日はまた昇る (新潮文庫 ヘ 2-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102100059

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすい。さすが大久保康雄訳。
    いや、ヘミングウェイの簡潔文のおかげか。
    日本の戦後の自堕落文学とは、似ているようで全然違う。
    これなら読める。

    キャラが立っている点はエンタメっぽい。
    会話がたくさんで、仲間がつるむ様子がリアル。
    実在のカフェや小説家などの固有名詞が頻繁に出てくるのもウケた理由だろう。
    主人公ジェイクの解釈が難しい。
    一見いちばんまともに見えるけど、性的不能という枷が恋仲のブレットらとの関係をややこしくする。
    いや、単純にしているのか?
    なんにしろ、人物は退廃的でさえ 生き生きしている。

  • いまさらですが・・・・
    何回読んだかわかりません。
    おそらく100回は読んでいるのではないでしょうか?
    これまで読んだことのある文学作品の中で、最高のものです。

    僕の75%は、この大久保康雄訳の日はまた昇るで作られてる。

  • 初めてヘミングウェイを読んだ。情景が美しく、フィエスタの熱狂とその前の静けさ、眩しさまでも鮮明に描写されている。

  • 通読するのは3度目だが、何度読んでもいいね〜。書かれたのは1926年とすでに100年ほど昔でありながら、100年を全く感じさせないキャラクター達の生き生きしていること!優れた小説は登場人物がわたしたちの隣人になってくれるが、まさにと思う小説。

  • ドラマやストーリーがないわけではないけどそういった物語的な要素よりも登場人物の行動そのものにを描くことに意味があるという感じの小説。第一次世界大戦後のロストジェネレーションの世代に共感を得たという読み方は今の時代とは断絶していて叶わない感覚。
    マス釣りの牧歌的なシーンや祭りの朝のざわめきなどの描写の雰囲気がスペインの乾いた暑さと日陰の涼しさを感じさせる。スペインに行ったことはないけど。

  • 2021/05/24 読了

  • 図書館で借りてきた大久保氏の翻訳版。
    村上春樹氏が『村上さんのところ』という著作の中で
    「読んでいて情景が目に浮かぶような小説」といった意味のことを述べていた。


    この本を読むのは2度目だが
    「情景が目に浮かぶ」ような気分を味わうことができた。
    「ロストジェネレーション」云々というのは、この本の開設には必ず書いてあることだが


    カフェ・セレクトを始めとするパリのカフェの情景
    スペイン・パンプローナのフィエスタの狂騒
    心に残る場面がいくつもあった。


    しかし私がもっとも印象に残ったのは、ジェイクとビルの2人が乗り合いバスの屋根上の席でバスク人とともに、スペイン・バスク地方の旅をするところだ。赤茶けたスペインの大地。不毛な土地に1本の道。起伏の多い山道を走るバスは大きく揺れていただろう。このバスで一緒になったバスク人と酒を酌み交わす。何という情景だろう。


    フィクションの上での人々なのに、この人たちはもうだれ一人生きてはいないのか、とか考えてしまった。


    一度目ではあまり感じなかったことも、二度読めば感じることがある。そう思う。

  • 同氏の超有名な作品の一つです。

  • この小説は、インポな主人公ジェイクと淫乱な元恋人ブレット、その他の男達幾人かがヨーロッパで酒を飲み飯を食い喧嘩して釣りをして闘牛を観るだけの小説である。

    ドル高を背景に、ジェイク御一行はヨーロッパで自由を謳歌する。だけど、何を飲み食いしてもどこに行っても主人公のジェイクが感じることは、倦怠と諦念ばかり。若者であるジェイク御一行はワクワク感を求めて酒を飲み飯を食い闘牛を観る。顔だけが魅力のブレットを巡って男達は喧嘩し競い合う。だけどジェイクは、それらの狂騒が短期的なもので、すぐにつまらなくなってしまう事を知っているんだね。だから小説も倦怠感を伴って淡々と進んでいく。

