大地(一) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102099018

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀末から20世紀初頭の中国を、小作人から身を立てた王龍から、王一族三代を通して描いた作品。
    中国史であり、人間、夫婦、親子、家族の物語。
    初めて読んだのは、中学生の時。その後、何度も読み返し、そのたびに新たな発見や感慨があり、愛読書となった。

  • この本は読み終わって5年以上たった今でも私にとってNo.1です。これからも「大地」を超える作品に巡り合えるかどうか…。
    20世紀初頭の中国での親子3代にわたる物語で、小説といえども強烈なリアリティーで読者の心を鷲掴みにします。
    旧体制のなかで古い因習に縛られながらものし上がる祖父、社会の変化に機をとらえて新体制の中で力をつけ親を超えてゆこうとする父、そしてアメリカに留学し近代的な社会への道を志す子。まさに、中国人の魂の進化の物語、そんな感じで感動のうちに読み終えました。
    「大地」より感動する作品を求めていきますが、今のところ「うーん」という感じです。

  • 土に生き、土に返る。そういう信念で生きている王龍。そしてそれに付き従うように誠実で寡黙で、我慢強い妻阿蘭。とにかく彼らがつましく、優しく生きていることが暖かく、哀しく、愛おしい。1代目の王一家が1巻でおわり、2代目からが2巻で始まる。3代がどうなっていくのか楽しみだ。

  • 人間のエゴ、冷たさ、優しさ、暖かさ全てを詰め込んだ話し。

    一巻で王龍の時代が終わる。
    次巻からは子供たちの時代になるのだが、四巻まであるので、
    展開が読めない。

    楽しみだ。

  •  主人公の名前、王龍という名。龍を名のっているだけで、著者の中で大好きな素朴な正直者が生まれているように思う。
     結婚シーンから話ははじまり、中国の農村の生活が殊細かに描かれていて、ノンフィクション?なんて思ってしまうほどです。旱魃で南下した時に王龍が驚く言葉の発声の違いなども、これだけでも読んでいてためになりました。
     近代の農村の古い風習や習慣が残っていて、男尊女卑。働き者で無口な奴隷だった妻は、何でもこなす知恵者で存在感が大きい。対して茶館にいた妾は浪費ばかりする浅はかな女。叔母さんも欲深くずるい女といったように、美しければちやほやされ、商品となったこの時代の女性としての生き方も、著者はおろかな女として描いているように思う。 
     命の次に大事な土地。土地そのものが財産で労働の原動力となっている。続く子供達の将来は次の巻へ譲る

    • fujinokoichiさん
      レビューとても参考になりました
      早速買ってみようと思います
      レビューとても参考になりました
      早速買ってみようと思います
      2013/03/12
  • 外国人が書いた中国、という意味でとてもとても読む前から興味深く感じていた一冊。結論からいうと、前半と後半で個人的な評価は大きく変動するが、それはいわゆる「中国人」の目線だからかもしれない。どう変動したのかは別のレビューに譲るとして、ここはまず前半部分を褒め称えたい。

    とにかく、非常に中国の百姓感覚をつかんでいるのだ。
    言い回しこそ違えど、中国人が言うようなセリフと描写をしている。だけど言い回しはどこか西洋風。この独特なミックスがなんともたまらないし、咀嚼して理解している様に感服する。
    いわゆる貧民の家の構造がどうなっているのか、どんな暮らし道具を使っているのか、その一つ一つの描写が克明で感嘆の息が出る。

    そして土地への愛着、家族によって決められた男女の婚姻と、その恋愛のなさによって生じる独特の夫婦の感情と距離。更には農民に特有の迷信にすがる心持ちと生きるにおいてのしたたかさのバランス。
    旱魃にくれる北の地方と、川があり灌漑ができる南の地方との落差の描写。

    こうしたものは、幼児期からの物語の言い伝えと、周りの親戚の暗い仕方をみて体感するもので、第三者の観察で理解できないものとどこか盲目的に思っていたが、その土地でともに住み本気で理解しようものには描けるのだなと素直に尊敬する。

  • 高校の頃
    読んでいたく感動した。
    はるか昔の記憶で何も覚えてないのだけど
    青春の思い出として
    心が揺さぶられたことだけは確かで、夢中になって
    一気に読んだ。
    このブクログを見て、機会があればもう一度読みたい!

