冷血 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (623ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102095065

感想・レビュー・書評

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  • 現実にあった事件を小説にするという手法で、トルーマン自身がノンフィクションノベルと名付けた初の小説。
    殺されてしまった善良な家族がとにかくかわいそう。殺人の動機はお金を奪うことだったわけだけど、家に金庫はなく、殺す必要は全くなかった。犯人が被害者の家に大金の入った金庫があるという噂話を聞いていなければ、あるいは途中で気が変わっていれば、被害者たちはその後も生きていたんだろうと思うと悲しい。犯人達だって死刑になることもなかったのだ。
    加害者達の生い立ちや家族についてもかなり詳細に語られていた。初めて会った何の恨みもない相手に対して銃の引き金を引くことができてしまう精神性とはいかに作られるものなのか。結論は出ないけれど、興味深かった。
    文章中で、登場人物の名前の呼称が苗字だったりファーストネームだったり変わる時があって、誰のことだ?ってなる時が何度かあって少し読みにくかった。

  • 20年以上前に旧訳で一度読んでいる。とくに読みづらかった記憶はないが新訳でも違和感なく。殺人事件発生から犯人二人が処刑されるまでを4章に分けて述べるが進むにつれ小説的な面白さは減じていったように思う。複数の人物たちの視点から物語が徐々に死体発見の朝へと収束していく構成の1章がもっとも読み応えあった。4章の裁判のくだりは退屈でだいぶ読み飛ばした。

  • ノンフィクションがしっかり書かれている

    犯人に対してこんな人もいるだなと思った

    かわいそうとか、そういうのじゃなくて
    言葉にならない
    罪を犯した人の更生ってどう考えたらいいんだろうって

    現実にこういう事やこういう人はある、いる、という事が知れたという点ではよかった

    書き方がすばらしいのか読まされた
    読み進めるしかなかった

  • めっちゃ面白い。カポーティの生涯を知ってから読むと更に面白さが増す。歴史的に意義がある本でもあるので、本好きとして読んでおいて良かったと思う。

  • 2017年末に買って以来、五,六回は挑戦しましたが、いずれも、序盤のクラッター一家の幸せな描写とこれから起こることの対比がきつすぎて読めなくなっていました。
    「今夜も髪を乾かしてブラシをかけバンダナで結ぶと、翌朝、教会に着ていくつもりの衣装を出して並べた。ナイロンの靴下、黒いパンプス、赤い別珍のドレス―手持ちの中でいちばんきれいなお手製の服。」といかにも少女の甘やかな感じから、次の一文が「それが埋葬されるときに着せてもらう死に装束になった。」なんて、落差が大きすぎて、もうそこから先一行も読み進めたくなくなるくらい打ちのめされる。
    それでも、ノンフィクションはもとより、フィクションにおいても、いまだ影響力のある古典で、いろんな作品の解説、評釈でしばしば言及されるので、話の前提として読んでおかねばと思って、一日時間ができたタイミングで絶対途中で止めない覚悟で、勢いをつけて読み切りました。

  • 実際の事件の取材によって書かれたせいか、なんでもない登場人物達が下手なフィクションよりも生き生きと、個性的に描写されていることが印象に残った。特にインタビューに基づいていると思われる、作中人物による長台詞は、最初は聞き手たる作者の影が見え隠れするものの、読み進めていくうちに作中人物が自分に直接語りかけているような妙な生々しさを感じた。

  • 『ティファニーで朝食を』が好きなので、カポーティのもう一つの代表作でもあるこちらも読んでみた。
    中盤少し中弛みを感じたものの、逃げる側と探す側の二つの物語が交錯するあたりから展開が加速して引きこまれた。

    読後の余韻もあり、名作には違いないだろうが、2回目を読み返す予感はしない。読み手がエネルギーを吸い取られるような作品。

  • 高村薫の冷血を読んでから、元祖のカポーティー
    の冷血を読みたくなって、ようやく読破。
    高村薫の冷血に登場する殺人者と照らし合わせる
    と、カポーティーの殺人者と重なる部分が出てく
    る。
    二人の生い立ち、殺人に至る衝動なんかも。
    カポーティーの話は、実在した殺人事件を筆者が
    取材、整理して書き上げたものと聞いた。
    リアリティがあって、被害者側の一人一人まで、
    丹念に人間性が表現されていた。
    また、殺人者を絞首台に送り、執行されるまでの
    詳細な描写も読み応えあった。
    高村薫の冷血を読んだ方には、是非お勧めの一冊
    になると思います。

  •  「ノンフィクション・ノベル」なのですべてが事実ではなく創作されている部分もあるだろうが、とりあえずノンフィクションに分類。

     いまは亡きフィリップ・シーモア・ホフマンがアカデミー主演男優賞を獲った映画「カポーティ」のように、カポーティが出てきて一人称で語るのかと思っていたら全然違った。
     被害者一家やふたりの犯人だけでなく、その知り合いや捜査に当たった人々のことなどなどを執拗なほどに描く。被害者はともかくその周囲の人間はありふれた一般人ばかりで、こんなに書く必要があるものだろうかと正直少し退屈だったが、犯人のうちペリー・スミスはその「ありふれた」家庭すら得られなかった男だと分かると、その対比が胸に刺さる。だからといって彼の罪に同情の余地はないが、その生い立ちには哀感を寄せざるを得ない。

     得られるべきものを得られなかった人が残酷な罪を犯す。何か覚えがあるな、と思ったら、昨年公開された「ジョーカー」と似ていた。(余談だが、こちらもホアキン・フェニックスがアカデミー主演男優賞を得ている。)
    「ジョーカー」のみならず、この手の話はある意味「ありふれた」話だ。しかしスミスのような人にとっては、ありふれた犯罪者のひとりに列せられることこそ、おそらく最も嫌悪することではなかったか。

    「カポーティ」、フィリップ・シーモア・ホフマンはもとより、スミス役のクリフトン・コリンズ・Jr.も実に素晴らしかった。オススメ。

  •  人間なんてわからない。
     事件を起こした加害者について近所の人たちにマスコミが取材をし、「真面目でそんなことするような子には見えなかった」だの「いつも挨拶してくれる好青年でした」だの言うあれ、まじで意味ないんじゃなかろうか。人間なんて表面の皮を1枚も2枚もめくればエグいものが詰まってるのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。とにかく誰だって人には理解されない、理屈では語れない部分があるはず。
     4人の家族を惨殺した犯人ペリーは、一見優しい人間だ。彼がなぜそんな罪を犯したのか。これは簡単にはわからない。ペリーが孤独で、家族に対して強い思いがあったとて、被害者にとっては知ったこっちゃないことである。

     また、読みながら死刑制度について考える。ペリーの言葉に、こんなものがあった。
    「兵隊があまり眠れなくなるなんてことはないじゃないか。人を殺せば、それで勲章がもらえるし。カンザスの善人たちはおれを殺したいと思ってるーー死刑執行人は仕事にありついて喜ぶだろう。人を殺すなんて、たやすいことなんだーー」
     死は、時と場合によってさまざまな意味を持つのかもしれない。死刑が犯罪の抑止力になるなんてことはないと思われるけど、被害者の立場になれば簡単に一刀両断できない。減少しているとは言え、アメリカにはまだ死刑制度があり、年間数十人が処刑されている(州にもよるが)。日本もどう舵を切っていくんだろう。

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