老人と海 (新潮文庫)

制作 : 福田 恆存 
  • 新潮社
3.49
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本棚登録 : 7255
レビュー : 851
  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102100042

作品紹介・あらすじ

キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく…。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。

感想・レビュー・書評

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  •  まず、よく言われるように文体がすごい。短く切れる文体の、スピード感がすごい。歌でも何でもそうだけれど、完結したフレーズを矢継ぎ早に投げつけられるというのは、フレーズ一つ一つのインパクトを高めつつ、全体のスピードを上げる。
     もう一つすごいのは、肉体的な描写のリアリティで、これも文体を短く切り、外面的事実の描写に徹したことによるものなんだろうけれど、それにしても、この描写には、ウッときてしまう。内面描写を排すると、まず言動に対して感情移入することが求められそうだけれど、実は肉体に対しても感情移入は可能なわけで、この小説はハードボイルドの文体がそのように機能している部分が多いように感じます。
     肉体に対する感情移入、精神的でないものに対する感情移入はもう一つ、意味以前のレベルでの知覚を可能にする効果もあるのかもしれません。自然の描写なども、たとえば内面を描こうとすると、そのフィルターによって意味づけの与えられた自然として描かれざるを得ないところがありますが、その多くが肉体のアナロジーによって知覚されるという文体を取れば、自然はただありのままにあるだけになる。実際に感覚として、すごく自然であって、特に自然だなあと思うのは、時間の圧縮感覚、これが肉体的にすごくしっくりくる感覚のような気がする。魚がつれるまでの退屈さ、そしてサメに襲われたところからの勢い。サメに襲われりゃ自然と行動も増えるよね、ってなわけで展開のスピードが上がるのは当たり前なんだけど、その当たり前に完全に依存して、下手に手を加えていない、つまり、盛り上げるような描写上の工夫があまり見られない、そんな感じがするところが、すごいなあ、と思う。
     あとは最後、あの報われなさは、普通に書けば不条理に悩まされる主人公、という風にならざるを得ないところがあるように思うのですが、外面だけ、というのがそれを回避しているように思います。どういうことかというと、外面だけの描写には人間が極力前景化しない効果もあるはずで、ならばその中で自然と闘う人間の姿が、かえって感動的に思えてくる、というところもあるはずではないか、と思うのです。だからこそ、不条理であっても確かに闘った、という姿が説得力を持って迫ってきて、ただの不条理にはならない。この文体にはそうした効果も、あるような気がします。
     と、もう描写と文体の話しかしてないけれど、この作品の核は描写と文体にある、あるいは、描写と文体にしかない、そんな気がするのです。話なんて、漁に出て、マグロ捕って、帰りにサメに襲われて、全部食い尽くされちゃって、ちくしょう、これで終わり。あっさりしたものです。だけど、それが面白い、というころがこの作品の強みであるし、それはなぜ面白いかといえば、やっぱり文体と描写が面白いからだと思います。
     好きです。
     これから、著作を追います(なんか、こんなのばっかりですね……)。

  • 原題:The Old Man and the Sea(1952年、米)
    ---------------------------
    ハードボイルドとか男のロマンとかは、私にはよく分からないが、とりあえず、このお爺さんはいい男だ。ぎらつくような闘争心。「強い奴が、偉いんだ」という単純明快な論理。深みがないと言われればそれまでだが、ここまで徹底すれば、いっそ清々しくて天晴れだ。「難しいことは分からんが、とりあえず俺は勝つ」みたいなシンプルな性格には愛嬌すら感じる。

  • 高校の英文学のクラスで、いつかの学期の教科書として使ってたのがこの作品だった。原文を読める機会だったのに真面目に読まなかった高校生の自分を恨めしく思うけれど、当時の私にはこれは読めなくて当然だったなと初めてちゃんと最後まで読み終わって思った。 読むべき時というのがあるのだ、きっと。たぶんまだ味わいきれていなくて、もう少し歳を重ねたらまた違った読み方ができるのかもしれない。何よりも福田恆存の訳者あとがきが死ぬほど面白かった。本当に。本編よりもこっちを楽しんでしまったことに罪悪感を覚えるけど、とにかく面白かった。ここだけで人に薦める価値ある(?)

  • 2018/1/3 一気読み
    老人の内面と、事細かな描写が表現されている。最近、船釣りを楽しんでいることもあり、船や鱰(シイラ)の描写がイメージしやすく、いかにカジキマグロとの死闘が厳しいことか(それも素手)、それなりの実感を持ちながら読む。

    少しだけ漁師さんの気持ちが分かったような気もする。

    解説の中にある「アメリカ文明論」の説明で、「アメリカはヨーロッパと違い、空間が時間の代わりをし、未来が過去の代わりをした。」とある。
    なるほど〜!と思った。もう少し読解力がついたら再度本編と解説を読み直したい。

    中学生の時に1ヶ月以上かけて読んだものを、1日で読めたのは、少しは読書に対する集中力が増えたからか。読了時間は約3.5時間。まだまだ遅い…。時間がもったいない。

  • 細かな語りが乾いた雰囲気を上手く醸成していて、ねっとり引き込まれる作品。情況の静と動とともに人生の静と動が描写され、自然の中で生きる人間の営みを深い洞察で作品にした。最後は穏やかな虚無感にいくばくながら浸ることができる。

  • 新潮文庫の装丁が好きなので、この機会にと思って買ってみた。

    この淡々とした語り口、つらつらと行動だけを書き連ねることによって心理を予想させるやりかた・・は・・個人的には合わなかった。
    老いた猟師サンチャゴが大きな魚を追って海に出て攻防戦をくりひろげるのが大半の内容。
    文章の一つ一つが詩的であるとか表現力に富んでいるということもないように思ったので、はっきり言って地の文を読むのが苦痛だった。
    「早く終わらないかな」と思いながら読んでいた。

    でも、読み終わってみると、なぜか時間が経つほどに思い出される。
    「こんなに誇り高い魚と、それを食う人間の価値は本当に等しいのか?」というサンチャゴの独白。
    英雄的に描かれてはいても、結局は自然に翻弄されるサンチャゴの姿。その中で助け合う少年との絆という、よすが。
    海という自然の象徴物と、そこにどう折り合いをつけていくかを問い、人と人とのかかわりのあり方を問うている気がする。
    それもあくまでも厳しい視点から。
    まあ、二度と読み返すことはないだろうと思う。

  • サメこわいよ(゜Д゜)

  • アメリカ文学を初めて読んだ。
    ストーリー展開を掴むのに時間がかかってしっかり読み取れなかった印象。
    またの機会に読み返したい。

  • あらすじが物語のすべてを語っている。老漁夫のサンチャゴの一人が足りで話が進んでいく。
    自分で自分を鼓舞するシーンや、魚に語りかけるシーンは物語の最後をしっているからこそ空しさを覚える。それと同時に、魚や鮫と戦うこと、そして戦うことを諦めさせようとする様々な事象に立ち向かうサンチャゴの強い意志を感じた。

  • 老人サンチャゴがひとり漁に出て、苦闘の末に船よりも大きな魚をとらえるが、港へ戻る間に魚は全部サメに食べられてしまう。
    物語としてはそれだけだ。

    濃密な即物的な細部とサンチャゴの独白だけが続く。

    メタな議論や教訓めいた記述はどこにも出てこないのだけれど、読後には鮮明に、闘う人間の矜持に共感することができるだろう。古典とはこういうことだと、あらためて思う。

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