  • 貧しい、本当に貧しい中国の農民から、命をかけて努力して、生活を良くしていくおはなし。
    自分が今どれだけ恵まれているかをひしひしと感じることができるありがたい本です。

    家がある。食べ物がある。衣服がある。お金がある。その他周りのいろんなことに感謝できました。

    有難うございます。

    2巻への続き方がサスペンス調ですがね。

  • 私の大学時代に読みました。
    私の中で「THE大河小説」として、そのスケールの大きさ、人間賛歌に溢れた内容に激しく感動した記憶があります。
    学生時代の多感な時期に是非一読してほしい一冊です。

  • 前近代から近代中国への変遷期に生きる王家三代の大河小説。第一巻は王龍の立身出世と血脈に係る苦悩の物語。貧しい百姓から名家へと変貌を遂げる王龍の内的外的描写やプロットの素晴らしはさることながら、王龍を中心とした妻・妾・叔父・息子・娘らとの相関の網と巧みの描き方が凄い。血縁者もしくはそれに近しい者たちへの喜びや憎悪、嫉妬、欲情が小説の登場人物たちに人間らしさの息吹を与えている。

    読了後にノーベル文学賞作品であることを知り納得。たしかに理解できるマルケス『百年の孤独』っぽい。そしてパール・バックがアメリカ人作家であることを知り驚き。

  • 全4巻。中国の革命期に生きる親子三代にわたる物語。雄大な中国の歴史の流れを感じさせる作品である。いつの時代にも人は生まれ家族を持ちそしてその土地に生き朽ちていくという土着的な世界観を表現している。異なる文化の狭間で苦悩する三代目王淵の心理描写がひだに分けいるようで圧巻なのはひとえに筆者の異色の出自によるものであろう。読み応えのある古典である。

  • 極貧!人身売買、奴隷当たり前、すごい時代だ。主人公に感情移入出来そうで出来ないのはそこなんだろう。それでも普遍的な人間ドラマに仕上がっている。事前に棺を買って安心するとか文化的な面でも興味深い。

  • 農家の生活や自然描写に引き込まれる。土を愛し、共存する事で栄える農家の男の話。

  • 当時,中国の農村を生き抜いた者の息遣いが聞こえるよう.
    迫力のある描写に引き込まれる.
    さすが,ピュリッツァー賞,ノーベル文学賞,受賞作である.

  • 面白い

  • 人生最高の書

  • 2012年は名作も読もう!ってことで選んだ、ノーベル賞&ピューリッツァー賞受賞の本作。

    昔の本でお硬いし、読み辛いんでしょうなぁって思ってたら、スラスラ読めました。長いんですが、昨日の夜買って、今日の夕方読了。一気読み。

    19世紀後半の中国が舞台で、1巻は農家の王龍さんが上り詰める話。
    読んだ感想は男はバカだなぁと。共感できる嫌な部分が沢山あるので、深く思うわけです。
    あと、蓮華って名前の人が出てくるんですが名前が可愛い……

    とにもかくにも、名作と呼ばれながらも面白く読めました。4巻まで楽しみ!

  • 高校生の時に影響を受けた本。なんの影響を受けたのかはもう忘れちゃったんだけどなんか「影響をうけたんだよなー」って記憶だけある。なんか。

  • 動乱の激しかった中国の20世紀前半を舞台に、農民である父とその子、その孫の3代にわたる人生を丁寧に描いた小説。
    中国で今も課題となっている、内陸部と沿岸部の経済格差がこの時代に既に問題になっていたことは目新しかった。
    また若者の苦悩と親の苦悩が丁寧に描写されているので、自分にも当てはまるところがあるのを感じながら、一気に読むことができた。

  • 人間は土から生まれ、土に還るのが人生。
    正にそんな人生を歩んだ王龍の物語…

    が1巻でした。

    これから王家の人々はどんな人生を歩んでいくのだろうか。

  • のし上がっていくためなら、汚い手を使うのもありの時代。
    奴隷だった王(ワン)は、嫁に来てくれた美人とはいえない相手を、「子供も産んでくれたし大事にしよう」と思う。
    が、彼女のおかげで財をなした後は、美しい娼婦に心を移すようになる。
    妻の献身で裕福な立場になれた負い目が、余計彼女を遠ざけさせたのだろうか。失意のあげく死んでいった妻を、王は忘れようとする。
    晩年には心から自分を慕う可憐な愛妾に癒される。現実はそんなものかもね。

