海流のなかの島々 下 (新潮文庫 ヘ-2-9 新潮文庫)

  • 新潮社 (1977年11月1日発売)
3.68
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784102100097

みんなの感想まとめ

壮大な自然描写が特徴的なこの作品は、ヘミングウェイの海への深い愛と敬意を感じさせる。特に、海や魚、戦争をテーマにした物語は、彼の独自の視点から描かれ、リアルな描写が読者を引き込む。戦争を美化せず、主人...

感想・レビュー・書評

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  • 自由に過ごしていた主人公は家族の事故死を機に、島民の組織する戦闘に参加する。 上巻よりももっと不安定で、じんわりと心が蝕まれていくような絶望や諦観の中、ストーリーは淡々と進んでいく。泥臭い温かさはきちんとそこにあるものの、何一つ掴めない砂のようだった。ウィリーの最後のセリフがずううんっと残る。 あと上下ともにお酒や海の描写がたくさんでてきてより雰囲気がでていた。 悲しくもヘミングウェイ本人はこの作を書いた部屋で猟銃自殺。

  • 2026.1.3読了。
    写実的な自然描写。壮大な自然が眼前に広がり、海風すら感じるようなあまりにもリアルな描写。ヘミングウェイがかつてそこにいたからこそ描けた小説であり、ヘミングウェイの海への深い愛と尊敬を感じる。
    「老人と海」が本作の副産物であったと唱えられるのも納得だった。本作は、第一部「ビミニ」が「若き海」第二部「キューバ」が「不在の海」、第三部「洋上」が「海の追跡」であり、独立した「老人と海」が「存在する海」としてヘミングウェイの陸海空三部作構想の「海」を描いているそうだ。
    海、魚、戦争を題材とした小説でヘミングウェイに肩を並べる作家はそういないのではないかと思う。戦争を綺麗な成功体験として描くのではなく、主人公でも死ぬ時は死に、戦争の負の側面を過剰にでもなくあるがままの形で描くヘミングウェイの戦争小説が私は好きだ。
    生きることへの正直さまっすぐさ力強さ。
    ヘミングウェイの文体はどんな文体よりも力を感じる。背中を押されるというより、なにか強い力と対峙しているような、息苦しいまでの強さを感じる。
    やっぱり私はヘミングウェイの文体がすごく好きなのだと思う。

  •   ヘミングウェイの遺作として彼の死後出版された本書。一部目のビニミでは「老人と海」を彷彿とさせるような大自然との戦いと男たちの友情が、二、三部のキューバ、洋上では「誰がために鐘はなる」と重なるような恋と戦争、そして死が描かれています。ヘミングウェイの今までの人生がぎっしりと詰め込まれた本書はまさにヘミングウェイの集大成だと私は読んで実感しました。
    青年期に渡ったパリでの色恋や、参戦して負傷した第一次世界大戦、ジャーナリストとして参加したスペイン内戦と第二次世界大戦。彼の壮絶な一生があってこその本書だと思います。
    ヘミングウェイの多くの戦争経験は彼の作品の中心的なテーマに深く影響を与えています。作中では飛行士だった息子がヨーロッパで戦死するといった悲しく反戦的なストーリーがありますが、後半の章では主人公は自ら武器を持ち潜水艦を追うという対照的な行動をとっています。ヘミングウェイはいくつもの場所で戦争の恐ろしさと同時に、戦時下の英雄的な行為の偉大さをも感じていたのかとも思いました。しかし、読んでいくと主人公は英雄になろうとしているのではなく、自身の生命とそれを生んだ大自然を感じるために自ら死という極限状態へと踏み込んでいるのではと感じました。ヘミングウェイがこう描いたのは彼自身も命が軽んじられる戦場で、この命の価値に気づいたからかもしれません。

  • 上巻に同じ

  • 2.9

  • 息子たちとの、短くも幸せな時間。
    一転、息子を失ってからの退廃的な生活。
    そして自ら死地を求める様。

    章が変わった時、初めのうち主人公が同じ人物とは思えなかった。それくらい振れ幅の大きい内容。

    この作品は、昔読んだ「BANANA FISH」というマンガの主人公・アッシュ=リンクスが読んでいた場面があり、それを読んで以来いつかは読んでみたいと思っていたもの。
    マンガのアッシュは18歳。自分は、、その倍以上になってもその良さは半分もわからなかった。

