勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪: ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102100110

作品紹介・あらすじ

1928年、28歳のヘミングウェイは、キー・ウエストに居を移した。戦争と革命と大恐慌の'30年代、陽光降り注ぐこの小島に腰を据え、気鋭の小説家は時代と人間を冷徹に捉えた数数の名作を放ってゆく。本書は、経験と思考の全てを注ぎ込んだ珠玉短編集『勝者に報酬はない』、短編小説史に聳える名編「キリマンジャロの雪」など17編を収録。絶賛を浴びた、新訳による全短編シリーズ第2巻。

感想・レビュー・書評

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  • ヘミングウェイは本当に素晴らしい。文章に潜む緊張感に押し潰されそうになりながらも、読んでいて心地良いというのはまたとない。「死ぬかと思って」可愛すぎて大好きだ。こんな視線もあったなんて。「フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯」も良かった。女を描かせた時の繊細さたるや見事としか言いようがない。
    しかしヘミングウェイの読める残りのものが少なくなってきた。悲しい。自分のためのというとちょっと大層で違う気もするのだが、久々に全作品読みたいと思える作家を見つけた気がしたのだった

  • 可愛らしい話(死ぬかと思って)や戦場のグロテスクな描写、精神の負傷?の話(最前線、死者の博物誌)などが印象的。ヘミングウェイの断片的な描写で終わる短編がさっぱりしていて、結局話が分からないのが(もちろん解釈できる方が良いのだが)却って良かったかもしれない。また読む。

  • 自我にめざめ個人が自由に行動するのは、明治の昔、簡単ではない。

     西欧的思想の個我にめざめ、作家を志し自由結婚を望めば、昔気質の父には認められないことだ。

     そして強い個性の似たような親子はぶつかって、もう好い加減に許そうと思ってもおのおのなかなか出来ない。

     周りの家族に助けられ、状況の変化に引っ張られて「和解」にたどり着く。でも決して理解しあったのではなく、親子の情がゆるむような「和解」。

     やはり小説の神様は小説がうまかった。堪能。

     さて、親子の確執は現代でも続いている。ブログでも見受けるし、自分も無いとは言えない。しかしその内容は名作とは違う。

     現代ではそれこそ「個人の自由選択」は法律でも保証されている。そのように社会もなっているようだが、本当の意味で西欧の言う「自我」を確立しているかどうか。

     堕落かもしれない。未発達なのかもしれない。

     もたれあい、あまえあい、きずをなめあう、風土は依然としてあるから。

     「パラサイト」許し難い。 過保護もってのほか。

     そこに親子の確執が起こるとどうなるのか?

     最悪は親殺し、子殺し事件のニュース。

     でも、いちばんわかってくれるのも親。子も親は捨てられない。

     願わくは、お互いの自立。

  • 冒頭か全てとも言える、キリマンジャロの雪。
    標高6000メートルで息絶えた一匹の豹。


    キリマンジャロは標高6,076メートル、
    雪に覆われた山で、アフリカの最高峰と言われている。
    その西の山頂は、マサイ語で”ヌガイエ・ヌガイ”、神の家と呼ばれているが、
    その近くに、干からびて凍りついた、一頭の豹の屍が横たわっている。
    それほど高いところで、豹が何を求めていたのか、
    説明し得た者は一人もいない。


    ヤツはなぜ
    何のために
    そんな高地へと
    やってきたのか

    獲物を追い
    さまよううちに
    もどることのできぬ場所へ
    迷いこんでしまったのか

    それとも何かを求め
    憑かれたように
    高みへ高みへと登りつめ
    力つきて倒れたのか

    ヤツの死体は
    どんなだったろう
    戻ろうとしていたのか
    それとも
    なお高みへと
    登ろうとしていたのか

    いずれにせよ
    ヤツは
    もう二度と
    戻れないことを
    知っていたに違いない


    これはアッシュの解釈だけれど、
    戻ろうとしていたのか、
    それともさらに上を目指していたのか。


    凍った豹は、
    上を向いて、さらに登ろうとした姿で
    そこにいたと思う。

    戻れないことを知った上で、
    頂上に到着することを恐れ、
    途中で息絶えられたことに安堵して。

    ひとりで到達した場所、
    どこであれ、そこが頂点だ。

  • ギャンブラーと尼僧とラジオが特に好きだった

  • キリマンジャロの雪が1番読みやすかった。

    豹の屍はどんなものか気になる。この子は同思いキリマンジャロで死んだのか。
    banana fishでこの作品を知って、本作品を読んでよかった。ヘミングウェイ 人生そのものなのかと思った。

  • 3.4

  • これが男の世界というものなのだろうか。

  • ①文体★★★★☆
    ②読後余韻★★★☆☆

  • ヘミングウェイの人生をトレースしてるように感じる。たくさん読んでだんだんとヘミングウェイの人格みたいなものを理解できるような気がする。気がするだけかも知れんけど。

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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