  • 人間臭い作品。良くも悪くも潔癖症な日本人には書けないと思う。ドストエフスキーに影響された日本人は数知れず、それでもドストエフスキーばりの、或いはその爪の垢ほどの混沌さを描き出せる日本人はいない、或いは注目されていないように (或いは自分が知らないだけでそういう日本人作家はいるのかも知れないが)。
    本作の作者もそれだけ人間をよく観察しているんだなと染み染み感じた。阿蘭が死んで、王龍は確かに阿蘭に対して後ろめたさや親しみといった感情を心におこしているのに、その一方で阿蘭を浄らかな、或いは美しい物として見ることはできず、死体も早々に寺に預けてしまう場面や、度々ふとした時に不意に阿蘭を思い出して感慨に耽るものの、思いの先にあるのは阿蘭ではなく、阿蘭を通して見えてくる自分自身であるという描写、また女を巡って度々実の息子との間におこる男同士の醜い確執などは、読んでいて胸糞悪かったり、批判がましい気持ちを抱くものの、冷静に考えると自分にも似たような経験はあるなと気づかされる。
    自分が入る棺桶をベッドの横において安心するという描写は日本人には理解できないと思う。まさに中国的だなと些か衝撃をもって読んだ。ただ、王龍は富豪になっても所詮は近代的教育を受けたことのない農民でしかなく、一方の息子たちは父たる王龍および自分達を支えた王家の土地を売却することを画策するくらいなので、すでにこの世代でも考えは違っているのかもしれない。
    一つ不思議に思ったのは、王龍に兄弟がいない、或いはいたとしても物語の中にでてこないこと (もしかしたら自分が覚えていないだけかも)。農民の家は普通次から次に子供を産んで働き手を増やしていかないといけないはず。少なくとも昔は。しかし物語冒頭から王龍と父親の二人暮らし。父親には弟、つまり王龍の叔父がいるのに、王龍には兄弟姉妹がいない。物語中盤ころに度々でてくる、我が子を売って飢えを凌ぐ場面から、勝手にもしかしたら貧乏であったがために売られたのかとも考えたが、答えはわからず。

  • 933
    (『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より):
    「小説における、いわば大河ドラマである。王龍(ワンロン)という名の農民を主人公に、中国の19世紀から20世紀にかけての親子孫三世代の歴史が描かれている。そこには、清朝末期の農民の姿、地主との関係、没落と上昇、社会変動と伝統文化、古い社会の解体から革命による新しい価値観の創造へと、近代中国の歩んださまざまな側面が投影されている。パール・バックは1892年に生まれ、中国で育ったアメリカ人。」

    わずかな土地を大地主の黄(ホワン)家から借りて耕す小作農の王龍(ワンロン)は、黄家の奴隷の阿蘭(アーラン)を嫁にもらうことになった。美しくはないが非常な働き者の妻を得た王龍は、子宝に恵まれ、黄家の土地を買うまでに運が上向き始めるが――。19世紀後半から20世紀初頭の激動の中国で、三世代に亘(わた)り命がけで道を切り拓く人々の大河ドラマ。著者にピューリッツァー賞、ノーベル文学賞をもたらした世紀の傑作。

  • まさしく大河小説といった趣で淡々とした描写ながらも、当時の中国民衆の様子がつぶさに書かれており、殊に飢饉に苦しむ辺りは読んでいて苦しく感じるほどでした。
    中でも同じ女性として、その一生を働きつめて夫と家族に尽くし、繁栄の祖を築くのに多大な貢献をしながらも苦しみの多い人生を送った阿蘭を思うと、哀しさと当時の女性の立場の低さに何とも言えない無常感に囚われます。