    ヘミングウェイはまだそれほど多くの作品を読んだわけではない。きっと、ヘミングウェイに入るには上級者向けのようにも感じた。

  • いきなり脈落もなく、息子全員亡くなっていた。下巻の沈鬱な内容に耐えきれず、読了。

  • 波の音と風がいつまでも鳴りひびいてゐる。
    けれど彼と共に生きる海は、デュラスのそれとは違ふ海だと思ふ。デュラスの海はどこまでも決して届かないやうな、自分と他人の関係の中の海だ。しかし、ヘミングウェイの海は、まるで大地のようにひとの中に拡がつてゐる。
    彼の描いた海は、ひとを惹きつけて離さず、陸に上がればまるで水を失つた魚のように心細くなる。しかし、誘ふ様なその海もひとたび牙をむけば容赦なく命を奪ひとる。
    もうひとつは、彼の場合、酒の酔いはまるでものともしてゐないのに対し、デュラスは酔いそのものの中で書いてゐる感じだ。彼にとつての酒はまるで飲み水のやうな勢いだ。おそらく、彼は飲めば飲むほど、急速に思考が冴える人間だつたのだらう。だからこそ、デュラスのやうに酔いの中に堕ちてみたかつたのかもしれない。
    未完であつたこの作品は、かなり壮大なものを考へられてゐたやうで、海でさへも、彼の壮大な構想の一部でしかない。それでも陸にしろ、空にしろ、彼はどこにゐてもその熱い血で命を燃やしたに違ひない。
    彼の人生はまるで闘ひのやうだ。どんな痛みや苦しみがあつても、歩んでいかねばならぬやうな、そんな敗北を背負つた闘ひだ。
    この地球にあつては、ひとの成すことはどれも時間の中のほんの一抹に過ぎない。命は消えそしてまた生まれる。にもかかわらず、生れてしまつたからには、歩まずにはゐられない。得ればうれしく、なくせば悲しい。それを止めることなどできない。存在してしまつたからには。この地球はその事実を容赦なく突きつける。豊穣の喜びも荒々しくひとの命を奪うやうな嵐も、生きるものすべてに等しく与へる。大きなカジキもハドソンも海は生まれてから死ぬまでのすべてを見届けるだらう。
    各部の構想はできあがつてはゐたが、その中での人物関係についてはおそらくかなり推敲されてゐたに違ひない。この作品の中のひとびとは広げやうと思へば、それだけのドラマをもつたひとびとばかりである。それぞれの人物が描かれないところで命のやり取りをしてゐるのが見える。そのすべてを書くことはできないから、彼は慎重にその配置を考へてゐる。そのため、まずは構想を固めて仕舞はねばならなかつたのだらう。そんな気がしてならない。

  • いつも海辺でラムを飲む主人公。前半はカリブの青い海と風を感じるが、後半は暗い。人生は一瞬にして変わるのだ。

  • 知ってしまうと孤独になる。

  • 主人公の次男が大魚と相対し、それを見守る大人たち、そんな息子の死、そして戦争の中、内面の傷を抱えたまま生きる姿。

  • 82045.276

     「キューバ」の章の沈鬱な感じ、「洋上」は一転して荒々しい会話の連続。

  • 読み終わるまでに大分時間がかかってしまった; 今は上巻の方が好きだと感じるけれど、またいつか読み返して下巻の良さを味わいたい。

  • 図書館本。
    下巻のほうが良い。

  • やがて落ちる戦争の影。美しい思い出は見事なまでに残酷に「死」へと加速していきます。ヘミングウェイはこの優れた作品を、なぜ生前に発表しなかったのでしょうか。

  • 2008.7.29読了

  • てか、文庫だったけど、もっとボロイ装丁だったはずですが。

  • 上下巻。これまたコミック「BANANA FISH」の中で主人公アッシュの愛読書として出てくる本だったり(^^;)

    で、フリークで収集癖のある私は買ってみたのだが・・・途中まで読んで何年も放置状態だったりりする。

  • 「ビミニ」「キューバ」「洋上」の3部からなる本作。
    下巻の「キューバ」では、兄弟の中で唯一生き残った長男の戦死という哀しみから酒に溺れる姿が、「洋上」では、見えざる敵を追い、銃撃戦の後に訪れる自らの死が描かれる。主人公トマス・ハドソンの「強烈な孤独」と「死と隣接する生」が、ヘミングウェイの愛したカリブの海とともに鮮やかに描写されている。
    ちなみに、15年ぶりに購入した下巻は、文字も大きくなり、大変読みやすくなっていた。

  • ヘミングウェイがノーベル賞取ったりこうやって後世に残った一番の理由は、活字となって本に直接書かれていない事が分かりやすいからだと思う。

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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