ティファニーで朝食を (新潮文庫)

  • 新潮社
3.70
  • (264)
  • (456)
  • (460)
  • (68)
  • (16)
本棚登録 : 4763
レビュー : 446
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102095089

作品紹介・あらすじ

第二次大戦下のニューヨークで、居並びセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜更けに鳴らしたのは他ならぬホリーだった…。表題作ほか、端正な文体と魅力あふれる人物造形で著者の名声を不動のものにした作品集を、清新な新訳でおくる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 夜更けに僕の部屋の窓をこんこんと叩く音。酒癖の悪い男からこっそりと逃げてきたと、非常階段から部屋に足を踏み入れたホリー。部屋にいちゃもんをつける彼女に、僕は「何でも慣れちゃうものだから」と答える。(でも僕はこの部屋をそれなりに誇りに思っていたから、心中穏やかではない)そんな僕に彼女は言い放つ。
    「私は違うな。何でも慣れたりはしない。そんなのって、死んだも同然じゃない」
    最初に出会ったこの言葉によって、わたしのなかでホリーという女性像が形作られました。
    ホリーは天真爛漫でコケティッシュで、誰もが彼女に振り回されて、誰もが彼女に振り回されたくなる……男性にとっては魅力溢れる女性。でも彼女の魅力はそれだけではなくて。ホリーにはホリーの美学みたいなものがあるんだと感じました。彼女のやることなすこと世間一般からは受け入れられないことがほとんど。でも、ホリーにとってはそんな批判やバッシングは痛くも痒くもなくて。自分の信じたことを凛とやってのける気概があります。彼女だけの哲学みたいなものが一本筋を通しているんじゃないでしょうか。
    とある事情から、国外へ逃亡することになったホリーは、一緒に暮らしていた猫を町へ放ちます。
    けれども、そのすぐ後に「何かを捨てちまってから、それが自分にとってなくてはならないものだったとわかるんだ」と後悔し、更にこれから先への不安に身震いします。いつも強くて美しい彼女が僕へ見せた弱気な部分。この小さな綻びが何故だかわたしには、ホリーが可愛らしくてたまらなくなりました。それでも彼女は旅立ちます。それでこそホリー。
    読んでいるときは、ホリーに対して同じ女性という立場から、嫉妬してしまうようなジリジリとしちゃう気持ちにもなったけれど、読み終わるともう一度ホリーに会いたくなりました。そんな魅力溢れる女性です。

    「あのホリーってコ、どうしてんのかなぁ。散々迷惑かけられたし、それを悪いとは全然思ってないし、男にちやほやされてさぁ、意味分からんコやったよなぁ。でも、意外と良いコやったよね。性格もさっぱりしてるし、イヤな奴には堂々と意見言うし、おもろいコやった。元気にしてるやろうね。あのコやったら、どこでもしぶとく生きていけるやろ。そやけど、全然連絡もよこさんと、ホンマ常識ってやつがないねん。まぁあのコらしいけどな。もし顔見せにきたらみんなで飲みにでもいこー」地球っこより……って感じになりました 笑

  • 黒いドレスに、肘まである黒い手袋を身につけ、それとは対称的な、光輝くティアラとネックレスを身につけた少女が、一方の手で肘をつき、もう一方の手ではキセルを持ち、こっちをじっと見つめている。

    映画は観たことがないのですが、オードリー・ヘップバーンの『ティファニーで朝食を』の写真は、鮮烈に印象に残っています。女性を「妖精みたいに可憐で可愛い」と思ったのは、今のところあの写真を見た瞬間だけじゃないかなあ。

    そんな映画の原作を含む中・短編を、四編収録したのがこの作品集。表題作目当てで読み始めたのですが、思っていた以上に他に収録されていた短編も、味わい深い短編ばかりでした。これはうれしい誤算!