  • 清朝末期中国の貧しい農村を舞台に、水呑百姓王龍と奴隷出身の阿蘭の夫婦が大地を耕し働き抜いて農地を買い集め成り上がっていく物語。一家は旱魃や水害・いなご害など逆境にもめげず、一時都会に避難しながらも王龍はその土地を朝早くから夜遅くまで耕し、阿蘭も黙々と働き多くの子供を産み(王大・王ニ・王虎の男三人と娘一人、生後間引きした一人と長女は栄養不足で白痴になる)、凄じい努力で二人は裕福になり宏壮な邸宅に大家族をなすまでになる。
    当初、エーカー・ヤード・インチ・ポンド‥など欧米の思考や基準で中国伝統の世界を覗き込むような違和感を感じたが、読み進めていくうちに慣れてきて、かえって農民の土地への愛着と儒教的家族主義など東洋の伝統が西洋から見た新鮮さとして描かれている感じになるから不思議である。展開が速くストーリーの粗さもあるが、これも慣れてくると大陸風のダイナミックさとテンポの良さとしてこの物語のリアリティを増幅する。過酷な状況や残酷さの描写は劇画的でもありデジタルで無機質な表現もこの小説にとっては欠くべからざる個性なのである。
    余裕のできた王龍は妾を囲い同居する。筆舌に尽くせぬ苦労を共にした老妻を差し置いて、若くて華美な女に目移りする男の性が恨めしい。阿蘭に先立たれ老境の身にあって、自然や外の脅威から財産を守ることと子供達の教育や結婚・相続など一家の運営に頭を悩ます。土地所有を家訓にして築き上げた「大家族」の守りにこだわりながら死んで行く。
    中国の大地で土にまみれて生きた二人の一生が鮮烈である。

  • 良いんだろうな、良いんだろうな、と思っていたが、全4巻に威圧され今までなんとなく後回しにしてきた。で、読んでみたらやっぱり良かった、というのを大幅に超えてとんでもなく良かった。というか、言葉を失うくらい素晴らしい。世界水準の文学と呼ぶに相応しい圧巻の内容。「誰も土地は奪えない」というのは、『風と共に去りぬ』にも通底するテーマで、何て言うかとてもアメリカっぽい話だ。

  • ひとに勧められて読んでみた。決して自分では出会っても読まない本だと思う。故に、なんとかむりやり完読。
    やっぱり好みの本ではなかった。しかし、それでも読めば必ず得るものがあった。
    2巻目を予約。

  • タイトル訳を「大地」としたの、すごくいいと思う。
    とても面白い。どんどん読み進められる。
    男尊女卑が甚だしいのだけ読んでいて心苦しいが、そういう時代の話なので仕方ない。

    とにかく阿蘭が心身共にすごすぎる。王龍の成功(?)は彼女がいたからこそ。もっと報われて欲しかったけど単純な因果応報ではないところがまたストーリーとしては良い。

  • 怒りの葡萄に続いて、青春時代に読破を挫折した大長編にリトライシリーズである。今回は岩波文庫版で全4冊、1、2巻は、割とたやすく読みすすめられたのだが、3巻目以降は、テーマがなんだがかったるい男女関係だったりしてややうんざりしてしまった。
    百姓から大地主になる「王龍」、軍閥の首領となる「王虎」、アメリカ帰りのナショナリスト「王元」の直系3代記。いずれも身勝手な男の論理だけのわがままな奴としか、いまにしてみれば思えないけれど、これが時代の限界性というものなのだろう。
    やはり感動的なのは、1巻目の王龍と阿藍の二人の物語なのだが、阿藍の姿には、涙である。これを是として描いているわけではないのだろうが、うーむ、言葉にならない。蝗のシーンは昔もっと感動的に読んでいたように思うのだが、あっさりと行ってしまった。読む年齢によって視点が変わったり価値観が変わっているのだろうな。

    Pearl S.Buck 1931 THE GOOD EARTH
    ・この世ではあまり幸運だとろくなことはない。天に地にもかよわい人間が、それもとくに貧しいものが幸福なのはがまんできない悪霊がみちみちているのだ

  • 物語の展開が気になり、するする読めました。
    主人公の王龍(わんろん)とその家族が飢饉で
    食べる物が全くない時に、土を食べたことに衝撃を
    受けました。
    また、王龍の奥さんである阿蘭(あーらん)が
    気の毒でしょうがなかったです。
    中国の文化である纏足(てんそく)というのを初めて
    知り、たまげました。
    お金や財産は、ほどほどがいいんでしょうね。

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著者プロフィール

(Pearl Sydenstricker Buck)
1892-1973。アメリカの作家。ウェスト・ヴァージニアに生まれる。生後まもなく宣教師の両親に連れられて中国に渡り、アメリカの大学で教育を受けるため一時帰国したほかは長く中国に滞在し、その体験を通して、女性あるいは母親としての目から人々と生活に深い理解をもって多くの作品を発表した。1932年に『大地』でピュリッツァー賞を、38年にはノーベル文学賞を受賞。また1941年に東西協会設立、48年にウェルカム・ハウスの開設と運営に尽力するなど、人類はみな同胞と願う博愛にみちた平和運動家としても活躍した。

「2013年 『母よ嘆くなかれ 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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