老人と海 (新潮文庫)

  • 新潮社
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レビュー : 955
  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102100042

作品紹介・あらすじ

キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく…。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。

感想・レビュー・書評

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  • 細かな語りが乾いた雰囲気を上手く醸成していて、ねっとり引き込まれる作品。情況の静と動とともに人生の静と動が描写され、自然の中で生きる人間の営みを深い洞察で作品にした。最後は穏やかな虚無感にいくばくながら浸ることができる。

  •  自分の命を懸けて、マカジキを追う主人公は、本当にかっこいい
     何もかも失った主人公を見ていると、自分の悩みなどちっぽけなものに思えてきます。悩みに苦しんでいるときに読んでみてください。

  • わたくしが初めて自力で読んだ洋書が、今年生誕120年を迎へたヘミングウェイでした。リライト版ではオスカー・ワイルドだつたけど。
    Men Without Womenといふ作品で、「女のいない男たち」とか「男だけの世界」などと訳されてゐるやうです。
    会話主体の小説ながら、贅肉をそぎ落としてゆくやうなシンプルな文章に惹かれたのであります。おお、これが固ゆで玉子なのか、と実感したものです。

    この『老人と海』も同様で、冒頭からぐいぐい読ませます。
    年をとつた漁師・サンチャゴは、メキシコ湾流に小舟を浮かべて漁をして暮らしてゐます。相棒として少年が同行してゐたのですが、40日たつても一匹も釣れぬので、少年の親が別の舟に乗るやうに言ひつけたのです。少年は不満ながらおとつつあんの言ふことには従はないといけない。それでサンチャゴは一人で漁を続けるのですが......

    沖へ出たサンチャゴ。少年がゐたらなあ、と何度もぼやきます。しかしつひに獲物が喰らひつきます。カジキマグロ。でかい。綱に繋がつたまま、悠揚たる態度で老人を翻弄します。足掛け三日の駆け引きの後、漸く仕留めるのですが、大きすぎて引き上げられません。で、小舟に固定してそのまま凱旋せんとする老人。
    魚があまりに大きいので、どちらが引かれてゐるのやら、といふ感じ。まるで入学式を迎へた小学生が、大きいランドセルに振り回されて、背負つてゐるのか背負れてゐるのかわからないのに似てゐる。
    ところが、カジキの血の臭ひに誘はれて、鮫が襲撃してきます。危し、サンチャゴ。獲物を守り切れるのか......?

    ストオリイは単純ながら、引き締まつた流線型の文章に乗せられて、老人の行動から目が離せません。少年との友情も重要なファクタアでせうが、わたくしは「生きる」ことの本質に迫つた佳作だと思ひました。人間は(すべての生き物は、かな)ほかの生命を奪ふことなしに生きることは出来ない、といふ当然の事を再認識させます。
    数数の死闘に耐えて帰還した老人。徒労感に打ちひしがれ、疲労困憊して眠るさまは、人生の厳しさを教へるのです。ああ、俺はまだまだヒヨコだ、とね。

    ついでながら、福田恆存の翻訳が絶品であります。沙翁作品でもさうですが、この人の訳を読んだ上で、なほ新訳を試みる翻訳者が後を絶ちませんが、勇気があるなあと。
    ちと力が入り過ぎましたかな。わたくしの柄ではありませんね。ご無礼いたしました。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-815.html

  •  まず、よく言われるように文体がすごい。短く切れる文体の、スピード感がすごい。歌でも何でもそうだけれど、完結したフレーズを矢継ぎ早に投げつけられるというのは、フレーズ一つ一つのインパクトを高めつつ、全体のスピードを上げる。
     もう一つすごいのは、肉体的な描写のリアリティで、これも文体を短く切り、外面的事実の描写に徹したことによるものなんだろうけれど、それにしても、この描写には、ウッときてしまう。内面描写を排すると、まず言動に対して感情移入することが求められそうだけれど、実は肉体に対しても感情移入は可能なわけで、この小説はハードボイルドの文体がそのように機能している部分が多いように感じます。
     肉体に対する感情移入、精神的でないものに対する感情移入はもう一つ、意味以前のレベルでの知覚を可能にする効果もあるのかもしれません。自然の描写なども、たとえば内面を描こうとすると、そのフィルターによって意味づけの与えられた自然として描かれざるを得ないところがありますが、その多くが肉体のアナロジーによって知覚されるという文体を取れば、自然はただありのままにあるだけになる。実際に感覚として、すごく自然であって、特に自然だなあと思うのは、時間の圧縮感覚、これが肉体的にすごくしっくりくる感覚のような気がする。魚がつれるまでの退屈さ、そしてサメに襲われたところからの勢い。サメに襲われりゃ自然と行動も増えるよね、ってなわけで展開のスピードが上がるのは当たり前なんだけど、その当たり前に完全に依存して、下手に手を加えていない、つまり、盛り上げるような描写上の工夫があまり見られない、そんな感じがするところが、すごいなあ、と思う。
     あとは最後、あの報われなさは、普通に書けば不条理に悩まされる主人公、という風にならざるを得ないところがあるように思うのですが、外面だけ、というのがそれを回避しているように思います。どういうことかというと、外面だけの描写には人間が極力前景化しない効果もあるはずで、ならばその中で自然と闘う人間の姿が、かえって感動的に思えてくる、というところもあるはずではないか、と思うのです。だからこそ、不条理であっても確かに闘った、という姿が説得力を持って迫ってきて、ただの不条理にはならない。この文体にはそうした効果も、あるような気がします。
     と、もう描写と文体の話しかしてないけれど、この作品の核は描写と文体にある、あるいは、描写と文体にしかない、そんな気がするのです。話なんて、漁に出て、マグロ捕って、帰りにサメに襲われて、全部食い尽くされちゃって、ちくしょう、これで終わり。あっさりしたものです。だけど、それが面白い、というころがこの作品の強みであるし、それはなぜ面白いかといえば、やっぱり文体と描写が面白いからだと思います。
     好きです。
     これから、著作を追います(なんか、こんなのばっかりですね……)。