    まずは表題作の『ティファニーで朝食を』
    あとがきでこの本を訳した村上春樹さんも触れていますが、ヒロインのホリーの描写は、オードリー・ヘップバーンのイメージとは少し違うかもしれません。自分の場合はとにかく可愛く、魅力的な少女というイメージが植え付けられていたのですが、原作のホリーは自由気ままで、男性関係にも積極的。可愛らしく健気な妖精というよりかは、悪戯をしてクスクス笑うタイプの妖精といったイメージでしょうか。

    でも、この悪戯好きの妖精のイメージも好きだなあ。個人的にホリーの魅力は彼女のおしゃべりにある気がします。自分が話し下手なせいもあるかもしれませんが、流れに棹さすかのように、次々と縦横無尽に話を展開していく女性はスゴいなあ、と圧倒されることが多々あります。油断すると置いて行かれるような話の展開は、自分は聞いていて好きなのですが、ホリーのおしゃべりにもそれに似たようなものを感じます。だから、彼女がただしゃべっているだけでも、ずっと読めるような気がするくらい好きなのです。

    この人物造形をやってのけたカポーティと、そのおしゃべりの訳を見事にやってのけた村上春樹さんはとんでもないなあ、と思います。そして話が進んでいくごとに、ホリーの隠された半生が明らかになり、そこから導き出された彼女なりの哲学というものが、感じられるようになるのです。そこでまたホリーの魅力が増すわけですね。

    悪戯好きの妖精と書いたけど、まだヘップバーンのイメージに引っ張られてるかなあ。陳腐な表現ですが、嵐のような人が一番正しいのかも。でも、その嵐って実際に来てる瞬間は迷惑ですが、さしたる被害もなく通り過ぎてくれれば、強風や強い雨という非日常。そして学校が休校になる、というワクワク感だけが、後に残ったりもします。ホリーの存在もはた迷惑なところはあるけど、でも一方で思い出さずにはいられない。できるならまた会ってみたい、そんなふうに思えます。

    そのほかに収録されている短編は3編あるのですが、それらとこの表題作の共通点は、自由への希求と過去への郷愁のような気がします。

    「花盛りの家」のヒロインのオティリーも、個人的にはホリーに負けない魅力的なヒロイン! 不幸な生い立ちながらも、ひょんなことから娼館で一番の人気者となり、その後恋に落ち、小さな集落のある村に嫁ぐことになるオティーリー。しかしそこで待っていたのは、今までと全く違う生活と新しい嫁を良く思わない姑で……

    オティーリーの前向きさというか、物事の捉え方や対処の仕方が面白かったし、夢か現実か分からない不思議な展開から、ちょっとお茶目でキュートな結末まで、様々な魅力のある作品だったと思います。でも一方で、これは世の男性に対する警告だよなあ、と思わなくもなかったり(笑)

    「ダイアモンドのギター」「クリスマスの思い出」は何かを企む楽しさやワクワク感を見事に表現する一方で、寂しさやもの悲しさも印象的な作品。いずれも短い短編なのですが、この短さで楽しさやワクワク感と、もの悲しさを両立させるのがスゴいと感じます。そして何よりラストの切り取り方と、そこから抱かせる読後感はもはや名人芸!

    いずれの作品も回想形式であったり、あるいは過去の思い出というものが話に関わってきます。その回想や思い出というものは、いずれも状況は違えど、楽しさやキラキラ感がどこかにあったように感じます。おそらくそれは、登場人物たちの自由への思い、自由だった時代への思い、というものがあるのではないでしょうか。

    有名すぎて、なかなか読んでこなかった作品ですが、やっぱり名作といわれるゆえんのある作品なんだなあ、と感じました。いずれは映画版『ディファニーで朝食を』も観たいなあ。

    • n_沙都さん
      地球っこさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

      好きな女性のタイプ分かりますか?(笑)

      先ほど地球っこさんのレビューを...
      地球っこさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

      好きな女性のタイプ分かりますか?(笑)

      先ほど地球っこさんのレビューを読ませていただきましたが、最後の関西弁の語りかけが、まさに読後のホリーに対する感情を言い表していますね。たぶん自分も、セリフにすると、これに近い言葉になると思います。

      ホリーのような、おとなしいタイプの男性を振り回す女の子って、一昔前のアニメやマンガ、ラノベにはたくさんいたように思います。

      ホリーのことをいい感じに思ったのは、子ども時代や思春期に触れた、そうした諸々の作品の影響や、自由と冒険を味あわせてくれたキャラクターたちを、ホリーを重ね合わせているのかもしれないなあ、と地球っこさんのコメントを拝読して思いました。

