判、死刑といった、自分の日常から遠いと思っていた問題が、実は自宅の玄関のドアを出たすぐそこに身を隠し、凶器をもって私たちが近づくのを待っているかもしれないという現実… でも、この本を読んでその現実を世間より先に知り得た私たち読者は、少しだけ幸せかもしれない。気休めにもならないけど。(2011/6/4)

  • 「なで肩の男」の解説で勧められていたので。

    カンザス州の小さな町ホルカムの一家四人が、
    全く見ず知らずの男2人に殺害された事件。

    実際に起きた事件だが、
    膨大な取材内容を選択し感情を移入することによって、
    書かれた「ノンフィクション・ノベル」ということらしい。

    確かに、
    犯人と被害者を巡る人々や出来事の非常に細かい記述が、
    時間と空間を超えて行ったり来たりし、
    それが犯人たちの個性と相まって、
    まるで「作り物」のような印象を与える。

    残酷な事件ではあるが、
    「なで肩の男」のような連続殺人犯でもなく、
    恐怖感はない。
    刑務所内での他の死刑囚たちとの交流にいたっては、
    可笑しささえ感じる。

  • うーん、イマイチだった。結構飛ばし読みした部分も多かった。でもそれ、訳文によるところも大きい。前にクリスティ読んだときも思ったけど、やっぱり30年前くらいの訳って、今より拙いと思う。まあでも、もともとはこれを読んで高評価を得た訳だから、それでもあまり良いと思えなかったのは、原作もそんなに好きじゃないってことかもしらんけど。情景描写とかいろんな人へのインタビューとか、冗長と思えてしまうところが結構あった。ってか、新しい訳で出た別バージョンもあったのね。そっちで読めば、幾分評価は違ったかも。

  • 高村女史の作品に感化されて。

    淡々と事実が語られていくノンフィクションノベルズ。
    登場人物がなかなか覚えられない…。

  • Amazonのレビューに新訳版が酷いとあったのでこの旧訳版を手にとってみたのだが、こちらもだいぶ直訳調で序盤は読み進めるのに難儀した。
    中盤以降はあまりそういった箇所も目立たず最後まで一気に読み終えてしまった。是非原書も読んでみたい一冊。

  • 2005.10.5

  • 作品がやや冗漫のように感じたが、私がせっかちなだけだろう。
    3年間の取材と、更に3年をかけて記録を整理し、書き上げた大作なのだ。

    加害者には犯行に及んだ理由がある。
    加害者の立場(ルール)でしか理解できない理由だ。
    加害者がいくら何を言おうと、被害者にしたら全てが言い訳だ。
    犯罪を行ったら終わり。

    図書館で借りたため、知らずに旧版を読んだ。
    新版では翻訳者が違うので、そちらも読んでみたい。

  • 大学の授業で読んだのですが、かなり残酷でした。が、深い話でした。

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