  • 原題:The Old Man and the Sea(1952年、米)
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    ハードボイルドとか男のロマンとかは、私にはよく分からないが、とりあえず、このお爺さんはいい男だ。ぎらつくような闘争心。「強い奴が、偉いんだ」という単純明快な論理。深みがないと言われればそれまでだが、ここまで徹底すれば、いっそ清々しくて天晴れだ。「難しいことは分からんが、とりあえず俺は勝つ」みたいなシンプルな性格には愛嬌すら感じる。

  • 老漁師サンチャゴから学んだ7つのこと:

    1. 揺るがない気持ちをもつことの大切さ。
    84日間一本釣りで獲物が釣れなくても今日は絶対に釣れるんだと強く信じてやまない強い心があれば、いつか必ず獲物を仕留められよう。

    2. 己が生まれてきた意味を自覚することの大切さ。
    自分が漁師として生まれ、大物を釣り上げるためだけに生きてきたと自覚しているため、周りに何を言われようとも行動や思いに迷いが生じない。

    3. 決意することの大切さ。
    今目の前で戦っているこの大物のカジキ、いや獲物、いや兄弟を殺す、と固く誓っていることにより、途中で行動がブレることがない。また困難に直面しても途中で諦めるという気持ちが起きない。

    4. 戦いというのは壮絶であること。
    一人の老漁師と一匹の大きな獲物との戦いは、孤独な心理戦・持久戦となり、いつしか相手に対し友情や愛情、そして尊敬にも似た気持ちを抱かせてしまうほど壮絶なものであった。つまり楽な戦いなどは本物の戦いではないということだ。

    5. 師弟関係の大切さ。
    海で一人で孤独に獲物と戦っているときにも、老人を慕っている少年のことを常に思うことで、老人は気持ち的には少年と二人で獲物と戦っていると思われる。師弟関係は人を孤独から解放し、疲労困憊の身体からも力を湧き立たせてくれる、人間を前進させてくれる源泉だ。

    6. 前向きな考えの大切さ。
    仕留めた獲物を船に横並びにして岸に向かっているところ、サメに獲物を襲われて獲物の一部がなくなってしまった。それでも40ポンド分なくなって軽くなったろう、と思う前向きさ。どんな困難に直面しても、前向きな考えがあれば過去にとらわれずに前に進めるはずだ。

    7. 諦めない心の大切さ。
    サメは血の匂いで次々と集まり襲いかかってくる。そんな中、サメと対峙する銛がなくなっても老人は今ある道具でサメに戦いを挑む。最後まで諦めない気持ちは、老人を生きて岸まで返したことにつながったのだと思う。

    ***********

    老漁師サンチャゴは言った。

    「だが人間は負けるようには造られてはいない」
    「打ち砕かれることはあっても負けることはないんだ」

    そう、人間は負けることはないんだ。何度でも這い上がれば、負けることはない。

  • 月1で有名海外作品を読もう会を一人で実施して2ヶ月目(前月はグレート・ギャツビー)。巨大カジキマグロとの死闘を繰り広げる漁師サンチャゴ。彼の人生の集大成としての漁だった。彼以外に誰もいない、あるのは望洋たる海だけである。綱1本でカジキを手繰り寄せる。カジキも命がけで老人から逃れる、暴れる。彼は負傷しながらも最後の力で銛を突く。しかしここれで終わらない。帰路でカジキに喰らいつく鮫と格闘する。勿論、最後に残るのはカジキの残骸である。孤独の老人が海の恩恵を受け、海の人生を楽しんだ証としての残骸に感動。

  • ‪米国の作家で海洋生物との戦いを題材としている作品は他に白鯨がありますね。‬

    ‪後半部分のサンチャゴの心境を考えると何も言えない。彼の前を向く人間性と挫けない精神力は感じるものがあります。‬"Every day is a new day" 辛い事や運に見放された日が続いた時は彼の言葉を思い出したいですね。

  • キューバはテレビでしか見たことがないが、その映像を脳裏に巡らせながら読んだ。
    サンチャゴの孤独な闘いと、その精緻な描写が読む側にも伝わりついつい力が入ったり、焦燥感にかられたり…サメに襲われ敗北するサンチャゴ、しかしそれは本当に敗北だったのだろうか。

  • 自身が今まで読んだ小説の中でこんなに1人の人間(老人)にフォーカスした小説は初めてだった。
    老人の海や魚に向き合う親しい気持ち(友達)や外見描写が印象的。
    ただ1人老人を慕う少年の成長や老人を蔑む村人の存在、それらに対する接し方に老人の人柄がでていた。
    若い頃は漁に出ても、言葉を発しないようにしていたと言ってたが、1人で漁にでると独り言も多くなっていることから歳を感じている。老人は言葉を声に出すことにより自身の心を燃え上がらせている。

    印象フレーズ
    人間は負けるように造られてはいないんだ

    そうだ魚だって友達だ。
    こんな魚は見たことも聞いたこともない。
    けれど、おれはやつを殺さなければならないんだ。
    ありがたいことに、星は殺さなくてもいい。

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