      遅くなりましたが、こちらこそ本年もよろしくお願いいたします。
      2020/01/14
    • 地球っこさん
      とし長さん、おはようございます。
      昨日は騒々しくコメントしてしまい失礼しました。
      一晩寝たら落ち着きました 笑

      私も中高生時代に大...
      とし長さん、おはようございます。
      昨日は騒々しくコメントしてしまい失礼しました。
      一晩寝たら落ち着きました 笑

      私も中高生時代に大好きだったマンガやコバルト文庫(今でいうラノベかな)のキャラクターの好きなタイプには、どこか共通点がありました(*^-^*)
      今だにそういうタイプのキャラクターに思わず出会うとどきどきします。
      だからこれからも読書はやめられないなぁ……たぶん♪
      2020/01/15
    • n_沙都さん
      地球っこさん、落ち着かれましたか? 良かったです(笑)

      騒々しいとはつゆほども思いませんでしたが、こうやってコメントいただくのもある意味、...
      地球っこさん、落ち着かれましたか? 良かったです(笑)

      騒々しいとはつゆほども思いませんでしたが、こうやってコメントいただくのもある意味、地球っこさんがホリーよろしく部屋の窓をこんこんと叩いてくれたようで、とても楽しいですよ。

      地球っこさんの仰るとおり、好きなキャラクターのタイプってありますね。自分も最初に出てきた登場人物が好きなタイプのキャラだと、あっという間に物語に引き込まれます。こうした出会いも読書の醍醐味でしょうね。
      2020/01/15
  • 儚さと破天荒さが同居するホリーが、コケテイッシユな女として魅力的に描かれていて、映画ですでにヘップバーンのイメージが出来上がっていたからか、情景が思い浮かべながら読む。

    象徴としてのティファニー。

    アカとアオの対比。これは原書ではどんなワードで表現されていたのだろう?

    「わたしとしては普通よりは自然になりたいんだぁ。」

    続く3つの短編も2人の人間の間の微妙な感情が描かれていてよかった。

    古典として時の試練に耐えうる小説と消えていく小説の違いは何だろう?

    2020.5.23

  •  ホリーが、自分にとってのティファニーを、心のオアシスを求め続けている姿が物悲しかった。「ティファニーで朝食を」以外の短編でも、オアシスの渇望、叶えられない希望、諦め、それらがとても印象的だった。
     幸せや心の拠り所を探して生き続けるけど、求めてるものはなかなか見つからない。手に入っても、満たされるかは分からないし、いつまで続くか分からない。それでも生き続ける人間の物悲しさが、生き生きと明るく、でもどこか寂しく表現されていて素敵な世界観だったな。
     自分の居場所を見つけたホリーの猫、ホリーの幸せを願う僕。ラストの描写は心に迫るものがあるけれど、どこか寂しい。

     感覚的で鋭利なタイプの本とは逆で、一つ一つが与える効果を考えて構成された本な気がした。だから、心にまざまざとした印象や、傷跡を残していくタイプの本ではなかった。直接的な描写が積み重ねられているけれど、どこかふわふわしていて、柔らかに何かを心に残していってくれた。個人的にずっと冷血が気になっているけど、彼の他の作品とはタイプが違うだろうから、冷血を読む前にこの本を読めてよかったと思う。これ以前の本も機会があれば読んでみたい。

     あとがきの村上春樹の言葉には納得する部分が多々あって、彼の洞察力や表現力は流石だなと思った。カポーティにしか表現できない美しくも悲しい世界観、イノセンスの表現、彼と執筆についてなど。

     「ティファニーで朝食を」はとても映画向きな小説だと思うからこそ、小説の世界観が全面に出ている映画が創られたら観てみたいなと思う。

  • はぁ…素敵だった。映画もすごく好きだけど、やっぱ村上春樹の訳、いいな。すごくあってる。村上春樹の作品自体は毛嫌いしているのに翻訳物だとなんでこんなすんなり入れるんだろ。ニューヨーク旅行にいくので気持ち高めるために読んだけどすごくよかった。ティファニー行くのが楽しみ

