誰がために鐘は鳴る〈下〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102100073

作品紹介・あらすじ

二日後に迫った鉄橋爆破の任務。生還を期しがたいだけに、より激しく燃えあがるロバートとマリアの恋。生涯のすべてを投げ込むような陶酔のはてにロバートは戦いに出て行く。-戦争という巨大な運命のもとにおける悲劇的恋愛を描きながら、その悲惨さを超えて行動するロバートの姿が、信ずるもののために戦うことの尊厳を語りかけ、読む者に息づまるほどの感動を呼びおこす大作。

感想・レビュー・書評

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  • 文庫が改版されて活字も大きく読みやすく
    さすが大久保康彦訳丁寧な訳文でわかりやすく
    文章が込み入っていたのでもなく

    むしろ簡潔で、しかも情緒的たっぷりで
    ストーリーが起伏に富んでおもしろく
    やっぱりヘミングウェイ一番の傑作だと

    戦いと男と女と、生きるか死ぬか
    少々メロドラマ風でもあり
    いや
    そんな風に言っては失礼であり

    ファッショと闘う人民軍という設定が
    中東の民主化デモの殺戮が
    オーバーラップして
    深く、深く考え込んでしまった

    人間の戦い癖、殺し合いは止まるものか
    生まれて死ぬるはなんぞや

    扉の言葉(ジョン・ダン)がとてもいいので
    写しておこう

    なんびとも一島嶼(とうしょ)にてはあらず
    なんびともみずからにして全きはなし
    ひとはみな大陸(くが)の一塊(ひとくれ)
    本土のひとひら そのひとひらの土塊(つちくれ)を
    波のきたりて洗いゆけば
    洗われしだけ欧州の土失せるは
    さながら岬の失せるなり
    なんびとのみまかりゆくもこれに似て
    みずからを殺(そ)ぐにひとし
    そはわれもまた人類の一部なれば
    ゆえに問うなかれ
    誰がために鐘は鳴るやと
    そは汝(な)がために鳴るなれば

  • 巻頭18章のロバートの回想・独白は長かったーw

    アグスティンのキャラ立ちは下巻で冴えるなー
    「淫売」と書いて「じごく」とルビ振るとは。

    戦争というものが持つ根源的な苦しみ、
    味方とは、敵とは。殺しあう者同士がそれぞれ、人間であるという事。
    が、下巻では印象的だった。

    ロバートとマリアのいま、いま、いま。
    そして「いまきみはぼくでもあるんだ。ぼくはきみといっしょなんだ。そこに、ぼくらがふたりともいるんだ」
    やっぱり、ヘミングウェイの中には「女」の部分があると思うなぁ…

  •  やはり緊迫した展開が多くなったせいか上巻よりも楽しめた気がする。相変わらず小難しい印象は変わらなかったが

     おそらく私の理解力が足りないからだろうが理解できない部分が多かった。そのせいで何故橋を爆破しても既に無意味なのか、何故ロバートはしつこく自分に話し掛ける癖があったのかという疑問が残ったままだった。
     しかし、それでもこれが名作と呼ばれる理由が少し見えた気がする。作品の中で徹底されていたのは戦争狂を出さないことではないかと私には思えた。誰もが各々の事情や信念を掲げて戦争に参加している。あのマルティでさえも銃殺狂と呼ばれているが、自分の信ずる行為を貫徹しているつもりなのだ。

     これだけの激しい戦闘であろうとも戦争全体から見れば開戦の端緒にしか過ぎないというロバートの独白が強烈な衝撃を与える。
     本書を更に理解するには更なる知識の追加と、実写映画でどのように描かれているのか確認する必要がある気がした。映画ではあの長いモノローグはどうなっているのだろうか。少々興味が沸いた。