    ゆとり世代として、物の溢れた現代大学生である私にとって、ジェイクと小説の持つ倦怠感と諦念は、共感を伴って読み進める事ができた。

    好きな文を2つ抜粋
    「きみは、人生がどんどん過ぎ去ろうとしているのに、その人生をすこしも上手く使っていないと感じる事はないかね?もう人生の半分が過ぎてしまったと感じてギクリとすることはないかね?」

    こういうものなのだ。女を、ある男といっしょに旅に行かせる。女にまた別の男を紹介し、そいつと駆け落ちさせる。今度は、こっちが出かけて行って女を連れ戻す。電報には、「愛を込めて」などと書く。こういうものなんだ。

  • 第一次世界大戦の戦場はほぼヨーロッパだったため、出征した兵士たち以外はあまり戦争を実感することなく戦争を終えることになる。
    主人公のジェイクをはじめとして、多くのアメリカの若者が戦後をヨーロッパ(特にパリ)で無目的に過ごしている。
    毎晩毎晩酒を飲み、何者かになろうとしながらなれずにいる。

    アメリカは国土が戦場になっていないから、主人公たちが(作者が)生と死の淵ギリギリのところから帰還してきた祖国は、あまりにも生命に対して無防備に思えたのではないか。
    食べたいものを食べ、したいことをする。
    自分たちは何もリスクを負わずに、あっけらかんと生きている人たちに対する嫌悪感。
    結局自分たちだって、食べたいものを食べ、したいことをしているのに。
    自分たちは生と死のはざまを見てきたことは免罪符になるというのか。

    このままでいいと思ってはいないのだろう。
    その焦燥は確かに感じられる。
    けれど何をやってもきっと「それで?」という問いかけが心の中にあるのだろう。
    「どうせ死ぬんだし」と思いながら、なにかに人生をかけられるほど、人は強くないのだ。

    刹那に生きてしまう弱さと、易きに流れる怠惰と、生命に対する諦観。
    その中で何かをなしとげたいという狂おしい思いを熱く感じ、大嫌いなこういう自堕落な生活をも割り引いて見てあげようという気にもなる。(何者?)

    闘牛のシーンはとても面白く読んだのだが、純情な19歳の才能ある闘牛士ペドロ・ロメロを、思いつきで駆け落ちさせた挙句に捨てるブレットが本当に嫌い。
    真剣に牛と闘っているのに痴話げんかに巻き込んで怪我をさせて、けろりとして駆け落ちだもんなあ。
    それが34歳大人の女のすることか?
    「お金持っていないので迎えに来て」ってジェイクに甘えるところも怒髪天だ。

    それに引き換え、スペインに行く途中の山の中で釣りをするシーンは好き。
    リュックにサンドイッチとワインとみみずを詰めて、涼しいうちに釣りをする。
    暖かくなったら樹にもたれてひと休み。本を読んでもいいね。
    そしてお昼ご飯を食べたら少し昼寝をしてから山を降りるのさ。

    ただし、「鱒」を釣ったらしいのだが、それがとても違和感。
    アングロサクソン人はわからん魚は全部鱒だからなあ。
    「鱒」といえば小型の「鮭」みたいじゃない?
    「やまめ」とか「いわな」とかせいぜい「ニジマス」とか「サクラマス」みたいな魚に置き換えて読んでました。

    あと、発表当時の小説の饒舌な文体からしたら確かに簡潔な文体だけれど、いまどきこれをハードボイルド・スタイルというのだろうか。
    「さらば愛しき女よ」を読んだ時も感じたけど、意外とハードボイルドって文章のお行儀がいいのかしら?
    いまどきの普通のエンタメ小説に、ハードボイルドな文体が結構あるような気がするのだけど、大きなこと言えるほどハードボイルドを読んでいないからなあ。

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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