  • 映画を先に観てからの小説だったのでホリーをとても魅力的で可愛い、愛くるしい人って思えるけど(オードリー・ヘプバーンが好きだから。)共感はできない。お行儀が悪くて我が儘って思う。よく言えば天真爛漫で自由奔放(これは褒め言葉の部類に入らないと思うけど)。野生の生き物の話の時もそれは、転嫁して誤魔化してる。人間は野生でないもの。映画のエンディングの方が好きだな。小説の方の猫ちゃんがとても可哀想。映画の僕の方がかっこいい。映画と小説は別物なのだ。映画なしで読んでいたら、ホリーに寄り添えた気持ちになれただろうか。
    14歳で結婚し、ホリーは大人、早くに大人だった。境遇によって大人にならさざるを得なかった。
    自分の居場所を見つけて笑顔でいて欲しい。

  • 表題作の中編は、破天荒というか破滅的なかわいい女がすごくいい。刹那的な気持ちは分かるような。
    クリスマスの短編は、単体で読みたいと思っていた作品で、思いがけずこれに収録されていてよかった。絵付きのがほしい。

    やはり文が読みやすくて、慣れない翻訳作品でも楽しめる。

    • りまのさん
      村上春樹訳バージョンの、ティファニー…があるなんて、しらなかった。読んでみたい。
      村上春樹訳バージョンの、ティファニー…があるなんて、しらなかった。読んでみたい。
      2020/08/25
  • ティファニーで朝食を。自分の中では「名前は知っているけど読んだことは無い本ランキング」ナンバーワン!w

    「人生を狂わす名著50」で紹介されていたので、良い機会だと思って手にとって見た。

    いやー、良かったね。映画版でオードリー・ヘップバーンが演じたホリー・ゴライトリーはとっても魅力的。元祖・ニューヨークの女!って感じ?その言動、振る舞い、暮らし方はとにかく都会的。

    ホリーに入れ込んだある男性は、彼女を以下のように表す。

    「今のあの子はあんたにはどんな人間に見えるかね?睡眠薬をひと瓶空けて人生を閉じ、あんたはそれを新聞記事で知ることになる――まさにそういうタイプの娘なんだ」

    (続きは書評ブログでどうぞ)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E5%85%83%E7%A5%96%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%AE%E5%A5%B3_%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%81%A7%E6%9C%9D%E9%A3%9F%E3%82%92_%E3%83%88%E3%83%AB

  • 表題作『ティファニーで朝食を』のヒロイン「ホリー」は、映画版のオードリーヘップバーンのイメージが強いが、村上氏があとがきでも述べているようにいい意味でもう少し下品で天真爛漫なキャラクターであった。映画版はオードリーヘップバーンに助けられその支離滅裂な展開にも関わらず名作扱いになってるが、原作は音楽を聴くように小気味よく流暢に言葉が紡がれ、ホリーの自由人的表層と居場所を渇望する深層が対比的に描かれ「もし別の人生があったら」というテーマが伝わってくる。(まわりに居たら嫌なタイプだが)

    表題作のほか短編3作品を収録。「村上春樹」訳が見事にマッチしている作品だ。

  • 軽快で乾いていてさらっと読めました。
    「ティファニーで朝食を」の映画は観たことがないのですが、ホリーはオードリー・ヘップバーンのイメージはないです…オードリーは上品な気がします。ホリーはもっと蓮っ葉な感じ。
    「私は違うな。何にでも慣れたりはしない。そんなのって、死んだも同然じゃない」という台詞がぐっときました。自由なようで、思い切ったひとりの生き方だなと思います。
    「クリスマスの思い出」が素敵でした。7歳の僕と、60過ぎのおばあちゃんの友情、いつまでも続かないのだろうなと切なくなりつつ、ほのぼのします。
    村上春樹さんは翻訳の方が好みかもしれない。。

全446件中 1 - 10件を表示

トルーマン・カポーティの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印

ティファニーで朝食を (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×