  • 『ゆえに問うなかれ、誰がために鐘は鳴るやと。そは汝がために鳴るなれば』

    いよいよ作戦実行に移るとき敵の動きが予定と違うことに気づき味方に作戦中止要請の文書を送るが時すでに遅く、主人公も仲間たちも戦争の闇に飲み込まれていく…

    人がたくさん死ぬが死ぬ場面など非常にあっさりしている。本来死とはこんなものかもしれない。
    生き延びられないことを悟ったロバートがマリアを逃がす時に『いつか一緒にマドリードにいこうね、2人は一緒だよ』というシーンが切なかった

    ハッピーエンドでは終われず敵にも味方にも大切な誰かがいてそれでも死んでいく。

    戦争は次は誰のために弔いの鐘を鳴らすのだろうか。

  • 相変わらず銃口を覗いてる話。
    これでよく上下巻かけたなと思う。

    いま読んだらまた印象かわるのかな?2009年くらいに読みました。

  • 悲しかった。バッドエンドです。
    大切な人や仲間の命を見捨てて生き残るために逃げなければならない。。残酷でした。

    自分の決断したことが間違ってないと信じて前を向いて戦う主人公の強い気持ちが感じられた。

  • スペイン内戦についてしっかり勉強した上で読んだので余計に面白く感じた。それにしてもヘミングウェイの言葉の熱量が凄くて、これは実際従軍したから書けるものなんだなと強烈な敗北感を抱かざるを得ない。
    ・「鉄の林のなかをくぐるターザン」

  • 戦争の話をアメリカ側で読むのは初めてだったかもしれない。日本の同様の小説と大きく読み方が変わるというわけではなく、敵国に対してというよりは戦争のある社会というものへ人の気持ちが向かっている。日本の戦争小説で自分が読んでいるものはどれも天皇万歳というものはなく(そういう小説はあるのかしら?)、戦争に参加する個人に焦点が当てられているものである。けれども国に命を捧げるつもりであったという意思は人物のなかに感じていた。誰がために鐘は鳴るも同様で、敵国の兵士の命を奪うことに疑問は抱きつつも、個人の願望より命を捧げようとする行動が主人公にちゃんと見られた。
    この話は終わり方がよかったかも。瀕死状態で最後に主人公は残りの兵士を撃つためにピストルを構えるところで終わる。彼の生き方が浮き彫りになっていた気がした。

  • 最後はやられました。
    逆にやられました。

    とにかく心理描写がリアル。
    戦争に対する個々の立場の捉え方が矛盾なく、細やかに表現されてる。

    前々から近代と現代では死生観に大きな変化があるんちゃうの?とおもてた。舞台はスペイン内戦、思想のために戦うことは、それまでの歴史の延長線上にあった時代。法の整備なのか、教育の充実なのか、平和への盲従なのか理由はわからんけど今の日本(世界のほとんどの国)で主人公の考えは受け入れられへんやろ。
    なんせ生命至上主義党の独裁政権やから。

    これから俺らは生命が情報に変わっていき、情報を奪われることが精神の略奪になる世界を目の当たりにするやろう。もっぺん考え直したい。

  • 下巻は上巻より面白かった。

    100ページ手前あたりから停滞していた物語がやっと進行していく。
    戦いの数日前の静けさ、とてつもなく退屈で(読者が)長く感じる時間、新しい仲間、他人にとってうんざりする回想、どうでも良い会話、、これらはアクション映画でもスペクタクルな小説でもなく現実で、市民戦争のあったあの時、スペインの地でどこにでもあった光景、忘れられた過去の一部だ。
    死と隣り合わせの状況で、物事を色々深く考えていたら精神が破壊され生き延びれないだろう。パブロのように過去に何があって何を見てきたとしても、のうのうと酒を飲んで暮らしているような人間、苦労しない方の人間、ロベルトもまた生き抜く術を持っているのだ。
    そしてなによりこの戦争は意味を持たない。勝つか負けるか、生きるか死ぬかただそれだけのことである。意味を深く考えても仕方がないのである。

    何箇所かスペイン語が間違っていた。一例は166ページ、hay que tomar la muerte como si fuera aspirina が正解だ。siがsoになっている。

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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